彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
海に悪党がひしめく御時世にあって、ウォーターセブンは治安の良い街だ。
街の職人達がヘタな海賊より強いおかげでもあるし、政府の重要島嶼エニエスロビーが近く、海軍の巡回がマメに行われているためであるし、海列車とガレーラカンパニーのおかげで街の繁栄が安定しているためでもある。
しかしながら、治安の良い街=犯罪が無い街/悪党がいない街を意味しない。
ウォーターセブンにも、都市の繁栄に与れない負け犬共が居る。
原作においてフランキーが街へ帰還するまで、ウォーターセブンにはスラム同然の地域があり、ノンフューチャーな連中がお先真っ暗なその日暮らしをしていたのだ。
ウォーターセブンにも、悪党達が巣食っている。
やはり原作においてパウリーが賭場で借金を重ねていたように、職人――ガテン系の多いウォーターセブンには飲む打つ買うが揃っており、こういう商売はどうしたって筋者の稼業だ。
なんてことはない。
ウォーターセブンにも、ありふれた闇があるというだけ。
そんなありきたりな闇の中で藻掻く者達が、短絡的に悪事へ手を染めることもまた、よくある話。
○
ドノバンという男がいる。
天下のガレーラカンパニーを志してウォーターセブンにやってきた若者だ。
故郷の造船場で修業を積み、腕っぷしも鍛えていた彼は、船大工として“それなり”に腕が良く、“それなり”に拳骨を振るうことも得意だった。
しかし、世界屈指の造船会社ガレーラカンパニーが要求する基準は高く、“それなり”程度では就職が叶わない。
ガレーラカンパニーの入社試験に落ちた後、ドノバンは下町の小さな造船工房に職を得た。が、ヤガラブル用の小舟を弄る日々は、ドノバンの船大工としての自尊心を傷つけ、欲求不満を募らせていく。
こんなしみったれた仕事をするためにこの島に来たんじゃねえ。俺はもっとデケェことがやりてェし、もっとスゲェことが出来る人間なんだ。
ドノバンは喧嘩やナンパに愚痴をこぼし盗んだバイクで走りだす少年のような鬱憤に駆られ、給料を酒や博奕や女遊びに浪費し、しょうもない喧嘩を繰り返し――
気づけば、職を失ってワルの仲間入りをしていた。
仲間達も似たようなものだ。夢と志を抱いてウォーターセブンへやってきて、今や場末の酒場で安酒を舐めるチンピラに。
いよいよ食い詰め、ドノバン達がいっそ俺らで海賊を始めるかと戯言を検討し始めた時だ。
先輩のイトコの知り合いという怪しいにも程がある男が現れ、ドノバン達へニヤリ。
「オメェらみてェな活きの良い奴らに、ちょーど良い話があるんだ」
その『ちょーど良い話』を簡潔にまとめると。
水没した旧市街区には上下水道整備用の連絡通路や旧水路があり、その連絡通路や旧水路は中心街の地下に通じている。当然、換金所の下にも。
この地下通路を用いて換金所の床を抜き、金庫や保管庫へ進入。オタカラを一切合切かっさらう。
どっかで聞いたような強盗計画だが、アホなチンピラ共が思いつくことに独創性なんて期待してはいけない。
ただまぁ、アホはアホなりに足りない頭を絞る。
「この島の地下は迷宮だぞ。地図でもなきゃあ換金所の真下はおろか、帰ってくることも叶わねェ」
ドノバンの仲間が指摘すれば、『先輩のイトコの知り合い』はにやにやと笑う。歯が汚い。
「地図があるのさ」
曰く――ウォーターセブン内の土建屋に博奕で身を持ち崩した奴がいる。そいつを脅し……もとい、ちょいと説得して会社が保管していた地図を持ち出させたという。
「分からねェな」ドノバンは渋面を作り「なんで俺らに話を持ち込んだ? 地図があるならあんただけでやりゃあ良いじゃねェか」
「事はそう簡単じゃあねェんだよ、若造」
『先輩の(ry』は訳知り顔で言った。
「地図があってもウォーターセブンの地下が迷宮ってこたぁ変わらねェ。何より地下から換金所の金庫内へバレずにトンネルを掘ることは簡単じゃねえ。どうしたって頭数が要るし、あれこれと道具が要る。当然、その道具を使いこなす技術もな」
ドノバンとその仲間を選んだ理由も“そこ”だ。
