彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
佐藤東沙さん、ルウタスキーさん、誤字報告ありがとうございます。
敵と己の鮮血と戦塵によって赤黒く染まる筋骨隆々の戦鬼は、無数の鉄鎖と綱網で絡めとられ、幾つもの海楼石装具を用いられ、膝と両の手を大地につく。
島一つを蹂躙し尽くし焦土にせしめ、広場に屍山血河を築き上げた戦鬼が、ついに力尽きていた。しかし、母なる海の力で封じられ、意識を失ってもなお、双眸に爛々と宿る暴威の光。何より凶相は戦いの歓喜に歪んだままだ。
戦鬼の周囲でグロッキー状態の評価戦隊の最精鋭“特別コマンド”が、へたり込んでいた。若干名の兵士達。特別コマンドの生き残りは今や両手の指の数より少なく、全員が指一本動かせぬ深手を負い、言葉を紡げぬほど疲労し、精魂尽き果てていた。
「ようコビー……まだ生きてるか?」
大の字になって倒れているヘルメッポがかすれ切った声で問う。使い古しの雑巾よりボロボロになりながらも、ヘルメッポは戦いを生き延びた。
「なんとか……」
腰が抜けたように座り込むコビーは、ヘルメッポの方を窺う気力も残っていない。疲弊しきった桃色髪の歳若い海兵は、全身の痛みを感じとることすらできぬほど疲弊していた。ただ死屍累々の満たす広場を茫然と見つめている。
海賊。海兵。賞金稼ぎに裏社会の悪党。一般市民。数百どころか優に千を超すだろう屍と骸。千切れた肉片。破損した肉塊。むせかえるほどの血と汚物の臭い。おびただしいまでの流血が広場の地面を赤黒い泥濘に変えている。生命の偉大なる神秘により、死ぬに死ねぬ者達が苦痛に喚き叫び、激痛に呻き悶え、惨痛に喘ぎ鳴く。
酸鼻極まる地獄絵図。普段ならとても正視できない惨状を前に、コビーは何の情動も生じない。戦鬼を捕らえた勝利の達成感も、激戦を生き抜いた充足感も、友の無事を祝う喜びも、仲間や人々の死傷を悼む悲しみも、何も湧かない。
評価戦隊の生残兵達が負傷者の収容と手当てを始めた。島の沿岸や沖の方から戦闘騒音が聞こえている。
今、広場にいる生者は評価戦隊の生き残りと動けない負傷者だけだ。動くことが出来た万余の観衆はこの場から逃散しており、今は海軍から逃れるべく、この島から脱出しようと足掻いていた。
これほど血が流れ、命が失われても、魔王が消え、鬼神が力尽きても、戦いは終わらない。その事実にコビーの心が徒労感と虚無感を抱き――
『酔いどれ水夫』の口笛が聞こえてきた。緩やかなテンポで奏でられる音色。
元々カジュアルフォーマルだった着衣は赤黒い襤褸切れと化していたけれど、しなやかな健康美には一切の瑕疵がない。満月色の瞳は肉食獣のように絞られ、銃剣のような輝きを宿していた。
“血浴”のベアトリーゼ。
特大級にヤバい内容の凶状を山ほど持つ凶悪犯。海軍の一部ではもはや人ではなく妖怪化生の類と思われている女。エニエスロビー事件を生き延びた者の中には『酔いどれ水夫』がトラウマになった者も少なくないという。
激戦死闘で疲弊し尽くしていた評価戦隊は女妖の登場に心が折れた。
――もう戦えない。自分達の命は“血浴”の慈悲に委ねるしかない。
そんな諦念と達観が支配する中、桃色髪の少年兵がふらつきながら立ち上がった。疲れ果て心も擦り潰れ、まっすぐ立つことも目に闘志を宿すこともできていない。
だが、誰も彼も動けぬ中で、コビーは立ち上がり、足を引きずるように歩き――途中何度も転びつつも、ベアトリーゼの前へ向かって進む。誰も声を発せられない。親友ヘルメッポすら息を呑んで見守るしかない。
女妖の前に辿り着いたコビーは両手を広げた。頂上戦争で海軍大将の前に立ちはだかったように。
「もう誰も……誰も殺さないでください。お願いです。お願いします。もう誰も、どうか殺さないでください」
ベアトリーゼは口笛を止め、絶対零度の目つきで血泥に塗れたコビーを睥睨し、続けて評価戦隊の生残兵を見回し、捕縛されたダグラス・バレットを一瞥した。
「……まったく、人を殺人鬼か何かだと思ってんのか?」
