彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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タナたらさん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


245:潜れ潜れとにかく潜れ。

 ベアトリーゼは超巨大マングローブ群の根に沿って、緩やかに潜航していく。

 

 海底まで直線で1万メートル。フルサイボーグ・トビウオライダーの海上航行性能なら5分かからず走破出来る距離だが、潜航となればそうはいかなかった。

 急激な水圧の変化はあまりにも危険すぎる。じっくりゆっくりと潜っていくしかない。

 

 エッグヘッド製ハイテク潜水服の鰓肺エアシステムが潜水服内に海中の溶解酸素を取り込み、莫大な水圧に抗う。

 エッグヘッド製フルサイボーグ・トビウオライダーの頑健な体躯は凶悪な水圧を物ともしない。

 ただし、座席後ろや側部に取り付けた荷物はシャボンで包んである。鞄やケースが極悪な水圧に耐えきれないから。

 

 深度計の数字が増えていくにつれ、海中から明度が失われていく。

 華やかで楽しい受光層を抜けて薄明層に達すると、夜闇の帳が降りたような暗闇が支配していく。

 音響系センサーが捉える海流の音色が奈落から届く声のように思える。”何か”が突発性深海恐怖症に誘おうとしているのかもしれない。

 

 やがて、本能的な恐怖を刺激する暗黒が視界を満たした。

 しかし、完全に光が絶えることは無い。

 

 チョウチンアンコウに代表されるように自ら光を放つ深海生物が少なくない。そのため、漆黒の海中に夜空の星々みたく大小強弱の様々な煌めきが散在している。

 

 ハイテクヘルメットのバイザー内側に貼られた積層被膜ディスプレイに投影される幻想的な光景。

 然して、星空の只中に居るような情感に浸ることは無い。海中特有の圧迫感と度々ディスプレイ内に表示される警告表示によって妨げられる。

 ヘルメットとサイボーグ・トビウオライダーのセンサー系とソナーが海中を散歩する怪物達を捉える度、『付近に脅威が存在』とか『不明動体物が接近』とか警告表示を寄こす。

 

 この世界では珍しくない巨大な海棲生物。奇々怪々な姿の深海生物。この世界特有の異様な海獣。それに海の真の支配者たる海王類。巨大怪物達が次から次へと現れる。

 幸い、海楼石の石粉を混ぜ込んで造られた鱗甲と外殻のおかげか、周囲の怪物達はベアトリーゼが“見えてない”。

 

 それでも、かつて護送船から逃亡した後に遭難し、巨大海王類に丸呑みされた時のトラウマが克明に蘇り、体が震える。丸呑みは嫌だ丸呑みは嫌だ丸呑みは嫌だ丸呑みは嫌だ……

 

 深海の星々。深淵の百鬼夜行。

 感動と恐怖を同時に味わい、ベアトリーゼはヘルメット内でぼやく。

「……マリージョアから“新世界”へ行けばよかった」

 

 漆黒の海中を進み、怪物達の間を通り抜けながら、ベアトリーゼは幾度も現在位置を確認する。なんせ周囲にはランドマークが一切ないし、光景に変化がない。既に上下左右の平衡感覚がマヒしていた。

 ディスプレイに表示される深度計や水圧系。外水温。海流の向きと速度。潜航時間。トビウオの姿勢状態と潜航角度と速度。計器盤の脇に真空パックして貼った海図。魚人島を示すエターナルポース。こうした情報がなければ、自分が今、どこにいるのかまるで分からない。

 

 おまけに、どれだけ操縦と潜航に集中していても、脳ミソの片隅から想像力が勝手に意地悪をしてくる。

 潜水服の防水やエアに不調が起きれば、能力者の弱点特性も手伝って即座に溺れ、溺水窒息するより早く水圧に内臓が圧潰して死ぬだろう。

 トビウオライダーがもしも故障したら、この暗黒世界で身動きが取れず絶望感と孤独感に狂いながら死ぬだろう。

 もしくは途方もなく巨大な化け物にプランクトンと一緒に丸呑みされちゃって、巨大寄生虫に突かれながら消化されちゃうのだ。

 

「海底1万メートルまで単独潜航は流石に無茶だったかな……」

 珍しく弱音を吐くくらいには、コワイ。

 

 ――オダセン聖は気軽に数字を盛り過ぎだよっ! 人類は月に行けても、マリアナ海溝の底には行けねェんだぞ!!

