彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
麦わらの一味がメインマスト城砦で超巨大ゾンビと激戦を繰り広げ、ルフィがゲッコー・モリアに謀られ、城砦外の森で迷っている頃。
サウザンド・サニー号の浴室。ベアトリーゼはくまに能力で汚れと臭いを“弾き飛ばして”もらっていたが、念を入れてシャワーを浴びていた。
バーソロミュー・くま、かぁ。どういう役回りなのか、いまいち知らねーんだよなぁ。
ベアトリーゼが持つ前世の原作知識は穴だらけだが、新世界編は特に酷い。ワノ国編以降は読んですらない。すなわちエッグヘッド編で語られるバーソロミュー・くまの詳細な素性――”大きな物語”に重要な役割を持つことをまったく知らない。
知っていることは三つだけ。
ニキュニキュの実の能力者ということ。
天才科学者ベガパンクの手で改造されたサイボーグということ。
人型兵器パシフィスタ・シリーズはくまが
これだけだ。将来的に極めて重要な役どころを担う人物と知らない。なので、ぶっ飛ばす気満々だった。
“大きな物語”の重要人物なら、運命力も高いだろーし、簡単には死なんでしょ。へーきへーき。
雑かつ投げやりな結論を出したところで浴室のドアが開けられ、ウェディングドレスから私服に着替え終えたナミが顔を覗かせる。
「いつまでお風呂入ってんのっ! 早く出て着替えてっ!!」
「はーい」
素直に承諾し、ベアトリーゼはバスタオルで髪と身体を拭い、ナミに女部屋から持ってきてもらった私物の下着と着衣を手に取る。
「ありゃ? 私が頼んだ服と違うよ?」
替えの服に背中とサイドが限界まで露出した、いわゆる『童貞を殺すセーター』を頼んでいたのだが……
「あんなの、論外よ! 論外!!」
『血浴のベアトリーゼ』のブランディングを重視するナミが却下した。
「もっと世間体を大事にして!」
ともあれ、ベアトリーゼは着替えながら、アブサロムに攫われていたナミへ現在の情報を語って聞かせる。
一味で影を奪われた者は三人。ルフィ。ゾロ。サンジ。
モリアの一味は外科医ホグバック、透明人間アブサロムを撃破。幽霊使いのペローナはくまに消されたこと。
今、皆はルフィの影を入れられた超巨大ゾンビと皆が戦闘中で、ルフィだけなぜか森を彷徨っていること。
ぴっちりしたTシャツにミニスカとロングブーツ姿のナミは、頭を抱えた。
「手のひらで転がされてるわね……」
「ルフィ君は搦手に弱いからね」
ベアトリーゼは洗面台に立つ。すらっとした長身を魅せるノースリーブハイネックにスリムパンツ、ショートブーツ。櫛を通した夜色のショートヘアの両サイドにヘアピンを挿していく。
と。サニー号が大きく揺れた。
「きゃっ」バランスを崩したナミがベアトリーゼに引っ付く。「今の揺れは何っ?」
「んー。どうも海流に捕まったみたいだね。霧の海域から出ていくみたいだ」
ナミを支えながら見聞色の覇気を巡らせ、ベアトリーゼは続ける。
「水平線が白み始めた。夜明けまで一時間を切ったな」
「え」ナミは蜜柑色の瞳をぱちくりさせた。
たしか、アフロ骸骨のブルックが言っていた。影を奪われた人間が陽の光を浴びたら、消滅してしまうって。
「不味いわっ! ルフィ達が陽の光を浴びたら消えちゃう! それに、くまのことも皆に報せないと!」
悲鳴染みた声を上げるナミの肩をぽんと叩き、ベアトリーゼはにやりと笑う。
「だいじょーぶだいじょーぶ。お姉さんに任せとき」
ベアトリーゼの頼もしい笑みを前にし、ナミは物凄く不安を覚えた。
○
モリアに謀られたルフィが森で『被害者の会』から“秘策”を授けられている頃。
当のモリアはバーソロミュー・くまと会談の場を設けていた。オーズによって酷く損壊した城砦内の一角に、常人離れした巨体の2人が対峙する。
くまは連絡事項――王下七武海から罷免されたクロコダイルの後任が決定したことを告げ、もう一つの用件を伝える。
