彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、100xさん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


231:シン・頂上戦争

 海兵コビーは入営して数ヶ月で曹長まで昇進しており、その実力は目を見張るものがある。

 が、逆に言えば、実力が高いだけの新兵だ。海軍という組織の表裏も清濁も正邪も理解していない。軍紀や軍法を知識として頭に入れていても、肌身で理解してない。

 このような戦争における論理も分かっていない。

 

 だから、コビーは疑問を抱いた。

 この戦争に“勝利”したのに、なぜ血に飢えたように海賊達を追い討つのか、と。自分達の損害も大きいのに、そこまでする必要があるのか、と。

 

 先にも触れたが――その必要は、大いにある。

 数千人の新世界級の海賊やインペルダウンに収監されるような凶悪な脱獄囚を逃したら、どれほどの惨劇が生じるか。ここで一人でも多く減らせたなら、それだけ涙と血を流す市民が減らせるのだから、追撃は正しい。

 

「そこまでだぁああああああああああああああっ!!」

 戦いをやめさせようとしているコビーが全面的に間違っているのだ。

 

 しかし、コビーには自分の過ちが分からない。

 しかし、自身の心のままに動くだけの勇気が、コビーにはあった。

 

「もうやめましょうよっ! もうこれ以上戦うの、やめましょうよ!!」

 コビーは純情な思いの丈を全身全霊で訴える。

「命がもったいないっ!!」

 

 自身の前に立ちはだかる歳若い海兵の発言が、“赤犬”サカズキはまったく理解できない。いや、サカズキだけではない。海兵どころか海賊や脱獄囚達さえ、コビーの発言がまったく理解できなかった。

 

 コビーは涙のみならず鼻水と涎でぐちゃぐちゃにした顔で必死に訴え続けるが、彼らの心には微塵も欠片も届かず響かない。だって、コビーの方が完全に間違っているから。

 

 ――何言ってんだ、こいつ。

 コビーの言葉を聞いた者達の感想は、ひどく冷めていた。

 

 眼前で戯言を聞かされたサカズキは、少年兵が錯乱したのかと思った。が、どうも正気らしいと察して『こいつは抗命している』と判断。

 戦場において敵前逃亡と抗命は銃殺刑ものの罪であるから、サカズキはコビーを処分すべくマグマの豪拳を振り下ろす。少年兵だろうと容赦はしない。

 

 だが、その灼熱の拳は刃に妨げられ、コビーに届かない。

 

 サカズキが、周囲の海兵や海賊達が、コビーを救った隻腕の男の正体を認識した瞬間、愕然と息を呑み、慄然と凍りつく。

 

「よくやった、若い海兵」

 サカズキの拳を止め、コビーの命を救った隻腕の男は愛剣を鞘へ納めながら、周囲をゆっくりと見回していく。それだけで海兵は戦いを止め、海賊と脱獄囚は足を止めた。

「お前が命を懸けて作り出した“勇気ある数秒”は、良くか悪くか世界の運命を変えた」

 

 張りのある美声に滴るような男気を乗せ、四皇“赤髪”シャンクスは告げた。

「この戦いを終わらせに来た」

 

     ○

 

 ”死の外科医”トラファルガー・ローはルフィとジンベエを収容し、愛船を潜航させて一目散に逃げていく。

 

 マリンフォードを見る影もなく破壊し尽くした激戦が止まり、島は水を打ったような静けさに満ちていた。

 誰も彼もが“赤髪”シャンクスと彼の海賊団が放つ圧倒的威容と存在感に呑まれ、動けない。例外はルフィを乗せた潜水艦を追うべく、軍船を奪って海へ出たハンコックくらいか。初恋中の乙女(29歳)は無敵だ。

 

 シャンクスは朗々と言葉を紡ぐ。

「これ以上の戦いは犠牲を無暗に拡大させるだけだ。まだ暴れ足りねェ奴がいるのなら、前に出ろ。俺達が相手をしてやる……っ!」

 有無を言わせぬ絶対的圧力。

「全員、俺の顔を立ててもらおう」

 

 否を告げられる者は1人も居なかった。

 

 白ひげ海賊団一番隊隊長“不死鳥”マルコがシャンクスの調停を受け入れると、海賊達は皆、武器を納めてその場にへたり込み――愛する父と末弟と兄弟達の死に涙する。

 

 黒ひげティーチは傲岸不遜な高笑いを挙げながら、悠々と戦場から去っていく。

 

 そして、海軍もセンゴクが拳を降ろし、最強硬派のサカズキまでもが矛を収めたことで、戦闘行為を完全に停止した。

 

「四皇“赤髪”の介入か。ここまでだな」

 ――ここまで原作通りでイレギュラー無し、か。私が参加しなかったせいか?

