彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。
一部文章が欠落していましたので修正しました(12/20)


219:人間オークション会場炎上事件。

「ばっちぃアマス! ばっちぃアマス!」

“清浄な”空気を保つシャボンが弾けて慌てふためく天竜人の小娘。シャボンが超音波を防いだおかげで発狂せずに済んだことを、彼女は知らない。

 

 ロズワード聖は娘と違った。ただ黙し、サングラスの奥で眉目を吊り上げている。

 瞬く間に護衛が全滅した状況。天竜人を平然と害する海賊を前に、自分と娘を守る者が一人もいないという現実。海軍大将と軍勢を呼んだところで、今この場の自分達を救うことなど叶わない事実。

 

 ――彼らが到着した時、お前がまだ生きていればいいな?

 脳裏に邪神染みた天竜人の薄笑いが脳裏をよぎり、ロズワード聖は恐怖する。次いで、恐怖は怒りへ変わり、ロズワードの額に青筋が走った。

 

「下界の卑賎な雑民が、この世界の創造主の末裔たる我らにこの蛮行狼藉っ!! 許さん許さん許さんえっ!! 女は剥製、男は餌抜きガリガリ奴隷の刑にしてやるえっ!!」

 ロズワード聖が猛々しく怒号を挙げた直後。

 

 オークション会場の屋根が突き破られ、三騎のトビウオライダーが天井間際をフライパス。ロビンとブルックが飛び降り、ウソップが蹴落とされた。

 

 麦わらの一味最凶の理不尽爆弾ウソップがケツから高速落下していき、

「「ぎゃあああああああああああああああああああああああああっ!?」」

 速度と体重が乗ったウソップのケツが直撃し、顔面を石床へ思いっきり叩きつけられるロズワード聖。

 

 長っ鼻男のケツの下敷きになった父親を目の当たりにし、シャルリア宮が絶叫する。

「いやああ――――――――っ? お父上様ぁ――――――――――っ!?」

 

 あいたたた、とウソップはケツを押さえながら立ち上がり、顔面を床に埋めてビクンビクンと痙攣している男に気付く。

 げっ! と小声で呟きつつ、ウソップは失神痙攣中の天竜人へ詫びる。

「ごめん。“おっさん”」

 

 マジかよ。あいつ、天竜人をケツで潰した挙句におっさん呼びしたぞ。半端ねェ。イカレてるぜ……っ! キッド海賊団のパンクでメタルな船員達がそんな会話を交わす。

 

「あら。大立ち回りになってるかと思ったら、もう終わってたのね」

 完全制圧された会場を見回し、ロビンは小さく息を吐く。ウソップの傍らで天竜人が失神痙攣していたが、気にしないことにした。

 

「意気込んできたのに……またしても、またしてもっ!!」

 ロビンの隣で嘆くブルック。天竜人へ手を出した? それどころじゃない。一味の面々に実力を示す機会が中々得られない。そこが何よりの大問題だった。

 

 ルフィが追加された3人の仲間へ声を張る。

「お前ら、ケイミーを助けたらすぐに逃げるぞ! 海軍の大将と軍勢が来るんだってよ!!」

 

「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」とローが声を掛けた。

「ん? なんだお前」

 見知らぬモコモコ帽子男から唐突に声を掛けられ、ルフィが訝る。

 

「ああ。ルフィ君。そちらはハートの海賊団船長トラファルガー・ロー。私の命を救ってくれたスーパードクター兼海賊。それと、彼の素敵な仲間の皆さんだよ」

 ベアトリーゼの説明を聞き、ルフィはニカッと太陽のような笑みをローに向けた。

「おお! お前、リーゼを助けてくれたのか! ありがとな! 俺はルフィ! よろしく!!」

 

 人懐っこい笑みと挨拶を返され、ローは調子が狂うも、気を取り直して話を再開する。

「このオークションが始まる前から、海兵達が会場付近に潜んでた。この諸島には海軍基地があるからな。そこの部隊だろう」

 チャルロス聖がぶっ飛ばされて出来た壁の大穴を一瞥し、口角を大きく上げた。

「誰を捕まえたかったのかは知らねェが……まさか天竜人がぶん殴られる事態になるとは思ってなかっただろう。俺もこんな面白れェもんを見られるとは思ってなかった」

 

 と。

 

「おのれええっ!! 卑しい下々民共めっ!!」

 シャルリア宮が眉目を大きく吊り上げ、ステージを駆けあがる。

「魚如きのためにお父上様と兄上様に酷いことを……絶対に許さないアマスっ!」

 