「エニエス・ロビーの事件以来、世界政府は麦わらの一味を非常に警戒している。ウォーターセブンを発った一味がログに従って魚人島へ向かった場合、霧の海域を航行することになり、“ここ”と遭遇する可能性が高い。そして、可能性は現実になっている」
くまはうっそりと語った。
「政府はまた一人……麦わらの手で七武海が落とされやしないかと危惧している。必要ならば、俺が貴様に加勢しても構わない」
その言葉はゲッコー・モリアのプライドを酷く傷つけた。何かにつけて怠惰で消極的でも、モリアは大海賊。名と尊厳を傷つけられては黙っていられない。
「誰に口を利いてやがんだ、テメェッ!!」
くまの胸倉を掴み、怒声を浴びせる。発せられた怒気は暴風の如く荒れ狂い、怯えた蝙蝠や鳥達、鼠達が城砦から慌てて逃げていく。
「あんな少数の新米海賊団に、この俺が敗けるとでもっ!?」
「勝負に絶対はない」
胸倉を掴まれて激甚な怒気を浴びせられても表情一つ変えず、くまはうっそりと言葉を編む。
「“麦わら”はクロコダイルとロブ・ルッチを破っている。その実力は侮れない。それに、あの一味には“血浴”がいる。新米海賊団と甘く見ることは危険だ」
「……政府は奴らに七武海を2人もぶつけるほど、ビビってるってのか……っ!?」
噛みつくように食って掛かるモリアへ、くまはあしらうように淡々と答える。
「あくまで俺の提案だ。そういう指令を受けたわけではない」
「なら出しゃばるンじゃねぇっ!! テメェはここで見物してろ! そして、温室のバカ共に伝えろ! 『テメェらがビビってる麦わらの一味は、いとも簡単にゲッコー・モリアのゾンビ兵になった』となっ!!」
モリアは忌々しげにくまへ罵倒を浴びせ、自らの体躯を影に変えてしゅるりと会談の場から消えた。
「足をすくわれなければ良いがな」
残されたくまはうっそりと呟き、壁に空いた大きな破孔からメインマスト城砦の中庭を望む。
夜明けが迫った清々しきブルーアワー。建物の残骸と瓦礫に満ちた中庭。麦わらの一味と対峙していた超巨大ゾンビのオーズ、その恰幅の良い腹が少しばかり開いた。
「なんだありゃあっ!?」「なんじゃあこりゃあっ!?」
ウソップとオーズがベクトル違いの吃驚を瓦礫と残骸の山に響き渡らせた。
「腹ン中にモリアが居るっ!?」「なんで野郎が……ルフィはっ!?」「案の定、スカされたのかっ!?」
驚愕する狙撃手の指摘により、麦わらの一味の面々も気づく。
「おお~~っ! 俺の腹、コクピットだったのかぁ~っ! すっげーっ! 俺、ロボみてェじゃんっ!!」
オーズの腹腔内コクピットに収まったゲッコー・モリアは、麦わらの一味を見下ろして歯を擦るように嘲り笑う。
「キシシシ……お前らに俺と戦うチャンスをやろう。俺を倒せば全ての影を解放できる。ただし……オーズを倒さなければ、この俺は引きずり出せねェがな」
傲慢な余裕を露わにする七武海の怪人に、麦わらの一味は憤りつつ腹を括った。
「やるしかねェ」
ゾロは両手の得物を強く握り直す。
「ウソップ! 塩を探して山ほど持ってこいっ! 俺達ぁ出来る限りあいつを弱らせておくっ!!」
「塩ならば、ここにありますよ――っ!!」
アフロ骸骨が塩の詰まった大袋を担いで現れた。サムライゾンビとの戦いで損傷し、疲弊して動けなくなっていたはずなのだが。
「ブルックッ!? オメェ……動けるのかっ!?」
「体を引きずり、厨房へ塩を探しに行きましたところ、牛乳を発見! 美味しく戴き、これこの通りっ!!」
案じるフランキーに雄々しく応じるブルック。牛乳で折れたり砕けたりした骨が治ったという。ンなアホな。
「何はともあれ、大量の塩は手に入った」
サンジは短くなった煙草を踏み消す。
「朝が来る前に、あの怪物の口に塩を叩き込み、モリアをぶっ飛ばしゃあ勝ちだ」
ゾロが皆の背を叩くように吠える。