 思案していたベアトリーゼはふと気づく。フランマリオン聖が酷い不機嫌顔で“赤髪”を睨んでいることに。どれだけ毒舌を浴びても邪神のように嗤っていた男が“赤髪”に明確な反感……いや、敵意を向けている。

「?……“赤髪”と何か関わりがあるのか?」

 

「あやつは――」

 フランマリオン聖が毒づくように言葉を編み始めた時、モニターの中で赤髪が再び口を開いた。邪神と蛮姫の会話は途切れ、2人の意識は海軍や海賊達と同じく赤髪に集中する。

 

「白ひげとエース、2人の弔いは俺達に任せてもらう。この戦いは全てが世に発信され続けているんだ。これ以上、そいつらの死を晒すような真似は認めない」

「分かった……お前なら良い。責任は私が取る」

 センゴクはシャンクスの要求を呑み、戦場に号令を轟かせた。

「戦争は………終わりだぁっ!!」

 大海賊時代開幕以来、最大の戦い“マリンフォード頂上戦争”はここに終わりを迎え、

 

 

『それは違う』

 

 

 電伝虫から声が響く。

 穏やかで静かな、然して威厳に満ちた男性の声が終わったばかりの戦場と世界へ届く。

 突然の割り込み通信に戸惑う海兵。何事かと訝る海賊達と脱獄囚達。不安げにモニターを注視する世界中の人々。

 

「サプライズが続いて飽きさせないえ。今度はなんだえ?」

 ぐふふと嗤うフランマリオン聖と違い、ベアトリーゼは酷い渋面をこさえた。

 ――ここでイレギュラーかよ。

 

 声の主は告げる。

『戦いは終わっていない』

 

     ○

 

『戦いは終わっていない』

 モニターから響く、静かで威厳に満ちた声。

『本命はこれからだ』

 

「貴様、何者だ……っ!!」

 センゴクが通信兵の抱える映像電伝虫へ向け、荒々しく誰何する。

『大海賊白ひげの死は海賊王ゴールド・ロジャーが興した大海賊時代を、より強く加速させ、より大きくうねらせるだろう』

 も、相手は名乗ること無く言葉を続けた。

『しかし、足りない。白ひげの死だけでは、慮外者達を海へ駆り立て、賊徒達を勢いづかせるだけだ。時代と世界を変えるためには、より強い衝撃が必要だ』

 

 

 不意に、マリンフォードやシャボンディを始め、世界各地に設営されていた映像の一部が強制的に切り替わる。

 

 死闘の舞台だったマリンフォードと打って変わり、大きく立派な港町が映し出された。人々は『どこだ?』と訝るも、街の背後に広がる赤き土の大巨壁を目にし、すぐに理解する。

「レッドポートだ……」

 

 聖地マリージョアのお膝元に築かれた大港町。

 レッドポートへ大型の豪華客船が入港していく。掲げられた旗は天翔ける竜の蹄紋。天竜人のお召し船だ。

 

 

『この世界が偽神に支配され、800年。人民は搾取され、虐待され、恥辱を受けることに慣れきり、鎖に繋がれていることすら忘れている。人民は飼い慣らされ、五分の意地すら失った家畜に成り果てている。それがこの世界だ』

 声の主は告げる。静かに、だが、壮烈な意志を込めて。

『こんな世界は認めない。断固として拒絶する』

 

 

 お召し船が専用埠頭へ進入した直後、大型倉庫の屋根壁が吹き飛ぶ。

 瓦礫と粉塵の中から、異形の巨人が現れた。

 

 全身甲冑を着こみ、下半身は馬体のような四脚。まるでケンタウロスを思わせる姿の巨人は右に巨大な野太刀を握り、左に長槍を抱えていた。

 

 ケンタウロスの巨人が凄絶な鬨の雄叫びを挙げ、天竜人のお召し船へ向かって長槍を投擲する。

 

 長槍が対艦ミサイルのように豪速で走り、豪華客船へ突き刺さった。舷側を穿ち貫く激烈な衝撃に豪華客船の巨体が水面から浮き上がり、くの字に折れ砕ける。自衛用に搭載された砲の火薬や砲弾、諸々の設備用燃料などが衝撃の熱量に誘爆し、埠頭に爆炎の華が咲いた。

 

