彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
事件から2日後。
ウォーターセブンはアクア・ラグナ被害の復興とガレーラカンパニーの再建に忙しい。
貿易船と海列車でせっせと資材が運び込まれ、島中から作業の声と音が響いている。
居候中のカーシーとオイモの巨人コンビも作業を手伝い、その巨躯を活かした働きぶりに歓声が上がる。
仮設ガレーラカンパニー本社兼アイスバーグ自宅には引っ切り無しに来客が訪れていた。なんと言っても、アイスバーグは社長兼市長――つまり島と大企業の復興と再建の責任者。そりゃ大勢やってくる。
そんな来客達が列を成す仮設本社へ、水色リーゼント頭の海パン大男がやってきて「バカバーグに話があんだっ! オメーらは帰れっ!」と無理やり来客達を追い返した。
ぶーすか文句を垂れる客達を追い払って妹分達に門番を任せ、フランキーは我が物顔で仮設本社に踏み込み、どかっと応接用ソファに腰を下ろした。
痛快なほど太々しいフランキーを一瞥し、アイスバーグは片眉を上げた。
「ンマー……何しに来た?」
「お前が俺様に押しつけやがった“あの設計図”の件だ」
フランキーは応接卓に置かれていたアイスティーを勝手に飲み、ゆっくりと深呼吸してから告げた。
「焼いたぜ。きっちり全部な」
「……そうか」
アイスバーグは製図台の椅子に座り、瞑目して黙する。
深謀遠慮な兄弟子から目を背け、弟弟子もまた黙って茶を口に運ぶ。
フランキーが建物の外から届く作業の喧噪をしばし聞いていると、不意にアイスバーグが呟く。
「……その方が良い」
その短い言葉にどれほどの感情と思いが込められていただろうか。フランキーは返す言葉が見つからない。だから、代わりに、製図台に載せられている大きな図面へ目線を移した。
「随分と手の込んだ図面だが……オメェ、何を造る気だ?」
「以前から検討していた案だ」アイスバーグは図面に手を置き、肩に乗った愛鼠がチューと鳴く「今回のアクア・ラグナの規模が今後も起きるようなら、この島自体が海に飲み込まれる日もそう遠くねェかもしれねェ」
「……まぁ、な」フランキーはアクア・ラグナで大橋と橋の下にあったかつてトムズワーカーズの工房だった倉庫が崩壊したことを思い返しながら「それで、オメェの案ってのは?」
「この島ごと海に浮かべる」
兄弟子がさらりと答えた内容に、フランキーは思わずサングラスを下げ、まじまじとアイスバーグの横顔を窺う。『出来る』と確信している技術者の顔だった。
「……そんなこと、出来んのか?」
「そう難しい話じゃねェ。“新世界”には全長10キロのアミューズメント艦が実在しているし、下手な小島よりデケェ船も珍しい話じゃねェからな。それに」
アイスバーグはフランキーへ顔を向け、不敵に唇の端を上げた。
「不可能を可能に変える偉大な男がいつも言っていただろう? 男ならドンとやれ、と」
フランキーは鼻を掻き、どこか嬉しそうに笑う。
「……まるでトムさんだ」
と、ドアがノックされ、スクエアシスターズが顔を見せた。
「兄貴、連絡が来たわいな!」「2億ベリーで買ったアレ、届いたわいな!!」
「おおっ!! やっと来たかっ!!」
フランキーは破顔してソファから腰を上げた。
「ンマー……2億ベリー? 随分と御大尽な買い物したじゃねェか」
驚くアイスバーグへ、フランキーはとびっきりの悪戯を行う前の悪ガキみたいな顔を返す。
「俺もいっちょ、ドンとやるのさ」
○
アイスバーグの許を辞し、フランキーが妹分達を連れてガレーラカンパニー敷地内の仮設ゲストハウスへ足を運ぶ。
