彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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ミタさんさん、佐藤東沙さん、かにしゅりんぷさん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


157:落ち着かない午後。

 ウォーターセブン某所。

『ニコ・ロビンが外出。タヌキと金髪小僧を連れている。血浴は確認できず』

『あのボロ船にもいないようですわね』

 

 電伝虫から届く“猟犬”達の報告にCP9の諜報員ブルーノは思案顔を作る。

「まだ合流していない、ということか」

 最大の脅威たる血浴のベアトリーゼがいない。これは好機か。

 

『仕掛けるなら、血浴と離れている今だな』

『賛成だ。血浴の相手なんかしたかねェ』

『避けられるなら避けたい相手ですわね』

 

 ブルーノは“猟犬”達の腰が引けた言葉に眉をひそめ、

「お前達は血浴の抑えとして動員されたことを忘れるな」

 ぴしゃりと叱声を発し、命令を告げた。

「ニコ・ロビンを狩場へ誘い出す。位置につけ」

 

『ケッ……えらそうに。しくじったら殺すぞスパイ野郎』

『精々上手くやることだな、公務員』

『無様に失敗して笑わせてくれてもよろしいですわよ、うふふ』

 

 悪態に皮肉に嘲笑を返され、電伝虫の通信が切られた。ブルーノは鼻息をつく。

 此度の作戦に増援が派遣されること、それもCP9のメンバーではなく、非正規要員(グリーンバッジ)を使うことに、ブルーノもルッチ達も納得がいっていない。

 ましてや、その要員が“ジョージ”の飼い犬達となれば、尚の事。

 

“ジョージ”。

 サイファー・ポール屈指の謀略と防諜の達人。数多くの犬を自在に駆使して政府の脅威を取り除き、秩序の危機を未然に防いできた諜報界の古狸だ。

 ただ、“ジョージ”の犬達は大抵が脛に傷を持つクズ共で、増援として派遣されてきた犬達も、やはり賞金首のクズ共だった。

 

 使い潰しても構わないということだが……ハンドラーでもないのに、あんな厄介な犬達を扱わされる身になって欲しい。

 ブルーノは人知れず溜息をこぼし、ニコ・ロビン捕縛へ動き始めた。

 

      ○

 

 ルフィとウソップとナミがヤガラを借りて街を観光しながら市街中心部へ向かい、ゾロが船番としてメリー号でイビキを掻く中、ロビンはチョッパー(トナカイ形態)とサンジを連れて裏町商店街を散策していた。

 

 カポカポと蹄を鳴らすチョッパーは煉瓦造りのインフラと建物、澄んだ水路が描く街並みを興味深そうに見回していた。完全におのぼりさんである。可愛い。

「コワイ仮面をつけた人をよく見かけるな」

 

「ん? ああ。言われてみればそうだな」とサンジも頷く。

「海列車でつながっているサン・ファルドという島で、仮装カーニバルが催されているみたいね」

 ロビンが説明すると、チョッパーは思わずロビンの顔を見上げた。

「え。どうしてそんなこと知ってるんだ?」

 

「周囲の会話を聞き取ったの」

 子供の頃からの逃亡生活で身についた技術だ。人の顔色を窺い、いつも神経を尖らせて他人の目や声を気にしてきた。

 ビーゼはよく自分を荒野の鼠と称したけれど、私は街の鼠だった。いつも何かに怯える街の鼠。

 

 ロビンは自虐的な気分を抱いたが、チョッパーは目をキラキラさせて尊敬の眼差しを寄こしてきた。

「すげー……っ! そんなこと出来るなんて……格好良いなっ!」

「ああ。スマートな特技だ。素敵だよ、ロビンちゃん♡」とサンジもすかさず便乗。

 

 ロビンは予想外の反応に碧眼を瞬かせ、とても和やかな微笑を浮かべた。

「ありがと」ロビンは通りの先を指差して「船医さん。あそこ、本屋さんよ」

 

「ホントだ!!」チョッパーは脇目も振らず本屋の前まで駆け、はしゃぎながら「寄って良いかっ!?」

「入る気満々じゃねーか」サンジが楽しげに苦笑をこぼす。

 

 可愛い。ロビンがチョッパーの愛くるしさに表情を緩めながら歩き出し――

 つば広のベルジェール帽を目深に被った仮装女性とすれ違う。

 

 ――――っ!?

