彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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174:ゴーゴー! ロケットマン!

 ココロ婆さんが麦わらの一味の四人を連れて向かった先は、ゴミ処理場裏の古い煉瓦倉庫。

 誰も足を運ばなくなって久しいその倉庫に、試作海列車ロケットマンは眠っていた。

 

 円筒型ボイラーにシャークヘッドを装着したこいつは、速度制御ができない失敗作だ。

 寸詰まりでコンパクトな印象のこの蒸気機関車は12年以上手つかずのため、あちこち埃の堆積が目立つけれど、防錆塗料のおかげか湿気などによる腐食は見られない。

 

 一行が倉庫に到着した時、どういうわけか既に給炭車と貨物車が連結され、ロケットマンは暖機運転中だった。

 アイスバーグが怪我を押して整備と準備をしていたらしい。流石である。

 

 ともかく、久し振りに走り出したロケットマンは、麦わらの一味の四人とオマケを乗せ、ついでにフランキーを取り戻したいフランキーの舎弟達の二頭立てキングブル“ソドム&ゴモラ”を曳航し、嵐の海を爆走していく。

 

 もちろん、トラブル属性値がバチクソ高い麦わらの一味を乗せている以上、道中無事で済むはずもない。

 

 ルフィとゾロがアクア・ラグナの超巨大津波をぶち抜いたり。

 ナミが人目も気にせず着替えて、パウリーが憤慨したり野郎共が喜んだり。

 ベアトリーゼに破壊されたパッフィングトムの客車の残骸や、命を落とした黒服達などが荒れる水面に揺られていたり。

 ロケットマンを運転するココロ婆さんと勝手に乗り込んだチムニーとゴンベが海賊に攫われた、と誤解した巨大ガエルのヨコヅナが襲ってきたり(そして勝手に乗り込んできた)。

 ヨコヅナの襲撃で線路から脱線して迷走したり。

 そして―――

 

 エニエスロビー討ち入り御一行様は、線路上に止まっていた台車に居たフランキーと“謎”の長鼻緑マスクが合流した。

「兄貴ィイイイイッ!!」「フランキーの兄貴ぃいいっ!」「無事でよかったわいなぁ!」「よかったわいなぁ!!」「フランキーだ!!」「にゃっにゃっ!」「ゲロロロロッ!」「バカはしぶといら。んががが!」

 敬愛する兄貴分の無事の帰還にフランキー一家の面々が安堵の感涙。チムニーとゴンベがはしゃぎ、ヨコヅナとココロ婆さんも喜ぶ。

 

 そんな温かい声のシャワーに、

「アーウッ!! うるせェ―――ッ! なぁにも良くねェんだよぉ――――っ!!」

 フランキーは感動の涙を流しながらブチギレるという器用な真似を披露した。

 

 えぇ~っ!? と戸惑う面々へ、フランキーは激情をぶちまける。

「俺を逃がすために、ニコ・ロビンは取っ捕まったままになっちまったし、眉毛のあんちゃんも奴らに捕まっちまったっ!!」

 

 ドデカい拳を豪快に打ち鳴らし、

「こんなデケェ借りを作ったままじゃあ、俺の面目が立たねェっ! いいか、テメェらっ! このまま麦わらに付き合って、エニエスロビーにカチ込むぞッ!! 不満がある奴ぁいるかぁっ!!」

 フランキーは舎弟達を見回して覚悟を問う。

 

「元々乗り込む気だったんです、不満なんかありませんっ!」「俺らやったりますよアニキィッ!!」「ケジメとったりましょうっ!!」「カチコミだわいなぁっ!」「ぶっ飛ばしてやるわいなっ!!」

「アーゥッ!! オメェらはまったく……最高だぜッ!!」

 うぉおおお! と盛り上がるフランキー一家。ノリと勢いでテロリストになる気かな?