不快そうに小さく鼻息をつき、ベアトリーゼはコビーの胸倉を引っ掴む。
「よーく聞けよ、小僧」
コビーの爪先が浮きかけるほど持ち上げ、その鼻先に顔を近づけて、蛮姫は告げる。
「生殺与奪を敵に委ねるな。運命に身を任せるな。矢尽き刀折れ、拳を握る力すら尽きた時こそ、戦え。頭を捻って知恵を絞り出せ。策を練り手立てを図れ。己の意思で最後の瞬間まで抗え。“未来の海賊王”や“海軍の英雄”の背を追う気なら、運命くらい踏み越えてみせろ、海兵」
ベアトリーゼはコビーから手を離す。その場に尻をつくコビーの肩を軽く叩き、空を指差した。
「ほら、見ろよ。雲一つない、綺麗な青空だぞ」
コビーやヘルメッポ、海兵達や負傷者達が釣られるように空を見る。
戦塵が払われた空は泣きたくなるほど青く澄み渡っていた。延々と続いていたように思える死闘は、たった数刻の出来事に過ぎなかった。
コビー達が双眸に涙を滲ませ、あるいは目尻から雫をこぼし、思い出したように目線を下げた時には、“血浴”の蛮姫は姿を消していた。
と。円形湖の方から重低音が轟き、地面が微かに揺れる。直後、円形湖の付近がまるで噴火したように大量の砂塵を噴出させた。
〇
クロコダイルは黒々とした蒼穹を見上げ、新しい葉巻をくわえて火を点す。紫煙を漂わせながら毒づいた。
「テメェらの面倒に巻き込まれていい迷惑だ」
デルタ島地下洞窟の深部。秘密基地的空間で元王下七武海と天竜人直属の諜報員が交渉をしていたところへ、突然、洞窟が爆破された。莫大な岩石土砂に襲われるも、砂の魔人は一瞬で地上まで砂塵化し、砂嵐として吹き飛ばした。
何もない空間がドアのように開かれ、白い貴婦人と覆面の黒服達が現れる。大男の脇には廃人と化した祭り屋が抱えられていた。
「どうかしら。貴方の厄介事ではなくて?」
ステューシーはパタパタと装束から砂埃を払い落しながら、皮肉を返す。もっとも、内心では自分達を狙った筋と察していた。おそらく偽ヴォーガの追跡者。こちらの口を塞ぐべく仕掛けてきたのだろう。
人喰い鰐と白い貴婦人が無言で睨み合う中、「ボス。追撃はなさそうだ」とダズが淡々と告げた。前後してステューシーの背後に並ぶ覆面の黒服――ルッチ達の子電伝虫が鳴く。
「歌の魔王は消滅。バレットは捕縛。沿岸部と沖でクズ共の脱出戦が始まっています」
覆面で顔を隠すルッチが小電伝虫を通じて聞いた内容を、ステューシーに小声で報せた。
そのやり取りを聞き留め、クロコダイルがぽつりとこぼす。
「……あのガラクタ野郎がこんなところでコケるとはな」
「ダグラス・バレットと知己が?」控えめに驚くダズ。
「若ェ頃にな。みっともなく引き分けに終わった」人喰い鰐は自嘲的に頬を歪めた。
かつて、若き日のクロコダイルはガシャガシャの実と強力な覇気で暴れ狂うバレットを仕留めきれず、往時の未熟なバレットはスナスナの実と狡知に長けたクロコダイルを倒し切れず。
「しかし、あのガラクタ野郎が捕まったとなると、この島を発つのはちと面倒かもな」
暴力バカのバレットが艦隊を潰した後、悠々とデルタ島を出ていけたら楽だったが、現状は海軍の包囲を突破しなければならない。
ステューシーはクロコダイルの見解に同意する。
自分の船はバカ共に沈められてしまった。この島を脱出するには船を調達する必要がある。クロコダイルの船に相乗りする選択肢は――ない。陰謀屋気質の濃い元王下七武海と船旅なんて面倒が多すぎる。かといって海軍に身元を明かしてというのも、少々デメリットが目立つ。
「別働班と合流。適当な船を奪取し、海賊達に紛れて島を出る」
淡々とルッチ達へ告げ、
「では、ごきげんよう」
白い貴婦人は優雅と傲慢を混ぜた挨拶を人喰い鰐へ送り、ブルーノのドアドアの実の力を使い、フッと消え去る。
一瞬で空間に消え去ったイージス・ゼロと黒服共に、クロコダイルは鼻を鳴らす。
「女狐め」
「連中、信用できますか?」
ダズの問いにクロコダイルは紫煙を吐いてから、
「信用、か。そりゃ“何を”信用するか次第だな」
「?」と訝るダズにこれ以上説明せず、冷笑を湛えた。