 ロビンは思わず振り返る。人波に消えていくベルジェール帽の仮装女性を凝視しながら、動揺を露わにしていた。

 まさか、そんなはずない。

 ありえない。

 でも――

 

「? ロビンちゃん」サンジは怪訝そうに「顔色が悪いが……どうかしたのかい?」

「ごめんなさい。少し用事を思い出したわ。2人は先に行っていて」

 言い終えるが早いか、ロビンは踵を返してベルジェール帽の女を追い、駆け出した。

 

「え、ちょ、ロビンちゃん!?」

 呆気に取られつつ、サンジは一瞬、チョッパーが入った本屋と人波に消えていくロビンの背を交互に比べ、迷わずロビンの背を追う。

「待ってくれ、ロビンちゃん!」

 

 万事において女性優先のモットーを抜きにしても、ロビンは海軍の氷ヤローと出くわした時のような動揺振りだった。とても放ってはおけない。

「おい、どいてくれっ! おっと失礼、レディ。通してください。邪魔だ、おっさんっ! やあ、お嬢ちゃん。前をごめんよ」

 野郎には荒っぽく、女性には礼儀正しく、サンジは人波を掻き分けてロビンを追い、曲がり角を抜けて小路に入れば。

 

「? ? ? あ、れぇ? たしかに小路(ここ)へ入ったよな……?」

 ロビンの姿は影も形もない。目を瞬かせながら上下左右四方八方を見回すも、どこにも見当たらない。

「おーい、ロビンちゃーんっ! どこだーっ!?」

 サンジが声を張って呼びかけるも、返事はなく。

 

 ニコ・ロビンは忽然と姿を消した。

 

      ○

 

 ルフィとナミとウソップが中央街の換金所で黄金を換金し、3億ベリーを手に入れて大はしゃぎしている頃。

 サンジがロビンを見失って困惑していた時。

 岬に停泊するメリー号へ、招かれざる客がやってきていた。

 

 船番をしていたゾロは、寝込みを襲われて礼儀正しく歓迎するほど丸くない。ただし、弱すぎる相手へムキになるほど尖ってもいない。

 

 というわけで。

 ゾロの首に懸かった賞金6000万ベリーと仲間達を狙い、メリー号へ乗り込んできたチンピラ共――自称『フランキー一家』に対し、

「二刀流……犀回(サイクル)ッ!!」

 ゾロは三刀全てを抜くことなく吹き飛ばす。しばらくは固いものを食えなかったり、生活に苦労したりする程度で勘弁してやったから、死にはしないだろう。

 大きな放物線を描いて沖合に落ちていくチンピラ共を無視し、得物を鞘に納めて鼻息をついた。

 

「考えてみりゃあ道理だな」

 賞金稼ぎの立場から見たら、この街は格好の猟場だ。なんせ海賊の方からやってくる。

「ま、船番の暇潰しにゃ丁度良いか」

 大きく欠伸し、ゾロは再び舷側の胸壁に背を預け、すやすやと寝息を立て始めた。

 

 ・・・

 

 ・・

 

 ・

 

 敵意のない気配を感じ、ゾロは薄く片目を開けた。

 若い男だ。ワークキャップに作業着。そして長鼻。……長鼻。ウソップか。

 ゾロは薄く開けた片眼を閉じ、睡眠を再開しようとしてふと違和感を抱く。

 ん?

 待て。何か違う。

 

 脳裏に二通りの長鼻が表示された。

 丸い長鼻=ウソップ。

 四角い長鼻=若い男。

 若い男≠ウソップ。

 

 瞬間、バチッと目を開けてゾロは即座に二刀を抜き、

「誰だお前っ?!」

 誰何する声がちょっと上擦っていた。

 

 

 で。

 

 

 長鼻の若い男はカクと名乗り、ここウォーターセブン最大にして世界最高の造船会社ガレーラカンパニーの職長だという。

 カクはゾロに『船長と別嬪さんと長鼻が社に来ての。わしは船の調査と査定に来たんじゃ』と説明。メリー号の内外を見て回りながらメモ帳にあれこれ書き込み、鉛筆の尻で後頭部を掻いた。