先客にココロ婆さんと孫のチムニーと猫?のゴンベが訪れていた。航海士の小娘が蜜柑の木に抱き着いて大喜びしており、チョッパーが山積みされた荷物を確認していた。
曰くアクア・ラグナに呑まれたと思っていた荷物や金が無事に返って来たらしい。
船長の麦わら小僧は鼻提灯を膨らませながら卓一杯の料理をがつがつ食っていて、コックの金髪兄ちゃんがせっせと料理を拵えている。
そこへ、事務仕事の昼休憩を迎えたらしいベアトリーゼとロビンが戻ってきた。OL風の装いにガレーラのブルゾンを羽織った姿は社員以外には見えない。
ワイワイガヤガヤと賑々しい一同を見回し、フランキーは呆れ気味に言う。
「アーゥ……このスーパーな俺様の影が薄くなるとは……キャラが濃すぎだろ、テメェら」
で。
「緑髪と長っ鼻のあんちゃんが居ねェようだが……まぁいい。ちっとばかり俺の話を聞け」
フランキーはスクエア姉妹と共に床へ直座りし、宝樹アダムについて語る。
この世界にたった数本だけ存在する特別な超巨大樹。その一部から得られる木材は文字通り世界最高の木材であり、表でも裏でもまず市場に現れない。また、市場に出てもその価格は図抜けて高額だという。
「宝樹の木材か。“マーケット”でも早々お目に掛かれないブツだね」
ベアトリーゼは寝ながら飯を食い続けるルフィの手元から料理をくすねつつ、横から口を挟んだ。
「でも、2億ぽっちじゃ大した量は買えないでしょ?」
ナミは目を瞬かせ「そんな高い木材なの?」
「まぁな。だが、それなりの量を手に入れられた。ツイてたよ」
フランキーはベアトリーゼに応じた後、胡坐を掻いて両拳を床につけて言葉を編んでいく。
「俺ぁ昔、もう二度と船は造らねェと決めた……だが、やはり目標とする人に追いつきたくて、気がつきゃあ船の図面を引いてたのさ」
背景事情を知らぬ麦わらの一味とその他は、海パン大男の真剣さと真摯さに戸惑う。が、事情を知るココロ婆さんにはフランキーの告解が大きく響く。
「つまりはよ、こいつは俺の夢だ……っ! 宝樹でもう一度だけ、どんな海でも乗り越えていく船を造り上げる……っ! 宝樹は手に入れた。図面もある。船も造る。だからよ、完成したら――」
フランキーは水色髪リーゼントを大きく下げた。
「お前ら、俺の造った船に乗ってくれねェかっ!?」
麦わらの一味の少年少女達は呆気に取られた。想像の斜め上を大きく超えた提案に、聡明なナミと巡りの速いサンジも瞳を瞬かせ、チョッパーは理解まで数秒かかった。ロビンは「まぁ」と上品な吃驚をこぼし、ベアトリーゼは面白くなってきたと口端を曲げる。
ルフィは寝ながら飯を食い続けている。
「待て。待て待て待て」サンジは当惑しながら「自分の夢を込めて造る船を、俺達にくれるってのか?」
「そうだ」
フランキーは即答し、にやりと唇の両端を大きく吊り上げた。
「俺の夢の船に俺が気に入った奴らが乗る。船大工としてこんなに幸せな話はねェ。元金はオメェらから貰ったようなもんだしよ」
予期せぬ剛毅な申し出に、大きく当惑するボーイズ&ガールへ夜色髪の美女が告げる。
「こんな良い話はないよ。断る理由がない」
「そうなのか?」
チョッパーが純朴な瞳を返す。
「たしか、海賊王の船『オーロ・ジャクソン号』もトムズ・ワーカーズが宝樹材を使って建造したはず。つまりだね。フランキー親分の申し出は、海賊王の船を作った男の弟子が、海賊王の船と同じ資材を使って、君らにスゲェ船を造ってくれるってことだ。ね? 断る理由がないでしょ? まぁ、決断は船長次第だけど……」
ベアトリーゼの説明に愕然としつつ、麦わらの一味は顔をルフィへ向けた。