 

“真の創造神”に八つ当たりした罰が当たったのかもしれない。

 いよいよ深層海流へ到達した時。

 

「ほぁっ!?」

 ワンピ世界特有のファンタジー海流に捕まった。

 

 滝のような勢いで降下する海流に掴まれ、トビウオライダーが一気に海底へ向かって引きずり込まれる。深度計と水圧計の数字が爆発的に増していく。特に水圧の急上昇に潜水服の耐圧機能が間に合わず体が締め上げられ、ディスプレイに確変を当てたパチンコ台みたく警告表示がぶちまけられる。潜航速度が高すぎる。潜水服とトビウオライダーに深刻な事態をもたらしかねない。

 

「やばっ!?」

 ベアトリーゼは満月色の瞳を見開き、新型トビウオライダーのソリッドな形状の後頭部に生えたハンドルを握り直し、バックステップのフットペダルを操作。サイボーグ怪魚の姿勢をほぼ垂直に持ち上げ、海流から脱出を図るべくフルパワーを発揮。もちろん数千万トン規模の海水の動きに抗いきれるわけもない。だが、少しでも潜航速度を和らげないとぺちゃっと潰れて死んでしまう。

 

「ぅぬぬぬっ! 持ち上がれぇっ!!」

 ベアトリーゼが必死に急降下海流に抗っているところへ、一難去らぬうちにまた一難が訪れる。

 

 ダボハゼの魔王みたいな超々巨大魚が大口を上げて迫ってきた。海楼石材入りの鱗甲と外殻で見えていないはずなのに。

 かつてのトラウマが極太で鋼鉄より硬い蛮姫の精神を揺るがした。思わず事件性のある悲鳴を上げてしまう。

「丸呑みはいやぁあああああああああああああああああああッ!!」

 深淵の闇の中では、彼女の悲鳴は誰にも聞こえない。

 

 

 ば っ く ん !

 

 

 ベアトリーゼは小型種の鯨並みにあるトビウオライダー諸共に、ダボハゼ魔王の巨大な口へ一瞬で吸い込まれた。

 

 ダボハゼ魔王の口腔内から食道へ流し込まれる刹那。

 蛮姫の生存本能が撃発。脳が命令を発するより早く装具ベルトで後ろ腰に差したダマスカスブレードを抜刀、両腕の装具に着剣。武装色の覇気を展開すると同時に、荷重で血が偏るほどの速度で機動する肢体。水中抵抗が存在しないかのごとき電光石火の斬撃を繰り出し。

 

 

 ずんばらりん。

 

 

 ダボハゼ魔王の分厚い肉が切り裂かれ、ぶっとい骨が両断され、頭と体が分かたれた。切断面から血と共に流れ出される蛮姫とサイボーグ・トビウオライダー。

 濃霧のように海中へ広がるダボハゼ魔王の血の中で、自意識が追いついたベアトリーゼが冷汗を掻きながら息を吐く。

「……やばかった」

 

 否。

 

 ダボハゼ魔王の超巨体から噴出した大量の血液が新たな脅威を呼び寄せる。

 ダボハゼ魔王が小魚に思えるようなサイズの巨大魚。その巨大魚を頭から丸齧り出来そうな不思議海獣。こいつらよりもはるかに大きな海王類。そして、様々なサイズの肉食性魚類。

 

 深海の百鬼夜行が目の色を変え、上下左右四方八方全周から襲い掛かってくる。

「ぎゃああああああああああああああああああああああっ!?」

 深海の暗黒の中では、ベアトリーゼの悲鳴は誰にも届かない。

 

「なんなんだよっ!! 私が何したってんだっ! こんな目に遭ういわれはねェぞ、クソッタレめっ!!」

 ヤケクソ気味にブチギレながらベアトリーゼは肚を括る。

 

 もはや水圧どうこうを気にして居られない。ちんたら潜っていたら魚の餌だ。トビウオライダーの耐久性はエッグヘッドの仕事を信じる。潜水服の耐圧は間に合わない分を武装色の覇気で補う。

 

