彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、誤字報告ありがとうございます。


183:エニエスロビー海戦。

 不意に『酔いどれ水夫』の口笛が途絶えた。

 

 直後。

 霧の中から暴力的な青い雷光と雷鳴が生じ、光が水面を駆け、先頭艦を直撃する。

 

 艦隊旗艦の甲板から、ドーベルマン中将は目撃した。

 小山のような大型戦艦の鉄製外板が、艦首から艦尾に向かって西瓜のように割れ裂け、破砕していく様を。

 

 艦体を貫いた激甚な衝撃が艦内の可燃物――弾薬や燃料を殉爆させ、艦内に巨大な熱圧力が発生。強力な熱圧力が損傷した艦体を海兵諸共に内側から吹き飛ばす。

 

 大型戦艦が内側から生じた爆発によって水風船のように弾けた。水面に生じる巨大な火球。激烈な衝撃波と爆発音圧が海面をひしゃげさせ、爆風が周辺の海霧を一掃した。天に向かって勢いよく昇る爆炎とキノコ状の爆煙。ビックリ箱のように宙を飛ぶ艦首と両舷の三連砲塔。衝撃波と爆風に巨体を強く揺さぶられる戦艦群。

 

 一瞬で大型戦艦が爆発轟沈し、一千名の海兵が死傷した様に、他艦の海兵達は吃驚すら挙げられない。歴戦の将官達や戦い慣れた覇気使いや六式使い達すら、凍りつく。

 

 時間が静止する。

 少なくとも、大型戦艦が一瞬で爆沈する様を見た者達は、時間認識が止まっていた。いや、世界を認識できなくなっていた。圧倒的光景に脳が現実を認知認識せず、受け入れられない。

 

 水面で戦艦だった残骸が燃え盛り、黒煙が立ち昇り無数の火の粉が舞い踊る地獄絵図。もっとも早く立ち直ったのは、爆沈した先頭艦に続く2番艦に乗艦していた海軍本部中将、鉄兜を被るオニグモだった。

 

 オニグモ中将は天高く巻き上げられた無数の艦体片や海兵だった血肉が、ざあざあと雨のように降り注ぐ中、くわえ煙草を吐き捨てて獣の如く咆哮を上げた。

 

「総員、戦闘用意っ!!!!」

 闘将の怒号が艦隊に響き渡り、各艦の指揮官や将校が続いて部下達を鼓舞するべく吠える。指揮官や上官の叱咤激励に我に返り、海兵達は勇気を取り戻す。それぞれの得物に手を伸ばし、軍刀を抜き、銃の安全装置を外し、六式や覇気の使用に備える。

 

 その時、ためらいの橋の第一支柱塔が砕け飛ぶ。予期せぬ方角から届く轟音に艦隊の意識が逸れた瞬間。

 艦隊前衛の頭上から再び歌が降る。『酔いどれ水夫』の歌が。

 艦隊の将兵が即座に顔を上げた。

 

 娼婦さながらに露出が激しいミニチャイナドレスをまとう小麦肌美女が、夜色のショートヘアを風に踊らせつつ、頭から真っ逆さまに艦隊前衛へ向かって落ちてくる。

 

 紅を挿した唇を酷薄に歪め、目尻に朱を挿した満月色の双眸を吊り上げ、アンニュイな細面に獰猛な微笑を湛え。女妖が昼島の蒼穹から艦隊前衛へ向かって隕石のように襲い掛かってくる。

 

 海軍が誇る大型戦艦を、一撃で屠るモノノケがやってくる。

 

「迎え撃てぇいっ!!」

 誰が叫んだのか分からない。艦隊の司令官たるドーベルマン中将だったかもしれないし、今や艦隊最先頭になった2番艦に立つオニグモだったかもしれないし、他の中将だったかもしれない。

 

 いずれにせよ、バスターコール艦隊残存9隻の大型戦艦と9千名の海兵は、空から隕石のように襲い掛かってくるモノノケへ向かって、物量的武力を発揮した。

 

 上甲板やマスト楼の銃兵が斉射を行い、濃密な対空弾幕を広げる。各艦の三連砲塔が能う限りの迎角を取り、艦隊の頭上に砲弾を打ち上げ、爆炎と弾殻片の網を築く。六式の技を修めた者達や能力者が“血浴”の対空射撃網突破に備え、いつでも邀撃へ飛び出せる構えを取った。