船長は鼻提灯を広げて飯を食い続けている。
「しょうがらいねェ……トムさんもお前も……結局同じ職人なんらね」
んがががと優しく笑うココロ婆ちゃん。その笑顔は回顧の切なさを宿していた。
「そうだな……今なら、胸張って死んでったトムさんの気持ちが分かる」
フランキーがしみじみと呟いた、直後。
理解が追いついた麦わらの一味は、新たな船の入手に歓喜を爆発させた。
ゲストハウスが揺れるほどの大歓声。
船長は寝たまま食事を続けている。
○
「ダメか……」
その時、ゾロは困っていた。
瓦礫と廃棄物が積み重なった海岸一角に腰かけ、ゾロは折れた良業物“雪走”を掲げる。
東の海のローグタウン。武器屋の親父がゾロを認め、家宝と言っていた刀を無償で譲ってくれた。
ウォーターセブンの鍛冶屋に相談したところ「こりゃ元にゃあ戻せねェよ」と断られ。
仕方なく、刀剣類を扱う武具屋へ足を運んだところ、ゾロの予算を聞かされた店主は「冷やかしなら帰れ」とにべもない。
ゾロは溜息をこぼし、一昨日を振り返る。
メリー最後の海戦。高速砲弾を迎え撃った時。エニエスロビーでの激戦による負傷と疲労。砲戦と急回頭による不確かな足場。副砲弾2発を落とし損ねたという焦り。
これら全てが重なった結果、高速砲弾へ斬撃をぶち込む際、雪走の芯を外してしまった。
さて、刀とは使い手が下手を打てば、如何なる業物も錬鉄の棒切れになってしまう繊細な代物である。
人を斬ったものの刀が曲がって鞘に収まらなくなったり、骨に当たって刃が欠けてしまったり、突き刺したら筋肉が締まって抜けなくなり無理に引き抜こうとして刀身を折ってしまったり。そういう記録がたくさんある武器なのだ。
高速徹甲弾相手に下手を打てば、良業物といえども、そりゃ折れる。
「お前には悪ィことしちまったな……」
折れた雪走に詫びの言葉を掛け、ゾロは唸る。
当分は愛刀の和道一文字と三代鬼徹の二振りで過ごすことになりそうだ。落ち着かないが、己の不覚が原因では受け入れるしかない。
二度とこんな不覚を取らねぇよう、もっと鍛えねぇと……
「あいつから教わって……ん?」
ゾロが内省していると、水平線に大きなマストが見えた。
現れた船はゆっくりと島に近づいてきて、輪郭を鮮明にさせていく。
そして、犬頭の船首飾を付けた大型帆船に掲げられた旗を視認した瞬間、ゾロはカッと目を見開き、即座に立ち上がって駆け出した。
「海軍の追手か!? あいつらに報せねェとッ!」
しかし、そこは迷子界のファンタジスタ。
いつまで経ってもガレーラカンパニー本社のゲストハウスに辿り着けなかった。
ゾロの迷走はウォーターセブン裏町の名物悪童マイケルとホイケルに絡まれるまで続く。
○
「来客だ」
眠りながら食事を続けるルフィと共に、サンジの料理を摘まんでいたベアトリーゼが、不意に呟いた。
え、と周囲が反応した、刹那。
ゲストハウスの壁がぶち抜かれ、容貌魁偉な老人が現れた。
「な、なんだぁっ!?」
驚愕する一同と渋面を浮かべる蛮姫を余所に、肩に掛けた海軍の真っ白なコートをはためかせながら、老人が一同の船長とそっくりな笑顔を浮かべた。
「お前らが麦わらの一味か。船長のルフィはどこにおる?」
左眉に走る向こう傷。年季の入った白い髪と髭。背筋がぴんと伸びた筋骨たくましい巨躯。何より、東の海出身者なら必ず新聞で目にしたことがあるその顔は。
「え、“英雄”ガープ……」
ナミが思わず呟く。いつぞや出会った新聞記者の言葉が確かなら――
「ガープって……確かルフィの」