「盗み出した金とオタカラを背中に担いで運んでたら時間がいくらあっても足らねェ。そこでオメェらが代車や小舟を作るんだ。地下通路は水没してる場所が少なくねえからな。換金所の地下から台車で連絡水路まで運び、そこから小舟を使って外へ出すのさ」
『先輩(ry』はドノバン達を見回し、見透かしたように嗤う。
「オメェらが海賊を始めるにも、先立つもんは必要だろ?」
実に怪しい話であるが、ドノバン達は乗った。どのみちノーフューチャー。どうせ失うものもない。海賊を志すなら換金所強盗くらいやってやろう。
かくて、ドノバン達は『先輩(ry』の指揮の下、裏町のボロアパートをアジトに、ダンジョンRPGよろしく換金所の真下を目指して地下迷宮の探索を始め――
その矢先にアクア・ラグナが到来。
規模こそ小さかったものの、裏町の一角が崩壊水没してしまった。
ここまで書けば、諸賢もお分かりだろう。
ドノバン達のアジトは水没した裏町の一角に含まれており、水没した際に島の地下地図その他がどんぶらこっこ。
街がアクア・ラグナの後始末に追われる中、彼らは地図その他を躍起になって探し回って――
怪物と遭遇した。
○
水没した裏町の区画付近は立ち入り禁止の封鎖線が敷かれている。
そして、水没した区画の隣接地域では大規模な地下調査が行われていた。なんせ区画が一つ崩壊して沈んじまったのだ。隣接区の水中基礎部にも被害が及んでいるかもしれない。
水没した区画の住民達は早いとこ再建して欲しい。都市内難民の生活は辛いから。
一方、隣接地域の住民は自分の生活の安全が懸かっているため、きっちりした調査を望んでいた。
しかしながら、再建事業に注げるリソース、特に人手と金には限りがある。
ガレーラカンパニーはアクア・ラグナで滞っていた造船業に追われ、協力が難しい。
市としても、ウォーターセブンという島は造船業で得た金で回っており、超大造船会社ガレーラカンパニーの停滞は島全体の経済に関わるため、あまり無理も言えない。
裏町でくすぶっている無職共を雇って再建事業に当たらせれば、と思うかもしれない。単純肉体労働者としては役立つだろうが、今必要なのは水中の土木工学や建築学や都市工学に通じた調査員であり、ガレーラに就職失敗して落ちぶれた連中はお呼びでは無い。
そう、今は専門家が必要な場面……なのだけれども。
どういう訳か、ウォーターセブンの地下迷宮へ向かう人々は銛やら大斧やら銃やらで武装していた。都市の地下を調べる技術者というよりダンジョンへ挑む冒険者みたいな有様。
得物を手に召集されたカクとルッチが困惑を隠しきれない。
『これはどういうことなんだ? ポッポー』と
「今年のアクア・ラグナみたく街区基礎に被害をもたらすような事例の場合、“出る”可能性が高いんだよ」
先輩船大工パウリーが答えた。
「出るって……何が出るんじゃ?」とカクが訝る。
「海王類さ」と他の船大工がぼやくように「高潮に流されてくるのか知らんが、とにかく海王類が流れ着いてくることがある」
「大抵は廃船島辺りに漂着するんだが、そう大きくない奴だと島の地下に入り込んじまう。何年か前には地下をねぐらにしてた乞食や浮浪児が食われる事件も起きた。あん時ぁ大騒ぎだったよ」
髭面の市職員がぶるりと身を震わせた。
「それでこの物々しさというわけか。なるほどのぅ」とカクが納得する。
「水溜まりには気を付けろ」
背中に鮪切り包丁みたいなヤッパを担いだ女子事務員ビーことベアトリーゼが忠告する。
「裏町の地下にある縦穴は水の溜まったクレバスみたいなもんだ。どこまで落ちるか分からねェ」
『俺達は泳げないんだが……ポッポー』ハットリとルッチが揃って眉を下げる。
「溺れたら拾ってやるよ」と年上の後輩へ得意げに笑うパウリー。
危険な地下水路の人食い怪物とかホラー映画だな。とベアトリーゼが暢気に考えつつ、ぼやいた。
「か弱い乙女をこんな危ない仕事に駆り出すとか、お前らにゃあ騎士道精神が足りねェよ」
「オメェのどこをどうひっくり返したら、か弱いなんて言葉が出てくるんだよ」
ははは~と周囲が楽しげに笑う。
「失敬な。なんて失敬な。可憐な乙女に対してなんて失敬な」
ベアトリーゼは三度も繰り返して遺憾の意を訴え、鼻を鳴らす。
「だいたい可能性がある、てだけだろ。ホントに海王類が入り込んだとは」
PiiiGuOOOOOAAAAAHHHHHH!!!!!!
