彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
佐藤東沙さん、nullpointさん、みえるさん、烏瑠さん、末蔵 薄荷さん、誤字報告ありがとうございます。
デルタ島のど真ん中。半ば埋め立てられた円形湖で、激しい戦闘交響曲が奏でられていた。
ダグラス・バレットは圧倒的な強度の覇気と自身の体躯、少年兵時代に刻み込まれたガルツバーグ流白兵戦技を駆使し、海賊達を薙ぎ払い、賞金稼ぎ達を薙ぎ倒す。
打撃を鍛え上げた体躯と練り上げた戦技でいなし、斬撃を武装色の覇気による硬化で防ぎ、銃撃を見聞色の覇気の先読みでかわす。それら全てを用い、悪魔の実の能力による攻撃を防御する。
「カハハハッ!! いいぞ、カス共っ!! もっと必死になって掛かってこいっ!!」
海賊や賞金稼ぎ達と戦いながら、バレットは“楽しい”という感覚を抱いていた。
実に20年振りの感覚だった。
非道がまかり通るワンピース世界においてなお、最悪と謳われる大監獄インペルダウンは、収監する囚人を“無力化”する構造をしていた。過酷な収監環境、心身を削るような強制労働に苦しめるためだけの拷問、些細な理由で行われる虐待的懲罰、強くタフな海賊達や極悪人達が小娘のように背を丸めてすすり泣く地獄だ。
バレットはそんな地獄の最深部に封じられていた。
狭苦しい完全隔離房に押し込まれ、一秒たりとも海楼石の拘束具を解かれることはなく、一分たりとも檻の外へ出されることもなく。他人と接触する機会は完全に断たれ、外部情報は完全に遮断され。ただ漫然と時間を浪費するだけ。
絶対的な孤独と苛虐的な閉塞感、延々と続く希望無き生活。人外的な覇気使いや能力者でさえ、突然泣き出したり、四六時中叫び続けたり、大便で壁に描いた絵を相手に会話をするようになる環境に、20年も閉じ込められていた。
それでも、バレットの心は挫けず、折れず。
ガルツバーグ軍時代よりも己に課した規則を正しく守り、高純度海楼石のもたらす虚脱感に苛まれながら狭い監房の中でトレーニングに勤しみ、覇気を練り、自身の持つ悪魔の実の能力に対する理解を深め続けた。出所する見込みは皆無だと分かっていながら、毎日毎日20年に渡って。
ある時、バレットは自身の生活を客観視し、思わず笑いだした。
もしも娑婆にいた頃にこれほど自己を律せられていたら、海底に封じられるような人間になっていなかっただろう。それとも、これは自分なりに狂ったということだろうか。
そう思わず笑ってしまってから間もなく。
麦わらのルフィと黒ひげティーチがインペルダウンを襲撃し、封印が解かれた。
バレットは決して出られないはずの大監獄を出た。二度と見ることが叶わないはずだった太陽と空を見た。二度と得られないはずだった自由を得た。
「カハハハハハハハハハハッ!!!」
そして、バレットは今、楽しんでいる。
戦う喜びを、味わっている。
大いなる歓びを抱き、血湧き肉躍る感覚を抱きながら、ダグラス・バレットは思う存分、力を行使する。
百獣海賊団とビッグマム海賊団の旗を掲げる海賊達を片っ端から、殴り、叩き、打ち、投げ飛ばし、蹴り飛ばし、踏み潰し、肉を裂き、肉を潰し、骨を折り、骨を砕く。名はなくとも強い海賊達を次々と倒し、次々と沈め、次々と殺し、次々と屠る。
海賊達の血肉でたちまち拳が赤く染まる。軍服風の黒装束が汗と返り血を吸い、戦塵が貼りついてどす黒く汚れていく。
名もなき新世界の猛者達をあらかた打ち倒せば、続いて超新星達が挑んでくる。
大柄な藁人形の怪物と化したバジル・ホーキンスを豪拳の連打で叩き潰す。
