彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
ベアトリーゼが高速帆船の船室でステューシーとディナーを楽しんでいるところへ、元CP9の面々が変装を終えて出動を告げに現れた。
海賊や賞金稼ぎに扮し、暗闇で目立たぬ夜戦装束に身を包んだ面々に交じる紅一点を見つめ、ベアトリーゼは唖然となった。
「……カリファって、実は露出癖があったりする?」
「そんな性癖は無いわよっ! これは変装よっ!」眉目を吊り上げるカリファ。
「なるほど……娼婦に化けたのか」
「海賊よっ!」
「えぇ……?」
カリファの抗議を受け、ベアトリーゼは改めてカリファの格好を爪先から見上げていく。
パンプスに始まり、優美な脚を網タイツで包み、えぐいほどローレグのショーツと超ミニスカートで腰回りの露出が激しい。胸元のVネックタンクトップも凄い。襟の切れ込みが深くほとんどビキニブラだ。Gカップの大きな乳房が今にも溢れそう。耳と首元や手首に派手なアクセサリ。端正な細面には派手で濃い化粧。
ベアトリーゼは大きく頷き、ルッチ達へ水先を向けた。
「私も海賊に化けてるけどさぁ……お前ら、私とカリファが同業者に見える?」
元CP9の野郎共はそっと顔を背け(しかも揃えたように同じ方向だった)、回答拒否。
ベアトリーゼの指摘は、元スパイの野郎共も思っていたことだった。というのも、カリファは“ジョージ”からウォーターセブンの失敗をきつく叱責されて以来、露出過多な装いを選び気味で、男達もカリファの心中を慮って『少し露出が派手過ぎないか?』とか『もう少し控えめな格好にした方が……』とかそれとなく指摘していたのだが、聞き入れられず。
カリファは色んな意味で顔を真っ赤にして憤慨し、ベアトリーゼを睨みつける。
「貴女だってエニエスロビーの時は娼婦みたいな格好してたじゃないっ!」
御指摘通り、ベアトリーゼは何かとコスプレ紛いな恰好をしたり、半裸姿になったり、という痴女予備軍だ。が、当人はその事実を棚に上げ、宣う。
「この海にはパッパラパーな奴が掃いて捨てるほどいるし、露出狂染みた格好の男も女も珍しくないけどさぁ……それを差し引いても……娼婦以外でそんな格好してんの、乳とケツ出す以外に人から注目を得られない負け犬女か、性的欲求不満のケツ舐め女くらい……あ」
ベアトリーゼは何かに気付いたようにルッチ達へ目を向けた。
「お前ら、カリファをちゃんと満足させてる?」
「俺達はそんな関係じゃない。根も葉もない言い掛かりはやめろ」
心底嫌そうにルッチが顔をしかめ、そうだそうだ、と野郎共が頷く。
「ステューシーも、どうしてこんなになるまで放置したのよ」
「本人が自覚するまで温かく見守るべきだと思って」
蛮姫に水を向けられ、白い貴婦人は優雅に微笑む。将来、カリファの黒歴史として弄り倒そうと思っていそうな悪戯っぽい微笑。
ベアトリーゼの言い草と周囲の反応に、カリファは憤懣と羞恥で顔を真っ赤にしてプルプルと肩を震わせていたが、
「カリファ……もっと自分を好きになってあげて?」
ベアトリーゼが慈愛深い顔つきで優しい声を掛けると、ついにキレた。
「だまらっしゃいっ!」
「ぐえーっ!」
ヤクザキックをぶち込まれて椅子から転げ落ちる蛮姫。回避も武装色の覇気の防御も使う素振りも見せない辺り、遊んでいる。実際、床にひっくり返りながらゲラゲラと笑ってやがる。
益体ないやり取りにひとしきり喉を鳴らし、ステューシーは碧眼に冷たい光を宿してCP9の面々へ告げた。
「分かっていると思うけれど、今の貴方達はお尋ね者で活動に法的正当性、正義は一切ないわ。危機に陥っても支援も救助もない。もしも“敵”に囚われそうになったら、自分の頭に指銃を撃ち込みなさい」
冷徹非情なイージス・ゼロ要員の通告に続き、歴戦の女荒事師が身を起こしながらルッチ達へ言った。ゾッとするほど冷ややかに。
「立ち入り禁止地区内には私の見聞色を妨害した奴がいる。侵入を試みるなら、よほど上手くやるんだな」
「……どういうつもりだ」ルッチは猜疑心を隠さない。
