彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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前話、たくさんのご意見ありがとうございます。
魚人島編の参考にさせて頂こうと思います。

佐藤東沙さん、槙 秀人さん、誤字報告ありがとうございます。


251:海侠と卑劣漢とビジネスチャンス。

 竜宮城の玉座の間にて、コンサルタントのビーさんがリュウグウ王国側とビッグマムの同盟締結のために細部を交渉している頃。

 

 マクロ一味をとっちめた後、ジンベエの魚人海賊団は一路、魚人島を目指していた。

 太陽紋を掲げる海賊船はシャボンコーティングをすることなく、“話し合い”で協力を得た海獣――つぶらな瞳の羊海獣に曳航され、海中を進んでいく。

 

 海中でも呼吸できる魚人と人魚で構成された魚人海賊団の面々は、潮風ではなく海流に頬を嬲られながら、注意深く五感を働かせていた。

 如何に精強な魚人海賊団といえど、海の脅威と無縁ではない。人魚のケイミーが怪魚や海獣や海王類に幾度も食われかけたように、彼らもまた海の食物連鎖に組み込まれている。

 

 深度数千メートル。太陽紋の海賊船は光も届かぬ深淵の暗中、それも海底岩礁の連峰の間をすいすいと越えていく。

 

「――今、なんぞ聞こえなかったか?」

 不意にジンベエが呟いた。水中は大気中よりも音がよく届く。

「ああ。何か聞こえた」

 副船長の男性人魚アラディンは首肯し、船の各所に立つ観測員へ声を張る。

「各員報告っ! 何か捉えた奴はいるかっ!」

 

 船の各所から矢継ぎ早に報告が届く。

「船首前方、異常なし!」「左舷前方、異常なし!」「右舷前方、距離約1200先で海獣が狩りをしている模様!」「マスト、約450上方に大型魚! 脅威性なし!」「左舷後方、異常なし!」「右舷後方、異常なし!」「船尾後方、鯨の親子連れ! 可愛いです!!」

 

 特別な異常は確認できない。だが、チューバみたいな海中収音器のイヤホンを掛けていた聴音手が叫ぶ。

「11時、下方、距離2300に航行音っ!」

 

 手透きの者達が左舷前方に集まり、船の下方を覗き込む。

 闇が濃すぎて深海魚達が放つわずかな光以外、何も見えない。アラディンは航海士が示すクリップボードの海図と現在地を確認し、ジンベエへ告げる。

「海溝付近だ。魚人島を目指す陸の連中(海賊)だろう」

 

「斥候を出そう」ジンベエは大きな手で顎を撫でながら「魚人島に仇なす手合いならば、ここで討つ」

“海侠”ジンベエという漢は、魚人島を襲う海賊や同胞を虐げる陸のクズ共と戦い続け、その名を馳せたガチの武闘派なのだ。亡きフィッシャー・タイガーとオトヒメの遺志や理想を尊び、白ひげ海賊団と親しんではいても、故郷と同胞を狙う“敵”に容赦はない。

 

 アラディンが船長の方針に首肯を返し、海中を高速泳行できる人魚の面々を呼ぼうとした矢先。

 眼下でチカチカと閃光が煌めき、砲声と炸裂音が海中を伝播してくる。

 

「撃ったっ!」「発砲光でちらっと見えたぞ! ありゃ大入道ワダツミだったっ!」「ああ! ブリッグを捕まえてたっ!」

 団員達が口々に報告する中、聴音手が再び吠えた。

「別の航行音っ!! 9時下方、約2600ッ! マヌケな歌を歌いながら櫂を漕いでるっ!」

 

 一連の報告から情報をまとめ、副船長はジンベエへ言った。

「陸の海賊船を襲う大入道と櫂を漕いで進む船。心当たりは一つだけだな」

「バンダー・デッケンじゃな」

 ジンベエは大きな左手のひらを右の拳で打ち、バンッと鳴らす。

「あの卑劣漢をとっちめる好機じゃ」

 

「陸の連中の方はどうする?」

「最初に決めた通りじゃ」ジンベエはアラディンへ即答し「害がありそうなら、まとめて叩く。そうでなければ、放っておけばええ」

 ジンベエは最も信頼する友へ告げる。

「船の指揮を頼む」

 

「任せろ」アラディンは男性的魅力あふれる笑顔で応え「暴れてこい」

 友の快諾に気を良くし、ジンベエは仲間達へ吠えた。

「カチこむぞっ!! 10人来いっ!」

『応っ!』

 ジンベエは十人の魚人と人魚の猛者達を引きつれ、舷側から眼下の漆黒へ向かって飛び出していった。

 