「時間がねェッ!! 征くぞっ!!」
『おおっ!!』麦わらの一味+アフロ骸骨は雄々しく吠え、怪人を乗せた超巨大ゾンビへ挑む。
○
モリアの影を操る能力とは、自身を影に化けさせて転移さながらに動いたり、死体に影を宿らせてゾンビ化させたり、影に質量を持たせて操ったりすることだけではない。
物質を影に合わせて変化させることもできる。
すなわち、オーズの影を操り、ルフィと同じく体躯をゴムみたく伸縮させられるようになる。
ただでさえ超絶圧倒的なフィジカルの優位に加え、ルフィ譲りの俊敏さと軽妙な体捌きが可能だったところへ、ゴムゴムの実の能力染みた攻撃が行われるようになった。
もはや手が付けられない。
打撃の直撃を受ければ、鋼鉄の身体を持つフランキーすら一撃でノックダウン。避けても衝撃波や飛散する瓦礫の雨を浴びる。
「マジかよっ?! これじゃまるっきりルフィの化け物じゃねえかっ!!」
ウソップが悲鳴を上げながら、重傷を負ったフランキーを引きずっていき――
「なんだぁ?」
中庭の頭上を覆うように広がっていく暗雲に気付いた。
「! あれはっ!」サンジが目を皿のようにして周囲を見回し「やっぱり居たぁっ! ナミすわぁああああああああんっ!! 無事でよかったよぉ―――――――っ!!」
メインマスト城砦から突き出た渡り廊下の残骸。ナミが積乱雲を作るべくクリマタクトを振っていた。
「ばかっ! 声かけないでよっ! 見つかっちゃうじゃないっ!!」
ナミがサンジに叱声を飛ばした直後。
「ごむごむのぉ~ぴすとるぅ~っ!!」
オーズがナミへ向けてエクスパンド・パンチを放つ。
「ああもうっ! 言わんこっちゃないっ!」
も、しなやかな長身の影が現れ、ナミを横抱きにして跳躍。超巨大ゾンビの巨拳を容易く回避する。ベアトリーゼは中庭を覆う暗雲を窺い、小さく頷く。
「大気中の電位差は充分。ナミちゃんは皆のところへ退避して」
「退避って……まさか」さあっと顔を蒼くするナミ。
「皆ーっ! ナミちゃんをよろしくーっ!」
そのまさかだった。ベアトリーゼは眼下の皆へ呼びかけ、躊躇なくナミを中庭へ放り投げる。
「いゃぁぁあああああああああああっ!?」
「!! 俺に任せろ! ナミすわぁあああんっ!! うぉおおっ!」
悲鳴を上げて落下してくるナミを受け止めるべく、目を『♡』マークにしたサンジが落下点目掛けて駆け、ヘッドスライディング。も、ロビンがハナハナの実の力で作った網でナミを安全にキャッチ。空回りに終わったサンジが瓦礫の山に突っ込む。
「何やってんだアホコックッ! 遊んでる場合かっ!!」
律儀にサンジへツッコミを入れつつ、ゾロはロビンに抱えられたナミへ問う。
「おい、ナミッ! ベアトリーゼの奴は何をやる気だっ?!」
「まさか俺達ごと吹き飛ばす気じゃねェだろうなっ?!」ウソップも喚くようにナミを質す。
「皆、壁際に退避してっ!!」
ナミは質問に答えず、空を見上げて叫ぶ。
「大技が来るわっ!!」
その言葉に釣られ、麦わらの一味だけでなくオーズまでも空を見上げた。
中庭に蓋をするように広がっていた真っ黒な暗雲がぐるぐると激しく渦巻き、中庭一帯に風が巻き、粉塵が渦巻く暗雲へ吸い込まれるように巻き上げられていく。
「――わっ?!」毛皮に静電気が走り、チョッパーが吃驚を上げ。
「わわわ、何ですか何ですかあっ!?」静電気にアフロが逆立ったブルックが驚愕し。
「なんだぁ~~~?」オーズが首を傾げた。
「吹けよ、風! 呼べよ、嵐! 超電磁ブースト!!」
ベアトリーゼがプルプルの実を用いてプラズマジェット跳躍。
渦巻く漆黒の乱流に飛び込み、プルプルの実の力で積乱雲の暴虐的な気流と電磁気を操る。渦巻き状乱流のエネルギーで自らを高速射出し、雷電の破城槌と化した飛び蹴りを超巨大ゾンビへ放つ。
「竜巻真空ゥ稲妻蹴りィ―――――ッ!!」
ずっどぉ――――んんッ!!