 大雑把な計算では、水深1000メートルごとに水圧が100キロ増していくから、海底1万メートルの水圧は約1トン。1トンに耐えられるだけの武装色の覇気を出し続ければ、少なくとも圧死することは無い。

 

 机上の空論だ。しかし、やるしかない。成し遂げるしかない。出来なかったら魚に食われて、消化されてウンコになってひりだされ、海の養分になってしまうのだから。

 

「やったるぁチキショーめっ!!」

 ヘルメットの中で満月色の瞳が据わる。ハンドルを力強く握り込み、ライディングポジションを採る体に芯を通し、武装色の覇気を展開。ヤマハブルーの潜水服が漆黒に糊塗される。

 

 ベアトリーゼは新型フルサイボーグ・トビウオライダーを海底へ向け、最大出力でフルダイブ。

 水を切り裂くように駆け、魚雷染みた勢いで海底目指す。水圧に体が締め上げられ、ヘルメットや鰓肺エアシステムなど装具が悲鳴を上げる。肉が圧迫され、骨が軋む。トビウオライダーの体躯から不吉な音色がこぼれる。

 それでもアクセルは絶対に戻さない。なんせ背後から暗黒世界の怪物が我先にと追いかけてきているのだから。

 

 アクティブソナーが海底を捉え、積層被膜型ディスプレイにイメージを投影。光が届かぬ深海に植物は存在しないはずなのに、森のように見える。ワンピース世界特有のファンタジー海洋植物か? それとも魚人島が近いのか?

 

 深度計の数字はまだ1万メートルには遠い。ここが底じゃない。もっと深く潜れるところはどこだ。

 海流が岩礁を擦る音色は海妖の悲鳴のようだ。深海の化物共を振り切るべく、深海の森に飛び込む。怪物達もまたベアトリーゼを追って森の中へ。

 メーヴェに乗ったナウシカが腐海の中で超巨大昆虫(ヘビケラ)に追い回されるような有様。

 

 飛び込んだ先は深海の森は、森じゃなかった。

 石塔状の岩礁に密集生息しているワームの大群だ。森と見紛うほど大量の大型有鬚動物は迷い込んだ蛮姫と怪物達へ向け、うねうねと身を蠢かした。先端にある真ん丸の口を開けて襲い掛かる。

 

 しかも、森は無数の幼生を放出した。寄生先を求めて蠕動するおびただしい数の寄生虫。

 虫嫌いが見たらショック死しそうな悪夢的光景。然れども絶対的集中力を発揮しているベアトリーゼは眉一つ動かさない。

 

 殺人的水圧に晒されながらトビウオ姿のマシンを舞うように躍らせ、土石流の如く迫るワームの間隙を潜り抜け、誘導ミサイルさながらに襲い掛かる寄生虫の雨を振り切る。

 

 背後では弱肉強食の理が生じていた。中小様々な魚達が嬉々としてワームや寄生虫を食らう一方、ラブカみたいな超巨大魚が寄生虫の大群に捕まり、ワームの森に墜ちた。寄生虫に加えてワームまでもが超巨大魚に食らいつく。

 

 ワームと寄生虫の大群は巨大魚の鱗や皮を削り剥がして身肉を齧り、血を啜る。眼窩の隙間や口や鰓や肛門から巨大魚の体内へ侵入していく。

 超巨大魚が生きながらに身体を食われる苦痛にのたうち回ると、ワームの森床に堆積したマリンスノーが巻き上がった。一帯がまるで吹雪に見舞われたようにホワイトアウトしてゆく。

 

 多くの怪物達が追跡を断念して引き返していく中、一匹の超巨大魚が猶もしつこくベアトリーゼを追ってくる。

 

 大きな牙が並ぶ地獄の悪鬼みたいな面構えにひょろりと細長い体躯を持つ邪龍みたいなそいつは、ワニトゲキス目の化物。腹の発光器官をパトライトみたく煌めかせ、海中のホワイトアウトを掻き分けてベアトリーゼとトビウオライダーを狩りたてる。

 

 ベアトリーゼはマリンスノーの吹雪に満ちたワームの森を飛翔し続け、

「! あれかっ!」

 吹雪の切れ目の先、森の終わりに海溝を見つけた。

 