地下迷宮の奥から反響してくる雄叫び。ホラー映画なら登場人物が怯えるシーンだが、
「……本当に入り込んでたみたいじゃなぁ」
カクが溜息をこぼし、全員が得物を抜く。腕自慢の猛者揃いのためか、あるいは海王類なんて化物が身近な世界のためか、誰一人不安を滲ませていない。
「出来るだけ綺麗に仕留めてくれ」
市職員が全員へ言った。目つきが狩人と化していた。
「種類にもよるが、海王類は皮から肉まで売り物になる」
いわゆる『鯨一頭七浦潤う』だ。
「ボーナスは出るよな?」「バカ野郎、獲物は市の資産だ」「ケチめ」
ぶつくさ言い合う野郎共を余所に、見聞色の覇気を広げていたベアトリーゼは眉をひそめる。
なーんか海王類にオマケが引っ付いてる?
『なぁ』ルッチが眉根を寄せ『人間の声も聞こえるような気がしないか? ポッポー』
「気のせいだろ?」「いや、地下暮らしのホームレスが襲われてるのかも」「こんな深いところに? 生活できねェだろ」「野生のブルかなんかが鳴いてるとか」
野郎共が訝っているところへ、
PiiiGyuuuOOOOOAAAAAHHHHHH!!!!!!!!
うわぁあああああああああああたすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
「聞こえた」「ああ。聞こえたな」『人間だったなポッポー』
一同は顔を見合わせ、
「やべえっ! 人が襲われてるぞっ!」「急げっ!!」
泡食って雄叫びと悲鳴の聞こえてくる方角へ向かって駆けだした。
○
ワンピース世界は生物学的常識の通じないことが山ほどあるけれど、海王類はその代表格だ。
単純に海棲生物が巨大化したものに始まり、哺乳類にエラとヒレが生えたような奴とか、進化の過程がまったく想像できない摩訶不思議な奴とか、その形態と種は多岐に渡る。
大きさにしても、大型バス程度から原子力空母をスナック感覚で齧りそうなサイズまで様々。
そして、ウォーターセブンの地下に流れ着き、ドノバン達を追い回している海王類の姿は――
豚だった。
天井に頭や背中が擦るほどデカく、首にえらがあって、四肢の先と背中にヒレの生えた、巨大な豚。
ともかく、そんなドデカいヒレ付き豚が連絡通路を猛烈に這い進んでいた。双眸をらんらんと光らせ、乱杭歯の隙間に挟まっていた人間の足を大きく揺らしながら、眼前を逃げる小さな餌共を熱烈に追いかけていく。
PiiiiiiiiGYyuuuuuuuOOOOOAAAAAHHHHHH!!!!