“海鳴り”スクラッチメン・アプーの音響攻撃を平然と食らいながら突進し、ぶちのめす。
人間要塞となった“ギャング”ベッジの弾幕を殴り払いながら肉薄、巨躯を活かしたタックルでぶっ飛ばす。
“殺戮武人”キラーの斬撃を最小限の武装色の硬化で防ぎ、カウンターで殴り飛ばす。
「ロートルが調子こいてンじゃねェッ!!」
ジキジキの実の力で鉄屑を集め、巨拳を作り出した“キャプテン”キッドの豪打に対し、
「ほうっ! 面白れェ、受けて立つぜッ!」
バレットはガシャガシャの実の力で無機物を集め、巨拳を作り出して真正面から剛打を殴りつける。
激突する二つの巨拳。大質量が激突し――鉄屑製の巨拳を砕かれ、キッドが吹き飛ばされ、バレットが凶相を歪めて嗤う。
「テメェの能力は俺の下位互換みてェだなぁ、小僧」
「こ、の……野郎ォっ!!」嘲られ、傷だらけのキッドがブチギレる。
バレットが海賊達を蹴散らしたその間隙、
「ダグラス・バレットォッ!!」
高圧炭酸ガスのタンクを背負い、強圧炭酸水のウォーターガンやウォーターカッターで武装し、高圧炭酸ガスを用いた飛行ユニットを用いた炭酸兵達がバレットを包囲する。額に傷が走る大男――シードル・ギルドの頭目シードルが怨恨と憎悪を叫ぶ。
「テメェに故郷を滅ぼされた怨み……っ! 此処で晴らぁすッ!!」
「あぁ? テメェの故郷? 覚えてねェなあ。“そんなくだらねェこと”はよぉ」
嘲り笑うバレット。シードルは顔面に浮かんだ血管がはち切れる寸前、スッと波が引くように完全な無表情となり、告げる。
「殺せ、今すぐだ」
壮烈な威圧感がこもった命令を受け、賞金稼ぎ集団シードル・ギルドの一斉攻撃が始まった。空陸からバレットへ十重二十重の攻撃を叩き込む。
ダイヤすら断つ超高圧放水が熱光線のように幾条も走り、円形湖を埋める岩塊や小島の破片をバターみたく切り裂き、削ぎ落す。高圧炭酸ガスを用いて擲弾、矢弾や銛の弾幕が降り注ぎ、円形湖を爆炎で満たし、あらゆるものを貫き、穿つ。
巻き添えになった海賊達がたちまち肉片と化す濃密な猛攻。
「水遊びなら余所でやれ」
しかし、ダグラス・バレットには通じない。
圧倒的フィジカルと圧倒的覇気を持つ大男は、超高圧放水をシャワーでも浴びるように受け止め、擲弾の爆炎や爆風を涼しげに受け流し、矢弾や銛を蠅でも払うように払い除ける。
バレットは武装色の覇気を巡らせた拳を振るい、シードル・ギルド炭酸剣戟団を砕くように殴殺し、撲殺し、撃滅する。ギルド紅一点の斬込隊長ガラナが麗貌を血に染めて倒れ伏す。
バレットは能力で左腕に大蛇のような巨大鉄鞭を作り出し、シードル・ギルド炭酸銃撃団を潰すように、巨大鉄鞭で破砕し、破壊し、壊滅させる。突撃隊長ジンジャーが血達磨と化して転がる。
バレットは凄絶な暴力を解き放ち、シードル・ギルド主力の炭酸攻撃軍団を抹殺していく。飛行ユニット部隊を羽虫の如く次々と撃ち落としていく。地上部隊を地虫の如く次々と捻り潰していく。
バタバタと散っていく炭酸兵達を囮に、シードルが肉薄。
「死にさらせェィッ!!!!!」
腕に装着した超高圧炭酸ガス砲をゼロ距離でバレットにぶち込む。激甚な衝撃波が走り、大量の粉塵が立ち昇る。
大型航空爆弾並みのエネルギー。さしものバレットも無事では――
「今のはチィッと効いたぜ」
にやにやと剛毅な笑みを湛えるダグラス・バレット。
ボロボロになった上着を破り捨て、バレットは筋骨隆々の上体を晒す。唖然としているシードルの顔面へ漆黒の左拳を叩き込み、次いで破城槌みたいな右の打ち下ろしをぶち込んで、シードルを円形湖の岸壁まで殴り飛ばす。