 

 ここで時計の針を少し戻す。

「バホホホホッ! わざわざ陸から俺を金持ちにするためにやってくるんだから、ニンゲンってのぁ救いようがねえマヌケだぜっ! バホホッ!!」

 その時、ぼろぼろの旧式帆船フライングダッチマン号の甲板で、シャボンに身を包んだ中年の魚人男が巨人並みにデカい魚人――ワダツミの捕らえた海賊船を見下し、高笑いを上げていた。

 

 胡散臭いという言葉を体現したような髭面にひょろ長い体躯と二対の足を持ち、右手にだけ黒革の手袋を装着したこの男の名は、フライング海賊団船長バンダー・デッケン9世。

 魚人でありながらカナヅチで、ネプチューン王の末娘しらほし姫に執着して約10年にもなるロリコンの自己中心的妄想癖持ちのストーカーという、どこに出しても恥ずかしいクズだ。

 

 このデッケン、人物は金魚の糞にも劣る男だが、海賊としてはやり手だ。抜け目がなく悪知恵が働き、船長として船を操る手腕に長けていた。そのため、リュウグウ王国軍やジンベエのような渡世の追手から逃れ続けている。クズはしぶとい。

 

「陸のバギャモン共ッ! 金めのもんを洗いざらい差し出すなら、命だけは取らねェでやるぜ、バホホホッ!」

 デッケンがブリッグ船の海賊達を嘲えば、

「サカナ風情が舐めたクチ叩くなッ! とっ捕まえて売り飛ばしてやるぁっ!!」

 海賊達が威勢の良い罵倒と共に艦載砲と銃を放つ。

 

 深海の暗中に煌めく発砲光。海中を伝播する砲声。銃砲弾はシャボンコーティングを突き抜けてブリッグを掴む巨大魚人ワダツミとフライングダッチマン号へ突き進む。

 

 も、莫大な質量の海水と極悪な水圧により、銃砲弾の運動エネルギーが指数関数的に失われた。銃弾は3メートルと進まぬうちに錘と化して沈み、砲弾もまたワダツミやフライングダッチマン号へ届かずに沈んでいく。

 ただし、榴砲弾は水圧で圧潰する際、信管の誤作動で爆散した。

 

「う~~~~わ~~~~~~~っ!」

 峻烈な爆発光と強烈な音圧衝撃波を至近で浴び、巨大魚人ワダツミは舌足らずな悲鳴を上げながらひっくり返った。海底岩礁から堆積物が粉塵のように巻き上がる。

 

 デッケンは配下達と共にひっくり返ったワダツミを笑い、

「ワダツミィッ!! 豆鉄砲にビビってんじゃあねえっ!!」

「ごめんらぁ~れっけん船長ぉ~~」とのんびり詫びるワダツミ。

 胡散臭い髭面を冷酷非道に歪めた。

「まぁ~良い。テメェら、運動のお時間だっ!!」

 おおおっ!! 一味の面々は猛々しく応え、フライングダッチマン号が動きの鈍いブリッグへ迫る。

 

「掛かってきやがれ、サカナ共っ! カルパッチョにしたるぁっ!!」

 接舷強襲を思わせる動きに、ブリッグの海賊達が得物を構え、迎え撃つ覚悟を決めた。が――

 

「マヌケ共め。ここは海中で、テメェらは陸生生物――のはずだ!!」

 デッケンは悪意をたっぷり込めて口端を歪め、手袋を装着した右手を大きく振るう。

「掛かれっ!!」

 

 号令の下、魚人達が幽霊船染みた櫂船の甲板から海中へ躍り出て、手にした得物でブリッグ船のシャボンコーティングを一斉に切り裂いた。

 

 瞬間、船を包むコーティングがパチンと弾け、莫大な海水が怒涛の勢いでブリッグへ襲い掛かる。

 凶暴な水音が海賊達の悲鳴や怒号、命乞いを掻き消す。大量の海水と深海の高水圧に吞み込まれた海賊達が無様に藻掻き、水圧に内臓を圧し潰され、血を吐きながら溺死していく。

 

 デッケンと魚人達は何も出来ずに死んでいく海賊達をゲラゲラと嗤いながら、沈降していくブリッグにフライングダッチマン号を接舷させ、ブリッグの甲板へ移乗した。

 

 海中に浮かぶ船長の首を左手で掴み、デッケンは光が失われていく目を覗き込み、侮辱をたっぷり込めて嘲笑する。

「バホホホホッ! 悔しいかぁ? 悔しい――はずだ! バーホホホホッ!!」

 海賊船長の死体を放り出し、デッケンは部下達へ向き直った。

「よぉし、テメェらオタカラを搔き集めろっ!! 根こそぎ分捕れっ!!」

 楽しい楽しい略奪の始まり。

 

 

 ところがぎっちょん。

 

 

 ――水心、海流一本背負いっ!