ウォーターセブンで、ベアトリーゼはCP9の面々を世界政府の飼い犬だの、天竜人の奴隷だの、ドブ犬だの、散々ぱら口汚く罵倒し、ルッチ達を嬲り殺しにしようとしたのだ。そんな女が忠告を寄こせば、疑いたくもなろう。
「天竜人の飼い犬なら死んだってかまわないが、今のお前らはステューシーの可愛い飼い犬だからな」
ベアトリーゼは椅子に座り直し、しかめ面になったルッチ達を嗤う。
「せいぜい頑張りな、犬ッコロ共」
○
大勢のアウトローが参集したデルタ島は夜を迎えても、賑々しい。どこの港も通りも街頭や行灯が煌々と輝き、ロクデナシ共が酒やハッパで酔っ払い、大騒ぎしていた。当然というか、酔ったバカ共は些細なことで喧嘩騒ぎや流血沙汰を起こしていて、なんなら死人も出ている。どうしようもねえ。
「なんで俺が聞き込みなんだよ」
「ゴロツキのぉ~変装がよぉ~く似合うからじゃあ~ねぇですかぃ~?」
「どういう意味だ、コノヤロー」
やいやい騒ぐジャブラとクマドリ。
フクロウはにやりとして「ジャブラ。“名探偵”の腕前を披露してくれ――チャパパ」
「その話をほじくり返すんじゃねェっ!」
フクロウ、クマドリ、カリファ、ジャブラは海賊や賞金稼ぎに変装して夜のデルタ島を回り、情報を集めていく。
酔っ払い共の口は軽いが、聞ける話は酔っ払い特有の与太話に駄法螺ばかり。情報収集のプロである諜報員の技能をもってしても、泥の中から砂金粒を探すような苦労は避けられない。
ちなみに娼婦染みた格好をしたカリファは行く先々で男達の注目を浴び『ねえちゃん、いくらだよ?』と声を掛けられた。
まあ、これは予想の範疇。
予想外のことは女海賊や女賞金稼ぎなどから『アタイの男に色目使ってんじゃねえ、ビッチッ!』と喧嘩を吹っかけられたり、娼婦達から『アタシらの縄張りに入ってくんじゃねえよ、クソアマ』といきなり殴りかかられたり。
不機嫌さを隠さないカリファに難渋しつつ、ジャブラ達は聞き込みを続け――
「ヴォーガ? ああ。少し前にそんな船が入港したな」
港湾労働者達の溜まり場らしい酒場でようやく手掛かりを得た。
「同じような質問を何度かされてる。賞金か何か懸かってるらしいな」
「なら同じことを聞かせてもらえるかしら?」
「構わねぇよ? おねーちゃんが“御礼”をしてくれるならな」
労働者達はカリファの今にもこぼれそうな胸元や露出の激しい腰回りを凝視し、ぐひひと下卑た笑いを返す。
瞬間。ジャブラが卓の料理や酒を乱暴に払いのけ、どん、と右腕を置いて腕相撲の構えを取った。
「勝負といこうや。俺らが勝てば素直に話せ。お前が勝てば……望み通り一晩良い思いさせてやるぜ」
「ちょっとっ!」
勝手に賞品へされたカリファが憤慨するも、酒場は大盛り上がり。上腕二頭筋に自信がある連中が名乗りを上げる。クマドリとフクロウも袖を大きくまくり始めた。
ジャブラは狼のように吠える。
「掛かって来いやーっ!!」
カリファは額を押さえて溜息を吐いた。
○
闇に紛れる夜戦装束を着こんだルッチとカク、ブルーノは森林地帯から島内中央部のメイン会場建設予定地に近づき、侵入しあぐねていた。
街区や港と違い、立ち入り禁止の建設作業地は酷く静かだった。防犯照明以外に光はなく、労働者が寝泊まりしているだろう飯場のプレハブ小屋やコンテナハウスも静かなものだ。
「随分と警備が堅い」
ルッチが双眼鏡を下げ、隣のカクへ渡した。
「警備員が若い……というより幼いのう。最年長でも20歳に届いとるかどうか。そのくせ練度は悪くない。装備も一級品で規律も行き届いとるようじゃ……海軍の二線級部隊よりよほど手強そうじゃ」
カクは双眼鏡で建設予定地の警備体制を観察しながらウームと唸る。
「というか、わしらのこと気取られとらんか?」
「忌々しいが、“血浴”の忠告通りだな。立ち入り禁止区域内に腕の良い覇気使いがいるんだろう。積極的に仕掛けてくるつもりはないようだが、捕捉されずに侵入することは厳しいな」
苦い顔を作るルッチ。
「俺の能力で忍び込むか?」
空間移動が可能なドアドアの実の能力者であるブルーノが提案する、もルッチは首を横に振った。
「見聞色の覇気ではブルーノの能力でも侵入を察知される。それなら、能力を把握されない方が良い」
「なら、どうする?」
カクが疑問を呈した、刹那。
どっかーん!!