「こりゃあ……難しいのう」

 

「難しいってのは?」

 ゾロの問いかけに、カクはブリキ板で強引に補修されたメインマストに触れながら、

「この船は竜骨も肋骨も歪んどる。その歪みが内外の船殻に隙間を生み、浸水させとるんじゃ」

 小首を傾げたゾロへ説明し直す。

「そうじゃのう。人間に例えるなら、怪我で背骨とあばらが曲がってしまって、日々の生活に苦労しとる感じじゃな」

 

 そりゃ重傷だ、とゾロは理解して「直せるか?」

 カクは両腕を組んで眉を大きく下げた。

「ぎりぎり修理が間に合う状態じゃ。しかし、この状態の船を直すとなれば、それなりの金額になるし……今時は手頃な額でこの船より高性能なものがいくらでも買えるからのう」

 

 迂遠に乗り換えを提案してくる長鼻船大工に、ゾロは渋面をこさえた。

「うちの方針としては、直したうえで今後の航海に耐えられるよう改造してェんだが」

 

「直すだけじゃなく、改造込みか。それなら、素直に船の乗り換えを勧めるぞ」

 どういうこった? と目で問いかけるゾロへ、カクは再びたとえ交じりに説明する。

「改造といっても限度はある。仮に、じゃぞ。この船をグランドライン後半でも通用させるとしたら、そりゃもう原形が一切残らんほど弄り倒すことになる。結局は一から新しい船、しかも完全な別物を作るのと同じじゃ」

 

 直すより新しい船を買った方がお得で、改造は無理っぽい。と。ゾロは眉間に深い皺を刻んでしまう。

 

「わしは調査の報告に戻るわ。邪魔したの」

 作業服のポケットへメモ帳と鉛筆を収め、長鼻職人は山風のような勢いで去っていった。

 

 瞬く間に遠ざかっていく職人から目線を切り、ゾロはメリー号のメインマストを見上げる。潮風を浴びてぱたぱたとはためくジョリーロジャー。

 メリー号を直して改良して、と盛り上がっていた皆を思い出し、ゾロは深々と嘆息をこぼした。

 

        ○

 

 ガレーラカンパニーの一番造船場。

 CP9の女諜報員カリファはウォーターセブン市長兼ガレーラカンパニー社長アイスバーグの秘書として、何食わぬ顔でその場に居た。

 

 1:新興海賊団“麦わらの一味”の船長と船員二名が『船を直したい』とガレーラカンパニーの一番造船場にやってきて(普通は受付窓口に行くでしょ。なんでドックに来るの)。

 

 2:ガレーラに出入りしている解体業者兼賞金稼ぎフランキー一家が麦わらの一味の金を盗もうとして騒ぎを起こし(時と場所を考えなさいよ。だから貴方達は周りからチンピラ扱いを受けるのよ)。

 

 3:あれやこれやで職長のパウリーとルッチが麦わらの一味の金を取り戻し、工場内を案内していたところで、麦わらの一味の船を調査、査定に赴いていたカクが戻ってきた(貴方、素でこの仕事を楽しんでるわよね?)。

 

 ちなみに、麦わらの一味の長鼻がフランキー一家に拉致られていったが、カリファは無視した。だって些事だし。

 

 そんなこんなで、カクがメモ帳に記した調査、査定の内容をアイスバーグに渡した。

 メモや文書のやり取りは、5年前にガレーラを去った女事務員ビーが残したルールだ。

 

 アイスバーグはメモに目を通しつつ、いくつかカクとやりとりした後、麦わらのルフィと蜜柑色髪の美少女へ言った。

「こりゃあ難しいな」

 

「直せねェのか?」と心配顔を作る麦わらと少女に、カリファは思う。まだ子供ね。本当にこんな子供が王下七武海を倒したというの? 何かの間違いじゃ?

