彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、みえるさん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


260:盛り上がってるところ悪いんだけど。

 (みぞれ)が吹き荒れ、波が暴れ狂う夜の荒海グランピー・グラニーズ・ウォーター。

 闇色の荒海に展開した舟艇の上で、特殊部隊の隊員達は暴虐的な波浪によって転覆沈没するかもしれない恐怖に耐え。高カロリーの携行食で腹を満たし、配給のラムを舐めて凍てつく寒さを堪え。ひたすらに待つ。

 

 身体の芯まで凍える辛く苦しい数時間。日付が変わりかけたその時。

 月光も星明りも差さぬ漆黒の深夜、激しい高低差の波間の先。夜闇の中に島影の如き船影がおぼろげに見え隠れした。

 

「間違いありません」舳先の隊員が大きな望遠カメラみたいな暗視機材を覗き込みながら「ワールド海賊団の海賊船グローセアデ号です」

 特殊部隊SWORD分遣隊指揮官プリンス・グルス准将が通信兵から電伝虫の通話器を受け取り、各舟艇へ告げる。

「総員、作戦開始に備えろ」

 

 隊員達が凍てついた防寒服や防水服から氷を剥がし、狭い舟艇内で強張り固まった体をほぐす。装備を点検し、銃の動作を確認する。

 誰も彼もがようやく現れた獲物に戦意を漲らせていた。この過酷な環境から脱せられるなら、転覆沈没の恐怖から離れられるなら、強大なモアモアの能力者や海賊達と殺し合う方がマシだと闘志を滾らせている。

 

「目標、相対距離500を切りました」

 暗視機材を覗く隊員が観測を続ける。

 

「400」

 濃密な夜闇の先。木々に満ちた小山のような影が見えた。

 

「300」

 歪な船だ。マストも帆も外輪もない。建物と木々で覆われた巨体の両側に、本体と同じく木々と建物で満ちた浮体が接続されている。大きな植木鉢を二つの小さな植木鉢が挟んでいるようだ。そして、本体から船首に掛けて長大な巨砲が鎮座していた。

 

「200」

 巨大な植木鉢染みた船体の天辺に尖塔が生えている。あそこが中枢部だろう。

 

「100」

 プリンスは通話器に告げた。

「作戦開始っ! 突撃班っ! 行けっ!」

 

 全6隻の舟艇から突撃班が一斉に舟艇から夜空へ飛び出した。六式体術の空中移動術“月歩”を用い、宙を走りだす。

 孔雀もアインもシューゾもビンズも隊員達も、雄叫びや咆哮を上げることなく、霙混じりの強風が吹き荒れる漆黒の夜空を駆け、巨大な海賊船へ一直線に突き進む。

 

 誰一人として海に落ちることなく飛び駆けていく様を見届け、プリンスは全舟艇へ命令を出す。

「全艇、最大船速っ! 速やかに接舷しろっ!!」

 各艇の操縦員(ホイールマン)が発動機に火を入れ、グローセアデ号へ向かって舟艇を走らせる。

 

 発動機付舟艇が波高の激しい水面を猛然と突っ走る間に、先行した突撃班が中央船体から伸びる超巨大砲座の頭上に到達。全員が一斉に六式の足技“嵐脚”を放った。

 蹴脚から放たれた斬撃が霙混じりの強風を切り裂き、超巨大砲を襲う。

 

 激しい波風の音色を消し飛ばす轟音がつんざく。も、巨砲はまったく壊れることなく堂々と鎮座し続けていた。

 

 巨砲が示した想定以上の頑強さに隊員達が渋面を作る中、

「プランBだね。任せなっ!」

 孔雀はゴム皮革製防水服の背中に担いでいた鞭を抜き――

「ほらっ! 良い子だから動くんだよっ!!」

 スッパーンッと思いっきり超巨大砲を引っ叩いた。

 

 直後。

 ズズズッと巨砲が基部ごとずりずり動き始めた。

 

 悪魔の実ムチムチの実の調教人間である孔雀は、対象を鞭打つことで“調教”し、家畜の如く従わせることができる。それがたとえ無機物の巨大な火砲であっても。

 

 常軌を逸した光景に目を丸くする隊員達を余所に、孔雀は叱声を張りながら巨砲へ鞭を振るい続ける。

「しゃきしゃき進みなっ! デカい図体して情けない顔してんじゃないよっ!!」

 

 巨砲は鞭を入れられる度、まるで調教された家畜の如くずりずりと動き、船体の縁へ進んでいく。

 