戦塵と爆煙に満ちた血みどろの戦場で、凶相の大男が歓喜の鬨を上げた。
「カーハッハッハッ!!」
「バ、バケモンだ」
血塗れで転がる海賊が恐れ慄いて呟けば、隣で死にかけている賞金稼ぎがどこか他人事のように言った。
「ああいうのはな、鬼っていうんだよ」
○
円形湖で鬼が暴れている頃。
「ヒョーホッホッホーッ!! さあさあ、踊れ踊れ踊り狂え、皆の衆っ!」
人食い道化が哄笑を上げながら会場から逃げ惑う観客達や戦闘中の海賊と賞金稼ぎ、はてはバレットの覇王色の覇気を浴びて失神昏倒中の者達にまで催眠暗示を掛け、ウタの身を奪わんと襲い掛からせる。
焦点定まらぬ目つきと胡乱な表情で『ウタちゃんウタちゃんいっしょにおどろう』と繰り言を呟き、四方八方から押し寄せる人の波。
ベアトリーゼとウタの護衛達は歌姫とバンドメンを守るべく、片っ端から叩きのめしていく。が、催眠暗示を掛けられた者達は倒された者達を踏み越え、次々と迫り続ける。彼らの足元から肉体を踏み潰される肉と踏み砕かれる骨の音、吐血しながら『ヴダぢゃあん』と呟く声が聞こえてくる。
あまりにもおぞましい光景に、ウタの可憐な顔貌が恐怖と戦慄に凍りつき、もはや悲鳴も上げられない。
「鬱陶しい真似しやがってっ!」
ベアトリーゼは思わず毒づく。この程度の単純な物量攻勢など、普段ならばプルプルの実の大量破壊系武技を使わずとも覆せる。が、ウタの眼前でウタの観衆達を大量殺戮することは、流石の野蛮人も気が引けた。事実、護衛達も峰打ちで対処している。
しかし、制約付きではこの物量を打ち破れない。着実に追い込まれている。
――……やるしかないか。
蛮姫が冷徹に一線を越える決断を下そうとした矢先。
「やめて―――ッ!!」
ウタの悲愴な声が飛んだ。
視界を満たす凄惨な光景に涙を溢れさせながら、ウタは叫ぶ。
「やめてよッ!! こんな酷いこと、もうやめてよぉっ!」
歌姫の哀願を、人食い道化は命を弄び、死を嘲りながら、嗤う。高々とからかうように。
「ヒョホホホホホホッ! 笑って笑って! マジメになっちゃあダメッ!」
「野郎……ッ!」「下衆め……っ!」「……ッ!!」
激怒する護衛達の背に守られながら、ウタもここに至って覚悟を決める。歌姫として聴衆を護りたい覚悟を、この残酷な世界の海を渡る女として備えた覚悟を、決めた。
ウタウタの実の力によって聴者の魂を強制的に
負の感情と狂気に満ちたこの状況でウタウタの力を使うことは、魔王の覚醒を招くリスクが高い。
それでも――。ウタはぎゅっと胸元で拳を強く握る。道化姿の邪悪を止めるため、濡れる紫水晶の瞳に決意を宿して。
凛とした歌唱の第一声を発す。
「―――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」
歌姫絶唱。
魂を仮想世界へ誘なう異能の歌声がメイン会場に、電伝虫を通じて島中に、さらには電伝虫の中継が繋がっていた世界各地に、届き響く。
護衛達が、バンドメンが、メイン会場にいた大勢が、デルタ島にいる大勢が、世界各地でデルタ島の事態を注視していた大勢が、あるいはとある大型電伝虫と混線してデルタ島の状況を視聴していた人々が――突然意識を失って倒れ込んでいく。
「素晴らしいっ! お嬢さんは我が神アブスルドの巫女に相応しいバネッ!!」
大群衆がばたばたと崩れ落ちていく中、モロネヴが太った体躯を震わせるように嗤う。
「なんで――ッ?!」
驚愕するウタ。私の歌声を聞いたらウタワールドに行くはずなのに!?