 

 一方。

「「そ、そげきの島のスーパーヒーロー、スナイパーマンッ!?」」

“謎の”長鼻緑マスクの緑黒全身スーツ男を前に、ルフィとチョッパーは驚愕と感動に包まれていた。

 

「ス、スゲェ……っ! 俺、ヒーロー見るのも初めてなのに、スーパーヒーローかよっ!?」

「スーパーヒーロー……かっこいい―――――――っ!」

 ルフィとチョッパーから称賛されまくり、まんざらでもないスナイパーマン。

 

 そんなスナイパーマンを見た他の皆さんの反応を御紹介しよう。

 ゾロは思う。ウソップじゃねぇか。

 ナミは思う。ウソップ、無事でよかった。

 

 フランキー一家の野郎共は気づく。俺達のアジトに乗り込んできた長っ鼻だ。

 スクエア姉妹も気づく。兄貴と一緒に捕まった長っ鼻だわいな。

 

 パウリーも気づく。麦わらと一緒にウチへ来た長鼻のあんちゃんだな。

 チムニーちゃんも気づく。シフト駅で会った兄ちゃんだ。

 

 それでも、誰も思ったこと気づいたことを口に出さない。優しい世界。

 

「……ウソップはどこ行ったんだ?」

 ルフィが不安そうに尋ねると、

「彼は無事だ。まったく心配御無用。とにかく今はロビン君とサンジ君の救出に全力を注げ、と彼は言い去った。私もそうすべきだと思う!」

 スナイパーマンは後楽園遊園地でチビッ子と握手する特撮ヒーローみたいな口調で励ました。

 

「うん……っ! そうだな……っ!」

 励ましを素直に受け入れ、ニカッと笑顔になるルフィ。

「なぁ! なぁ! そげきの島ってどこにあるんだ!?」

 目をキラキラさせながら尋ねるチョッパー。ルフィも興味津々。

 

 麦わらの一味船長と船医から純粋無垢な視線を浴び、スナイパーマンは物凄く物凄く恰好を付けて、答えた。

「それは……君達の心のなかさ……」

 

「「おおおおおお……っ!」」

 感動する一人と一匹。

 

 その様子を見ていたフランキーはゾロに問う。

「……あいつら、ひょっとしてマジで気づいてねェのか」

「……まぁ、そうだな」

 ゾロは目を泳がせた。

 

      ○

 

「ロケットマンまで引っ張り出してきやがって……無茶すんな、ババア。歳を考えろ歳を。それに、こんなあぶねェことに孫を連れてくんじゃねェよ」

 フランキーの言い草は憎まれ口以外の何物でもないが、ココロ婆さんに接する態度は老いた母を気遣う、素直になれない息子にしか見えない。

 

「勝手に乗り込んじまってらんら。アタシらっておっらまげらよ」

 んがががと愉快そうに笑うココロ婆さんに、フランキーはますますしかめ面を濃くする。

「笑い事っちゃねェよ……バカバーグも止めりゃあ良いのに」

 

「アイスバーグはオメェと違って賢いら。アタシを止められねェって分かってらのさ」

 ココロ婆さんは酒瓶を傾け、どこか遠くを見る目で言葉を編む。

「トムさんにアイスバーグにオメェ……ここまでやられて黙ってられるほど、アタシは物分かりの良い女じゃあねェら」

 

 その横顔はトムズワーカーで秘書を務め、造船作業に没頭するフランキーとアイスバーグを『手間のかかる坊や達』と楽しそうに世話していた頃のようで。

 

「……まったく。まったくよぉ」

 まるで家族を守ろうとする母親のような物言いに、フランキーはココロ婆さんから顔を背け、その場から離れていく。胸中に生じた感情を堪えきれず、顔を見られたくなかった。

 フランキーの背中をんがががと笑うココロ婆さん。その笑顔はどこか優しい。

 

 

 で。

 

 