「さあ、飛び込みなっ!!」

 孔雀がひときわ強く鞭打った刹那、巨砲が縁から荒れ狂う海へ転げ落ちた。

 暴れ狂う海面から豪快に立ち昇る水柱。霙に混じって降り注ぐ大量の海水。大質量が失われたことで大きく激しく揺さぶられる巨大人工浮体。

 

「がはははっ! お見事っ!!」

 シューゾが高笑いを上げ、腰から信号銃を取り出し、空へ向けて引き金を引いた。

 照明弾が漆黒の夜闇の中で煌々と輝く。

 

 海軍最精鋭部隊の夜襲は始まったばかりだ。

 

     ○

 

 尻を蹴飛ばされた雄鶏のように、けたたましい警報が船内に鳴り響き、そこかしこから銃火の戦闘騒音が届いてくる。

 

 ワールド海賊団副船長ビョージャックは点滴スタンドを杖代わりにしながら船内を必死に駆け、グローセアデ号中央塔指揮所へ到着し、脂汗塗れの顔で指揮所内に据えられた複数の映像電伝虫モニターを見回して悲鳴を上げた。

「夜襲だとっ?! 見張りは何をしておったっ!?」

 

 顔を真っ青にした指揮所要員が喚く。

「周囲に船影はありませんでしたっ! 間違いありませんっ! いきなり現れたんですっ!!」

 

 船内を映すモニターには、海軍のカモメ紋と正義の二字を背負った兵士達が、配下達を片っ端から無力化していく、という恐るべき光景が映っていた。

 

 乗り込んできた海兵達は凄まじい練度だった。姿勢を崩すことなく移動射撃を続け、次々と船室や通路を制圧する。海賊達の反撃を受けてもまったく動じない。それどころか、銃剣や銃床を用いた白兵戦技で容易く返り討ちにしている。

 幹部の巨魚人(ウォータン)セバスチャンが気を吐くも、海兵達は高度な連携を保ち、数的優位を以て“手早く”撃破してしまった。

 

 賢智なビョージャックは否応なしに理解させられる。

 乗り込まれた時点で負け、そういう類の相手だと。弟のワールド以外は集に押し切られてしまう。

 だが、グローセアデ号の付近に軍船の姿はない。いったいどうやって侵入してきた? 

 

 船外を映すいくつかのモニターを凝視し、ビョージャックは気づく。巨船の傍らに小さな影が張りついていることに。

「……短艇? まさかこの嵐の荒海を短艇で進んできたというのか……っ!?」

 正気の沙汰とは思えない。ここは名うての難所グランピー・グラニーズ・ウォーター。短艇で航海するなど自殺行為以外の何ものでもない。

 

 驚愕するビョージャックはふと違和感を抱き、ハッと目を剥いた。あるべきものが、無い。無くなるはずのないものが、消えている。

「!? 大砲はっ?! 船首の大砲はどこに消えたっ?!」

 

 戦慄に近い衝撃を抱きながら、ビョージャックが叫ぶと指揮所要員達が口々に訴える。

「そ、それがひとりでに動いて海に落ちたんですっ! 女が鞭で引っ叩いたら大砲が動き出して……嘘じゃありません、本当なんですっ!!」

「はぁ?」

 予想の斜め上の報告に、ビョージャックが思わず気の抜けた声を出した直後。

 

 無反動砲(バズーカ)弾の群れが中央指揮所の窓を吹き飛ばし、屋内へ注ぎ込まれた衝撃波と爆風がビョージャックや指揮所要員を薙ぎ倒した。

 

 

 200名弱の部下を率いるプリンス・グルス准将は、移乗してから戦闘などしている暇はなかった。散開した隊員達を電伝虫とクリップボードだけで指揮統率し、作戦を進めなければならないのだから。

「そうだ。両側の“植木鉢”は後回しだ。連絡通路を封鎖するだけで良い。第一小隊と第二小隊は機関部及び船倉の制圧を優先しろ。第三、第四小隊は中央塔を攻め落とせ。頭を潰せば各個撃破で済む。捕虜は拘束して廊下に転がしとけ」

 プリンスは分遣隊本部小隊付きの通信兵達へ命じ、各小隊に命令を伝えさせる。と、別の通信兵が言った。

「閣下、オータムより連絡! 嵐が激しさを増しているため艦隊の到着が想定より遅れる見通しとのことです! 精確な到着時間は不明!」

 