サンジが呟くと同時に、ガープはテーブルで眠りながら飯を食い続けている孫を見つけ、CP9の“剃”をはるかに上回る速度で孫へ肉薄。周囲の目が追いつくより先に眠りこけている孫へ拳骨を落とす――というか、フルスイングのチョッピングライトをぶち込む。
「起きんかぁっ!!」
「っ!! イッテェッ!! な、なんだぁっ!?」
砕け散る卓。飛び散る料理。しれっと自分の料理皿だけ持って避難していた蛮姫。殴られた頭を抱えて飛び起きる英雄の孫。
悲鳴を上げるルフィにサンジ達が驚き、戸惑う。
「痛ェって……!? 何言ってんだ、ゴム人間にただの打撃が効くはずは――」
「愛ある拳に……防ぐ術なし」
ガープはタンコブをこさえて半べそ顔の愛孫へにやり。
「随分と派手に暴れとるようじゃのぉ……ルフィッ!」
「げぇっ!? 爺ちゃんッ?!」
ルフィが驚愕に目をひん剥き、悲鳴混じりの吃驚を上げる。
「な、なんで爺ちゃんがここに……っ!?」ルフィはハッとして「お前ら、絶対に手ェ出すなよっ! 殺されるぞ……っ!」
知ってる、とベアトリーゼは心の中で呟きながら手に持った皿の料理を摘まむ。なんせ、ガープはルフィを真っ直ぐ見ながらも視界に一味を全員――特にベアトリーゼとロビンを収め、一挙手一投足を捉えている。隙は微塵もない。
相変わらず恐ろしい爺様だ。
「人聞きの悪いことを言うな」
ガープは不満げに唇を尖らせ、仁王立ちしながら言った。
「わしがお前を千尋の谷へ突き落したのも、夜の密林へ放り込んだのも、風船に括りつけてどこかへ飛ばしたのも……全て貴様を強い男にするためじゃっ!!」
ルフィの底知れぬ生命力の原点を知った一味はある意味でドン引きし、ロビンはふと思う。それは児童虐待じゃないかしら。
「最終的には友人に託し、エースと共に修行をさせたが……目を離してみればこのザマだ」
はあ、とガープは仰々しく溜息をこぼし、愛孫を一喝。
「わしはお前を強い海兵にするために鍛えてやったんじゃぞっ!!」
「俺は海賊になりてェってずっと言ってたじゃねェかっ!!」
負けじと祖父へ言い返す孫。
「“赤髪”に毒されおって……くだらんっ!!」
「シャンクスは俺の命の恩人だぞっ! 悪く言うなっ!」
「爺ちゃんに向かってその口の利き方はなんじゃあっ!」
「ぎゃーっ!? ごめんなさーいっ!!」
大騒ぎを始めるモンキー家の祖父と孫についていけず、ゲストハウスの一同は早々に関与を諦めて見守り態勢へ移行。
孫の胸倉を掴んでゴチンゴチンと拳骨を落としていた祖父は、「だいたい」と折檻の手を止めて目線を移す。オハラの悪魔と呼ばれる黒髪碧眼の神秘的な美女と、彼女を守るように半歩前に立ち、料理を食べ続けている蛮姫をぎろり。
「札付きの悪女を2人も誑し込みよってっ!! わしはお前をジゴロの真似事をするような男に育てた覚えはないぞぉっ!!」
ごちーん!
「ぎゃーッ!! 濡れ衣だっ!! 俺は2人をタラシ込んでなんてねえよっ!!」
悲鳴と抗議の声を上げるルフィ。
「私達は素敵な船長さんの魅力にすっかりヤラレちゃったよね。ねえ?」
そこへ横からベアトリーゼがアンニュイ顔で悪ノリ。水を向けられたロビンは上品な微苦笑をこぼす。
「ええ。そうね」ロビンは柔らかく目を細め「すっかり魅了されちゃったわ」
「ちょっ!?」ぎょっとするルフィ。
「ルフィーっ!! 貴様、何をやっとるんじゃーっ!!」
ごっちーんっ!!
「ぎゃーっ!!」
ルフィの悲鳴が轟き、ナミが「茶々入れないの!」と大人二人を叱責した直後。
不意に海兵達が待機中のゲストハウス正面がにわかに騒々しくなった。
迷子のロロノア・ゾロ君が悪童マイケルとホイケルの案内でようやっと帰ってこられたらしい。
ベアトリーゼは思う。あらら。後は原作チャート通りかな?