「道化野郎と合流するぞ。あの赤っ鼻、きっちり成功させたんだろうな」
「奴らがしくじっても、“ウチは”儲けを確保してますが」と冷ややかにいうダズ。
バギーのタタキの成否を無視し、自身の配下を動かして“別のタタキ”を成功させている。
クロコダイルが狙ったのは、数千万や億の金を遊びで費やせる闇社会の大物や王侯貴顕、あるいは現地へ送り込んだ代理人達だ。VIPである彼らは賭博窓口なんぞで賭けを行わない。一枚で高額価値を持つ商用金貨などを貴賓室でやり取りしていた。
騒ぎが起きた時、クロコダイルの部下達―― “新世界”入りしてから確保した“
「時代はうねりを増し、チャンスはそこら中に転がってる。が、そのチャンスを掴み、ビジネスを成功させるには相応の元手が要る」
「金はいくらあっても困らない、という訳ですか。守銭奴の言い草みたいだ」
「生意気な奴だ」
さらりと毒を吐くダズに口端を歪め、クロコダイルは紫煙を燻らせた。
〇
デルタ島討伐任務部隊の包囲は完全に破られていた。
まあ、デルタ島には数万もの海のクズ共が集結しており、中には“超新星”達のような一騎当千の海賊や四皇傘下の強力な海賊団も居た。それを一個艦隊で完全に封じ込め、撃滅する、というのは余程隔絶した戦力を備えていない限り、無茶というものだろう。
そうして、破れた包囲の穴から千々に乱れて逃げ出すクズ共の船団。その群れの中に紛れ込む小型高速艇に、鼻の穴へティッシュペーパーを詰め込んだ肥満体の道化がいた。
「巫女を手に入れられなかったのは残念バネ~。でも、ヘコむ必要はないバネ~。チャンスはこの先、いくらでもあるバネ~」
小型艇の小さな甲板の上で身体を伸ばす人食い道化ヒンメル・モロネヴは、まったく気落ちしていなかった。自身の組織が壊滅し、手下が全滅していたとしても、残念に思うことはしても、これが致命的な問題とは思っていない。
なぜなら、この世界には頭も心も弱い、他人に利用されるために生まれてきたような連中がいくらでもいる。何も持たない負け犬など蛆のように湧いてくる。人員の補充などいつでもどこでも出来るのだ。
モロネヴは思い返す。
産みの母に愛されることなく捨てられ、孤児院の中で虐げられ、スラムの片隅で暴力に怯えながらゴミを漁る日々を。
人間は皆平等で、子供には無限の可能性がある――なんて言葉は大ウソで、この世には生まれながらに恵まれた人間と何もない人間が居る。その現実を受け入れ、人畜無害な負け犬としてスラムの端で無為な生を送り続けたある時、神の声が聞こえた。
――我は神アブスルドなり。汝に秘儀を授ける。しるしを受け取り、我がしもべとなるべし。
頭蓋の中に響く声に誘われ、モロネヴはスラムの最奥で瀕死のピエロと出逢った。血に塗れ、今にも息絶えようとしているピエロが何者であったのかは分からない。だが、確信した。
この道化こそ神が自分を覚醒させるべく遣わせた使徒だと。
死にゆく道化の瞳を覗き込んだ時、確かにしるしを受け取った。何も持たぬ負け犬ヒンメル・モロネヴはあの時、神アブスルドのしもべとして目覚めたのだ。
「ヒョホホホ! 神への奉仕は一日にしてならず、バネ~っ!」
そう笑っていた時、自身の高速艇の先を行く海賊船や悪党の貨客船が急に音を絶やした。
空に海鳥も水面に魚影も見えない。潮騒の音色さえ絶えた錯覚を抱く。
デルタ島から逃亡真っ只中の船の群れ。その狭間の先に紅い船が見えた――とモロネヴが認識した、刹那。
何かが恐ろしいほどの速さで一直線に迫ってくる。絶対零度の冷酷非情さをまといながら。
「おぉ―――ついに人生最大の時が来たれりっ!!」
モロネヴは即座に理解する。
待望の瞬間がついに訪れたことを。
ヒンメル・モロネヴは何の恐れも怯えもなく船首に屹立し、両手を広げて迎える。
「
赤い髪の男が放ったその言葉が、モロネヴの人生最後に耳にした言葉であり、音だった。
高速艇ごと体躯を両断され、斬撃の衝撃波によって粉々に消し飛ぶ間際、モロネヴは声なき言葉で世界へ叫ぶ。
嗤え! 嗤えよ、皆の衆!