「ヒョホホホッ! 私は催眠術の使い手ッ! この手のことに対策はばっちりバネッ!! さあ、お前達っ! 我が神の巫女を手に入れるバネ――ッ!!」
モロネヴの号令一下、ウタワールドに魂を引き込まれなかったサーカス団員やダンサー達と共に護り手を失ったウタに迫り、
「やらせねェよ」
しなやかな影が立ち塞がり、高周波を宿した漆黒の拳打足蹴がサーカス団員を殴り砕き、
「むむっ!」笑みを消して眉間に皺を刻む気狂いピエロ。
「ビーゼッ!」すらりとした背中に安堵を覚える歌姫。
ベアトリーゼがウタの前に立つ。振動を操る蛮姫は歌姫の歌い出しに合わせて超音波を放って相殺し、異能の歌声を無効化していた。
「ヒョホホッ! 流石は数億ベリーの怪物! けれど、こんなのはどうバネ~?!」
嗤いながら、モロネヴは残る手勢をベアトリーゼにけしかけ、ベアトリーゼが迎撃する刹那。悪魔の言葉を放つ。
「ヒューマンボムッ!!」
瞬間、サーカス団員やダンサー達がベアトリーゼに飛び掛かりながら、脂肪を燃焼させて松明のように燃えあがり、血液の沸騰圧で爆発。人骨片と燃え残りの肉片を飛散させ、血生臭いピンク色の爆風を広げた。
「っ!?」
想像の斜め上をいく人間爆弾攻勢に呑み込まれ、さしものベアトリーゼも後れを取る。
人体が燃え上がり、弾け飛び、血肉をまき散らす残酷無惨は、ウタに強いショックを与えて意識の空白を生じせた。
蛮姫と歌姫の間隙を、気狂いピエロは逃さない。肥えた体躯から想像もつかぬほどの俊敏さを発揮し、ウタに肉薄。右手人差し指でウタの額の中心をちょん、と突く。
「バネッ!!」
ぁ、とか細い声をこぼすと共に、ウタの双眸から焦点が失われ、茫洋と身体を揺らし始めた。
催眠に堕ちた歌姫を腕に抱き、気狂いピエロが勝鬨の哄笑を挙げる。
「巫女をゲットだバネ~~っ!!」
「汚ェ手でウタに触んな」
人間爆弾の血煙の中から、全身を朱に染めた蛮姫が現れる。凄まじい怒気の熱に全身の返り血が蒸発し、生臭い湯気をまとうその姿、羅刹の如し。
「怖いお嬢さんバネェ~」
怒り狂う懸賞金数億ベリーの怪物を前にしても、モロネヴは嘲笑を崩さない。
「しかし、事は成ったバネ。歌姫はこれからブエナ・フェスタ一世一代の祭りを“始める”バネ」
「あ? 始める?」
訝るベアトリーゼへ、モロネヴはニチャアと笑いながら、言葉を紡ぐ。
「そう。“本当の祭り”は今から始まるバネ~ヒョホホホ~ッ!!」
○
横倒しになった中央管制塔、その窓や破孔部から一斉に大量の泡が噴出した。
アワアワの実によって生み出された莫大な量の泡は、命令を護って籠城していた
そして、壁の一部がズバンッ! と切り裂かれ、カジュアル・フォーマルな黒服の男女が塔内から出てきた。
「上手くいったな――チャパパ」フクロウは満足げに頷く。
「あいや、まったく!」クマドリも嬉しそうに笑い「子供らを殺生することなく制圧できやした!」
「ええ仕事をしたな、カリファ。見事じゃったぞ」カクが惜しみなく賛辞を送れば。
「ありがとう」
能力の大規模行使で疲労したカリファは誇らしげに微笑み、すぐに表情を引き締めた。
「でも、肝心のブエナ・フェスタはいなかったわ」
「地下洞窟の方じゃろうな。ルッチ達に報告する」
カクは地下洞窟内に向かったルッチ達へ連絡するべく、懐から小電伝虫を取り出して番号を入力し始める。
その傍ら、クマドリが周囲を窺い、片眉を大きく上げた。
「皆の衆……やけに静かじゃあございやぁ~せんか?」
“鬼”が暴れる円形湖からは激しい戦闘交響曲が続いているが、混沌としていたメイン会場や島内各地から騒ぎが聞こえてこない。
四人は自分達がアワアワの実の泡に満ちた中央管制塔内にいたことで、ウタウタの実の力――強制失神から逃れられたことを、知らない。
フクロウが険しい顔で四角長鼻と眼鏡美女へ言った。
「……猛烈に嫌な予感がする。お前達がウォーターセブンから帰ってきた時のような、そんな感じだ――チャパパ」
その言葉の内容にカクとカリファは盛大に顔をしかめ、クマドリが渋面を作る。
直後――
元暗殺者達の勘が正しいことを証明するように、デルタ島の沖周辺に突如として海軍の艦隊が“浮上”し始めた。
○
頂上戦争において白ひげが船をシャボンで包み、海中からマリンフォードへ奇襲をかけたように、カモメ紋を背負う艦隊もシャボンで船体を包み、海中からデルタ島を目指し、海賊達に知られることなく急襲を掛けたのだ。
「本当に海賊共がうじゃうじゃ居やがる」
デルタ島