 

 不安そうな若者達へ、アイスバーグは難しい顔つきのまま説明する。

「テメェらの船はいろいろと壊れちゃあいるが、大半は修理可能だ。ただし、竜骨と肋骨が歪んじまってる。この部分は基本的に修理しねェ。直すくらいなら新造した方が早いからな。ただ、テメェらの船はまだ修理が利くようだな」

 

 アイスバーグの説明に、麦わらと少女がぱぁっと表情を明るくする。カリファは思わず苦笑いを浮かべそうになった。素直な子達だこと。

 

「良かった! じゃあ、メリーを元気にしてやってくれ!」

 食い気味に訴える麦わらを、アイスバーグが胸ポケットに収めた子鼠を撫でながら宥める。

「ンマー……話はまだ終わってねェ。ココロさんの紹介だからな。きちんと言っておく」

 

 カリファの脳裏にココロさん――飲んだくれの婆様駅員の顔が浮かぶ。アイスバーグを始めとする古参職人達から一目置かれている古馴染みだ。若い頃は白魚のような別嬪だったと老人達が言っていたが……きっと思い出補正という奴だろう。

 

 そんなことを考えるカリファを余所に、アイスバーグの説明が始まっていた。

「テメェらの船は本来、外洋で使うようなもんじゃねェ。俺も色々見聞きしてきたが、この船でここまで渡ってきたなんて驚きだ」

 

「メリーは強い船だからな!」

 誇らしげな麦わらに対し、アイスバーグは首を横に振り、淡白な調子で返す。

「ここまで持ち堪えたってんなら、それだけの性能があって、良い塩梅の航海をしてきただけだ。カクのメモを読む限りじゃあ、後者の比重が大きいみてェだな」

 

 アイスバーグはまるで設計図でも見るように、再びカクのメモに目を通す。卓越した造船技師であり、敏腕の船大工である彼に掛かれば、メモの内容だけでも、ゴーイングメリー号がどんな船でどんな航海をしてきて、どんな状態にあるのか、精確に把握できる。

 

「船大工としてはっきり言わせてもらう。テメェらがこの船にどれほど愛着があろうが、どれだけ大金を注ぎ込もうが、どれだけ腕の良い船員を揃えてようが、この船はレッドラインの向こう、グランドラインの後半海域で使える船にゃあならねェぞ」

 穏やかならぬ内容に、麦わらが顔を険しくし、少女も綺麗な顔を強張らせる。

 

「それはどういう意味?」

 おずおずと尋ねる少女へ、アイスバーグは容赦なく宣言する。

「この船に乗り続ける限り、テメェらは”先”に進めねェってことだ」

 

 会ったばかりの人間に航海の限界を宣告され、麦わらは思わずカッとなり、食って掛かる。

「そんなの、やってみなけりゃ分からねェじゃねえかっ!」

 

 怒気を露わにした歳若い海賊へ、アイスバーグは呆れた様子で小さく溜息をこぼしてから、大人として子供を叱るように告げた。

「テメェ、それでも一船の船長か? そんな一か八かの博奕に船員達の命を賭けるのか? 海のど真ん中で仲間と一緒に沈んじまっても良いってのか?」

 

 麦わらが気圧されるように口を噤み、少女も言葉が無い。場に立ち会っているパウリー達も思わず背筋を伸ばす。

 カリファは思う。今さっき会ったばかりの相手に随分と“お優しい”。ココロさんの紹介状があったからかしら。

 

「俺の話を聞いたうえで、あくまでこの船にこだわるってンなら、いや、こう言うべきか」

 アイスバーグは麦わらの目を真っ直ぐ見据えた。

「テメェら一味がこの船で死にてェンなら、要望通りにしよう。予算は3億ベリーだったか? 完璧に直して、金と船体が許す限り補強して、改良もしてやろう。船を乗り換えるなら、どんな海でも越えられるような最新の船を作ってやろう」

 

 麦わらも少女ももはや返事も出来ない。

 

「今すぐ決めろとは言わねェよ。よく考えてどうするか決めたら、もう一度来い。この船に乗り続けるにせよ、乗り換えるにせよ、きっちり面倒見てやる」

「どうぞ。検討の参考までに」

 カリファは最新型から中古まで記載されているガレーラカンパニーのカタログを少女に渡す。

 

 と、政府の役人がやってきた。アイスバーグが凄く嫌そうに顔をしかめるも、仕方ない。本社の応接室へ向かって歩き出す。

 