「あ? 誰かなんか言っ――」

 デッケンが訝ったと同時に、凄絶な激流がフライングダッチマン号とブリッグを襲う。

 

「なんじゃああああああああああああああああっ!?」

 激流の直撃を受け、二隻の船が海底岩礁の迷路へ落ちる。「うーわー」とのんびりした悲鳴と共にワダツミが激流に押し流されていく。

 

「ちくしょう、なんなんだっ!? 俺としらほしの仲に嫉妬した海神の呪いかっ!?」

 部下達と共にブリッグの甲板にひっくり返ったデッケンが、あちこちぶつけた痛みに怒りながら妄想を垂れ流していると、

 

「こうして顔を突き合わせるのは、いつ振りかのう。バンダー・デッケン」

 船上の海中にお相撲さんみたく大柄な偉丈夫と勇壮な魚人達が佇み、デッケン達を見下ろしていた。

 

「バ、バホホホ……よぉ、ジンベエ」

 デッケンはズレたハットを被り直しつつ、内心で激しく毒づく。魚人島の顔役気取りの七面倒臭ェクソ野郎め。陸でニンゲン共とジャレてりゃいいのに、何しに現れやがった。

「久し振りの再会を祝いてェところだが……ひとのシノギへ横槍を入れるとは穏やかじゃねェなぁ。俺に何か急用かぁ?」

 

 ジンベエは冷厳な目つきで眼下のデッケンを睨み据え、告げる。

「しらほし姫に対する浅ましい執着を今すぐ捨て、この海から去れィっ!! 然らば、国牢屋へ叩き込むことは勘弁してやる!」

 ロリコンのストーカーなどというクズに対してあまりにも寛大な提案。

 

 だがそれが逆にバンダー・デッケン9世の逆鱗に触れた!

 

 デッケンはビキビキと顔いっぱいに青筋を走らせ、激昂した。

「――愛し合う俺としらほしを別れさせようってのか……ッ! 許せねェ……許せねェッ!! 俺としらほしの愛を引き裂く奴ぁ何者だろうと許さねェぞッ!!」

 

「聞きしに勝る埒外振りじゃのう……」

 ジンベエは双眸に侮蔑を込めて鼻息を吐き、拳を握り固めた。

「もはや問答無用。貴様の愚行はここで終わらせるっ!」

 

 

 ――とまあ、盛り上がったところではあるけれども。

 魚人島屈指の猛者ジンベエと歴戦の魚人海賊団。

 狡猾さと悪辣な手管がウリのバンダー・デッケンとフライング海賊団。

 両者がまともにぶつかれば、勝負にならない。ジンベエ達の圧勝は“確定的に明らか”。

 

 しかし、バンダー・デッケン9世という男は、腕っぷしの強さで海賊団の頭目を張っているわけではない。彼の武器はその狡猾さと“手段を択ばない不分別”なところにある。

 そして、このバンダー・デッケン9世が魚人の癖にカナヅチであることには、理由がある。

 

 あっという間に蹴散らされていく部下達に『役立たず共が!』と舌打ちし、デッケンは決断した。

 ここでジンベエに潰されたら、どのみち二度としらほしを得られねェ。そンなら――

 

 デッケンは右手の手袋を引っぺがし、自らが立つブリッグ船の甲板を思いっきり“押した”。

 瞬間、バンダー・デッケン9世がカナヅチたる理由――悪魔の実“マトマトの実”の力が発動する。

 

 マトマトの実――掌で触れた対象を『的』に、物体を投擲できる能力を与える。なお『的』に対する距離も、投擲物の質量も、一切関係ない。何千キロ離れた場所からでも、どれほど巨大な物体でも――それこそ島並みでも、『的』に向かって自動追尾して飛翔していく。投擲物の軌道上に障害物が存在したり、撃墜されない限り、決して止まらない。

 