『うわぁああああああああああっ!! たすけてぇえええええええっ!!』
ドノバンはボンクラ達と共に全力で駆けながら思う。
ここから出られたらその足で海に出よう。こんな島もううんざりだ。
その時、
「おーい、こっちだーっ!!」「こっちに逃げてこーいっ!」
地獄の底に蜘蛛の糸が垂らされ、魔女の鍋の底に天使の声が届く。
ドノバン達は即座に声の聞こえてくる方角へ足を向け、冠水した地下連絡通路を全力疾走。これまでの人生で最も真剣な走行だった。
「ほぁっ!?」
不意にジョイスンが足を滑らせてコケた。太めの女が好みでお調子者の屁こき野郎ジョイスンが、振り返る素振りもなく自分を置き去りにしていくドノバン達へ叫ぶ。
「待ってくれっ!!!!! 置いていか」
ジョイスンの悲痛な訴えは途中に遮られた。末期の悲鳴すら上げられなかった。代わりに、脇目も振らず駆けるドノバン達の背中へ、肉が千切れ、骨の砕ける咀嚼音が届く。
「ひぃいあああっ!」「もぉやだぁああっ!!」「たすけてくれええっ!!」
ボンクラ達は本格的に泣きが入り、走りながら小便を漏らす者さえいた。かくいうドノバンも全身が恐怖の冷や汗塗れで、故郷の母ちゃんが脳裏をよぎっている。母ちゃん母ちゃん助けてくれ母ちゃん!!
ボンクラ共は走り、走り、走り、ひたすらに走って走って走り抜いて、元は広場だった貯水槽区画へ駆け込む。
貯水槽区画には武装した職人や市職員が隊伍を整えていた。武装した職人や市職員の姿を見て、これほど嬉しかったことはない。
助かった、とドノバン達が安堵の息を吐きかけた刹那、
PiiigyuuUuuaaaAAAAAOooooooOOOHHHHH‼‼‼
人喰巨豚がエントリー。
血の味に興奮していきり立つ人喰巨豚を前に男達が思わず息を呑む中、女子事務員ビーことベアトリーゼは前世記憶の疼きを覚えていた。
獣狩りの夜……オルゴールの少女……下水道……人喰い豚……リボン。
そして、ベアトリーゼの魂にマントラが届く。
豚を許すな。
○
「クソッ! 全然効いてねえっ!」
パウリーは呻くように毒づいた。
海王類と言っても人喰巨豚はさほど大きくない。ひょろい尻尾を含めて全長10メートルあるかないか。しかし、その体躯は海の王を称する生物に相応しく、実に頑健頑丈だった。
銃弾や炸薬は頑丈な皮膚に防がれ、斬撃や刺突は分厚く頑健な脂肪層に阻まれ、血管や臓器を損傷させるどころか筋肉層にも届かない。生体構造上の弱点である四肢の関節部やエラ、眼球を狙った攻撃も期待したほどの効果を上げていなかった。
PiiigyuuOOoooooOOAaaaAAHHHH‼‼‼
むしろ中々な攻撃は豚を憤怒させ、凶暴化させてしまっていた。その暴れっぷりは凄まじく先述のタフネスと相成って手が付けられない。
「こりゃあ一回退くべきか」
調査ではなく装備を整えた討伐隊を編成して出直すべきかもしれない。パウリーや一部の者達が弱気を抱く一方。
まいったのぉ、これは。カクは太刀を振るいながら内心で唸る。
カクは歳若くして政府公認の暗殺集団CP9に抜擢されるほどの実力を持つ。真の実力――海軍体術“六式”を駆使すれば、このタフネス極まる人喰巨豚とて難なく倒せるだろう。しかし、若き船大工の偽装を保った状態――六式を使わぬままでは、人食巨豚は少々骨が折れる相手だった。
それはカクと同じCP9の精鋭ロブ・ルッチにも言えること。
本来の実力を発揮すれば、この程度のケダモノなど鎧袖一触。然れども、ここで本来の実力を発揮しては偽装が剥げる可能性があった。
であるから、カクが目線で『いっそ六式を使って仕留めるか?』と問うた時、ルッチは即座に首を横に振って否定した。
こんな些事で任務を損なう危険は冒せない。
たとえ、この場にいる者達が死傷したとしても構わない。古代兵器の設計図回収という重要任務を完遂できるなら、ウォーターセブンの地下に怪物が住み着こうと問題ないのだから。
「ルッチ」