 アイスバーグと共に本社社屋へ向かいつつ、カリファは肩越しにしょんぼりしている麦わらを一瞥した。

 愛着のある船や船長としての在り方について、これだけ厳しいことを言われてはショックも大きいでしょうけれど……本当にまだ子供ね。一億ベリーの賞金首と言われても信じられないわ。

 

 単純な興味から、カリファはアイスバーグに尋ねてみた。

「どちらを選ぶと思います?」

 

「奴らの事情を知らねェからな。何とも言えねェ。ただまあ……」

 アイスバーグは5年前に退職した事務員から贈られたカフスボタンを締め直しながら、口端を緩めた。

「船を愛して、大事にする奴らは嫌いじゃねェ。どちらを選んでも、言った通りきっちり面倒見てやるさ」

 

 うーん……イケメン。

 カリファが暢気にそんな感想を抱いた直後、資材置き場の方から『金が消えてるぅ!!』と麦わらと少女の悲鳴が聞こえたが……気にも留めなかった。

 

       ○

 

「船は直せるが……直してもこの先に進むことは難しい、か。おまけに改造すりゃあメリーはメリーで無くなっちまうと」

 サンジは渋面で煙草を吹かし、

「参ったな。こりゃウソップが聞いたら大騒ぎになるぞ」

「……そうだな」

 ゾロもどこか苦い顔で鼻息をつく。

 

「ど、どういうことだ?」いまいち飲み込み切れないチョッパーが両翼へ問う。

「俺達が先へ進むなら、メリーとここで別れなきゃならねェってことだ。まだ泳げるメリーを置いて、な」

「そんな……っ!」サンジの説明を聞き、ショックを受けるチョッパー。「金があってもダメなのか? なんとかならねーのか?」

 

 縋るような眼差しを向けられ、ゾロは小さく頭を振る。

「人間なら鍛えたり、道具を用意したりすりゃあ大抵のことは何とかなるが、船だからな。本職にこれ以上無理と断言されちゃあ……素人の俺達にゃあ打つ手がねェ」

「ロビンちゃんのことといい、メリー号のことといい、落ち着かねェ午後だ」

 サンジは苛立ちを吐き出すように煙草を吹かした。

 

「ロビンの荷物は船にあるんだ。じきに帰ってくるだろ」

「だとしても、気になるだろ。海軍の氷ヤローと出くわして数日後に“これ”だぞ」

 仏頂面でゾロへ応じ、サンジは短くなった煙草を口元へ運ぶ。

 

 一味の武闘派二人が不機嫌顔で黙り込み、チョッパーが居心地の悪さを覚えたところへ、

「皆ーッ!!」

「! ナミが帰ってきたっ!」

 大きなトランクケースを抱えるナミが街から駆けてきた。それも随分と慌てた様子で。

 

「ん? 一人みたいだな……ルフィとウソップはどうしたんだ?」

 サンジが小首を傾げつつ、ナミへ手を振る。

「ナミさ~んっ!! 何かあったのか~~っ!?」

 

 何が起きたのか、サンジとチョッパーとゾロが知るまであと数分。

 

 メリー号のことで色々とデリケートになって居たところへ、大事な金を奪われ、大切な仲間を傷つけられ、麦わらの一味がブチギレるまで、あと小一時間。

 

 そして――

 

 

 

 

 

「私を止まり木にするとか、良い度胸じゃないの。焼き鳥にして食っちゃうぞ」

 いまだ空を飛行中のベアトリーゼは、ニュース・クー達の空中休憩所にされていた。

 ウォーターセブンへ到着するまで、あと数時間。




Tips
 犬達。
 正体と詳細はおいおい。

 ベルジェール帽
 18世紀に流行った帽子。
 マリー・アントワネットの肖像画を描いた女性画家エリザベート・ルブランの絵が有名。貴族女性がドレスと一緒に被ってたつば広帽子、くらいの認識でよろしいかと。
 
 ロビン
 彼女はいったい何を見たのか。

 ルフィ達。
 原作だともう走れないメリーを巡る話になったが、本作では『まだ走れる』メリーと別れるか否かという選択にぶつかる。

 ベアトリーゼ。
 蛮族がやってくる。
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