 白痴振りが目立つ天竜人であるけれど、知性的愚昧さと知能の働きは別だ。シャルリア宮は海賊共――ルフィ達に最も効果的に“痛み”を与える方法が、救出対象の人魚を殺すことだと見抜いていた。

 ステージ上の金魚鉢型水槽に囚われたケイミーへ向け、シャルリア宮は拳銃を構え、仄暗い微笑を湛える。

「さぁ死ぬアマス、“魚”ッ!!」

 

「しまった! ケイミーちゃんがっ!!」「わぁああ!? ケイミーッ!!」

 サンジとパッパグの悲鳴が走り、水槽の中でケイミーが怯え竦む。瞬時にウソップが大型パチンコの照準をシャルリア宮へ合わせ、ロビンがハナハナの実の力でシャルリア宮を狙い、ゾロが斬撃を飛ばそうと構え――

 

 突然、シャルリア宮が白目を剥き、泡を吹いて倒れ込んだ。

 

 何が起きたのか分からぬ面々が目を瞬かせる中、“理解した”者達の眉間に深い皺が刻まれる。

 シャルリア宮が倒れ込んだ直後、ステージの奥壁がバリバリと引き裂かれ、フード付きマントを羽織った老人が裂け目からステージに現れる。

 

 白髪のオールバックと顎髭。背骨がピンと伸びた長身。丸眼鏡の奥に控える双眸は鋭く、右目を刃傷の痕がまたいでいた。ラフでカジュアルな格好に不釣り合いなほど、威容のある老人だった。

 

「おや。思いの外静かだな。騒ぎが起きてると思ったが……まぁオークションが終わりというところは変わらんな。金も盗んだし、私は賭博場へ戻るとするか」

 尋常ならざる有様のオークション会場にも然程興味を示さず、老人はスキットルを呷る。

 

「たちの悪ィ爺さんだな。金を奪うためにここに居たのか」

 壁を引き裂いた勇壮な男性巨人が顔を覗かせて呆れるも、

「あわよくば、私を買った者からも奪うつもりだったんだがね」

 ワハハハと老人は楽しげに笑い飛ばす。

 

 只者ではない雰囲気をありありとまとう老人に麦わらの一味が戸惑い、ローとキッド、キラーが『まさか』と目を剥く。

 

 ナミとチョッパーに介抱されていたハチが、血を失って青い顔に小さな驚きを浮かべた。

「レイリー? なんでこんなところに……」

 

「おお、ハチ!? ハチじゃないか! 久し振りだな。何しとる、こんなところで!」

 レイリーと呼ばれた老人はハチを認めると懐かしそうに面持ちを和らげ、

「その傷はどうした?」

 和らげていた表情を厳めしく引き締め直す。

 

「あ~、言わんでいいぞ。ふむ……ふむふむ……」

 事態を説明しようと口を開きかけたハチを、レイリーは手で制し、白い顎髭を撫でながらオークション会場をゆっくりと見回していく。倒れた天竜人一家。狂を発した客と職員。傷ついたハチと水槽に囚われた人魚。そして海賊達。

 

 傍目には老人が痕跡を頼りに推理を働かせているようにしか見えない。だが、見聞色の覇気に長けたベアトリーゼには違うものが見えていた。

 ――痕跡の過去視か。

 

「なるほど」レイリーは丸眼鏡のブリッジを右手中指で押し上げ「まったく酷い目に遭ったなぁ、ハチ」

 憂き世のやるせなさを嘆くように憐憫の言葉をハチへ掛け、レイリーは麦わらの一味を見回し、

「お前達が助けてくれたのか」

 目線を会場の発狂者達へ移し、呟く。

 

「気に入らん金持ち共だが……この有様はちと忍びないな」

 レイリーが双眸を鋭くし、威圧感を込めた瞬間。

 

 会場内の発狂者達がシャルリア宮と同じように白目を剥き、泡を吹いてバタバタと失神昏倒していく。まるで目に見えぬ津波が押し倒していくように。

 無事に済んだ者は麦わらの一味と、ハートの海賊団と、キッド海賊団だけ。

 

「な、なんだ? 今、何した!?」

 何が起きたのか分からず慌てふためくウソップやチョッパー。サンジは一気に警戒心を強め、ゾロは反射的に柄へ手を伸ばす。

 

 びりびりと痺れる肌の感覚に驚くルフィを、レイリーは真っ直ぐ見定め、

「その麦わら帽子。精悍な男に良く似合う」

 不敵に笑った。

「会いたかったぞ。モンキー・D・ルフィ」

 