「麦わら。話がある」

 フランキーはルフィの前で腰を下ろし、胡坐を掻いて真っ直ぐルフィの目を見据え、言った。

「テメェとはいろいろあったが……テメェの仲間の眉毛と長っ鼻、それとニコ・ロビンとキョーボーな姉ちゃんにゃあ世話ンなった。俺の事情にテメェの仲間を巻き込んじまったことを詫びる」

 

 ルフィはウソップの件をまだ根に持ってるけれど、こうも真摯に詫びを入れられては無下にも出来ない。それに、ロビンとサンジを助けるために一緒に戦ってくれるというなら。

「……分かったっ!! 詫びを受け取る!」

 

 その様子を見ていた一味の面々はどこかホッとして。

「俺があの素敵眉毛を助けたら、しばらくマウント取れるな」と意地悪く微笑むゾロ。

「やめてよ。いつもの喧嘩が余計に騒々しくなるじゃない」と嫌そうに眉をひそめるナミ。

「仲間に意地悪はよくないぞ、ゾロ!」小さな手をブンブン振って抗議するチョッパー。

「そうだぞ、ロロノア・ゾロ君っ! 皆仲良くだ! スナイパーマンと約束だぞ!!」

 謎の目線で訴えてくるウソ……スナイパーマン。

 

 シリアスを明後日の方向へ放り投げる麦わら一味に、フランキーは思わず苦笑いをこぼすも、小さく頭を振り、オトナらしくシリアスを維持する。

「……俺のことだけじゃねえ。バカバーグの野郎のこともだ。殺されそうだったところを、オメェらに助けられたと聞いた」

 

「アイスのおっさん?」

 きょとんと眼を瞬かせる麦わら小僧へ、ビキニパンツのサイボーグ男は言った。

「俺と野郎は偉大な船大工の兄弟弟子なんだ」

 

「そうなのか!」小さく驚き、ルフィは白い歯を見せる「俺達、アイスのおっさんには世話になりっぱなしなんだ!」

「……バカバーグは昔っから面倒見がいいからな」

 5年前の再会時にアイスバーグが見せた涙を、フランキーは決して忘れていない。忘れられない。

 

「ニコ・ロビンと眉毛のことだけじゃねェ。キョーボー姉ちゃんが一人でパッフィングトムを追っかけてる。急がねェと」

 政府の島へ一人で乗り込むなんて自殺行為でしかない。急ぎ合流しなければ、とフランキーが危惧するも、ルフィはさらっと答えた。

「あぁ。リーゼならだいじょーぶだ。あいつ、すっげー強ェからよ」

 

「いやまあ、確かにバケモン染みた女だったが……なんなんだ、あいつ。スーパーヤベェ女だったぞ」

 倉庫での戦い振りに加え、海列車で見たあの暴れっぷり。あの女は、ヤバい。フランキーが知る人間の中でも断トツにヤバい。

 

 横からナミが言った。

「血浴のベアトリーゼ。懸賞金4億のお尋ね者よ」

 

「4億ゥッ!? オメェの首に懸かった額より全然デケェじゃねェかっ!?」

 フランキーは目を剥いて驚き、まじまじとルフィの顔を凝視した。

「よくまぁ下につかせられたもんだ……麦わら、オメェ人の好い面して恐ろしい男だな……」

 

「? なんかゴカイされてねェか?」

「外から見たらそういう反応になるってことよ」

 首を傾げるルフィへ、ナミが小さく肩を竦めた。

 

       ○

 

 エニエスロビー島サイファーポール:ナンバー9指令本部を兼ねた『司法の塔』。

 その指令長官執務室にて、

 

「は?」

 

 サイファーポール:ナンバー9指令長官兼エニエスロビー島最高責任者であるスパンダムは、電伝虫経由の報告を聞いて目を点にした。

 長年政府が追い続けてきたニコ・ロビンを捕縛し、古代兵器の設計図の情報を持つカティ・フラム――8年前にスパンダムの顔面をひん曲げたクソ野郎――を確保し、海列車で帰還するという報告を受けたのが数時間前。

