彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
拾骨さん、佐藤東沙さん、誤字報告ありがとうございます。
マーケットの旧居住区――その名の通り、マーケット内で働く連中の集合住宅地区だ。もっとも、旧の字を冠するように諸々が古く経年劣化しており、建物も道も公共設備も荒廃している。
夜空にツキが輝く宵の口。街区に並ぶ煉瓦造りの建物は廃墟寸前まで劣化しているか、ミノムシみたく違法改築に塗れている。街灯の多くは光を失って久しい。
華やかなりし完全自由市場の楽園。その繁栄と富が届かなくなった残骸の地区。
レストラン『ラクダ亭』はそんな街区の一角にあった。
「……レストラン? これが?」
ガレットが美貌を歪めた。
「これでレストランを称するとは、大した厚かましさだ」
モスカートは割れ顎を撫でながら奇妙な感嘆をこぼす。
2人の視線の先には、ヘタクソな字の『駱駝亭』という看板が斜めに下がった掘っ立て小屋。安普請とか言う次元ではない。廃材でくみ上げられた文字通りの掘っ立て小屋だった。
兄妹は互いに顔を見合わせた後、掘っ立て小屋へ向かって進み、
「本日は貸し切りでさぁ」
掘っ立て小屋の前に立つ胡乱な男が2人へ告げる。
「招待状があるが?」とモスカートがカードを示す。
「こいつぁ失礼しやした。どうぞ中へ」
男は掘っ立て小屋のドアを開き、恭しく兄妹へ入店を薦める。
廃屋同然の見た目通り、店内も酷い。
狭い店内には卓が一つだけあって、厨房というよりアパートのキッチンみたいな調理場には、染みだらけのコックコートを着た料理人が、鉈みたく大きな中華包丁を研いでいた。
ガレットの脳裏に客を料理して食べてしまう怖い御伽噺がよぎる。夜にトイレへ行けなくなり、双子の妹ポワールに付き添って貰ったことまで思い出す。
もっとも、内心に生じかけた不安は先客の姿によって打ち消される。
ジャージ姿の小生意気な小娘。エロボディの三十路美女。生え際の後退が激しい中年男。
希少果実トリコロール・メロンの入手を競うライバルの姿に、ガレットの心が奮い立つ。ビッグ・マム海賊団の看板を背負ってこの場を訪ねたのだから、無様な姿は晒せない。
「こんばんは。あの魔女チックな御姉さんは来てないんだね」
昼間の諍いなど無かったように気軽な挨拶を寄こす小娘。
馴れ馴れしい、と苛立つ一方、ガレットはなんとも肩透かしを食ったような気分を抱いた。
「たかがフルーツを入手するくらい、私達だけでお釣りが来るのよ」
ガレットは兄と共にたった一つしかない卓の空いた席へ腰を下ろす。ちなみに、ガレットの耳には小指の爪ほどの小さな鏡をはめ込んだピアスがあった。
ブリュレのミラミラの実の力を用い、
「トリコロール・メロンを求める者達が集まる、オークションのようなものを想定していたんだが」
モスカートは小汚く狭く、どこか不気味な店内を窺いながら、誰へともなく呟いた。
「私もそう思っていたんですがね……どうも趣が異なるようで」とテルミノが相槌を打つ。
と、昼間にカードを届けた三つ編み少女が店の奥から姿を見せた。
「いらっしゃいませ。えっと、まずはこれを見て下さい」
少女は卓に映像通信電伝虫を置き、壁に映像を投影した。
〇
『招待へ応じて頂き感謝する。ビッグ・マム海賊団幹部にしてシャーロット家16男モスカート殿。18女ガレット殿。プリティ海運社長テルミノ殿、同社船上警備主任ジューコ殿。それと、同社契約警備員、ということになっているベアトリーゼ殿。繰り返し、今宵の招待へ応じて頂いて感謝する』
映像には何も映っていないが、声だけが届く。齢を重ねた男性のようでもあり、硬い口調の貴婦人のようでもあり、正体が判明しない。
『私は世界政府のとあるセクションに籍を置く者だ』
「政府だとっ!?」「やっぱり、罠だったのっ!?」と慌てるシャーロット家兄妹。鏡世界内でもカタクリが渋面をこさえ、ブリュレが目を剥いていた。
そんなシャーロット家兄妹を宥めるように電伝虫が言葉を紡ぐ。
『そう警戒することは無い。今宵の招待はあくまでビジネスを目的としたものであり、君達の身柄を捕縛することではない。君達が不愉快に思うことを承知で言わせてもらうが、本題は君達の身柄よりずっと重要な取引だ』