雷電の大量虐殺的蹴撃は狙ったオーズの頭を外し、右肩を直撃。
超特大級暴力は天才外科医ホグバックが改造強化した魔人の頑丈な皮膚を焼尽し、頑健な筋肉を撃砕し、頑強な骨を圧壊させ、オーズの右腕を肩口から千切り飛ばす。
超巨大ゾンビの右肩を完全欠損させてなお、エネルギーが残る雷電の蹴撃はオーズの背後にあった城砦付属施設を直撃。爆砕させた。
激甚な衝撃波が島を激震させ、島外の水面を大きく波立たせる。天高く立ち昇る膨大な粉塵から、大量の建物残骸と瓦礫が島中へ降り注ぐ。
残骸と瓦礫の豪雨の中、右腕を失った超巨大ゾンビがパニックを起こして転げまわり、モリアが必死に宥める。
なお、この大混乱を生んだ当人は城砦付属施設の瓦礫に埋まった模様。しまらない。
「いてっ! いてててっ! いててててっ!!」
降り注ぐ瓦礫に打たれつつ、人獣姿のチョッパーが動けぬフランキーを物陰へ引きずっていく。
衝撃波で枯れ枝のように吹き飛ばされ、ナミは激しく咳き込みながら毒づいた。
「息が……本当にもぉあの……バカは……っ! 聞いてた話と……全然違う……じゃないっ!」
後生大事に塩の大袋を抱きかかえたウソップは瓦礫に半ば埋まっていた。
「タス……ケテ……タス……ケテ……」
「しっかりしろ、ウソップッ!!」
そんなウソップを瓦礫から引っこ抜くサンジ。
「ビーゼったら、また無茶して」
ロビンが瓦礫から這い出しつつ慨嘆。その傍らでブルックが放心気味に惨状を見つめている。
「何なんですか……何なんですか、あのお嬢さんは……」
誰も彼もが粉塵塗れになり、大量虐殺的破壊の余波に唖然茫然としている面々へ、
「シャキッとしろっ! チャンスだぞっ! 畳みかけろっ!!」
ゾロが檄を飛ばして喝を入れる。
ハッと我に返った麦わらの一味の面々が、右腕を喪失して中庭に倒れ悶えるオーズへトドメを刺し、その腹腔内からモリアを引きずり出してぶちのめすべく、動き出す。
真っ先に両翼が駆けだした、刹那。
「うぉおおおおおおおおおっ!! よくもや~~ってくれたなぁ~~っ!!」
壮烈な
「ごむごむのぉ~~ピストルゥッ!!」
憤怒の馬鹿力がこもったのか、これまで以上に高速のエクスパンド・パンチが放たれる。
「「!!」」
高速で迫る巨拳。サンジは咄嗟に横っ飛びし、紙一重で回避成功。
だが、ゾロは回避が間に合わない。ならば、と極太の肝っ玉を持つ男は即断し、魔獣の如き戦意を露わにした。
「一〇八煩悩鳳ッ!!」
真っ向から巨拳を打ち破らんと三刀流の剛剣が放たれた。大業物『秋水』が核となった激烈なる斬撃。然して圧倒的質量と運動エネルギーを相殺ならず。ゾロは巨拳の直撃を浴び、施設残骸に叩きつけられた。
一味の面々が悲鳴を上げてゾロを案じる中、オーズが宙へ跳び上がり、サンジへ向けて両足で
「ごむごむのぉ~スタンプ・ガトリングゥ~~!!」
まるで隕石の豪雨みたいな攻撃に呑まれ、サンジの姿が瓦礫と粉塵の中に消えた。
「ゾロ、サンジッ!? くそっ! このやろぉッ!!」
ウソップはオーズが着地する際を狙い、特大パチンコで塩の大袋を放った。だが、オーズは左腕をびよんと伸ばしてメインマスト城砦を掴み、落下軌道を強引に変更して回避。塩の大袋は虚しく外れ、瓦礫の山の中へ落ちる。愕然とするウソップをモリアの嘲けり笑う声が響く。
唐突にモリアの笑い声が止まる。
ロビンがハナハナの実を用い、モリアを全身に腕を生やして拘束。その太い首を締め上げていた。
「グゥウ……ッ! やってくれるじゃねェかッ!」モリアは首を絞められながらも冷笑し「
オーズの影から無数の蝙蝠を放ち、ロビンを襲わせる。
「うっ!」
影色の蝙蝠の奔流に押し倒されたロビン。その背後で蝙蝠達が集合し、モリアに似た影法師を形成していく。モリアが煽るように嗤う。
「ググ……俺の
「ロビンッ! 無茶しないでっ!」ロビンを案じ、ナミが退くよう叫ぶ。