建設予定地に臨む中央水路から強烈な閃光が放たれ、暴力的な爆音がつんざいた。
水面で激しく燃え上がる船。赤々と夜空を燃やし、水路や建設予定地を照らす炎に、歳若い警備兵達も飯場の安普請から飛び出した労働者達も、藪に身を潜ませるルッチ達も意識を奪われていた。
と、ルッチの懐で小電伝虫が震えた。
「こちらルッチ」ルッチが小声で通話に出る。ブルーノとカクも聞き耳を立てる。
『何が起きた? 海岸からも火災の明かりが見えるぞ』ジャブラが緊迫した声で問う。
「水路で船舶が爆発炎上した。我々とは別口が仕掛けたようだが……状況は不明だ」
『ルッチ。今掴んだ情報だが……偽ヴォーガから逃げた水夫が、その立ち入り禁止区域に労働者として潜り込んでいるらしい』
「重要情報源か。この爆発もそいつを狙ったものだろうな」
ジャブラの説明を聞き、ルッチは水路上で炎上轟沈する船舶を睨む。
「陽動か」ブルーノは眉間に深い皺を刻む。「この規模の陽動を仕掛けられる手合いは限られる。闇社会の帝王達の追手かもしれない」
「……動くぞ」通話を切ったルッチはカクとブルーノへ「水路方面で陽動を仕掛けたなら、撤退方面はこちら側だ」
「横取りか。ブエナ・フェスタはお預けじゃな」カクはどこか残念そうに言う。
「主目標はあくまでヴォーガだからな……今は」
ルッチは頭に被っていた目出し帽をずり下げ、顔を隠した。カクとブルーノも目出し帽を被る。もっとも……カクの四角い長っ鼻とブルーノの特徴的な髪型はまったく隠れていなかったが。
・
・・
・・・
月明かりも通らない森の闇は想像以上に深く濃い。追跡を防ぐために照明を使えなければ、移動ルートは限られる。ルッチとカクとブルーノは暗殺者特有の高い隠密性を発揮し、その限られたルートに網を張り、待つ。
大木の上に身を潜めるルッチの肩に梟が停まり、プリッと糞をした。藪の底に身を沈めたカクの背をデカいムカデがぞぞぞと這って行く。林床のくぼみに隠れたブルーノの目先で野鼠の夫婦がいちゃついている。それでも3人は微動だにしない。
そして――
ルッチが手を振って合図を送る。気配を察して目を向けてきたカクとブルーノへ、手信号で告げた。
来たぞ、と。
カクが目をこらし、濃密な闇の先を探れば。
ウェットスーツに武装した女が3人。足音も雑音も出さず森林内を素早く駆けている。爆発を陽動に水路側から侵入したのだろう。全身が濡れていた。それに、簀巻きにした青年を担いでいる。
元暗殺者の3人が仕掛けた。まるで捕食者のように。
ルッチが頭上から、カクが藪中から、ブルーノがくぼみから、六式の高速移術“剃”を使って一気に肉薄。意表を突かれた女達は反応が間に合わない。銃やナイフが抜かれるより早く、ルッチ達の攻撃が女達を襲う。
夜の森に肉を打つ音色が流れ、女達の短い悲鳴が響き、林床に崩れ落ちる音が3つ奏でられる。
どこの手のものか分からないので、ルッチ達は殺さず気絶させるに留めた。
「練度と装備から見て……紐付きの賞金稼ぎじゃろう。連れていって背後関係を尋問するか?」
「“荷物”だけで十分だ。それより撤収を急ぐ」