 背後から大きな牙の並ぶ大口を広げた邪龍モドキが迫る。

 おぞましき森を駆け抜け終えるや、ベアトリーゼはサイボーグ・トビウオライダーを大きく捻り込み、海溝へ向かって飛び込んだ。

 

 邪龍モドキのワニトゲキスは獲物を逃した大口を閉じ、恨めしそうに海溝を一瞥した後、暗黒の中へ消えていった。

 

      ○

 

「海キライ。海コワイ。海キライ。海コワイ……」

 心身の負担と疲弊が酷い。ベアトリーゼはヘルメットの中でどんよりした顔を作り、壊れたラジオみたくブツブツと不平不満と繰り返す。

 

 積層被膜型ディスプレイが映す計器表示の数字は海底1万メートル。海淵と呼ばれる深海の最深部に到達していた。

 魚人島を示すログポースや海図を見る必要はない。

 なぜなら、暗黒の闇の先に煌々と光が輝いている。増幅と熱探の反応を見る限り深海魚の発光器官ではない。

 

 ベアトリーゼは光へ向かって、ゆっくりとトビウオを進めていく。怪物共の襲来を警戒し、海底の起伏や岩礁の陰を選んでそろりそろり。

 

 光へ近づくにつれ、闇が薄まっていく。暗黒が弱まるにつれ、周囲の青みを増していく。

 曙光が注ぐ払暁時のような青い世界。時折、微風のように差し込む水流に、マリンスノーがさらさらと舞う。まるで足元から粉雪が注ぐようだ。

 静謐で美しい光景に百鬼夜行とワームの森で疲弊した心が慰められる。

 

 麗しき美景を楽しんでいると、ソナーが動体を感知。反応は2つ。11時方向、上方。大きい。

 ヘルメットの視覚系――増幅と熱線が捉えた動体反応源を望遠で拡大し、確認。

 

 サバンナのフレンズにしか見えない大型海獣。珍奇で巨大なケダモノがシャボンコーティングされた艀を曳航していて、艀には追剥にしか見えない魚人達が乗っていた。

 

 ぶち殺すか、やり過ごすか。

 ベアトリーゼはとりあえず後者を採択。

 逆探を防ぐため、ソナーを始めとしたアクティブ系の捜索追跡器官をカット。

 さっと周囲を窺う。身を隠せそうな物陰は乏しい。ならば。

 

 水流の速い辺りへ転進。海底の砂地にトビウオごと身を埋め、マシンを休眠状態へ。巻き上がった砂やマリンスノーは流れに押し流されて薄まり、痕跡はすぐに拭い去られた。

 

 砂中で息を潜めつつ、パッシブ系の音響系センサーの感度を上げる。大型海獣の泳ぐ音とゴロツキ共の会話を拾った。

「最近はニンゲンの海賊が増えてるのに、稼ぎがあんまり増えねェなァ」

「バンダー・デッケンのクソのせいかな?」

「いや。どうもホーディの野郎が派手にやってるらしい」

 どうやら、ゴロツキ共は魚人島を目指す海賊船や密輸船を狙う魚人海賊のようだ。

 

「あの野郎。ジンベエの親分らが出てった途端、スゲェ勢いで組織を拡大してやがる。気に入らねェ……!」

「俺らも身の振り方を考えなきゃなァ……」

「バカ野郎。今更あんなガキ共の下につけるかっ! 気概を持て!」

 魚人海賊は海底の砂中に埋まり潜むベアトリーゼに気付くことなく、暗黒の海域へ姿を消していった。

 

 それでも、鼠の臆病さを持つベアトリーゼは10分ほど埋まったまま、様子を窺う。

 戻ってくる気配も、探りを入れている様子もない。安全を確信してから、ようやく身を起こしてトビウオを砂中から引っ張り出す。

 

 砂塗れの自身とトビウオを周囲の海水で洗い流しつつ、魚人海賊達のやり取りを振り返ってぼやく。

「上空1万メートルで民族紛争があれば、海底1万メートルではゴロツキ共が勢力争いか。楽園は何処に在りや」

 

 ベアトリーゼはトビウオを再起動。再び光へ向かって進み始めた。

 

    ○

 

 超深度の海淵に超々巨大な大樹が生えており、温もりを含んだ優しい陽光を放っている。

 