 やはり計画通りにはいかない。プリンスは眉間に深い皺を刻みつつ、通信兵達へ問う。

「突撃班はバーンディと交戦したか?」

 

「まだ発見の報告は――」

 通信兵が否を告げようとした機先を制すように、火砲が消えた甲板から轟音がつんざいた。

 

「食いついたかっ!」

 プリンスは素早く戦況を検討して決断する。

「俺は突撃班の加勢へ向かうっ! 各小隊へケースCに従って任務を継続するよう伝達!」

 ケースC。プリンスが指揮統率を離れた場合の作戦遂行案だ。

 

「了解!! 閣下、御武運を!」

「お前達もな!」

 部下の声援に応え、プリンスは甲板へ向けて駆けだす。

 通路を駆けながら、悪魔の実グニョグニョの実の力を発動。体から粘土を生み出して巨漢のゴーレムを三体ほど作った。

 無駄足に終われば良いが。と思う反面、強敵を自らの手で倒したいという欲求もある。

 指揮官としての冷徹な思考と海兵としての戦意。そして、プリンスが通路の出口から甲板へ飛び出せば。

 

 甲板に鬼がいた。

 

      ○

 

 “破壊者”の初撃。

 武装色の覇気で塗り固められた鉄拳にモアモアの実の力で運動エネルギーを倍加した一撃は、衝撃波だけで突撃班のほとんどが薙ぎ倒された。

 六式体術を修めた優秀な兵士達が鉄塊や紙絵の技で身を護る暇もなく、一方的に甲板へ打ち倒される。

 

 壮絶にして凄絶な暴力。だが、海兵達はその力よりも“破壊者”バーンディ・ワールドの放つ狂気と凶気に圧倒される。

 

 バーンディはありがちな罵倒や怒号も吠えず叫ばず、ただ無言で殺意を放出していた。隆々たる体躯は憤怒と復讐心の熱で煮えたぎっており、吹き付ける霙がたちまち蒸発して闘気のように湯気を燻らせている。その姿は悪鬼そのものだった。

 

「……こりゃあ聞いていた以上だな」

 褐色肌の手長族戦士シューゾは飛散した木片を浴び、血に染まった防寒着を脱ぎ捨て、得物の大刀を握り直す。

 アインと孔雀も瞬く間にボロボロとなったゴム皮革製防水服を、引き千切るようにして脱ぎ捨てた。冬季用のワンピースに厚手のタイツを着こんでいた2人は、それぞれの得物を構える。

 

 ビンズもまたゴム皮革製防水服を脱ぎ捨て、普段から愛用しているニンジャ装束姿を風雨に晒す。

「征くぞっ!!」

 悪魔の実の力を使い、つる植物を巨大化。さながら大海を駆ける海王類の如く操り、バーンディへ叩きつける。

 

 だがしかし。

 剛拳一閃。バーンディの一撃で巨大植物の蛇頭が爆ぜた。拳打の衝突で生まれた熱エネルギーが冷え切っている大気を膨張させ、強烈な衝撃波を生む。

 薙ぎ払われたビンズが海に落ちかけ、孔雀が咄嗟に鞭でその長身痩躯を引き揚げた。

 

「うぉおおおおおおおおっ!!!」

 熱蒸気の霧と植物片の雨を目隠しにシューゾが刀剣を構えて斬りこみ、アインが二丁拳銃で援護する。

 

 バーンディは回避する素振りさえ見せなかった。拳銃弾の群れを武装色の覇気で固めた拳打で叩き落し、斬りこんできたシューゾの刃を同じように拳で殴り砕き、返す刀でシューゾの横っ面へチョッピングレフト。破砕音と共にシューゾの体躯が甲板を突き破り、船体内へ落ちていく。

 能力と覇気を考慮しても、でたらめなまでに強靭なフィジカル。まるで化物だ。

 

「あとは私達だけか」鞭の先端に海楼石を仕込んでおくべきだった、と歯噛みする孔雀。

「私達が倒す必要はない。先生が到着するまでもたせればいい」

 アインは通じない拳銃を捨て、双剣を抜く。モドモドの実の力は使わない。少なくともバーンディ相手に有効とは思えないからだ。

 

 バーンディが美女2人へ向け、踏み出した刹那。

「「「おおおおおおおおおおっ!!」」」

 突如、霧のように漂う蒸気の白い闇から三人の巨漢が“破壊者”へ飛び掛かる。

 

