彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、ターバンのガキの叔父さん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。



158:彼女の決断。彼の決断。

 麦わらの一味の男衆がウソップを見つけた。

 ウソップはズタボロの血達磨で、ゴミのように海岸へ打ち捨てられており、悔し涙を流しながら気を失っていた。

 

「……重傷だけど死にはしないよ」

 チョッパーはウソップの容態を診て、青筋を浮かべた。

「無茶しやがって」

 サンジは眉目を吊り上げながら煙草に火を点す。

「―――」

 ゾロは無言で黒布を海賊巻きにした。

 

「ウソップ。ちょっと待ってろよ」

 ルフィは両手の拳をボキボキと鳴らしながら、フランキー一家のアジト『フランキーハウス』を睨み、宣言する。

「あのフザけた家……吹き飛ばしてくるからよ……っ!」

 

 ブチギレた麦わらの一味がフランキー一家のアジトへお礼参りを始めた頃。

 

 ニコ・ロビンは仄暗い部屋に居た。

 裏町商店街ですれ違ったベルジェール帽の仮装女を追い、小道に駆け込んだ瞬間だった。宙に生じたドアのようなものを潜ったかと思えば、この見知らぬ部屋の中。

 

 暗い室内は完全に空っぽの1ルーム。カビの臭い空気に混じる潮の生臭さ。窓を封じる木戸の隙間から陽光が差し込んでこない。そして、部屋の外へ通じているだろう玄関口の前には、大柄な仮面の男。

 

 おそらく悪魔の実の力でこの部屋に移動させられた。いや。

 ――狩場へ誘い込まれた。

 

 ベアトリーゼと組んでいた頃に学んだセオリー通りなら、部屋の外に伏兵が控えているはず。仮に眼前の男を倒してこの部屋を脱したとしても、この建物が都市のどこなのか分からないし、この部屋は多分、海面下の機密区画にある。能力者のロビンは海中を泳ぐことができない。

 

 ――入念な仕込み。プロね。

 ロビンは肩に担いでいた鞄を床に棄て、仮面の男を油断なく見据える。

「随分と手の込んだ御招待だけれど、どちら様かしら」

 

 仮面の大男は答えた。

「CP9のエージェントです」

 

 ロビンの麗貌から感情が抜け落ちた。同時に明晰な頭脳が活発に稼働する。

 政府諜報機関サイファー・ポール。それもウェットワーク専門のCP9……ロングリングロングランドで遭遇した“青雉”が手を回したわね。 

 

 でも、なぜCP9なの? ビーゼと私が再会したことはアラバスタの件で海軍も把握していた。ビーゼを本気で捕らえる気なら、CP9ではなく海軍の精鋭戦力を投入するはず。だけど、街の様子や住人の会話から得た情報では、海軍はこの街に部隊を送り込んでいない。

 

 ……ビーゼが居ない状況を知ったうえで、私を狙い撃ちにしてきた。

 つまり、この場から自分を逃す気はない。

 

 ポーカーフェイスのまま、ロビンは戦闘抜きで脱出できる可能性はないと判断。いつでも能力を発動できるよう備えた。

「政府の殺し屋がわざわざ対面の場を設けた理由は?」

 

 ロビンは敵意と嫌悪を隠すことなく言葉にしたが、仮面の大男は気にすることなく応じた。

「“悪魔の子”ニコ・ロビン。貴女と交渉したい」

 

 無情動な物言いがロビンの不快感を強く刺激する。交渉? 交渉ですって? 20年も追い回しておいて……

「随分とムシのいい話ね」

 

 CP9の仮面男はロビンのイヤミを無視し、

「こちらの提案は二つ。一つは貴女の自首」

「寝言を言うには、まだ日が高いんじゃないかしら」

 にべもないロビンへ話を続け、

「もう一つは、我々の作戦に協力すること」

「場末の酔っ払いでも、もっとマシなことを言うわね」

 容赦のないロビンを相手に話を最後まで進めきる。

「この二つを飲むならば、貴女の親友と新たな仲間達を見逃しても良い」

 

 ロビンは呆れと侮蔑を込めた冷たい目つきを湛え、吐き捨てる。

「私がその提案を飲むと本気で思っているなら、頭か心の御医者様に掛かった方が良いわ」

 

 強烈な毒舌を浴びせられるも、大男は感情をびくとも揺らがせず、

「提案を断った場合。我々は麦わらの一味と貴女の親友に対し」

 告げた。

「バスターコールを発動する用意がある」

 それはロビンの故郷を、母を、恩師を、同胞達を焼き尽くした完全殲滅作戦。

 