ビッグマム海賊団の偵察監視が主任務のG-F基地司令であるプロディ中将が、本作戦の頭に据えられてしまったのは、ひとえに人事上の問題だった。
海軍元帥昇格が決まっている“赤犬”は未だ療養中。大将“青雉”は辞職&失踪。両者の後任人事は定まらず。“黄猿”は聖地及び海軍本部の防衛のため動かせず。
海軍の最強個人戦力“大将”が居ない穴を中将で補わねばならず。そうなると、階級で横並びのため指揮系統や部隊序列を年次や軍功の数で決めることになり、センゴクやガープなど海軍現役最古参組に次ぐ年次のプロディが現場へ引っ張り出されてしまったのだ。貧乏くじである。
「艦隊の展開状況は?」
「通信封鎖は維持されており、各艦より問題を知らせる緊急連絡はありません。順調です」
討伐任務艦隊の首席参謀は獰猛に答え、ブロディ中将は大きく頷いて、命じた。
「よろしい。では只今を以て通信封鎖を解除。全艦に発令。ブルーム&ダッシュパン作戦開始っ!!」
首席参謀は自ら電伝虫の通話器を手に取り、ブロディ中将の命令を発す。
「通信封鎖解除。討伐任務艦隊旗艦より全艦に発令。ブルーム&ダッシュパン作戦開始ッ! 作戦開始ィッ!」
号令一下、島を包囲した軍艦の群れは、砲塔の三連大口径砲と砲列甲板の火砲を一斉射撃。縦3キロ横4キロの小さな島に鉄と炸薬が叩きつけられた。
○
「問答無用で絨毯砲撃か……海軍の奴ら、気合入ってるじゃねえか!!」
鉄風雷火吹き荒れる中、バレットは哄笑を上げた。
「前はやられたが……今度はそうはいかねェぜっ!!」
円形湖の一角にマッコウクジラみたいな鉄船が浮かび上がり、バレットは高々と跳躍して鉄船内に乗り込む。
「テメッ! 逃げる気かゴルァッ!!」キッドがブチギレてがなる。
「逃げる? そいつは違うな」
バレットは鉄船の中で獰猛に笑い、能力を発動した。
「こっからは本気だ」
鉄船を中心に周囲の無機物――船舶の残骸、海賊や賞金稼ぎ達の武器弾薬、瓦礫や岩塊、倒木などが吸い寄せられ、ガシャガシャと貼りついていき、鉄船の姿を巨人へと変えていく。
「マジかよ。俺達相手にあんな奥の手を隠してやがったのか」
“海鳴り”アプーが顔を引きつらせ、他の海賊達や賞金稼ぎ達も顔を強張らせる。誰もが即座に理解した。
ダグラス・バレットにとって、これまでの戦いは小手調べでしかなかったのだと。
だが、その事実が判明したからといって、心折れる超新星はいなかった。
「この俺相手に手抜きしてやがったな……どこまでも舐め腐りやがって、ロートルがぁっ!!」
キッドは青筋を浮かべ、隣に立つキラーも得物の柄が軋むほど強く握りこむ。
「俺の死相は出ていない」
バジル・ホーキンスは負傷して動けぬ海賊や賞金稼ぎを利用して“ストック”を回復させ、
「デカくなれるくらいで勝ち誇ってんじゃねえ……っ!!」
ベッジは巨大城砦と化しながら、全火砲の照準を鉄巨人に合わせた。
砲煙弾雨の中、戦意と闘志を新たにする超新星達を睥睨し、鉄巨人と化したダグラス・バレットは狂相を喜色で満たし、
「カハハハハハハハッ! そうこなくっちゃなぁっ!!」
吠えた。
「さぁ、死ぬ気で掛かってきやがれっ!」
Tips
ダグラス・バレット
劇場版キャラ。ガシャガシャの実の合体人間。
原作とは展開が異なるが、本作でも20年振りの自由と暴力を謳歌している御様子。
作中の表現は独自解釈多め。
シードル・ギルド
賞金稼ぎ集団だが、実態は民兵組織に近い。
劇場版スタンピード公開に合わせたアニオリキャラの皆さん。
シードル
アニオリキャラ。上述のシードル・ギルド頭目。
数話前の『元ガルツバーグ軍将校』という表記は作者の誤解で、バレットに故郷を滅ぼされたが、その故郷がガルツバーグかどうかは明言されていなかった。
本作ではアニメ版より狂気度がヤバイ。
ウタ
劇場版キャラ。
原作と異なるオリチャートを進行中。人食い道化の凶行を止めるべく、ウタウタの実の力を使うが……
島内と世界各地で大勢の人々がウタワールドに連れ込まれた。市井だけでなく盗聴中だった海軍やサイファー・ポール、聖地マリージョア、四皇の拠点などでも。
すなわち――
ブロディ中将。
アニメのオリジナルエピソード『海軍超新星編』に登場したキャラ。
ガープと旧知の老兵で、左遷や退職金カットを恐れているらしい。
CVは多田野曜平。吹き替えからアニメまで数多くの出演作を持つ超実力派。
ワンピースではドクター・ベガパンクも兼役している。
ベアトリーゼ
バレットのことはガン無視中。