「……俺と?」

 得体の知れぬ老人から予期せぬ指名を受け、強く困惑するルフィを余所に、レイリーはケイミーを金魚鉢型水槽から引き揚げ、一瞬で爆弾付首輪と太い鎖を容易く千切り剥がす。

 

 一味の面々が大きな吃驚を上げる中、

「今の……見たか?」「ああ。一瞬だけ手が黒く染まった。覇気って奴だな」

 ゾロはサンジとそんな会話を交わし、

「あの爺さんが会場の連中を一斉にぶっ倒したのは……ん? ベアトリーゼはどこ行った?」

 水を向けようとした相手がいつの間にか消えていた。

 

「ベアトリーゼなら、ステージ裏に行ったぞ。なんか探し物をするとかなんとか」

 ウソップがゾロの疑問に答えを与え、ルフィへ問いかける。

「それよりあの爺さんだよ。ルフィ、どういう知り合いなんだ?」

 

「いや、知らねェって。本当に! 誰か全然わかんねェ!」

 戸惑うままのルフィは困り顔を返すしかできない。

 

    ○

 

 人間オークション会場、ステージ裏の事務室。

 ベアトリーゼは壁に描かれたドフラミンゴ・ファミリーのマーク――この人身売買業者が王下七武海ドフラミンゴの傘下という証を見て舌打ちする。

 

「新興業者か。使えねェな」

 ドフラミンゴが王下七武海入りし、“新世界”ドレスローザ王国を征服したのは約8年前。この人身売買業者は古株だからこんなデカいハコを構えていたのではなく、ケツ持ちの身代がデカく資金を投資されていたからのようだ。

 

 ベアトリーゼの母親と恩人の少女『621』が“箱庭”へ奴隷として売り飛ばされたのは、少なくとも20年以上前。古い情報を得られそうにない。それでも、人身売買なんて危うい商売は狭い業界だ。必ず横のつながりがあるはず。

 

 押し込み強盗さながらに事務所の書類棚や机の引き出しから書類をぶちまけ、何かしら役に立ちそうな情報を手早く探していく。

 

 ちなみに、部屋の隅にあったキャビネットサイズの金庫は既に破られ、金品を奪われていた。おそらくレイリーの仕業だろう。ヤンチャな爺様だ。

 

 限られた時間で室内を捜索し、いくつかのそれらしいファイルを後ろ腰の雑嚢に突っ込む。ちらりと天井――の先にある屋根を窺う。

 ――くまが消えた……イレギュラーじゃないのか? 何しに来たんだアイツ。分からん。くまの意図が分からん。

 

 内心でぼやきつつ、ベアトリーゼは鍵束を手にし、会場へ戻った。

 ステージ袖で動きが取れず困り果てていた奴隷候補者達に向け、鍵束を放る。

「これから騒ぎが起きる。上手いこと逃げな」

 

『!!』奴隷候補者達は歓喜と感謝の喝采を上げ、我先と首輪を外していく。

 

 奴隷候補者達がガチャガチャと首輪を外す音が奏でられる中、

「……まさか、こんな大物と出会うとは……」

 会場内にローの呟きが響く。

「“冥王”シルバーズ・レイリー。なぜこんなところに伝説の男が……」

 キッドがどこか楽しそうに口の両端を大きく吊り上げていた。

 

「下手にその名で呼んでくれるな。この島じゃコーティング屋のレイさんで通っているのでな。もはや引退した身。平穏に暮らしたいのだよ」

 レイリーは不敵な微苦笑を2人の海賊船船長へ向けた。チョッパーとナミに手当てをされているハチの許へ歩み寄り、容体を窺ってから愛情ある小言を聞かせる。

「ハチ。昔からあれほどこの島を歩いてはいかんと言っておるのに」

 

「にゅ~……面目ない」

 ハチが申し訳なさそうに詫び、けれど意識がはっきりしている様子に、レイリーは面持ちを和らげて麦わらの一味へ礼の言葉を掛けた。

「ありがとう、君達。私の友人を救ってくれたな」

 

「礼なんていいよ。ハチもケイミーも俺達の友達だからな。助けるのは当然だ」ルフィは戸惑いを浮かべたまま「それより……俺に逢いたかったってのは?」

 

「……ひとまず話はあとだ。まずは此処を抜けねば」

 正面玄関通路の方へ鋭い眼差しを向けたレイリーの言葉を補うように、ローが言った。

「表は完全に包囲されたみたいだがな」

 

 その直後、オークション会場の外から拡声器を用いた勧告が届く。

『速やかにロズワード一家、及びに人質を解放しなさいっ!! じき、本部より大将が到着する! 命が惜しければ、早々に降伏したまえ!! 分かったか、ルーキー共っ!!』

 海軍の物言いから察するに、オークション会場内に居る海賊達の素性を掴んでいるらしい。

 