 すなわち、デッケンに押されたことでブリッグ船は、『的』に向かって投げられた投擲物、となり、魚人島の竜宮城硬殻塔で暮らすしらほし姫を狙って“飛び始め”た。

 

「バホホホホッ! この質量だっ! 硬殻塔を直撃したら、しらほしは勿論、竜宮城だってタダじゃあ済まねェ――はずだッ!! シャボンが割れて城が島に墜ちるかもなぁっ! いや、そうなったら魚人島のシャボンも破れちまうかぁっ!? バホホホッ!」

「なんということを……この見境無しの外道めっ!!」

 ジンベエは青筋を浮かべ、魚人空手奥義の構えを取る。同胞相手の手加減を捨て、命を奪う一撃を放とうとした、刹那。

 

「ワダツミィッ!!」

 デッケンの怒号を合図に、いつの間にか戦線へ復帰した巨大魚人ワダツミが、岩礁の底に大岩を勢いよく叩き落す。突発的な海流の乱れと巻き上げられた海底堆積物が周囲を完全に覆い隠す。

 

 機を逃したジンベエへ、デッケンの嘲笑が届く。

「さっさと船を追いかけろ、ジンベエ! きっちり落とせよ? 俺の愛おしいしらほしを護るためになァ! バホホホッ! バーホホホホォッ!!」

 

 粉塵の中に消えていくデッケンとフライングダッチマン号の影。バホホバホホと水底に響く卑劣漢の高笑い。

「ぐぅううっ!」ジンベエは歯噛みして唸り「どこまでも卑劣なっ!!」

 

「ジンベエッ!!」

 海獣に曳航された太陽紋の海賊船から、アラディンが叫ぶ。

「どっちを追うっ!? デッケンか“あれ”かっ!?」

 

「口惜しいが、あの船を追うっ! 被害を出すわけにはいかんっ!!」

 ジンベエは即断し、仲間達と共に愛船へ乗り込み、海獣へ吠えた。

「あの船を全速で追ってくれっ! 礼は弾むっ!!」

 

 つぶらな瞳の羊海獣は『任せろ』と頼もしく応え、魚人島へ向かって“飛んで”いくブリッグを追い、海淵へ向かって全速力で駆け出した。

 

     ○

 

 リュウグウ王国の哨戒監視所に詰めていた兵士達は、シャボンコーティング無しで高速航行する異常な海賊船を捉え、その制止に失敗した時。事態を即座に王宮へ報告した。

 

 なんせ陽樹イブが注ぐ光を浴びながら激走する海賊船は、一直線に向かっていたからだ。

 魚人島を包む超々巨大なシャボン玉の天辺に浮かぶ竜宮城へ。

 

 末端の兵士達にとっても、報告を受けた竜宮城の王国軍にしても、海賊船の事情――船そのものがバンダー・デッケンの投擲物と化していた――なんて想像の範囲外だった。

 

 いや、想像という点においてリュウグウ王国軍は正常バイアスやら先入観やらが働いていた。海底まで届いたレッドポートのテロ事件、今リュウグウ王国を訪問している四皇の使者、この二つと高速急襲してくる海賊船を至極自然に結びつけて考えた。

 ――四皇ビッグマムと対立する海賊が、竜宮城を襲おうとしている、と。

 

 かくして王国軍は警報を発し、緊急出撃した。ビッグマムの使節団や国民に事態を知られてしまう――面目が損なわれるし、民衆に不安を与えるが、仕方ない。

 

 緊急出撃した王国軍は王子達の指揮の下、魚人島前面の海中に立体的な幾何学模様の戦列を描く。

 高速で迫る海賊船。船上に人影は全く見られない。どういうことだ? 指揮を執るフカボシ王子は胸中に生じた疑問を脇に押しのけ、全部隊へ号令を発する。

「攻撃開始っ!! 攻撃開始ィーッ!!」

 

 立体的幾何学模様を描く戦列が数理染みた緻密さで一斉攻撃を開始する。突如として生じた戦闘騒音に驚き、海生生物達が慌てて魚人島の周りから離れていく。

 

 水中用火器の弾幕射撃。刀剣類の肉薄攻撃。魚人空手や魚人柔術を用いた水流衝撃波。

 海賊船は何一つ抗うことなく高密度の猛攻を浴び、マストがへし折れ、舵が砕け、艤装が削がれる。外板が剥がれ、外殻が割れ裂ける。砲列甲板から艦載砲が転落し、舷側破孔からハラワタの如く貨物が漏れこぼれる。