 奇襲に動じることなく、バーンディは破壊力を増大させた漆黒の鉄拳を振るう。巨漢三人が水風船のように爆ぜた。が、血は一滴も流れない。それどころか爆ぜ砕けた体躯の残骸がイソギンチャクの触手に化けてバーンディの体にまとわりつく。

 

「!?」

 意表を突かれたバーンディは反射的に触手の群れを蹴散らすも、隙が生まれた。

 

 アインと孔雀はその隙を逃さない。もちろん、この奇襲を実施したプリンスも。

 歳若き三人の精鋭が臨機応変にぴたりと息を合わせ、完璧な連携で古豪の復讐鬼を強襲する。

 音速を超える打鞭が、疾風のような双剣が、能力で生み出された大槌が、バーンディを捉え、吹き荒れる霙に飛散した鮮血が交じる。然れども命も意識も刈り取るには至らず。

 

「なめんじゃねえ、クソガキ共がッ!!!」

 最大倍加した反撃の豪打が若き海兵達をひとまとめに圧倒した。打撃の威力に甲板が耐え切れず板材が砕け飛び、船体が軋む。

 

 たった一撃で重傷を負わされた。桁違いの暴力。

 それでも、プリンス達は身体中から血を流しながらも歯を食いしばって立ち上がる。痛みに震える体。鼻腔の奥に広がる血と反吐の臭い。三人は得物を構え、破壊者へ戦意を向けた。

 それは正義を背負う海兵の使命感か。ゼファーの到着まで破壊者を拘束するという任務への忠誠心か。あるいは戦わねば生き延びられないと察した生存本能か。

 

 バーンディは三人の勇敢さを認めるどころか激しく苛立ち、さらに大きな怒りを燃焼させた。原型を留めなくなるまで殴り殺すと決意する。

“破壊者”バーンディ・ワールドは若き海兵達を徹底的に破壊し尽くすべく、鉄拳を握り固めた。

 

 

 

「盛り上がってるところ悪いんだけどさぁ。ちょーっと道を尋ねたいんだけど、いーかな?」

 

 

 

 この場に相応しくないアンニュイな調子の声が届く。

 船首の先端からしなやかな影が現れた。荒れ果てた甲板をコツコツと踵で叩くように歩いてくる影。

 

 影は優美で艶美な曲線で構成された長身を、青と蛍光黄色のタイトな潜水服で包んでいる。起動光を湛えた複眼の昆虫面ヘルメットに覆われ、顔は窺えない。引き締まった腰に巻かれた装具ベルトの後ろ腰には、交差するように二本のブレードを差していた。

 

「あんたは――」プリンス・グルスは完全に想定外の闖入者に驚き、

「なんで――」“宿敵”の登場に孔雀が目を剥き、

「……厄介な」アインが美貌を苦々しく歪めた。

 

「テメェ、何者だ。こいつらの仲間か」

 バーンディが憎々しげに誰何すると、

 

「私は海賊だよ。一応ね」

 闖入してきた女はヘルメットのバイザーを開けた。小麦肌のアンニュイな細面が夜闇に晒された。

 アンニュイ美女は満月色の瞳を柔らかく細め、悪戯っぽく微笑んだ。

「私は“血浴”のベアトリーゼ。海賊王になる男の仲間さ」

 

     ○

 

「それで、そちらは……」

 ベアトリーゼは自身へ誰何してきた凶相の大男をしげしげと見つめ、こてりと小首を傾げた。

「ひょっとして、政府の島を襲ってヤバいもんを奪ったっつぅ……誰だっけ?」

 

「バーンディ・ワールドだっ! ファウス島を襲ってダイナ岩を強奪した、インペルダウン脱獄犯のっ!」

 プリンスがツッコミをいれるような調子で喚く。身体に強い痛みが走り、思わず膝をつきそうになるが、堪える。海軍将官の末席に身を置く者の意地だ。

 

「あ~……ルフィがやらかしたアレの」

 気の抜けるアンニュイな調子で頷き、ベアトリーゼは孔雀とアインへ目を向けた。

「あらら。かわいこちゃん達が揃ってズタボロのボロ雑巾じゃん。ちゃんと手当てしなよ? 綺麗な顔や肌に傷が残ったら大惨事だ」

 

「「余計なお世話だ……っ!」」

 アインと孔雀が完璧なユニゾンで睨みつける。身体に激しい痛みが走り、思わず膝が折れそうになるも、耐えた。軍人系女子の根性で。

 

「なんなんだテメェはっ!! 勝手に現れて良い空気吸ってんじゃねえぞ、このアマッ!!」

 苛立ちを爆発させるバーンディ。

 