 

 ベアトリーゼは両腕のダマスカスブレードを翼代わりにし、プラズマジェットでさらに加速しながら、鉄と炸薬による炎の暴風雨へ飛び込む。異能が操る分厚い電磁気の膜で銃弾の嵐を捻じ曲げ、武装色の覇気による護りで弾殻片と爆炎の網を突き破り、対艦ミサイルの如く3番艦へ向かって突進し続ける。

 

 狙われた大型戦艦の甲板から、大勢の六式使い達が邀撃すべく月歩で緊急上昇。

「やらせるかっ!」「水底へ沈めてやるっ!」「戦友の仇だっ!」

 怒号を上げながら刀剣類や拳を構え、六式使いの海兵達が急降下してくる蛮姫へ立ち向かう。

 

 背中に正義を背負う勇敢な海兵達は、四方八方から十重二十重にベアトリーゼへ挑み、

「邪魔」

 一合も出来ず鎧袖一触に蹴散らされ、鮮血を曳きながら、あるいは肉塊と化して落ちていく。

 

 六式使いの海兵達を一瞬で蹴散らし、ベアトリーゼは頭から大型戦艦へ突入。漆黒の両拳を上甲板へ叩きつけた。

 落雷のような轟音が水面を駆け、上甲板の海兵達を薙ぎ払う。艦体を襲った衝撃は上甲板から船底まで貫き、竜骨を一瞬で破砕して船底をぶち抜き、さらに海中深くまで突き抜けた。卵のように艦体を割られ、戦艦は断末魔を響かせながら、艦首と艦尾を上げるように『く』の字に折れていく。

 

 海へ引きずり込まれていく海兵達が悲鳴を上げる中、ベアトリーゼが沈みゆく3番艦のメインマストの先端に降り立つ。次はどいつを沈めてやろうかと凶暴に犬歯を剥く。

 

 と、同時に周囲の戦艦群が一斉に砲撃を浴びせてきた。沈みゆく戦艦の海兵を一顧だにしない非情なる集中斉射。

 全周から迫る濃密な砲弾の群れ。ベアトリーゼは素早くパウチから銃弾を取り出し、マストの先端でバレリーナのようにくるりと回りながら弾幕へ向かって投射する。

 

 雨霰と迫る濃密な砲弾幕は一発として沈みかけた戦艦に触れることなく、宙で爆散した。高密度弾幕だけに要所の砲弾を精確に撃破すれば、周囲の砲弾を誘爆させることなど容易い。

 

 さらりと神業を披露した後、ベアトリーゼはミニチャイナドレスの短い裾――脇まで届きそうな深いスリットから覗くショーツのサイド紐を結び直し始める。

 

 弛んだショーツのサイド紐を結びつつ、ベアトリーゼは見聞色の覇気を巡らせた。

 ためらいの橋で、強化技“ギア3”を発動して肉体の一部を巨大化させたルフィと、上着を脱ぎ棄てて背中の傷を露わにしたルッチが激戦を繰り広げている。

 

 第三支柱塔の付近で、ロビンが口にくわえた鍵で海楼石の錠を外そうと足掻いている。護送船の船着き場でクズが一匹、恐慌状態に陥っている。これはどうでもいい。

 

 地下通路で麦わらの一味とチムニーとゴンベが流入した大量の海水に呑まれ、溺れかけているが、ココロさんがシラウオの人魚である正体を発揮したから、大丈夫だろう。

 誰も彼もがショックを受けているけど、まぁ、若者が幻想と現実の間にある残酷な隔たりを学ぶ良い機会だ。

 

 ベアトリーゼが紐パンを結び直し、続けて食い込みを直しているところで、バスターコールの艦隊が動きを変えた。

 蛮姫を無視し、艦隊は防御柵へ向かって真っすぐ突き進む。そして、4隻の戦艦から4人の厳めしい中年男達が六式体術の月歩を駆使し、海面上空を激走してくる。

 いずれも歴戦の本部中将だ。

 

「なるほど」ベアトリーゼは満月色の双眸を細める。

 艦隊最強戦力たる中将達が“血浴“を押さえている間に、残りの戦艦群でバスターコールの任務を完遂するつもりだ。数的優位を活かした戦理に適う判断と運用。

「セオリーとしては正解だな」

 