 

「止まれぇええっ!!」「沈めぇえーっ!!」「墜ちろぉ――――っ!」

 三王子を始め、王国軍兵士達が遮二無二攻撃を加え続ける。さながら地球へ落ちていく巨大人工天体を迎撃する宇宙艦隊のようだ。

 

 しかし、海賊船は止まらない。過酷なグランドラインの航海に耐える海賊船は思いの外、作りが頑健で王国軍の攻撃でボロ雑巾のようになりながらも突進し続ける。

 

 それどころか、身肉を削られて軽くなったことでより速度を上げ、竜宮城を目指して魚雷の如く疾駆激走。ついに王国軍の防衛線を突き破った。

 

「しまったっ!!」

 フカボシは痛悔の叫びを上げつつ、傍らの通信兵から電伝虫の通話器を奪い取って叫ぶ。

「右大臣ッ! 済まないっ! 突破されたっ!! 父上にお出ましをっ!」

 

『そ、それが――――』

 王宮で全体の指揮統率を行っていたタツノオトシゴな右大臣が、声を引きつらせた。

『陛下はぎっくり腰で動けませんっ!!』

 

 リュウグウ王国最強の戦士にして最大戦力ネプチューン王の泣き所。持病ぎっくり腰。王宮内でネプチューン王が拳を床に叩きつけて侍医達に叫ぶ。

「痛み止めでも何でも使えっ! すぐに動けるようにするのじゃも――いたたたたたっ!!」

 

 最終手段が封じられたことを知り、竜宮城を守る手段がない事実に、フカボシが絶望を抱いた刹那。

『お忙しいところ、差し出がましいようですが』

 

 アンニュイな女の声が通信に割り込む。それは午前中に玉座の間で散々に聞いた声音。

“ビッグマム”の使者達が伴ってきた自称コンサルタントのビー(右大臣は高額賞金首“血浴”のベアトリーゼで間違いないと訴えていた)だ。

『貴国と同盟を望む私共の実力を、お見せさせていただきたくあります。如何?』

 

 自身の優位を知りながら腰の低い申し出。

 こちらが断れないと察しながら下手に出た言葉遣い。

 フカボシは王族として王国軍人としての自尊心を酷く傷つけられた思いを抱く。

「……リュウグウ王国王子の私が全責任を取るっ! 御助力をお願いしたいっ!」

 

     ○

 

 かくして、三人の美女がシャボンに包まれ、竜宮城眼前にふわふわと浮かぶ。

「というわけで、予期せぬビジネスチャンスを迎えたわけですが」

 ベアトリーゼが隣の双子へ伊達眼鏡越しに冷めた眼差しを向ける。

「一応確認するけど、お姉さん達の仕込みじゃないよね?」

 

「こんな馬鹿馬鹿しいマッチポンプしないわよ!」

「言い掛かりはやめて! 名誉棄損も甚だしいわっ!」

 ガレットとポワールは濡れ衣に憤慨する。

 

 ベアトリーゼは小さく肩を竦め、迫りくるズタボロの海賊船というか大質量の残骸を見つめる。

「どこの誰が何の目的でやったことか知らんけど、丁度良い見せ場だ。リュウグウ王国に被害を一切出さず、派手に格好よく決めてちょうだい」

 

 それなりに高いクリア条件を提示するも、

「あんなボロ船、造作もないわ!」「ビッグマムの娘を舐めんじゃないわよ!」

 四皇の娘達は不敵に、かつ獰猛に笑った。

 




Tips

ジンベエ
 原作キャラ。
 書いていて凄く難しいキャラだと気づく。頻繁に骨ギャグを飛ばすブルックより難しいかもしれない。
 単に作者の理解度が足りないだけかもしれない。

 バンダー・デッケンと知己があるのはオリ設定。
 ジンベエが国軍にいた頃、犯罪者のデッケンを逮捕しようとした頃があるとか、そんな感じの関わり。

バンダー・デッケン9世。
 原作キャラ。ネコザメの魚人。マトマトの実の能力者で、海中ではシャボンを使わないと脱力しちゃう。ただし、魚人なので溺死はしないとのこと。

 拙作では、卑怯卑劣で狡猾な悪人とロリコンの変態ストーカーという顔を併せ持つことに。

 CVは超一流声優の高木渉。ワンピースではベラミーも兼役している。

ベアトリーゼ
 なんか話が好都合過ぎない? 仕込み? と疑る自称コンサルタント
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