「ああ言ってるし、とりあえず話を聞いたら?」とベアトリーゼが口を挟む。「政府の連中がお姉さん達をこの場で捕縛しようとしたら、私が加勢してあげるからさ」
「はあっ!? 何でアンタが――」ガレットが噛みつく勢いで口を開けば。
『ガレット殿。そちらのベアトリーゼ殿は元賞金首だ。護送船ベッチモ号の海難事故で死んだと思われていたが、御覧の通り生きていた。というより、護送船ベッチモは君が逃亡するために沈めたのだろう?』
「そうだよ。船に居た連中を皆殺しにしてね」ベアトリーゼはさらっと認め「お姉さん。私も政府は大嫌いなんだよ。敵の敵は味方ってわけさ」
ピアスからも『今はまだ静観しろ』とカタクリの声が届き、ガレットは唇をヘの字に曲げつつ矛を降ろす。
『話を進めさせていただこう』
壁面に投影された映像に、果実が登場した。
バスケットボール大の大きなマスクメロンで、
『こちらが提供するものはトリコロール・メロン。保証書付きの最高級品だ。現在の時価取引額は5800万ベリーとなる』
「お前の首の価値、メロンと同じヤモ」とジューコがベアトリーゼへ小声でにやり。
『これらを代価として君達に共同で当たってもらいたい』
電伝虫から伝えられる提案に、ガレットが眉間に皺を刻む。
「共同? ワタシ達ビッグ・マム海賊団にこいつらの助けがいるとでも?」
『君達の海賊団が強大なことは知っているが、私はビッグ・マム海賊団ではなく、あくまで今、この島に居るシャーロット・ガレット、シャーロット・モスカート、そして、シャーロット・ブリュレの三人と交渉しているつもりだ』
「そちらの言い分は通らない。俺達はビッグ・マム海賊団の一員だ。どんなことにもママと組織の面目が関わってくる。俺達が勝手をしてママと組織のメンツを潰すわけにはいかない」
モスカートが正論を口にする。
『その回答は予期していた。なので協力してもらいたいのはブリュレ殿だけだ。ミラミラの実の能力で、ベアトリーゼ殿とジューコ殿の移動を担ってもらいたい』
「アンタ、なぜブリュレ姉さんの能力を――」
『それが我々の務めなのでね』と電伝虫の向こうで自称政府関係者が嘯く。
政府関係者がブリュレの能力を精確に把握している、という事実にガレットもモスカートも表情を強張らせた。鏡世界内でも兄が眉根を寄せている。肝心のブリュレは『ひょっとしてマーケットを遊び歩いている時にバレた?』と内心ひやひや。
と、ベアトリーゼがアンニュイ顔で口を挟む。
「これさぁ、大海賊ビッグ・マム海賊団の皆さんは単なる運び屋で、私達にヤバい仕事をさせるって話なの? それで報酬は山分けって報酬の公平性に欠いてない?」
『君達に関しては本命である希少果実に加え、別途危険手当を出すつもりだ』
物憂げな双眸に餓狼染みた鋭さを込めて電伝虫を睨み、ベアトリーゼは告げる。
「同じく危ない橋を渡るなら、目的の果物を持ってるアンタを襲って分捕る方が、手っ取り早いんだけど?」
「たしかに、政府に与するより政府から奪う方が海賊の道理に適う」
「そうね」
世界屈指の大海賊の子女達も野蛮人に同意し、ジューコの冷めた横顔は消極的同意を意味していた。
野蛮人ばかりだ、と
「ミスB。それじゃ話が進まねえ」
早くもうんざりした面持ちで電伝虫に尋ねた。
「具体的に何をさせたいんです?」
電伝虫の声は表の天気を告げるように応えた。
『暗殺だ』
〇
時計の針を少しばかり戻す。
この日、グランドライン“新世界”の“不機嫌海域”近海某島にて、海賊以外の悪党へ鉄槌が下された。
港町を見下ろす丘の上に建つ豪勢な屋敷は海軍の陸戦隊に制圧されていた。
否。この島そのものが海軍に制圧されている。
港町は海軍砲艦に押さえられており、周辺ではフリゲート隊が狼のように島から脱出を試みた船舶を拿捕していた。港町を始め、島内の全村落に陸戦隊の将兵が展開している。
海軍本部中将“英雄”ガープは豪華絢爛な屋敷の中をつまらなそうに歩き、広々としたリビングを一瞥して鼻を鳴らす。
「ゴテゴテとまあ……成金趣味全開じゃな」