 乱れた夜色のショートヘアを気だるげに掻き上げ、ベアトリーゼは金色の瞳を害意に染めた。

「もっとも、私がそのセオリーに付き合う道理は無いが」

 

 冷笑する蛮姫へ4人の猛者が強襲する。

 

「賊徒め。ここで討ち取る……っ!」

 縦縞スーツに口髭と丁髷とインパクトあるモモンガ中将が大太刀を鋭く振るう。

 

「随分と殺してくれたじゃねぇか……っ! ケジメを取らせてもらうぞっ!!」

 厚い唇のニコニコ顔が印象的なヤマカジ中将が軍刀を激しく振り下ろす。

 

「凶悪犯めが……っ!」

 鉄兜を被ったオニグモ中将が両腕とコートの背から生やした3対の腕に持つサーベルを鮮烈に繰り出す。

 

「“血浴”っ! これ以上はやらせんっ!!」

 艦隊司令たるドーベルマン中将が太刀を豪快に横薙ぎした。

 

 武装色の覇気で包まれた11本の刃が繰り出す斬撃が、沈みゆく戦艦をリンゴの如くいくつにも寸断。あまりにも巨大な水柱を立ち昇らせる。巻き上げられた莫大な海水が雨霧のように散り、昼島の空に虹が掛かった。

 

 されど女妖を斬ること叶わず。

 

 ベアトリーゼはさながら人型機動兵器の如く両肩、背中、腰、両脚からプラズマジェットを放ち、猛者達の斬撃を避けて空高くへ逃れていた。

 戦闘機のように鋭い弧を描いて宙返りし、ベアトリーゼは空中で逆立ち姿勢を取りながら体を素早く一瞥。エロチャイナドレスの幾ヵ所が裂かれ、小麦肌にほんのりと血が滲む。

 

 ――ネームドモブ共め。思ったより“やる”。

 ベアトリーゼは小さく舌打ちし、月歩で急上昇してくる中将達へ目線を移す。

 

 個々は卓越した実力者じゃない。けど、連携の精度と練度が非常に高い。青雉や金獅子のような個で完結したスタープレイヤーじゃなく、衆で真価を発揮するチームプレイヤーか。本物の“戦争屋”だ。

 

 艶やかな唇を蛇のように舐め、ベアトリーゼは目線を艦隊へ向けた。

 残り8隻。超高熱プラズマ塊で艦隊ごと爆撃するのが手っ取り早いけれど、爆発の衝撃波と津波でおそらくためらいの橋まで吹っ飛ぶからダメ。となると、一隻ずつ潰していくしかない。

 つまり。中将達の御守りが無い今が、好機。

 

 蛮姫は即座に動く。強靭な肉体が軋むほど高出力プラズマジェットを発動。一瞬で本部中将達を置き去りにし、戦艦群へ向かって飛翔する。

 ここで中将4人を刺身にする意味はない。あくまで優先すべき獲物は艦隊。果たすべき目的はバスターコールを潰すこと。

 

 中将達がベアトリーゼの狙いに気付き、剣技や六式の嵐脚で斬撃を飛ばして撃墜を試みるも、音速を超えて()ける蛮姫を捉えられない。

 

 狙われた戦艦の群れはさながら特攻機(カミカゼ)に襲われるアメリカ機動部隊のように、あらゆる艦載火器を用い、蛮姫を迎え撃つ。三連砲塔と舷側の甲板砲列が咆哮を上げ、上甲板の海兵達が小銃弾をありったけばら撒く。六式使い達が誤射される覚悟で艦隊から跳び上がってくる。

 

 しかし、銃砲弾の弾幕も、鉄と炸薬の嵐も、海面に乱立する水柱も、勇敢で献身的な六式使い達も、天翔ける蛮姫を止められない。

 7番艦の艦尾に一個の弾頭と化した蛮姫が突入し、落雷染みた破壊音が水面を強く揺さぶった。

 

 大型戦艦の艦尾と後船楼が破裂したように砕けた。あまりに激烈な衝撃にマストが全て付け根からへし折れた。両舷と船首の砲塔が浮かび上がり、ターレットリングから外れてしまっていた。艦内の肋骨や支柱、砲列甲板が折れ砕け、高速飛散した破片が海兵達を血の海に沈める。

 