私を生み捨てた母を呪い、非情な世の中を憎み、それでも怒りの声ひとつを上げることが出来ない自分に絶望していた。自分は絶対的に無力なのだと信念にも似た開き直り……
しかし、スラムの掃き溜めで死にゆく道化の瞳を覗き込み、私は神から真理を授かった。
この世に意味など無い。
それはさながら狂い踊る道化。ゆえに、何も持たぬ者こそ最も真実に近い者。
狂えよ!
呪詛としての笑いを広げよ!
嗤え! 嗤えよ!
フェノメナ大道芸団座長“人食い道化”ヒンメル・モロネヴの最期の言葉を聞いた者はいない。その最期の意思を受け取った者もいない。
彼は何者でもなく、ただこの世から消えた。
・・・
・・
・
四皇“赤髪”シャンクスはデルタ島から脱出中の適当な船に降り立ち、愛剣グリフォンを鞘に収めた。
眼前の小さな島は戦闘交響曲の演奏が続いている。島から逃げようとするロクデナシの大群と、一人でも多くのクズ共を捕縛ないし抹殺しようとする海軍が、死に物狂いで戦っているのだ。
そんな修羅の庭に愛娘がいるにもかかわらず、シャンクスの顔に微苦笑が浮かぶ。
「……懐かしい顔だな」
〇
包囲の輪が破れ、海のクズ共が次々と逃げ出していく。それでも諦めるという選択肢を採らないところが、世界政府に仕える海軍という組織だ。
任務部隊司令のプロディ中将は破れた穴を繕うことを諦め、逆に敵を包囲の穴へ逃がした。なぜならクズ共が包囲へ向かって逃げる限り、こちらは背中を一方的に撃てる。多数の賊徒の逃亡を許すことになるだろうが、こっちの損害は抑えられる。
艦隊と陸戦隊の統括指揮に忙しいプロディ中将へ通信士が叫ぶ。
「評価戦隊より通信! 我が部隊の損害甚大なれど、バレットの拘束に成功せり! 繰り返します! 評価戦隊、バレットの拘束に成功!」
司令部に歓声が上がった。プロディ中将も安堵の息をこぼす。も、彼を悩ませる問題はまだ残っていた。
「歌姫の身柄は?」
「依然、報告なしです。魔王消滅後、逃亡する海賊達の混乱が酷く捕捉できていません」
参謀の報告にプロディ中将は内心でガッツポーズ。
四皇“赤髪”の娘を捕縛? 馬鹿馬鹿しい。そんなことをしたら、赤髪海賊団が血眼で追ってくるだろう。無事に本部まで帰りつける訳がない。歌の魔王が消えて意識を失っていた者達が回復したのだから、放っておけば良い。藪を突いて蛇が出るならマシ。魔王や四皇が出てきたら手に負えない。
そこへ。
「四番艦“ライブリー”より緊急報告っ!!」
通信士がプロディ中将や上官達の反応を待たず、悲鳴染みた声で叫ぶ。
「水平線に四皇“赤髪”のレッド・フォース号を確認せりっ! 水平線に四皇“赤髪”を確認!!」
プロディ中将も参謀達も司令部要員も凍りつく。なんなら、プロディ中将はおまけで強烈な胃痛を覚えた。
危惧していた四皇“赤髪”の方からやってきてしまった。
“赤髪”は無用の殺生をしないことで知られているが、逆に必要と見做したら冷徹にして非情。当然、娘を護るためなら容赦なく海軍を排除するだろう。
特記戦力が不在かつ損害と消耗を被っている討伐任務艦隊で、戦える相手ではない。
だが、幸いにも、“四皇”との交戦は上層部の許可がいる。現場に許されている判断は身を護るための正当防衛と撤退だけ。なら、ここは作戦を中止して撤退することが許される。
撤退を決断し、プロディ中将が命令を発しようとした、その矢先。
「あ、あの……閣下、本部より通信です。内容はその、歌姫確保の件です」