「本体を倒せば、影も消えるはずっ!」
しかし、ロビンは勝負に臨む。背後の影法師が完成するより先にモリアを無力化すべく、生やした腕に全力を込めた。
「クラッチッ!!」
モリアの太い首が許容限界を超えて仰け反り、ゴキンッとへし折られた。が、影法師は消えず――否。モリア本体がロビンの背後に立っていた。
「――な」驚愕して碧眼を見開くロビン。
「俺は影法師といつでも居場所を逆転できる。オメェがコクピットの中で締めあげてンのは、影法師だ。関節技なんか効きゃあしねェ」
キシシと歯を擦るように嘲い、モリアはロビンの影を奪い取る。
影を失い、瓦礫の中に崩れ落ちるロビン。
「よくもっ!」咄嗟にナミがクリマタクトで殴りかかるも、モリアは哄笑しながら再び位置逆転し、オーズのコクピット内へ。
「隙有りですっ!!」「直接押し込めばっ!!」
ブルックとチョッパーがいつの間にかオーズの口元まで登っており、人獣形態のチョッパーが無理矢理オーズの口を開き、ブルックがウソップの外した塩の大袋を直接オーズの口腔内へ叩き込――めない。
「なっ!?」「どうしてっ!?」
オーズの口腔内からモリアの影の手が伸び、塩の大袋を押し留めていた。
「隙なんざねェぜ」
驚愕する骸骨とゴリラ姿の船医をせせら笑い、怪人は奪い取った塩の袋を投げ捨てる。
「ごむごむのぉ~鐘ッ!!」
オーズが首を仰け反らせ、ブルックとチョッパーごと顔面をメインマスト城砦の外壁に叩きつけた。崩落する瓦礫に交じり、チビトナカイに戻ったチョッパーとブルックが落ちていく。
自分達以外の仲間が全て倒された事実に戦慄するナミとウソップ。
そんな2人を嘲り笑い、モリアは蹴り砕かれた施設の残骸を睨む。
「出てきやがれ、“血浴”っ!!」
モリアの怒声に呼応するように瓦礫の山が吹き飛び、ベアトリーゼが這い出てきた。
「? ? ? なんでこっちがピンチになってんの?」
大技を使って超巨大ゾンビの右腕をもいだのに、なぜか味方が原作通りに全滅してる! ロビンまで原作通りに倒れてる!! なんで?
「あ~っ!! おまえ~~っ! よくも俺の右腕ぶっとばしたなぁ~っ!!」
ベアトリーゼに気付き、オーズが激怒する。
「ごむごむのぉ~ライフルぅ~っ!」
左腕をぶんぶん振り回し、怒りの高速エクスパンド・コークスクリュー・パンチをぶっ放す。が、ベアトリーゼは漆黒の右足で容易く巨拳を蹴り除ける。
「! 覇気か……っ! 小賢しい真似しがやってっ!」モリアが憎々しげに毒づく。
「テメェこそ政府に飼い馴らされてるわ、霧ン中に隠れながら雑魚狩り暮らししてるわ、ゾンビを搔き集めて海賊王ごっこしてるわ……随分落ちぶれたもんだ。ぶくぶく太り過ぎて覇気も誇りも失くしちまったか?」
アンニュイ顔で痛烈に煽り倒すベアトリーゼ。
モリアは凶相を憤怒で大きく、とても大きく歪め、宣言した。
「――テメェの影は奪わねェ。死体もゾンビにしねェ。八つ裂きにして鼠の餌にしてやる……ッ!」
Tips
オーズ
ベアトリーゼの大技で右腕を肩口から千切り飛ばされる。
ゾンビだから痛みはないはずだけれど、四肢欠損の精神的ショックは大きい。
ところで、腹がコクピットになっているなら、目覚めた時に食った大量の食糧はどこに・・・?
麦わらの一味
原作通り、総掛かり。
細かい描写は省かせていただいた。
ナミ。
ベアトリーゼの『大技』のためにクリマタクトで積乱雲を作った。
ベアトリーゼ。
味方がワチャワチャやっているところへ、超高熱プラズマ爆撃をしないだけの分別はあった。
しかし、選んだ技は大量虐殺技。そういうところだぞ。
超電磁ブースト・真空竜巻稲妻蹴り。
元ネタは銃夢:LO。超電磁空手家、刀耳の最大攻撃技。
原作では、電磁気でスーパーセルを作ってから技を放ち、全長500メートルの生物兵器の左腕を木っ端微塵に砕いた。