ガープの批評は簡素かつ的確に真実を突いていた。屋敷は確かに豪華で豪奢だが、その在り様は伝統的富裕層的な品位を大きく欠いている。内装はどこもかしこもけばけばしく、調度品類は高価であっても珍奇なものばかり。はっきり言えば、貧乏な田舎者が頭の中で思い描いた金持ち像を実現したような……見事なまでの成金の屋敷だ。
「麻薬商とはそんなものでしょう」一歩後ろに控える副官のボガードが淡白に告げ「とはいえ、私もこの屋敷に満ちる虚栄的自己顕示欲の雰囲気にはうんざりしますが」
「まったくじゃ」ガープは苛立ちを込めて「更地にしたくなってくる」
「屋敷内の調査と押収作業が終わるまで我慢してください」
「じゃあ、終わったら更地に変えるとしよう」
ガープは物騒なことを宣いつつ、広々としたリビングに足を進める。
昼夜共に温暖なこの島には無用な暖炉の上に、油彩のドデカい肖像画が飾ってあった。
肖像画は立派な体躯をした禿頭の偉丈夫。頭こそ寂しいが、その凛々しく厳めしい顔立ちはハゲというマイナス要素をものともしない威容に満ちている。
「で、このハゲは今どこだ?」
「中庭に確保してあります」
ボガードが窓の外に目を向けた。
部下の目線を追ってガープが窓の外へ顔を向けると、陸戦隊の小隊にしょっ引かれたチビデブの五十路男がいた。肖像画と似ても似つかない。共通点はハゲだけだった。
「見栄の張り方がマリージョアのクズ共みたいで気分が悪くなってきたぞ」
ガープは辟易顔で中庭へ足を運ぶ。
屋敷内同様、庭も高価な希少植物や珍奇な花卉類をむやみやたらに植えただけの陳腐な代物だったが、花々に罪はない。
中庭テラスに置かれた椅子に大柄な体躯を預け、ガープは引っ立てられてきた麻薬商と対面し、いきなり罵声を浴びせられた。
「テメェらふざけんじゃねえぞコノヤローッ! こんな真似が許されっと思うなよコノヤローッ! 俺の島、俺の街、俺の屋敷を荒らし回った挙句、俺のカウチに座りやがってコノヤローッ! テメェらいつから海賊に鞍替えしやがったコノヤローッ!」
腹の出た小柄な体から信じがたいほどの大音声で罵られ、ガープは思わず目を瞬かせる。
麻薬商クラックの態度はおよそ海軍に捕縛された人間の態度ではなかった。運が良くてもインペルダウン送りが間違いない重罪犯は怯えるどころか、口角から泡を飛ばす勢いで罵詈雑言を重ねている。
ガープはぶん殴って黙らせようかと思ったが、ハゲのチビデブの“余裕”が気に掛かった。海軍軍人として半世紀近くに渡り、この世界の善と悪、清と濁、正と邪を見てきた人間の勘が働く。
どうしたもんか、とガープが思案を巡らせた。
その矢先。
「だいたい、俺は“テメェらの側の人間”だろうがコノヤローッ!」
頭から湯気をくゆらしそうなほど憤慨した五十路の麻薬商が怒鳴る。
ガープは目を鋭く細め、おもむろに口を開く。
「おい、ハゲのチビデブ」
「人の身体特徴をあげつらうんじゃねえよコノヤローッ! 心無い言葉が人を傷つけるんだよコノヤローッ! もっと言葉の選びに思いやりを持てよコノヤローッ!」
「ちと黙れ、“小僧”」
老雄の発した強烈な威圧感に、ハゲのチビデブ五十路はもちろん、身内の海兵達すら震え上がった。
息苦しいほどの圧力に満ちた静寂の中、ガープは麻薬商クラックに問う。
「貴様……今、ワシらの側の人間と抜かしたが、どういう意味じゃ」
「ぁあ? ふざけんな、何も知らねェとでも言うつもりかコノヤロー」麻薬商クラックは不満げに「
「サウスの件? なんじゃそれは?」
ガープも怪訝顔を作る。脇に控えるボガードも訝り、周囲の海兵達も眉をひそめていた。
海軍の面々の反応に、麻薬商クラックは『失言した』と言わんばかりに慌て始める。トマトより赤く染まっていた顔がさぁっと蒼くなり、禿頭に沸々と冷汗が滲んでいく。
「何の話か知らんが、言いたいことがあるならさっさと言え。貴様はエニエスロビーに直行じゃからな。インペルダウンに放り込まれてからあれこれ歌っても手遅れじゃぞ」
暢気な口調だったが、ガープの目つきは依然鋭い。
「ぃ、いや、その」麻薬商クラックは目を大きく泳がせる。
「貴様が海軍となんらかの関係にあるなら、その窓口になっとる奴がおるじゃろ。そいつの名前を言ってみぃ」