 ああ……そういうこと。

 ロビンは確信し、碧眼を細めた。不快感が引き金となって、脳裏にロングリングロングランドの出来事が蘇る。

 

 ――お前達もそのうち分かる。厄介な女と関わったと後悔する日もそう遠くねェさ。なんせその女は親友が命懸けで逃がしてくれたってのに、ロクデナシと組んで国潰しをするような輩だ。

 

 青雉の挑発に我慢できず手を出してしまった。ルフィ達は即座に加勢してくれた。

 

 ――良い仲間に出会ったな。だが、お前が諦めない限り、あの時の血浴と同じようにこいつらも無事じゃ済まねェ。

 

『私は絶対に諦めない!』

 負け惜しみのように叫んだ直後、氷漬けにされた。

 麦わらの一味は必死に助けてくれた。治療後も何も聞かず、これまで通り……温かく接してくれた。

 

 彼らを失いたくない。私を仲間と受け入れてくれている彼らを、陽だまりのような彼らを、私のせいで危険に晒したくない。

 

 ビーゼの言葉がよぎる。

 ――守りたいと思うなら戦うべきだ。そして、彼らに助けを求めれば良い。彼らはきっと応えてくれる。迷うことなく世界を敵に回して、ロビンを助けてくれるよ。

 

 そう、ね。きっとそう。何も知らぬまま青雉に挑んだように、彼らは私に味方して一緒に戦ってくれるでしょうね。

 けれど、あの子達がビーゼのように、どんな目に遭っても私と一緒に居続けられる?

 

 ……無理よ。あの子達はビーゼとは“違う”。

 いずれ限界を迎える。その時、あの子達から疎まれ、忌避されたくない。

 

 ここであの子達と別れて、これからはビーゼと二人で動くべき。

 いえ、ただ別れるだけではダメね。

 

 青雉がサイファー・ポールへ情報を伝えたからこそ、あの子達まで脅迫材料に持ち出した。ただ姿を隠しても、あの子達を狙って誘い出しにかかるはず。

 ビーゼはいつ合流できるか分からない。

 なら、やるべきことは一つ。

 

 ここで私がサイファー・ポールに”教訓”を与える。あの子達に手を出したらどうなるか、身をもって学ばせる。

 

 それにしても―――

「……ふふっ」

 ロビンは艶やかな唇の隙間から冷たい微笑をこぼす。

 

「ふふふ」

 今まで一切感情を見せなかったカーニバルマスクの大男が怪訝を抱くも、ロビンは構わず上品に嗤い続けた。

 

 ビーゼが居なければ私を捕らえ、言うことを聞かせられると?

 

 ビーゼが傍に居なければ、私が怯えて言うことを聞くと?

 

 バスターコールをちらつかせば、私が恐れ慄いて、どうか親友と麦わらの一味を殺さないで、とひざまずいて慈悲を乞うと?

 

「ふふふ―――ふぅ」

 ロビンはひとしきり嗤い終え、艶めかしく息を吐いた……その直後。

 

「死になさい」

 

 絶対零度の殺意が花咲いた。大男の体躯に無数の手が生え、四肢と体幹へ蛇のように絡みつく。

「!! 鉄塊ッ!!」

 

「っ! 固い……っ!」

 大男は何かの技を駆使したようで、鉄の塊の如くビクともしなかった。全身の骨を完全にへし折り、首を180度捻じ曲げてやるつもりだったのだが。

 

 直後、窓の木戸が切り裂かれた。御包(おくる)みを左腕に抱えた小汚い包帯男が、木戸を蹴散らしながら飛び込み、

「ひ・ヒ・ひぃいャヤあっはあああっ!!!」

 右手に持った湾刀を走らせる。

 

「よせ、殺すなっ!」

 とっさに大男が警告を発し、包帯男の剣閃がわずかにブレた。

 

 ロビンは鈍った斬撃を掻い潜り、包帯男へ向かって即座にハナハナの実の力を発動。テコの原理を駆使し、刃を持った右下腕を雑巾でも絞るように捻り折った。

 

「いぎゃああっ!?」

 右腕を破壊され、包帯男は湾刀を落として埃塗れの床に倒れ込む。抱えた御包みを庇ったため、顔を強かに打ち付けて悶絶。

 

 素早く身を起こし、ロビンは開かれた窓へ向かって駆ける。

 仮面男はまだ拘束中で、包帯男は悶絶中。今なら――

 