 ベアトリーゼは整った眉を寄せ、准将の階級章を付けたプリンスへ言った。

「出世したんだ。おめでと。それはそうと……一つ取引しない?」

「取引だと?」訝るプリンス。

 

「海軍が持ってる航海情報をくれるなら」

 金色の瞳を獣のようにぎらりと輝かせ、ベアトリーゼは言った。

「このオヤジをぶっ潰してやるよ」

 

 刹那。激情の臨界を超えたバーンディが動く。速度を倍加させ、砲弾染みた勢いでベアトリーゼへ襲い掛かり、破壊鎚染みた漆黒の豪拳を振るう。

 

 落雷染みた暴圧的轟音がつんざき、豪快な衝撃波が荒れ果てた甲板をさらに耕す。プリンスや孔雀達は身体を支えきれず片膝を突いて衝撃波に耐え、呻く。

 全身を駆け抜けた激痛にではない。眼前の光景に、だ。

 

 バーンディが甲板に両膝を突き、巨躯をくの字に折り曲げて血反吐をぶちまけていた。

 

 何が起きたのか、孔雀とアインには見えなかったが、プリンスは辛うじて、見えた。

 ベアトリーゼがバーンディの豪打へ完璧なクロスカウンターをぶち込む様を。

 

「えらく頑丈な奴だな。今ので仕留めるつもりだったのに」

 右手をひらひらと振りながら、ベアトリーゼは満月色の瞳を冷酷に細め、愕然としているバーンディを見下ろした。

 

「ば、かな……っ!!」

 血走った目で睨んでくるバーンディに、ベアトリーゼは極寒の外気より冷たい声で応じた。

「そんな見え見えのテレフォンパンチに当たるわけねーだろ」

 ふん、と鼻を鳴らして拳の具合を確かめながら続ける。

「速いことは速いけど……“黄猿”ほどじゃないし。拳骨も強力っちゃあ強力だけど……ガープほどじゃないし。能力と覇気に頼った二流だな。監獄ン中で大人しく腐り果ててりゃあ良いのに」

 

 ブチッ!

 

 激しい風雨の音色と戦闘騒音が支配する甲板にあって、プリンスや海兵達は確かにその音を聞いた。

「殺す」

“破壊者”バーンディ・ワールドは言った。脅し文句でも怒気の吐露でもなく、明確な意志の宣言として。

 

 もっとも、絶対的殺意を乗せた言霊を投げつけられた当人は、疎ましげに小さく鼻息をつくだけだ。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!! 殺すっ! 殺すっ!! ぶっ殺すっ!!」

 バーンディが激怒で血を沸騰させ、悪鬼染みた形相で憤怒の戦叫を響き渡らせた。その圧倒的威容にプリンス達が気圧され、息を呑む中。

 

 復讐鬼を激昂させた張本人は心底面倒臭そうに眉をひそめ、ヘルメットのバイザーを閉じた。

「面倒臭ェ奴」

 

 そして、呟く。どこまでも冷酷非情に。

「……だけど、“手頃な”頑丈さだな」

 

 ベアトリーゼはこれまで、悪魔の実プルプルの実の力を科学的学識に基づいて運用してきた。しかし、頂上戦争でグラグラの実を操る白ひげや黒ひげを見て、別の運用方法を検討し始めていた。

 科学ではなく概念や想像力に基づいた運用を。

 

 バーンディ・ワールドを捉える満月色の瞳は、まるでモルモットを見ているようだった。




Tips

ワールド海賊団の皆さん。
 セバスチャン
 アニオリキャラ。巨人と魚人の間に生まれた巨魚人。盲目の戦闘員。
 本作では地の文で見せ場なくリタイア。

 CVはベテラン声優の樫井笙人。数多くの作品に出演している一流バイプレイヤー。

合同任務部隊の皆さん。
 シューゾ
 アニオリキャラ。劇場版FILM Zの放映に合わせたアニオリ回で登場した。褐色肌の手長族男性。
 アニメではアルパカチーとかいう不思議動物とタッグを組んでいたが、拙作ではアルパカチーが未登場。忘れてたことは内緒。

 CVは廣田行生。低く渋い声が特徴の超一流声優。アニメ・ゲームから吹き替え畑でも活躍している。ギアーズ・オブ・ウォーの主人公は最高にハマっていた印象。
 ワンピースではハックを兼役している。

ベアトリーゼ。
 唐突に現れた迷惑な人。
 なにやら良からぬことをやらかそうとしている。
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