 

 それが今しがた届いた報告では、護送に参加した現場要員数十名全員が全滅。作戦に動員された“ジョージ”の猟犬は全員が死亡ないし行方不明。海列車も客車6輌を喪失。さらにはCP9要員のブルーノが集中治療室行きの重傷。カクとカリファ、サイファーポール最強の男ロブ・ルッチすら深い手傷を負っているという。

 挙句はカティ・フラムに逃げられたとも。

 

「ふざけんなっ! いったい何が起きたらそうなるんだっ!!」

 スパンダムが執務机の上を乱暴に薙ぎ払い、カップからこぼれた熱々の珈琲を手に被り、おまけに万年筆が薙いだ手をぐさっと突く。

「ぎゃああああっ! アッツゥイッ!? イッタァイッ!?」

 

 痴態を晒すバカアホマヌケでドジな上司を無視し、CP9要員のジャブラとクマドリとフクロウはそれぞれ顔を見合わせた。

 

「よよいっ!! なんとまぁ痛ましいことよぉおおおお!!」

 歌舞伎役者染みた化粧と長髪が特徴的な巨漢クマドリが喧しく喚く。

 

「CP9史上に残る失敗例になりそうだな――チャパパ」

 どういう訳か口がファスナーになっているCP9一の巨漢フクロウが自虐的に笑う。

 

「バカヤロー。5年掛かりの作戦がパーだぞ。笑えねェよ」

 向こう傷の走る強面に拳法道着染みた着衣を崩して着こむジャブラが、長い口ひげを弄りながら呻く。

 

「役立たず共がっ!!」

 スパンダムは床に散乱した書類や文具や割れたカップを踏みつけて地団太を踏み、8年前にカティ・フラムによってひん曲げられた顔面の矯正具をがりがりと掻き回す。

「木っ端の損害なんざどうでも良いが、この強硬作戦には上層部のジジイ共の意向や“ジョージ”の老いぼれの兵隊が投入されてンだぞっ!! 失敗しましたじゃ済まされねーんだっ!!」

 

「そー言っても、もう失敗しちまったんだから仕方ねェよ、長官」

 他人事のように宣うジャブラ。

「ルッチ達は精一杯やったんだぁ~責めねぇでやってくれェ、よよいっ! ここはぁっあ~~おいらが代わりに責を負って、腹を召させてェいただきまさぁあ~~っ!」

 腹を召すと言いながらきっちり六式体術:鉄塊を駆使してごまかすクマドリ。

「あぁ~~残念無念っ! 死ねぬぅ~~よよいっ!」

「出た、お約束芸ッ! チャパパ~」と暢気に笑うフクロウ。

 

 事態の深刻さをまったく感じさせない三人に、スパンダムはブチ切れた。

「うるせぇぞ、バカ共めッ! 俺ァこれから能無し共のせいで、善後策を考えなきゃならねェんだっ!! 考えの邪魔だ! 今すぐ失せろっ!」

 

 秘密諜報員としては存在感があり過ぎる容貌の三人は肩を竦め、指令長官執務室を出ていく。

 瞬間、三人の顔が引き締まった。

 

『設計図』専従となり、ウォーターセブンへ潜入しっぱなしだったルッチ達と異なり、ジャブラ達三人はこの5年、チェスの駒の如くあちこちへ送り込まれ、狙った駒を盤上から消してきた。ルッチ達の分まで。

 

 世界政府に叛く革命軍。世界政府に批判的な活動家。世界政府に隠れてこそこそと悪さする加盟国の要人。世界政府に害を及ぼす裏社会の危険人物。

 そうした手合いを暗殺する任務の過程で、三人は幾度か“血浴”の逸話を耳にしてきた。

 