「フゴォッオオオオオオオッ!」

 奇怪な雄叫びと共に壁がぶち破られた。瓦礫と粉塵が飛散する中、蛙面の肥満巨漢が襲い掛かってくる。

 

 ロビンは再び能力を発動。迫りくる醜悪な蛙面の巨漢の足を掴んで体勢を崩させ、倒れ込む先に包帯男の湾刀を拾いあげて構えれば。

 

 どすり。

 

 蛙男の首なのか顎肉なのか、ともかく湾刀が目いっぱい深く突き刺さった。

「フゴゴゴォオオオ―――ッ!?」

 奇怪な断末魔を挙げて絶命する蛙面のデブ巨漢。

 

 人なのか蛙の化物なのか分からない男を殺害し、ロビンは粉塵に紛れて窓から表へ飛び降りる。

 苔とカビに満ちた石畳の道路に降り立ち、素早く周囲を見回して。

 

 碧眼に映る光景は都市の姿を持つ地下迷宮そのもの。ロビンの記憶にヒット。ベアトリーゼがくれた二冊目のスケッチブック。ウォーターセブン滞在編。

 ウォーターセブンはその地下に広大な排水路や連絡通路が建設されており、また都市外縁区画は過去に水没した地域を基礎に街区を建設しているという。

 

 自分は今、出口はおろか現在地すら不明の迷宮内に居る――その事実にロビンは焦燥を抱くが、この場から逃れる以外選択肢がない。

 

 ロビンが全力で駆け出そうとした矢先、銃声が轟く。咄嗟にその場へ伏せて弾丸をかわす。弾丸の擦過音が鼓膜を叩く。煉瓦敷きの小路はぬるぬるとしており、腐った海水の臭いが鼻を衝いた。

 

「逃がしゃあしねェッ!!」

 通りの向かい側、カウボーイハットにトレンチコート姿の髭面漢。手には二丁拳銃。

 

 髭面ガンマンが路面に伏せているロビンへ両手の銃口を向ける、も、ロビンが能力を発動させる方が早かった。

 ガンマンの身体から生えた無数の腕がガンマンの両眼を塞ぎ、両手を捩じり上げる。

 

「うぉおおおっ?!」

 明後日の方向に発射される銃弾。ロビンはガンマンの両腕をへし折りながら強引に捩じりまげ、銃口をガンマンの腹に押しつけるや即座に引き金を引く。

 

「ぎゃあああああああっ?!」

 地下空間に反響する銃声とガンマンの悲鳴。

 崩れ落ちるガンマンと立ち上がるロビン。

 

 そして、通りの先から女が現れた。

 たおやかな身体を包み込む瀟洒な仮装衣装。顔を隠すようにつば広のベルジュール帽を目深に被っている。

 裏町商店街ですれ違い、ロビンが追いかけた女が。

 

 ロビンは両手を胸元で交差させ、能力の発動に備えながら、怒気を込めて吠えた。

「貴女……誰なのっ!」

 

 女は無言で薄く笑い、ロビンへ近づきながら、ベルジュール帽子を脱ぎ捨てた。

 露わになった顔。通りで見かけた時、追わずにいられなかった顔。

 

 その顔は――

 ニコ・オルビア。

 20年前、燃え盛る故郷で死んだ母の顔だった。

 

 偽物だと分かっていても、記憶にある母と瓜二つの相手に、ロビンは動揺を抑えきれず。

 その間隙が決定だった。

 

 女の右腕が動いたと認識した時には、強烈な衝撃がロビンの側頭部を襲っていた。悲鳴を上げる間すらなかった。

 

 こめかみに受けた一撃に三半規管が機能不全に陥り、ロビンはその場に崩れ落ちる。

 苦痛を知覚できないほど意識が薄れている。歪みたわむ視界。頭の芯まで響き続ける耳鳴り。平衡感覚が失われて身を起こすことすらできない。

 

 母の顔を持つ女はロビンを打ちつけた縄鏢を弄びながら近づき、朦朧としているロビンの顔を覗き込み、嗜虐的な嘲笑をこぼす。

「うふふふ。その苦痛と苦悶に歪んだ顔、良いですわぁ~」

 

 母とはまるで違う下卑た言葉遣い。女はくつくつと笑いながら、べりべりっと母の顔を引き剥がした。

 変装を解いた女の顔は見知らぬ赤の他人のもの。

 

 やっぱり……

 ビーゼ……皆……ごめんなさい……

 