 天竜人を乗せた船が轟沈していく映像に、世界は衝撃を受ける。

 海軍と王下七武海も、海賊達と脱獄囚達も、世界中の人々も、天竜人を害するという禁忌的凶行を目の当たりにし、唖然と固まった。

 

 

『海賊達が起こす変化では足りない。魂の芯まで奴隷根性に染まった衆愚の意識を啓蒙するには、もっと分かり易い事実を教示せねばならない』

 

 

 ケンタウロスの巨人は上体と前肢を高々と上げながら恐ろしい戦叫を轟かせ、レッドライン壁面に設置されたシャボン式昇降リフト『ポンドラ』へ向け、中央大通りを激走していく。

 

 レッドポートの警備兵達や官憲が血相を変えて異形の巨人を止めるべく中央大通りへ殺到し、一般市民は進撃する異形の巨人に怯え、中央大通りから逃げ惑う。

 

 その全てを、ケンタウロスの巨人は鋼の蹄で踏み砕き、蹴り砕き、轢き潰す。軍人も官憲も市民も、男も女も老人も子供も区別なく。

 

 

 突如として描かれる凄惨な蛮行に誰もが言葉を失う中、センゴクが怒号を放つ。

「マリージョアと新世界側レッドポートの部隊へ緊急出動の通達を出せっ! 航行可能な船に戦える者を乗せ、今すぐ現地へ向かわせろっ!!」

 

『その意気は買うが、マリンフォードからは間に合わない』

 淡々と告げられる指摘を、センゴクは否定できない。歯噛みして唸り、吠える。

「貴様は何者だっ! 何をしようとしているっ! 答えろっ!!」

 

『あの烈士はこれからマリージョアへ赴き、目に入るものを全て殺し、目に映るものを全て壊し、目に見える全てを焼き払う。奴らがやってきたように。君なら言わんとしていることが分かるだろう? センゴク元帥』

 そこかしこから息を呑む音色が連ねられた。モニターの前で唖然愕然慄然となる海軍と海賊と大衆。

 

「復讐か……っ!」

『いいや、違う』

 声の主は苦悩顔のセンゴクが発した言葉を即座に否定した。

『言ったはずだ。これは啓蒙だと』

 

 

 レッドライン壁面にある『ポンドラ』乗降場へ、ケンタウロスの巨人が迫る。巨大な野太刀と蹄が返り血に染まり、港から一直線に伸びる足跡は血肉と骸で飾られていた。

 

 赤き土の大巨壁に設けられた昇降リフト『ポンドラ』は2基。1基はマリージョアへ運び込まれる物資や資源を搬入中で。もう1基はレッドポートへ降下中で、天竜人夫妻が乗っていた。

 

「あれは、なんだえ?」

 丸眼鏡と顎髭が特徴的なカマエル聖が顔を小刻みに揺らしながら問うた。

 

 吊り目の夫人と付き従う黒服や護衛達が、カマエル聖が示す眼下を窺い、ぎょっと目を剥いた。

 港で大型豪華客船が煌々と燃えていた。中央大通りが血と屍に満ちていた。

 そして、半人半馬の巨人が血塗れの野太刀を手にポンドラ乗降場へ迫っている。

 

 カマエル聖の侍従が血相を変えて叫ぶ。

「降下中止、降下中止っ!! 今すぐマリージョアへ引き返せっ!! 早くしろっ!!」

 しかし、ポンドラは止まらない。悪鬼のようなケンタウロスの巨人が迫るレッドポート側乗降場へ降下していく。

 

 事の重大さをようやっと理解し、天竜人夫妻がなんとかしろなんとかしろと喚き散らすが、ポンドラの降下は止まらない。

 

「なんとかするえーっ!」「何とかするアマスーっ!」

 カマエル聖夫妻が完璧なユニゾンで叫んだ直後、ケンタウロスの巨人が放った大斬撃がポンドラを両断し、大地へ撃墜した。

 

 強化シャボンを失い、誘導・保安ケーブルを断ち切られたリフトが勢いよく墜落し、巨人戦士の奥義ですら傷つけられぬ超頑強な赤き土の地面へ叩きつけられ、飴細工のように砕け散る。黒服や護衛、奴隷は水風船のように体躯が弾け砕けるか、べしゃりと圧潰した。

 

 如何なる奇蹟か、カマエル聖は生きていた。墜落の衝撃と全身打撲の激痛に朦朧としながらも、踏み潰されたカエルみたいな姿になった細君を目の当たりにし、カマエル聖は愛する者を失った慟哭を挙げ――悲鳴はすぐさま自身の苦痛から発せられる絶叫に切り替わる。