 ゆえに、ニコ・ロビンと血浴に手を出す此度の強硬作戦が如何にリスキーなものか、三人はスパンダムよりルッチ達より、政府よりもずっと精確に理解しており、頭の片隅にこの事態を想像してもいた。

 

「“血浴”のげに恐ろしきことよぉ~~」深々と溜息を吐くクマドリ。

「……来ると思うか?」2人へ問うジャブラ。

 

「思う? 認識が甘い――チャパパパ」

 フクロウはシニカルに笑う。

「これまでに入手した情報通りなら、血浴がニコ・ロビンを見捨てることは、絶対にない――チャパパパ。血浴は必ず来る。ニコ・ロビンが正義の門の向こうへ送られる前に」

 

「つまりぃ~」相槌を打つクマドリ。

「ああ。長官は善後策なんてほざいてたが、そんなもん考えるだけ無駄だ」

 ジャブラは鼻を鳴らし、

「控え室にいる“ジョージ”の犬達に伝えとけ」

 フクロウへ言った。

「迎撃の支度をしろってな」

 

       ○

 

 エニエスロビー正門前の海列車駅/操車場に控えていた海軍駐留部隊と諜報機関要員達は、パッフィングトムの姿に言葉を失った。

 7輌引いているはずの客車が一つしかなく、その一つも横っ腹と車体後部に大きな破孔が啓いている。おまけに、客車から降り立ったサイファー・ポールの最精鋭達は、全員がズタボロだった。

 

 唖然愕然慄然としている周囲に向け、重傷のブルーノを背負ったカクが、ボロボロの外見とは裏腹によく通る声を張った。

「医者と担架じゃっ! 急げっ!!」

 

 一喝を浴び、我に返った海兵と黒服達は慌てて動き出す。正門防衛部隊から軍医と衛生兵が駆け寄ってきて、ブルーノを担架に乗せる。

 

「司法の塔へ運べ。そこで治療しろ。行け。今すぐに」

 左肩に血の滲む止血帯を巻いたルッチが冷徹に命じるや、衛生兵達は逃げるようにブルーノを乗せた担架を持って駆けていく。ブルーノは絶対安静なのだが、担架の上で荒々しく揺さぶられている。気の毒に。

「脅かし過ぎよ。あれじゃブルーノが可哀想だわ」傷だらけで痛ましいカリファが嘆息をこぼす。

 

「ここが政府の島か。で、あれが正義の門、と」

 客車から手荒に引っ張り出されたサンジは島の背後にそびえる、途方もなく巨大な――それこそ雄大な巨峰の如き超巨大門扉を窺い、鼻息をつく。

「なんとまぁ……馬鹿馬鹿しいもんを作ったもんだ」

 

「無駄口を叩くなっ!」

 海兵に銃口で小突かれて舌打ちしつつ、サンジは車椅子に乗せられて連行されるロビンに付き添って歩き始める。

 

 正門を潜り、裁判所前門へ通じる坂から臨む巨大滝――本島を囲む奈落の穴にしか見えない――を目の当たりにし、サンジは感嘆をこぼす。

「こりゃあ絶景だな……底が見えやしねェ。なぁ、純粋な好奇心から聞くんだが……このバカでかい穴に落ちた海水はどうなってんだ?」

 

「分からん。誰も調査しとらんからな。いや、正確には調査しにいった連中が帰ってこなかったから、分からん」

 カクが答えると、サンジは小さく肩を竦めた。

「そんな得体のしれない大穴に張り出した島へ重要公的機関を置くとか……何かの拍子で落っこちたりとか、想像しねェのかね」

「お前には関係のないことだ、海賊」ルッチが鬱陶しそうに睨む。「黙って歩け」

 

 車椅子に乗せられたロビンは本島内の様子に眉をひそめる。

「意外と都市化されているのね……」

 