 

 

「あら。意識が落ちてしまいましたわ。もっと苦しめたかったのに、残念」

 オルビアの覆面を剥がし、イーライはつまらなそうに舌打ちした。気絶したロビンを見下ろす。

「それにしても……血浴に比べれば易い、ね。見積りが甘すぎて笑えませんわ」

 

「探し物に5年も掛けてる能無し共だからな……ああぁ……クソイテェ。早く手当てしてくれ」

 髭面ガンマンのジャッコが、折られた両手で弾丸をぶち込まれて血塗れの腹を押さえながら言った。

 

「それ、肝臓をやられてるじゃありませんの。助かりませんわ。御気の毒」

 イーライはしれっと応じ、

「ふざけんなクソババアッ! 早くし」

 再び縄鏢を振るい、喚くジャッコの頭蓋を叩き割って始末する。

 

「何をしている……っ!」

 窓から降りてきたカーニバルマスクの大男――ブルーノがマスクを脱ぎ、ジャッコの死体を一瞥して眉間に深い皺を刻む。

「……仲間だぞ」

 

「どうせもう助かりませんわ。一応は仲間だから介錯してあげましたの。それとも、トドメは貴方が刺したかったかしら?」

 イーライは血に濡れた鏢を舐めてせせら笑う。

 

 ブルーノが不快感を強めながらも感情を律していると、建物から右腕を負傷した包帯男と、両目を眼帯で覆い隠した筋肉モリモリの黒人男性が杖を突きながら現れる。

 

 もっとも、黒人男性のキャッチャーミットみたいな大きな手にあるそれは、盲人杖と呼ぶにはあまりにも物騒な形状をしている。撲殺打撃武器の星頭戦棍(フランジヘッド・メイス)だ。

 

「ハザルドは死んだ。ザポロは右腕が螺旋骨折している」

 盲目の黒人男性の報告に、イーライが鼻息をつく。

「ニコ・ロビン“程度”で死亡2の負傷1とは。先が思いやられますわね」

 

「モース。海楼石の錠で拘束しろ」

 ブルーノの指示に従い、盲目の黒人男性――モースはロビンの両手を背中に回して海楼石製の錠をかけた。

 

「で? 次は? この女を利用するプランは完全に破綻したみたいですけれど?」

「計画を修正するしかあるまい」

 イーライの問いに仏頂面を返し、ブルーノは問い返す。

「夜までにニコ・ロビンへ化けることは可能か?」

 

「生皮を剥がして良いなら、今すぐにでも」

 軽口を叩くもブルーノに強く睨みつけられ、イーライはおどけるように肩を小さく竦めた。

「少し時間をいただければ、何とかしますわ」

 

「――よし。撤収する」

「し・シ・し死体は片付けないのかい、旦那ぁ?」

 包帯男ザポルスカが問えば、ブルーノに代わってモースが首を横に振った。

「放っておけ。じきにアクア・ラグナだ。死体は海まで流される」

 

 犬は墓穴にも入れない。

 

      ○

 

 ウォーターセブン裏町。北東海岸に“解体屋”フランキーハウスが“あった”。

 今はもう無い。

 

 金を奪われたことと、ウソップに重傷を負わせたことの返礼に、麦わらの一味が建物を完全に破壊し、フランキー一家の連中を一人残らず半殺しにしたからだ。

 

「追うか? そのフランキーってヤツ」

 仕事後の一服を始めながら、サンジが言った。

「……行き先が分からねェんじゃ追いようがねェだろ……」

 ゾロはチョッパーがウソップを手当てする様を見ながら溜息をこぼす。

 

 ゆっくりと紫煙を吐き、サンジは昏倒するフランキーの手下達を見回してぼやいた。

「これだけボコっても行き先を吐かなかったところを見るに、マジで行方を知らねェようだな……そのフランキーってのを探し出すにしても、買い物された後じゃ意味がねェ」

 

「どうする、ルフィ? ここでそのヤローを待っても当分帰っちゃ来ねェぞ」

 ゾロが残骸の天辺に立って海を眺めるルフィへ声を掛けるも、ルフィは答えない。ただ黙って海を見つめている。

 

 ルフィの妙な様子に、サンジとゾロは互いに顔を見合わせた。ところへ、手当てを終えた小さな船医が両翼へ声を掛ける。

「おーい、応急措置が終わったぞ。担架で運ぶから手伝ってくれよ!」

 