 ケンタウロスの巨人は巨大な野太刀の切っ先でカマエル聖の身体を貫き、高々と掲げた。

 全世界に串刺しにされた天竜人が晒される。

 

 

『人民よ、刮目せよ。これが諸君らを支配し、踏み躙ってきた”敵”の正体だ。神でも竜でもない、この貧弱で惰弱で脆弱な”人間”が、諸君の未来を奪い続けてきたのだ』

 

 

 切っ先で泣き喚き、命乞いするカマエル聖を一瞥し、ケンタウロスの巨人は野太刀を振るった。カマエル聖が勢いよく投げ飛ばされ、レッドポートを見下ろすように描かれた巨大な十字紋――世界政府の紋章のど真ん中に叩きつけられ、ぐしゃりと爆ぜた。

 

 天竜人の血に塗れた十字紋を切っ先で示し、異形の巨人が戦叫を挙げた。まるで地獄の底から出てきた悪鬼のように。

 

 あまりにも凄惨な”竜殺し”の光景に静まり返った世界へ、声の主は告げた。

『人民よ、蒙を啓け』

 

    ○

 

 マリンフォード頂上決戦に際し、『海賊絶対殺す軍団』海軍遊撃隊は招集されていなかった。これは各方面から精鋭を抽出したことで生じる戦力低下を補うためであり、遊撃隊は新世界側のレッドポートに留め置かれていた。

 

 異形の巨人が天竜人を乗せた豪華客船を撃沈した時点で、海軍遊撃隊は司令官ゼファーの独断で緊急出動していた。六式を扱える最精鋭を選抜してマリージョアを通り抜け、大巨壁を飛び降りた。六式の空中歩行術”月歩”を落下傘代わりにした酸素マスク無しの高高度降下強襲。気圧の激変で肺が破裂しかねない無茶だ。

 

 ゼファーを先頭に最精鋭の遊撃隊員達は流星のように落下していく。風圧と荷重で皮膚が波打ち、骨が軋み、臓器が圧されるが、海軍最精鋭の遊撃隊員達は苦悶一つこぼさない。

 

 風圧に歪む視界の中でレッドポートが鮮明になっていき、黒煙を昇らせる埠頭、血塗られた中央大通り、リフトの残骸が散乱するポンドラ乗降場、それに”敵”の姿がはっきりと見えた。

「半人半馬の巨人っ? あんなの見聞きしたことがありませんっ! 未確認種族でしょうかっ!?」

 副官を担う女性海兵アインが猛烈な風音に負けじと吠える。

 

「わからんっ! だが、やるべきことは一つだっ! 奴を討つっ!!」

 海楼石仕込みの義手を装着した老雄“黒腕”ゼファーが付き従う精鋭達に叫ぶ。

「見たところ敵は単騎のようだが、伏兵がいるものとして動けっ!!」

 

『了解っ!』

 意気軒高に応える精兵達を一瞥し、ゼファーは海楼石仕込みの右義手(スマッシャー)を握り固めた。月歩で減速することなく、ミサイルのようにケンタウロスの巨人へ一直線に突撃し――

「スマッシュバスターッ!!」

 

 高高度降下の速度を乗せた激烈なる一撃を、ケンタウロスの巨人が野太刀の斬撃で迎え撃つ。

 ただでさえタフな巨人族戦士すら仕留められる剛撃に高速度エネルギーを乗せた拳撃と、武装色の覇気で漆黒に塗り固められた巨大野太刀の斬撃が激突し、壮絶な衝撃波がレッドポートを駆け抜けた。

 

     ○

 

 ゼファーの読みは正しかった。

 レッドポートの各埠頭は、不気味(ガッポイ)なマスクを被った黒衣の魚人と手長足長の部隊から襲撃を受けており、港湾設備や船舶、倉庫などが手当たり次第破壊され、警備の海兵部隊は勿論、港湾労働者や船員、乗客まで無差別に襲われていた。

 

 不気味なマスクを被った襲撃者達は、ケンタウロスの巨人が撃沈したお召し船を特に狙っていた。

 水面で藻掻く者達や必死に泳いで陸へ辿り着いた者達を片っ端から殺し、着底したお召し船内へも侵入。船内に取り残されていた人々を虱潰しに殺して回りながら、最高価値目標(HVP)を探す。

 