 艦尾の大きな破孔から海水が怒涛の勢いで流れ込む。艦体を支える肋骨と甲板を損傷した戦艦にとって、この暴力的な浸水は致命的だった。浸水の衝撃と水圧は艦体のあちこちを破断させ、艦尾の破孔をより大きく広げていく。

 自壊していく音色を奏でながら、垂直に立つように艦首を高々と上げていく7番艦。上甲板から転げ落ちていく海兵や艤装。

 

 7番艦の上甲板がぶち抜かれ、ベアトリーゼが屹立する戦艦の艦首に立つ。

「楽しくなってきた」

 

 4人の中将達と六式使い達が激怒しながら、沈みゆく7番艦へ殺到してくる。まるで投げ込まれた肉へ群がるピラニアのように。

「ぴょんぴょこぴょんぴょこ跳び回りやがって。バッタかよ」

 月歩で宙を駆ける海兵達を一笑し、ベアトリーゼは周囲に目を走らせる。

 

 艦隊は前衛の残りが3隻。後衛が4隻。前衛の防御柵突入は防ぎきれないか。なら、損傷を与えて全力射撃させないようにしておくべきだな。

 ベアトリーゼは満月色の瞳を急迫してくる中将達と六式使い達へ向けた。

 幸い、“砲弾”はあそこに一杯いる。

 

     ○

 

 ためらいの橋の船着き場に停留する護送船の甲板へ、麦わらの一味とフランキーとチムニーと猫のゴンベが投げ込まれ、貝殻水着姿のココロ婆ちゃんが悠々と甲板に登ってくる。

 

「なんてもん見せやがんだ、ババアッ!」フランキーが海水を吐きながら毒づき「ガキ共が仮死状態になるほどショックを受けちまったぞッ!!」

「アタシの美貌は子供にゃあ刺激が強すぎらかねぇ」

 んががが、とココロ婆ちゃんは野武士のように笑いながら、人魚モードに変化するために脱いでいた服を着始める。

 

 ぶはあっ! と麦わらの一味が盛大に海水を吐き出して意識を取り戻した。小僧共がココロ婆ちゃんを目の当たりにし、ギャーギャーと悲鳴を上げる。

 どうやら、人魚に対する幻想をド派手にぶっ壊されたショックに、酷く打ちのめされているらしい。長っ鼻小僧はもちろん、緑頭の剣士坊主まで目ん玉をひん剥いており、金髪グル眉小僧に至ってはガチの号泣だ。

 

 フランキーは何とも言えない面持ちを浮かべた。母親同然のココロ婆さんに対するガキ共の非礼にイラッとしつつも、ガキ共の気持ちも分からなくもない。初めて見る実物の人魚がジュゴンの如きババアではショックであろう。フランキーは実にアンビバレント。

 

「人魚ってのぁ年の頃30を境に尾ひれが二股になって、陸上生活ができる体になる神秘の種族なのさ。オメーらがいつか魚人島へ行きゃあ分かる」

 ココロ婆ちゃんがガキ共に説明すれば、

「なるほど……長生きした猫が妖怪化するっていうもんな!」「化け猫みてーなもんか!」

 シツレーな合点を抱く長っ鼻とグル眉。

 ともかく、助けられたことは事実。麦わらの一味は礼儀正しく『ココロさん、どうもありがとう』と御礼申し上げた。

 

 護送船の甲板上で暢気なやり取りをしていたところで、第一支柱塔から轟音が響き渡った。防御柵の向こうからも激しい戦争交響曲が聞こえてくる。

 

 人魚談義してる場合じゃねぇ、と麦わらの一味とフランキーが我に返り、即座に動き出す。

「ロビンを迎えに行くぞっ!!」

 両翼と長鼻が舷側を乗り越え、衛兵の無惨な屍だらけの船着き場へ飛び降りた。

 

「ベアトリーゼの仕業か。無茶苦茶やりやがる」スナイパーマンが船着き場の惨状に思わず呻く。

「今更だ。急げっ!」ゾロが第三支柱塔の階段を駆け上がっていき、サンジとスナイパーマンがその背に続く。

 

 ロビンの許へ急ぐ野郎三人は、気づかなかった。死体に混じって死んだ振りをする姑息なクソヤローに。

 