カクの提案に首を振り、ルッチはブルーノへ手信号を送った。ブルーノは首肯して簀巻きにされている青年を担ぎ上げた。
元暗殺者の3人は女達を殺しはせず、その場を去る。
重要情報源らしき青年を担ぐブルーノを真ん中に、カクが先頭でルッチが後方を警戒しながら、夜の闇深い森を疾風のような速さで駆けていく。
六式の体術を駆使し、“剃”で森の中を疾走し、“月歩”で林冠を飛び越え、3人はステューシーの高速帆船が停泊する港を目指す。
梢の先にある街の明かりがぐんぐんと近くなる。木々の先に見える港の明かりがどんどん近くなる。夜の街から響く喧噪や賑わいが徐々に大きくなる。
あと少しで森を抜ける、その時。
いきなり銃弾が飛来し、先頭を進んでいたカクから鮮血が舞った。
○
銃声は聞こえなかった。
咄嗟に物陰へ身を隠し、ルッチは周囲を警戒し、ブルーノは簀巻きの青年を下ろして撃たれたカクの容態を見る。
「このくらい、かすり傷じゃ」
カクは声を潜めつつ不敵に宣うも、左上腕からぼたぼたと血が滴っていた。身体中から脂汗が滲みだしている。
「弾は抜けてない。神経や主要血管は損傷していないようだが、出血量が多い。早い手当てが必要だ」
ブルーノが小声で語り、腰のベルトを抜いてカクの肩の付け根をきつく縛り上げた。カクの口から呻き声が漏れる。
瞬間、カクとブルーノが身を隠した樹木の幹に着弾音が生じ、木片や樹皮片が散った。しかし、やはり銃声は聞こえない。発砲光も見えなかった。
無音の銃撃が繰り返され、カクとブルーノの傍で木片や土くれが飛散する。まるで猟師が獣を追い詰めるように。
ルッチは決断した。
「ブルーノ。能力を使え。カクと重要情報源を連れて船に向かうんだ」
「狙撃手と戦う気か? わしの仇を討ってくれるのはありがた――」
「敵の素性を知りたい」
カクの言葉を遮って嘯くルッチに、カクは苦笑した。
「……気をつけろ。撃たれるまで気づかんかった。相手は腕が良い」
「ああ」
ルッチはブルーノに抱えられたカクへ首肯し、ドアドアの実の力で異空間へ消えていく2人と簀巻き青年を見送った。
そして、覆面を脱ぎ捨ててネコネコの実モデル・レオパルドの能力を解放。人獣形態へ姿を変える。
人豹は猛獣の獣性を発揮するように牙を剥き、森の木々を足場に六式の
暗黒の森の中を疾駆する人豹を狙い、無音の銃撃が繰り返された。銃弾は高速で不規則に機動する人豹を捉えられない。が、銃撃は徐々に人豹へ近づいていく。森の終わりに臨むころにはルッチの頬を弾丸がかすめた。
――次はかわしきれない。
森を飛び出すと同時に、ルッチは被弾を覚悟して六式体術の“鉄塊”を行使した。直後、銃弾がルッチの胸部を直撃した。
“鉄塊”を駆使してなお、身体の芯まで響く凄まじい衝撃。骨と内臓が軋み、身体に痺れが走って息が詰まる。激痛に明滅する視界にぼやけた発砲光が見えた。
森のほとりの啓かれた場所。伐採された材木が積まれ、簡素な建物があった。
伐採場だ。
ルッチは胸部の苦痛を堪えながら月歩で宙高く飛び上がった。爆撃するように狙撃点らしき伐採所の安普請へ六式の戦技“嵐脚”の上位技“凱鳥”を叩き込む。
単純な作りの安普請は容易く切り刻まれ、倒壊。煙幕のように大量の粉塵を広げていく。