 その必然的結果として、海面上に屹立した船首部で改造人間兵器同士の戦いが始まった。

 単眼ゴーグルと覆面で顔を覆ったフランマリオン製純粋ヒト種型モッズ。

 不気味(ガッポイ)なマスクを被った“抗う者達”製亜人種型モッズ。

 

 負傷も死も恐れない者達の戦いは、互いに機能停止へ至るまで徹底的に身体を破壊し合う凄惨な暴力だった。執拗に弾丸を叩き込み、爆発物で損壊し、刀剣類で四肢を斬り落とし、胴を引き裂き、首を刎ねる。

 

「気に入らんえ」

 浸水が及ばぬ船首部の一角、侍従とモッズ達に守られて籠城中のフランマリオン聖は、心底腹立たしそうに鼻を鳴らす。

 

 襲撃時、甲板テラスに居たこの肥満体はモッズ達のおかげで難を逃れていた。もっとも、傍に控えていた黒服や警護員は全滅。侍らせていた美女美少女奴隷達は行方不明(多分、死んだ)。

 

 そして、“血浴”のベアトリーゼもまた、襲撃の混乱の中で消息不明だ。海楼石の錠で拘束していたから、最悪、海へ落ちていれば溺死しているだろう。死んだなら骸をきっちり回収しておかねば、とフランマリオン聖は心のメモ帳に大文字で書き込む。

 

「気に入らんえ」

 ずぶ濡れのフランマリオン聖は護衛のモッズ達が倒した手長足長や魚人の残骸を見下ろし、強く舌打ちをする。

「奴らのモッズ、ベースは当家の技術ではないか……っ! 気に入らん。猛烈に気に入らんえ……!」

 

「聖様。今は持ち堪えておりますが、ここは危険です。一刻も早く避難しませんと」

 侍従の進言に、フランマリオン聖は眉間に皺を刻む。

「それこそ敵の思うつぼだえ。奴らがワチキを仕留められるなら、この区画ごと破壊しているえ。そうせんのは、ワチキが死んだら困るからだえ」

 

「! では敵は御身の拉致を……」

「マリージョア襲撃など大風呂敷を広げておるが、こんなド派手な真似をして実現できるものかえ。あのデカブツは陽動。本命はモッズによるワチキの拉致誘拐だえ」

 フランマリオン聖はいつもの癖で美女美少女奴隷の乳を揉もうとするが、手は空を切るだけ。再び舌打ちし、悪辣な顔つきで呟く。

「ロズワードの一家が囮になれば好都合だが……向こうの安危は?」

 

「不明です」女性型モッズが答えた。「捜索に出した斥候から発見の報告は無し。海軍にもいまだ連絡がつきません」

 三度めの舌打ちをし、フランマリオン聖は贅肉塗れの腕を組み、仰々しく顔を歪めた。

「気に入らんえ……っ!!」

 

 

 後に『レッドポート事変』と呼ばれる戦いはまだ始まったばかりだ。




Tips

コビー
 原作キャラ。
 実はルフィ以上の成長性を持つとんでもない奴。
 ネットミーム化した『命がもったいない』は常識的に言えば、追撃を妨害した重大な抗命行為。普通はその場で処刑されるか、軍法会議送りにされる。

CVは超実力派の土井美加。アニメ・吹き替え共に出演作多数。
 また、名門劇団昴出身で女優としても精力的に活動している。
 ハーメルン読者にはマクロスの早瀬未沙、ダンバインのマーベル・フローズンを演じている人、といえば分かろうか。

”赤髪”シャンクス
 原作キャラ。
 この人も出自にいろいろと秘密と謎がある。

CVは池田秀一。言わずと知れた超有名声優。
俳優としても有名な人で、声優業に軸足を移す前は子役時代から数多くの実写作品に出演していた。

カマエル聖夫妻
 劇場版のネームドモブ。
CVは芸人の三村マサカズ。

”黒腕”ゼファー
 劇場版キャラ。
 海軍大将で遊撃隊司令官。劇場版では海軍に失望して反乱を起こす。

CVは大塚芳忠。この人も超有名声優。ハメ読者に説明の必要は無かろう。

”抗う者達”
 オリ設定。
 海軍が戦力を招集して各方面が手薄になったところを狙い、頂上戦争で疲弊した直後にレッドポートでテロを起こした。

ガッポイなマスク。
 古典FPS『ハーフライフ』に登場するコンバイン兵みたいなマスクということ。

ケンタウロスの巨人。
 詳細は追々。モデルは銃夢の電。

ベアトリーゼ。
 テロに巻き込まれて消息不明。詳しくは次回。
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