通信士が電伝虫の通話器を持ってきて恐る恐る差し出してきた。プロディ中将は問答無用で電伝虫の通話器を握り潰す。
「故障だ」
異論は出なかった。
プロディ中将は命令を発する。どこかヤケッパチに。
「現時点をもって作戦中止っ!! 作戦中止だ!! 上陸部隊と捕縛した凶悪犯の収容を急がせろ!!」
〇
四皇“赤髪”の到来と、デルタ島討伐任務部隊に作戦活動の即時中止により、海軍と海のクズ共の戦いが止んだ。
荒廃し尽くしたデルタ島とその海は静寂を取り戻し、“超新星”を始めとする海賊達が続々とデルタ島を去っていく。
去り行くゴロツキ共の船と逆行し、真紅の海賊船がデルタ島へ近づいていく。その歩みを妨げるものは一切なかった。
上陸した赤髪海賊団と、海岸で回収を待っていた海軍科学班評価戦隊の残余が遭遇する。
評価戦隊の残余は先ほど広場で“血浴”と対峙した時、絶望を覚えた。だが、“赤髪”と向き合ったコビー達はただただその威容に圧倒され、動けない。
兵士達を歯牙にもかけず、“赤髪”シャンクスはガチガチに拘束されたバレットに歩み寄る。妨げられる者などいない。
「久し振りだな、バレットさん」
「おう。随分と伊達になったな、シャンクス。面の傷と左腕はどうした?」
「色々あってね」
どこか寒々しいやり取り。
当然だ。シャンクスは“知っている”。かつての仲間が愛娘を殺そうとしたことを。
シャンクスが“知っている”ことを、バレットも察している。
この会話の行く末次第では、海賊王譲りの必殺剣が鬼の首を斬り飛ばすだろう事態も、2人の間で成立している。
「……“手助け”しようか?」
「余計なお世話だ。テメェの手なんぞ借りなくてもまた出てくるさ。次はテメェとバギーがジジイになった頃かもな」
交わされる目線。2人の放つ威圧感の凄まじさに海兵達が後ずさる。
「そうか。再会の盃はその時まで預けておこう」
シャンクスは告げた。別れの言葉を。
「じゃあな、バレットさん」
「おう。あばよ、シャンクス」
元海賊王のクルーの2人は別れた。シャンクスは仲間達と共に去っていき、バレットは海兵に連行されていく。
どちらも決して振り返ることはなかった。
TIPS
ダグラス・バレット
劇場版キャラ。映画ではルフィに負けた後の消息は分からないらしい。死んだのか、逮捕されたのか、逃げ延びたのか、不明とのこと。
本作では、評価戦隊の残余に海楼石でフクロにされて力尽き、捕縛された。
コビー
原作キャラ。海軍の英雄に至る道を驀進中。
本作では、頂上戦争時の行動により、階級剥奪を受けて左遷された。
ダグラス・バレットの捕縛に成功するも、仲間の多くが死傷した。
クロコダイル。
原作キャラ。劇場版では、若い頃にバレットと戦ったことがある模様。
本作ではイベント中、暗躍しており、バレットと再戦しなかった。
地下洞窟の爆破
偽ヴォーガを追跡しているあの人の仕業。普通なら仕留められただろうけど、砂の魔人
とドアドアの実の能力者がいたため、失敗。
ヒンメル・モロネヴ
オリキャラ。元ネタは銃夢:LOに登場するモロネヴ・ヒンメル。
作中の過去と独白は、原作より引用。
プロディ中将。
アニオリキャラ。
本作では現場と本部の板挟みで辛い。
シャンクス。
原作キャラ。その謎めいた過去や出自がいよいよ判明し始めた物語のキーマンの一人。
本話ではバレットを斬る、という選択肢もあった模様。
ベアトリーゼ
殺人鬼扱いされて不満。