手応えがなかった。ルッチは警戒を解くことなく、獣の優れた知覚野と暗殺者としての経験と勘で慎重に探りながら、瓦礫の山へ接近する。
人豹の優れた嗅覚が硝煙の臭いを捉え、ルッチは瓦礫の一角に飛ぶ指銃を撃ち込む。
爆ぜる瓦礫。新たに巻き上がる粉塵。警戒しながら近づく。敵の姿も血痕もなかったが、瓦礫の中に銃を見つける。
減音器らしき円筒物を銃口に装着した彫刻入りのカートリッジ式連発銃。カスタムメイドの高級品だ。指銃が命中したのだろう機関部が損傷している。
銃を放り棄てた直後、獣の直感が告げた。
――見られている。
ルッチは微動だにせぬまま全ての五感を働かせ、視線の源を探す。目を凝らし、耳を澄まし、臭いを嗅ぎ、舌で空気に混じる異臭を探り、肌で視線の殺意を感じ取る。
数時間が経過したと錯覚する緊迫の十数秒。
左後方の粉塵の中。苛烈なピストルビートと派手なガンフラッシュ。引き裂かれる静寂。
人豹は怪物的反応速度と敏捷性で前方へ飛び退き、着地しながら飛ぶ指銃の乱れ撃つ“斑”を放つ。
銃弾と一本貫手の弾幕が交錯し、激突。銃弾がルッチの指銃を撥ね飛ばした。
「なっ!?」
想像外の事態にルッチは驚愕し、反応が鈍る。
その間隙を突くように吹き荒れた銃弾が人豹の頑健な肉体を裂き、削ぎ、抉り、穿つ。
ルッチは被弾し、大地へ倒れていく。瞬間的に過剰分泌される脳内物質。時間感覚が凝縮され、視界内の全てが遅く緩やかに流れる。
そして、見えた。
決して見通せない濃密な粉塵の向こうに朧気な“敵”の姿が。
”敵”が照準を自分の頭へ重ねる動きが。
放たれた銃弾が自分の頭蓋を撃ち抜く数瞬後の未来が。
体勢が不味い。月歩も剃も嵐月も使えない。指銃では威力で負ける。鉄塊で防ぐか。紙絵で避けるか。
いや、違う。
反撃だ。もっと強力な反撃を放て。
粉塵の闇の先で発砲光が煌めき、高速拳銃弾が螺旋回転しながらルッチの眉間めがけて飛翔する。
猛獣の殺意と戦士の闘志を発揮し、ルッチは倒れ込みながら
強固な意志を宿した指銃は拳銃弾を撥ね飛ばし、“敵”へ命中した。
然して敵もさるもの。放たれた銃弾は“2発”だった。見逃した2発目の弾丸がルッチを貫く。
倒れる人豹。夜闇と粉塵に溶けていく銃声の残響。
伐採場に静寂が戻った頃。ルッチは苦悶と血を吐きながら身を起こし、手負いの猛獣そのままに“敵”を探す。
だが、残っていたのは血痕だけ。敵は姿を消していた。
敵を仕留め損なった事実。強敵相手に生き延びた現実。
相反する感情を抱きつつ、ルッチはその場に腰を下ろした。右下肋部あたりの銃創を押さえ、大きく息を吐く。
「立ち入り禁止地区に入る前にこの様か。先が思いやられるな……」
Tips
カリファ
原作キャラ。
オリ主とオリキャラのせいで迷走する女スパイ。
ステューシー
原作キャラ。
なんだかんだ元CP9の面々と上手くやっている御様子。
カク
原作キャラ。
長っ鼻の青年スパイ。腕を被弾した。
ロブ・ルッチ
原作キャラ。元CP9メンバーの実質的リーダー
覇気に目覚めつつある。
銃手
正体は次回。
ベアトリーゼ
CP9の面々に意地悪を続ける野蛮人。