「……ここで話してても仕方ねェ。とりあえず船に戻ろうぜ。ナミさん一人残してるし、ロビンちゃんのことも……船自体のことも話し合わねェとよ」

「だな」ゾロはサンジの提案に同意し、佇むルフィへ再び声をかける。「おい、ルフィ!」

 

「俺、決めたよ……」

 ルフィは海を見つめながら訝る両翼へ、言った。

「ゴーイングメリー号とは、ここで別れよう」

 

       ○

 

 船室へ運ばれたウソップに、チョッパーが本格的な手当てを始める。

 切り傷と擦り傷、打撲に打ち身。骨折こそないけれど、顔も体も腫れが酷い。熱も出てる。独りで“敵”のアジトに乗り込んでこんな目に遭わされて……

 チョッパーは目元を擦り、まだ意識が戻らないウソップへ声をかける。

「ちゃんと治してやるからな」

 

 ウソップが治療されている間、ナミは甲板で野郎共から説明を聞き、頭を抱えた。

「2億ベリーを持ち逃げされた……? ウソでしょ……」

 

「すまねェ、ナミさん。追おうにも手下共すら行き先を知らねェ始末で」

 サンジがバツの悪そうに詫び、ゾロも自戒的な渋面を隠さない。

「……1億で何とかならねェのか?」

 

「カタログを見た限りだと、中古船なら買えるわ。それでも、メリーより大きくて高性能よ。だけど……」

 ナミはゾロに答えつつ、船首の羊頭に胡坐しているルフィの背へ声をかけた。

「ルフィ……本当に良いの?」

 

 いつもの勝気さや気丈さが感じられず、不安がありありと滲む声。両翼がますます表情を苦いものに変える。ルフィも背を向けたまま振り返らない。

 

 ナミはウソップが休む船室がある船楼を窺う。

 思い出すのは、大事な金を盗られ、自分が情けない、皆に合わせる顔がない、と慟哭するウソップ。ただでさえボロボロにされていたのに、それでもお金を取り戻そうと、一人で相手のアジトへ乗り込んだ。

 

「……ウソップは納得しないと思う」

 ナミのこぼした言葉に、サンジが無言で煙草を吹かし、ゾロが瞑目する。

 

「……俺だって同じだ。メリーはまだ走れるんだ。なのに、もう進めねェなんて言われても、納得できねェ」

 ルフィがどこか悔しそうに言った。皆の目がルフィの背に注がれる。

「でもよ。俺達はメリーで旅するために海へ出たんじゃねェだろ。夢を叶えてェから、やりてェことがあるから、海に出たんだ。だったら……メリーと別れてでも、先に進まなきゃならねェ」

 

 自分に言い聞かせるように言葉を紡ぎながら、

「それによ……これ以上無理をさせて、メリーが沈んじまうより良い」

 ルフィは船首の羊頭を愛おしそうに優しく撫でる。

「だから、ここで船を乗り換える。そう決めたんだ」

 

 その背中が酷く寂しそうで、ナミもゾロもサンジも言葉を掛けられなかった。

 




Tips
猟犬達
 オリキャラ。元ネタは全員、銃夢シリーズから。
1:変装女。
 イーライ。元ネタは銃夢。ノヴァ教授の愛人兼助手。サディスト。
 原作ではウォーターカッターを武器にしていたけど、本作では暗器。

2:蛙面の大男。
 ハザルド。元ネタは銃夢。ノヴァ教授の下男。
 原作でも本作でもあっさりやられた。

3:包帯男。
 ザポルスカ。元ネタは銃夢:LO。腫瘍に頭をやられたV型変異体質者。
 原作ではあっさり死ぬ。
 手に抱えている御包みについては追々。

4:ガンマン。
 ジャッコ。元ネタは銃夢:LO。拳銃遣いのV型変異体質者。
 原作ではヴィルマにぶっ殺された。
 本作ではロビンに致命傷を負わされ、イーライにトドメを刺された。

5:盲目の黒人男性。
 モース。元ネタは銃夢:LO。盲目のV型変異体質者。
 原作ではあっさり死ぬ。本作では……

ブルーノ。
 原作キャラ。CVは声優業から舞台俳優までこなす名優、佐々木誠二。
 ニコ・ロビンに交渉(実質は脅迫)を持ちかけたら、殺されかけた。

ニコ・ロビン。
 原作主要キャラ。オリ主との交流のせいか、原作より意志力が強い。
 本作のロビンは諦めたりしない。

麦わらの一味。
 フランキー一家とのトラブルは原作通り。
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