○
ことは原作チャート通りだ。
ルフィとゾロは久し振りに(原作連載期間では数年振りだが、作中時間では半年も経っていない)コビーとヘルメッポの2人と再会し、2人の変貌振りに驚きつつも、再会に盛り上がる。
で。ガープが壊したゲストハウスの壁を海兵達と共に直す最中、うっかりルフィの父親――『世界最悪の犯罪者』こと革命軍最高司令官兼最高指導者の“革命家”ドラゴンであることを暴露。大騒ぎになる。
ちなみにこのやりとりの間、誰も気づいていなかったけれど、ガープは一瞬たりともベアトリーゼに対する警戒を解かなかった。流石は歴戦の老雄であろう。
そんな原作通りのやりとりと大騒ぎの末、ゲストハウスの修繕が終わり、ガープは精神的にすっかりくたびれてしまった海兵達と一同を余所に堂々と宣う。
「お前はわしの孫なので、この島で捕らえるのはやめた! 軍には上手く言い訳しておいてやるから、安心して滞在せえ」
ガープはさらっと問題発言をして副官を困らせ、
「まぁ積もる話もあるじゃろ。コビー、ヘルメッポ。今日はもう勤務を解放してやる。ルフィ達と過ごせ」
「「はっ! ありがとうございますっ!」」
見事な敬礼を返すコビーとヘルメッポに頷き、最後に愛孫へ告げる。
「じゃあ、わしは帰るぞ」
「うん。じゃあな!」
ルフィが軽く手を振ると、祖父は突如、癇癪を起こした。
「軽すぎるわぁっ!!」
「ぶへーっ!?」
ぶっ飛ばしたルフィに向け、ガープが説教を並べ始める。
「もっと別れを惜しめっ! 馬鹿者っ!! 久しぶりの爺ちゃんじゃぞっ!!」
「どうしろってんだっ!! 俺は殴られてるだけじゃねえかっ!」
「それでもわしは孫に愛されたいんじゃアホッ!!」
説教じゃなかった。ただの我儘だった。
人騒がせな祖父と孫のやりとりが終わった間際。
「中将閣下。お時間があるなら、少しお茶しませんか?」
ぎょっと目を剥くルフィと麦わらの一味を無視し、ベアトリーゼはアンニュイ顔に淑女然とした所作で微笑む。もっとも、満月色の瞳は人食い狼のようだったけれど。
静かな殺気を浴びた海兵達が息を飲み、コビーとヘルメッポは身を凍らせる。副官のボガードが意識を腰の得物に注ぐ。
ガープはぎろりとOL風の装いの小麦肌美女を睥睨し、答えた。
「ええぞ。わしの船まで来い」
「えーっ?!」打てば響くように吃驚を上げる周囲の皆さん。吉○新喜劇かな?
ベアトリーゼは満足げに頷き、食べ終えた皿を愕然としているサンジに渡してからガープへ右手を伸ばす。
「エスコートしてくださる? 中将閣下」
「あー?」ガープは嫌そうに顔をしかめ、「いいよ」と左腕をベアトリーゼへ差し出した。
「じゃ。私は船長のお爺様とデートしてくるね」
唖然としているルフィと一同へひらひらと手を振り、ベアトリーゼはガープと腕を組んでゲストハウスを出ていった。
12歳児のようなヤンチャさを失わない老傑は、今までの無茶苦茶さが嘘のような海軍将校的紳士振りでベアトリーゼを見事にエスコートし、ベアトリーゼもまた礼節正しく淑女的所作を披露する。そんな2人の後に海兵達が恐る恐るついていく。
「……あんなシンシな爺ちゃん、初めて見た……」呆気に取られるルフィ。
「デートする相手なら俺が居るのに……どうしてっ!」悶えるサンジ。
「あの女、何考えてんだ?」
「またぞろ何かやらかしそう」
ゾロとナミがげんなりとぼやき、チョッパーがロビンに尋ねる。
「ベアトリーゼ、何する気なんだ?」
「さあ……私にも分からないわ」
ロビンは小さく肩を竦め、くすりと優雅に喉を鳴らす。
「案外、午後の仕事をサボりたいだけかもね」
正解は果たして――
Tips
フランキー
原作キャラ。今回の事件を期にアイスバーグと和解した感じ。
宝樹アダム
原作設定。現物はまだ原作に出てきてないはず。
非常に希少価値が高く、高額な木材らしいので、たかだか2億ベリーでどれだけ買えたのかは謎。
オーロ・ジャクソン
原作設定。
魚人船大工トムが建造した海賊王の船。破棄されたのか、誰かの手元にあるのか、謎。
雪走
原作設定。良業物。
原作では能力者に折られたが、本作ではゾロ自身の不覚で負ってしまったことに。
マイケルとホイケル
原作のネームドモブ。アニメだともうちょっと出番が多い。
モンキー・D・ガープ
原作キャラ。ルフィの爺ちゃん。海軍本部中将。
還暦を過ぎても12歳のヤンチャさを保つ厄介極まる老傑。
CVは中博史。いわゆる老け声のベテラン。数多くの作品で年配者や高齢者を演じている。
ガープの紳士振り。
海軍将校は他国を訪問する関係から、紳士教育を受ける。ガープも士官課程に進む際、きっちり教育を受けているはず。という独自解釈。
奥さん(原作未登場)とデートする時はめっちゃ紳士的だったんじゃないかなあ、て妄想。
ベアトリーゼ。
ジジイとデートに行く。