 これだけでも異常なことこの上ない。様々な形状の珊瑚礁や優雅な海草群が飾りたてる超々巨大樹の足元に、これまた超々巨大な金魚鉢みたいなシャボン玉が鎮座していた。

 

 その巨大さときたら。シャボン玉の周りを、様々な海棲生物が日向ぼっこでもしているように心地良さそうに泳いでいるのだが、シャボン玉は鯨や海王類が金魚に見えるほどデカい。水圧1000キロの海淵でかくも巨大なシャボン玉が存在する事実よ。

 

 このとてつもなく巨大なシャボン玉の中に、都市がある。

 都市は限られたシャボン玉内の空間を効率的に使うべく立体的に築かれていて、前衛的な形状の建物に見えるものは珊瑚礁を利用したもののようだ。都市内を縦横に走るチューブ内を魚人や人魚が泳ぎ、別の区画や建物へ移動している。

 

 建物や往来の人々を窺うに、どうやらシャボン玉内の都市は『高さ』で階層化されているようだ。陽光がよく届く上層ほど高級感があって豪奢な建物が目立つ。下層部は庶民的というか煩雑というか。それでもインフラはきっちり整備されているようで、遠景には清潔感が窺える。

 

 よくよく見れば、巨大シャボン玉の上に幾分小柄な(それでも十分にデカい)シャボン玉が乗っかっていて、中に立派な王城が建っていた。

 いやはや。

 

「ほえ~……」

 前世日本人と今生地上の常識が一切通じない圧巻の幻想的絶景に、ベアトリーゼは知能指数が低下し、マヌケな感嘆をこぼすことしかできない。

 

 ファンタジー系アクアリウム的光景を思う存分に堪能した末、ベアトリーゼは気を取り直して巨大金魚鉢都市へ向かっていく。

 ふと気づく。

「入国ってどうすんだ?」

 

 超々巨大シャボン玉の足元に出入国管理施設があった。

 来訪者を出迎える出入国管理施設は荘厳な見た目の建物で、近世的な恰好の兵士達が警備していた。

 

 誘導標識に従って入った出入国管理場は、シャボンで気密化されていた。ベアトリーゼは数時間振りにバイザーを上げ、空気を味わう。船舶用だろう水路を進み、入国審査官の待つ受付へ。

 

 警備と入国審査官の魚人達は、奇々怪々な巨大トビウオに騎乗した摩訶不思議な装いの地上人を目の当たりにし、絶句した。

「……それに乗って、ここまで潜ってきたのか? 海底1万メートルまで”剥き身”で?」

「まあね」

 ベアトリーゼの回答に、魚人達は再び絶句し、異常者を見るような目を向けてくる。妥当な反応であろう。

 

 気を取り直し、入国審査官は手続きを進める。ベアトリーゼが高額賞金首と知って再び驚くも、それだけだった。

「適当な休養と観光、あと“新世界”の情報収集が終わったら、すぐに出国するよ。長居はしない」

 ベアトリーゼが入国目的を告げると、超要約すれば『ここで悪さすんなよ』で済まされた。

 

 魚人島リュウグウ王国は世界政府加盟国だが、海軍の駐留を受け入れておらず、それどころか公然と四皇“白ひげ”の縄張りであることを認めていた国だ。いろいろあるのだろう。

 

 何はともあれ、ベアトリーゼは魚人島リュウグウ王国へ辿り着いた。

“楽園”と“新世界”を繋ぐ海底のメガロポリスに。




Tips

海底1万メートル。
 地球で一番深いマリアナ海溝は平均が6000から8000メートル。最深部が約1万1千メートル。なお、もっと深い場所があるかもしれないとのこと。
 人類は月面に立つことが出来たが、海底に降り立つことは出来ていない。

海のフレンズ。
 ワンピ世界の海棲生物は摩訶不思議。

海中の描写。
 いろいろとファンタジー。鋭いツッコミは勘弁してクレメンス。

魚人島。
 海底のメガロポリス。ケイシー達の説明を読む限り、意外と貧富の差が激しそう。
 10万人の貧乏人が暮らすスラム『魚人街』が島外にあるとのこと。

ベアトリーゼ。
 なんかナウシカみたいな体験をした。
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