「完全に共犯扱いか」

 くつくつと喉を鳴らすロー。

 

「“麦わらのルフィ”が噂以上にイカレた奴と分かったんだ。この事態に文句はねェ。が、大将と今、ぶつかるのはゴメンだぜ」

 にやにやと嗤っていたキッドはパンクなデザインのコートを翻し、

「長引くだけ兵も増える。先に行かせてもらうぞ」

 キラーを始めとする仲間達を連れて正面玄関通路へ歩き始め……不意に足を止めて肩越しにルフィとローを窺い、嘯く。

「もののついでだ。お前ら、助けてやるよ。表の掃除はしてやるから安心しな」

 

 その上から目線な言い草が、ルフィとローのプライドを鋭く刺激した。

『カチーン』

 2人の海賊船長の脳内で同時に鳴り響く憤慨の音色。

 

「……俺も先に出るからよ。お前ら、ハチとケイミーを頼んだぞ」

 ルフィは通路階段を上り始めた。

 

「俺も先に出る。ベポ、俺の刀を寄こせ」

 ローは座席から立ち上がり、シロクマのベポに預けていた長刀を受け取るや正面玄関通路に向かって歩き出す。

 

「ほんっとにもう! 単純なんだから!」

 他所の海賊船長の“煽り”にあっさり乗ったルフィへ小言をこぼすナミ。

「ともかく脱出だ。急ごうぜ」

 ウソップの言葉に背を押され、皆が動く。

 

 フランキーがケイミーとパッパグを背負い、レイリーがハチに肩を貸す。魚人差別と天竜人の横暴を見て鬱憤を溜めていた両翼が、獰猛な顔つきでルフィ達の背を追う。活躍の機会を欲していたブルックがヨホホと笑いながら両翼に続く。

 

 レイリーは共に脱獄した巨人へ問う。

「君はどうする?」

 

「同じ奴隷になりかけた縁だ。ひとまずこいつらと逃げる」

 巨人は解放されて喜ぶ奴隷達を指差し、礼を言った。

「爺さん! 麦わらの一味! またいつかどこかで会えたら、この恩はきっと返す! ありがとうな!」

 

「ありがとう!」「ありがとうございます!」「恩に着ます!!」

 巨人と共に感謝の言葉を訴える奴隷候補者達。涙を流す者はもちろん、拝む者さえいた。

 

「おう! 良いってことよ! お前らも元気でな!」

 男前に応えるウソップ。流石は狙撃のスーパーヒーロー。サムズアップがよく似合う。

 

      ○

 

 オークション会場を包囲する海兵達は、頑張った。

 なにせ相手が相手だ。

 

 ゴムゴムの実の能力者“麦わら”のルフィ(賞金3億4000万ベリー)は、自身の肉体を変幻自在に伸縮させたり、膨張させたり。無茶苦茶だ。

 

 ジキジキの実の能力者“キャプテン”キッド(賞金3億1500万ベリー)は、自身の身体から強力な磁気を放ち、周辺の磁性体物を自在に操る。滅茶苦茶だ。

 

 オペオペの実の能力者“死の外科医”ロー(賞金2億ベリー)は、特殊な空間を作り出し、その空間内のあらゆるものを恣に出来る。もはや理解が及ばない。

 

 そんな怪物同然の能力者が3人。しかも3人とも“億越え”の実力を持つ。

 彼ら三人の部下達も猛者揃いだ。キッドの相棒“殺戮武人”キラーは億越え。麦わらの一味に至っては、一味全員が賞金8桁級(ペットは除く)という超凶悪海賊団。

 

 何より、この場には“血浴”のベアトリーゼが居た。海軍は箝口令を敷いていたが、人の口に戸は立てられぬ。エニエスロビー島沖でバスターコールを単独撃破し、数千人の海兵を一人で殺傷した女妖の噂は、海兵の間でしっかり広まっていた。

 

 凡庸な海兵達にはあまりにも荷が重い相手。実際、3人の船長達だけで容易く包囲を崩されてしまった。

 

 それでも、海兵達は頑張った。

 背中に背負った正義に相応しい勇気を発露し、化物の群れへ立ち向かった。

 すなわち――ワンピース名物の混戦乱闘の始まり。海兵達が“ヤバレカバレ”な総攻撃へ打って出た直後。

 

 戦いの混沌を女妖が引っ掻き回す。

 オークション会場の屋根に閃光が走り、煌々と炎上し始めた。そして、周辺に女の声が響く。悪意の愉悦をたっぷり含んだ声色のアンニュイな調子で。

『早く助けないと……天竜人がバーベキューになっちゃうぞぉ』

 