 ロビンが指摘した通り、エニエスロビー本島内は城塞染みた裁判所を中心にしているとはいえ、市街地を思わせる街並みをしていた。

 ほとんどは司法関係の庁舎。他は駐留している海軍と裁判所警備部隊の施設。宿舎と兵営。酒保と社交場なども備えられている。

 

 物資の自給体制こそないものの、平時から有事まで必要なものは全て整えてあるようだ。海軍本部と重警備監獄と連携している関係上、拠点としての役割もあるのだろう。

 

「ひょっとして、職員や兵士達の家族も暮らしているのかしら」

「……なぜそんなことを気にするの?」

 カリファが問えば、ロビンは冷淡な微笑を浮かべる。

「巻き添えになったら気の毒だと思って」

 

 奥ゆかしきニコ・ロビンは、“何”による巻き添えか告げなかった。

 

      ○

 

 ベアトリーゼは線路上を跳び駆けていく。

 全身にまとった熱プラズマが足元の海水や時折やってくる波浪を蒸発させ、空洞化現象を起こして接触を妨げる。

 純白の蒸気とプラズマ光をまとい、水面を爆ぜさせて跳びかけていく下着姿の女妖。

 

 海上線路が伸びる水平線の先、夜に“穴が開いて”いた。

 エニエスロビー島は昼島……夜の来ない不夜島だ。よって、エニエスロビー島周辺だけ夜をくり抜いたように煌々と陽光に照らされている。

 もはや如何なる物理法則の許に成立しているのか、理解が及ばない。

 

 まぁ、どうでも良いことだ。

 この世界で初めて出来た友達を、大事な、自分より大切な親友を取り戻す以外のことは、どうでも良い。一片たりとも思考を割く価値などない。

 

 ベアトリーゼは一直線に海上線路を跳び駆けていく。

 夜闇を穿つ日の下へ向かって。

 




Tips

ココロ
 原作キャラ。70歳。
 CVは真山亜子。中高年女性から少年/少女役までこなす実力派のベテラン。
 ワンピースではニョン婆とミス・ダブルフィンガーを兼役している。

 連載当時、読者の度肝を抜いた秘密を持つ。
 ココロさんの立場からしたら、政府の言い掛かりで尊敬するトムを殺され、我が子のように可愛がっていたアイスバーグを殺されかけ、死んだと思っていたところで生きて帰ってきたフランキーを再び連れ去られた。
 怒らないはずがない、という解釈。

フランキー
 原作主役キャラ。34歳。
 CVはレジェンド矢尾一樹。
 ジャンゴとボンクレーも兼役。なお少年時代の演者はたしぎ役の野田順子。

 キャラ再現が半端なく難しくて。辛い。

スパンダム
 原作キャラ。39歳。
 CVは声優界の暴れん坊小野坂昌也。
 ワンピースではチュウとシャムも兼役。

 バカアホマヌケのドジという四重苦男。ただ、フランキーに顔面をひん曲げられるまではもうちょっとまともな人間だった模様。
 大きな怪我がきっかけとなって、人柄が変わることは珍しくないけれど、あの下衆さは擁護できない。

ジャブラ
 原作キャラ。作中時間35歳。一回り年下のカクと喧嘩しがちなゾオン系狼人間。
 CV高塚正也。実力派のバイプレーヤー。
 ワンピースでは多くの兼役を務めている。貴方は全部わかるかな?

クマドリ
 原作キャラ。作中時間で34歳。
 歌舞伎野郎。何を思ってこいつを秘密諜報員に採用したのか謎。母親が殺し屋らしい。
 CV吉田裕秋。Wikiによると2014年頃からあまり声優活動をしてないっぽい。

フクロウ
 原作キャラ。なんと作中時間で29歳。
 風船野郎。図体が目立つし、口が軽いという諜報員に不向きすぎる男。
 キャラ再現がまったくできない。どうすればいいんだ。
 CV超実力派の渡辺久美子。他作品では主役を演じることも多い。

エニエスロビーの大滝
 本当にどうなってんだよ。
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