と、死んだはずの賞金首『血浴ベアトリーゼ』の可能性がある女子事務員ビーが駆け寄ってきた。
マンモスVS原始人の集団みたいな光景を一瞥し、ビーはルッチへ問う。
「あれじゃあ埒が明かない。カクとお前であいつの動きを止められるか?」
『そういうのはロープ術が得意なパウリーに頼むべきだ、ビーポッポー』と鳩のハットリを駆使した腹話術で答えるルッチ。
「ビーポッポーはやめろ。チビ共が真似して大変だったんだぞ」
心底嫌そうに顔をしかめる女子事務員ビー。
アクア・ラグナで避難してきた子供達がルッチを真似て『ビーポッポー、ビーポッポー』と口々に呼ぶ様は、地球世界の偉大なるシンガーのスキャットマン・ジョンみたいだったのだ。
ビーはゾッとするような冷笑を湛え、怪訝顔のルッチへ告げた。
「お前とカクはこの面子の中じゃあ別格だ。豚の足を止めるくらい余裕だろ?」
ルッチは内心の驚きを微塵も表に出さなかったが、ビーは見透かしたように笑みを大きくする。
「出来るよな?」
『……足を止めた後はどうする? ビーに仕留める策があるのか? ポッポー』
顕微鏡を覗くような目つきでルッチが問い返せば、ビーは白い犬歯を剥いて口端を吊り上げた。
「あたりきよ」
ルッチは少し思案し、首肯した。この女の実力の一端を把握できるかもしれない。
『やってみよう。そっちも上手くやれよ、ビーポッポー』
「ビーポッポーはやめろ」
眉間に深い皺を刻みつつ、ビーはルッチの許を離れていく。
ルッチはカクへ素早く手信号を送った。
――右から目を狙え。こちらは左から攻撃する。
カクの同意を得て、ルッチは人喰巨豚へ左から疾風のように急襲し、カクが人食巨豚の右から迅雷のように斬りかかった。
2人の俊敏な同時攻撃が豚の両目を傷つけ、空中で交差しながら軽やかに離脱していく。
絵に描いたような一撃離脱。見事な早業。美事な軽業。
PiiigyuuOOoooooOOAaaaAAHHHH!?!?!?
両眼を傷つけられた人喰巨豚が苦悶の悲鳴を上げ、足を止めた。
その間隙。
夜色の髪をなびかせた影が矢のように駆け、巨豚の後方から襲い掛かり――豚の肛門目がけて鮪切り包丁を刺突し、さらに自らの右腕を肩口まで突っ込んだ。
PppIiiGGggyyaaaaahhhhhhhh‼‼‼‼‼‼
「嘘だろぉおっ?!」「マジかマジかよっ!?」「おい、おいぃいっ!?」「ぅぁあああっ?!」
人喰巨豚はもちろんのこと、男達も自身のケツを押さえながら悲鳴を上げる。
「往生せいやぁあっ!!」
豚のケツ穴に右腕を深々と突っ込んだ女が雄々しく叫び、荒々しく右腕を引き抜く。
その内臓諸共に。
PiiGyYoooOOOOAAaaaaAAAAHHHHHHHHHH!?!?!??!!
凄まじいまでの苦痛に人喰巨豚が凄惨な絶叫を上げ、肛門だけでなく鼻耳目口とエラからも大量の血が勢いよく噴出。貯水槽の地面も天井も真っ赤に塗り潰されていく。
そして、人喰い巨豚は血塗れの眼球がぐるりと白目を剥き、その場に崩れ落ちた。
男達は慄然として汚物と血に塗れた女子事務員を見つめていた。修羅場に慣れたルッチとカクすらドン引きしていた。
そりゃそうだ。どこの世界に怪物を退治するためとはいえ、ケツの穴に腕を突っ込む者が居ようか。イカレているにも程があろう。
超ドン引き中の男達を余所に、ビーは右腕を振るって血と汚物を払い落としながら、怪物豚に追われていたボンクラ共へ顔を向ける。
「ところで、“ボクちゃん”達はこんなところで何してたのかなぁ?」
ドノバン達が換金所の強盗計画をゲロするまで、あと三分。
Tips
ウォーターセブン島の闇。
オリ設定。とはいえ、スラムや賭場があることは原作通り。
ドノバン
原作のフォクシー海賊団の船大工。たしか一コマだけ登場したネームドモブ。
キャラ設定は完全に独自設定。
人喰巨豚(ゴライアスピッグ)
オリキャラの海王類。
元ネタはA・ADV『ブラッドボーン』に登場する人食い豚。