 ローが呆れ顔で呟く。「血浴屋め……イカレてる」

 キッドが笑う。「イカレてるのは麦わらだけじゃねェらしい!」

 パッパグが慄く。「悪魔みてェな女だ……っ!」

 

 包囲部隊の指揮官は血相を変えて叫んだ。

「人質、いや、ロズワード聖とシャルリア宮をお救いしろぉおおおおおおおおおっ!!」

 

 現場海兵の心情としては、天竜人以外の連中が死んだってかまわない。どうせ人身売買をするようなクズ共だ。天竜人が例外の理由は、救出に失敗した場合、どんな恐ろしい事態になるか分からないからだ。

 

 混沌と戦塵と火災煙に満ちていく中で、

「一緒にじゃれるのはここまでだ。じゃあな、麦わら。トラファルガー」

 キッドは2人の海賊船船長へ牙を剥くように告げた。

「次に出くわした時は容赦しねェ……ッ!!」

 

「そっか」ルフィはにやりと白い歯を見せ「でも、ひと繋ぎの大秘宝(ワンピース)は俺が見つけるぞ」

 

 戦いの喧噪の中でさらっと述べられた言葉を、キッドもローも聞き逃さない。

 

「ククク……お前も“それ”を口にできる男だったか」

 キッドは楽しげに喉を鳴らし、凶相に猛々しい笑みを湛えて2人の海賊へ告げる。

「“新世界”で会おうぜ……っ!」

 キッドは返事を待つことなく相棒のキラーと一味を率い、乱闘の中へ突き進んでいった。

 

 パンクでメタルな海賊団を見送り、ローもルフィへ別れを告げる。

「……俺も行く。じゃあな、麦わら屋」

 

「おう!」

『友達の友達も友達』理論のルフィはニカッと親しげに笑い、ローへ手を振った。

「またな、()()()!!」

 

「!?」

 予期せぬ呼び名と馴れ馴れしさに面食らうロー。

 そこへ、いつの間にか近づいていたベアトリーゼが、要らぬ火種を放り込む。

「またデートしましょ、ドクトル。それにハートの海賊団の皆さんもお元気で」

 

 官能的な投げキッスをされ、すっごく嫌そうな顔のロー。「またねーっ!」と陽気に別れを告げるベポ達。

 

 そんな別れのシーンへ待ったをかける男が居た。

「そこのモコモコ帽子野郎ッ! なんでベアトリーゼさんに熱い投げキッス貰ってんだぁっ!? しかも、デートだとぉっ!? どういうこったテメェっ!! 返答次第じゃここが人生の終着地になるぞコラァッ!」

 煩悩の塊サンジが恥じることなく嫉妬を晒す。

 

「それ、男の嫉妬だな!! 醜いぞ、サンジッ!!」

 ゾロの教えを守り続けるチョッパー。可愛い。

 

「あんた達、この乱闘中に何遊んでんのっ!! 真面目にやんなさいっ!!」

 ナミの叱声も加わり、たちまち麦わらの一味は大騒ぎ。

 

 しばし唖然としていたローは、我に返るや頭痛を堪えるように眉間を押さえ、能力を発動する。

「……シャンブルズ」

 瞬間、ローとベポ達の姿が消えた。どうやら能力の置換術で撤収したらしい。

 

「おもしれえ奴らだったな!」

 ルフィは新しい友達が出来たと言いたげにニッコニコしながら、仲間達へ吠えた。

「よーし、俺達もズラかるぞ! にっげろ―――――っ!!」

 




Tips
”冥王”シルバーズ・レイリー
 原作キャラ。作中では76歳。非能力者の覇気使い。
 海賊王ロジャーの右腕だった老人。
 ロジャー海賊団の解散後はシャボンディ諸島でコーティング職人のレイさんとして隠棲している。

 CVは故・曽我部和恭を園田啓一氏が引き継いだ。園田氏は伝説のアニメ『ボボボーボ・ボーボボ』で天の助を演じてた人で、ワンピースでは6役を兼役。

迫撃砲
 オークション会場の包囲戦に登場した武器。
 一般に迫撃砲は榴弾を曲射する歩兵直掩火器だが、この場に登場した迫撃砲はバカでかい小銃型直射砲の模様。謎の武器。

ウソップ。
 天竜人に危害を、それも尻で潰すという屈辱的な暴力を振るった男。

ベアトリーゼ。
 いいかげんな原作知識のせいで、くまの動きに翻弄されている。
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