 護送船に残ったフランキーとココロ婆ちゃん達は防御柵の向こうで、本部中将達を相手取りながら海上を舞い飛ぶ蛮姫に意識を奪われていた。ナミにしても、意識を取り戻したけど疲弊して動けないチョッパーをぬいぐるみのように抱きかかえて、海戦に見入っている。

 

 プラズマジェットを放ちながら、ベアトリーゼは海面を舞い飛ぶように跳躍疾駆し、一個艦隊を向こうに回していた。

 4人の本部中将達と勇敢な六式使い達が六式体術の月歩と剃を駆使し、ベアトリーゼと同様に海面を疾走、戦艦群を守るべく武技戦技を繰り出す。ベアトリーゼに狙われる戦艦群もあらゆる艦載火器で鉄と炸薬をばら撒く。

 上下左右四方八方から叩きつけられる武力と火力。幾重幾層にも連ねられる打撃と斬撃と銃撃と砲撃。

 

 だが、蛮姫はその全てを避け、かわし、防ぎ、いなし、水面を舞い踊る。それどころか、新体操選手みたくアクロバティックに駆動しながら六式使い達を砕き、斬り、落とす。フィギュアスケーターのように機動しながら四人の中将を跳ねのけ、殴り飛ばす。さらには、バレリーナのように躍動し、海兵を砲弾代わりに蹴り飛ばし、殴り飛ばし、戦艦に叩きつけて艦体を損傷させる。

 

「すげえ……本当にたった一人で艦隊と戦ってる……っ!」

 ナミに抱えられながら、チョッパーがつぶらな瞳をまん丸に見開く。

 

 チョッパーを抱えるナミは、言葉が出ない。

 ベアトリーゼがたった一人で艦隊に立ち向かうと言い出した時、もっと悲壮なものを想像していた。けれど、防御柵の向こうで大暴れしているベアトリーゼは、全然悲壮じゃない。

 それどこか、たった一人で一個艦隊と大勢の海兵を相手取りながら、命懸けの戦いをしながら、多くの命を奪いながら、ベアトリーゼはまるで自分自身の在り方を思いっきり表現しているような――

 

「すごーいっ! 見て見て、婆ちゃんッ! ビー、水面を飛んでるよっ! わぁ~~っ!」

 チムニーも目をキラキラさせながらベアトリーゼの高速機動戦闘を見つめている。それは紛れもなく殺し合いに他ならないが、幼子の瞳に映る蛮姫の動きはあまりにも美麗で、あまりにも華麗で、炎雷の光を曳きながら水飛沫と水柱を潜り、白波を蹴って舞い飛ぶベアトリーゼの姿はまるで海の妖精のようで。

 

「ビー、きれいだなぁ」「にゃあ」

「んががが。アタシも若ェ頃ぁ、ああやって波間を踊ったもんさ」

 感嘆をこぼす孫娘と猫に、シラウオの人魚を自称するジュゴンの婆さんが楽しげに笑う。

 

「昔話に盛り過ぎだろ、ババア」

 フランキーが憎まれ口を叩いた直後、艦隊の先頭艦が砲撃で防御柵の通航門を吹き飛ばし、エニエスロビー島沿岸への突入口が開かれた。

 

「不味いわ……艦隊が侵入してくる……っ! 急がないと脱出出来なくなっちゃう……っ!」

 ナミが可憐な(かんばせ)を強く強張らせた。

 

 

 エニエスロビー島の戦いはいよいよ佳境を迎える。




Tips

海軍の大型戦艦。
 戦列艦の艦首と両舷に三連砲塔を乗せたような姿。描写によっては、帆船だったり外輪船だったりする。
 一隻につき1000名の海兵が乗ってるらしい。

本部中将達。
 エニエスロビー島の作戦に参加した本部中将は5人。
 ドーベルマン、ヤマカジ、モモンガ、ストロベリー、オニグモ。
 原作で明記されてないけれど、オニグモ中将は頂上戦争で蜘蛛に変身するゾオン系能力者っぽい描写があった。他4名は能力者ではないようだ。

ココロ婆ちゃん。
 実はシラウオの人魚だった。ジュゴンではない。

スパンダム
 死体に紛れて隠れてる。生き意地汚いと評することは簡単だけど、何としても生き延ようとする意志は、誰に憚ることのない正義であろう。

チムニーちゃん。
 ベアトリーゼの暴れっぷりが幼子の脳を焼く。

ベアトリーゼ。
 大暴れ中。
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