「そ、それは」クラックは肥えた顔を冷や汗塗れにしながら「クソ、なんでこんな……まさか、俺を……?」
「ごちゃごちゃ言うとらんでさっさと答えんかっ!!」
焦れたガープの大喝を浴び、クラックは思わず仰け反って喚く。
「お、俺は何も知らねぇよコノヤローッ! 何も言うことはねえよコノヤローッ!!」
大海賊時代に麻薬商として成功するには、腕っぷし以上に悪知恵と度胸が求められる。
クラックはハゲでチビでデブという三重苦を背負って余りある肝っ玉を持っていた。“英雄”ガープの一発を浴びてなお沈黙を選び通す胆力を備えており、何よりこうして回答を拒絶すればガープが本部に連絡を取り、“関係者”が動くだろうことを読み抜いていたのだ。
そして、天はクラックに味方した。
「ガープ中将っ!」通信兵がやってきて「沖で活動中のフリゲート隊より連絡っ! 時化が酷く作戦の遂行困難、港町に避難するとのことですっ!」
「つまり、我々も天候が落ち着くまでは島を出られませんな」とボガード。
ガープは苦い顔つきで大きく鼻息をつき、
「このハゲチビデブを拘置しとけ。こやつの部下共がまだ残っとるかもしれん。捜索と掃討を継続せえ。それから」
通信兵に告げた。
「センゴクへつなげ」
「――いや、私にも心当たりはない」
電伝虫を通じてガープから報告を受け、センゴクは眉根を寄せつつ用意させた資料に目を通しながら言葉を続ける。
「今回の作戦はG5支部、基地長ヴェルゴ中将の報告書を元に立案されたものだ。G5管区内で不審な貨物船を臨検した際、大量の麻薬が発見され、逮捕された船長の航海日誌と個人手帳から麻薬商の所在が判明したのだ」
センゴクは背もたれに体を預け、大きく息を吐く。
「ああ。分かっている、ガープ。すぐに情報を精査させる。だが、南の海は“大きな問題”を抱えている関係で時間が掛かるだろう。そちらでも件の麻薬商を尋問してくれ。そうだ、拷問も含めて、だ。実施するかどうかはお前の判断に任せる」
そう告げながらも、ガープはしないだろうな、とセンゴクは思う。
ガープは無茶苦茶な男であるが、人倫にもとる真似を好まない。手出しできぬ状態の囚人へ一方的に苦痛を与えて情報を引き出すなんてことはすまい(年端の行かぬ“孫”に虐待同然の鍛錬をしたり、危険なジャングルに放り込んだりするが、それは彼なりの愛情表現である。要は非常識なのだろう)。
「……ガープ。分かっていると思うが、南の海の件は、いやロス・ペプメゴの件は非常にデリケートだ。海軍としても解決の糸口になるなら、喉から手が出るほど欲しい……頼むぞ」
通信を切り、センゴクは眼鏡をずらして目元を揉む。
南の海が抱えている大きな問題。それは海軍が生み出したものだ。
ことは海賊王ロジャーの処刑後、ロジャーに妻子が居たことが判明したことに起因する。
政府はロジャーの妻子を逮捕ないし処刑を厳命し、海軍は南の海で大捜索を行った。
海軍の捜索は極めて強引かつ乱暴なもので、多くの妊婦、若い母親、赤ん坊、あるいは妻子を守ろうとした夫や家族が命を落とした。しかも、処刑された女達は不義密通の汚名を着せられ、赤ん坊達は不義の子という不名誉を冠されて。
政府と海軍の横暴に慣れたこの世界の人々でも、この蛮行は我慢できなかった。
自分の妻や娘、姉や妹に不名誉の烙印を押され、生まれたばかりの赤子を一方的に断罪され、有無を言わさず殺される。こんな真似をされて耐えられる者など居ようはずがない。
最初は遺族による穏当な抗議活動だった。が、政府と海軍がこの抗議運動を武力弾圧したことで、反政府/海軍テロ組織ロス・ペプメゴが結成された。
ロス・ペプメゴ。
その名は『海軍と政府に傷つけられた人々』を意味する復讐者の群れだ。
〇
『海軍が身柄を確保した麻薬商を暗殺してもらいたい。彼の身柄がエニエスロビーへ運び込まれるまでに』
「あんたが政府の人間ならサイファー・ポールにやらせれば良いじゃない」
ベアトリーゼの指摘に、電伝虫の先から『うむ』と同意の声が返ってきて、
『常ならばそうするが……今回は難しい』
さらりと爆弾を放り込まれた。
『件の麻薬商を確保している海軍将官がモンキー・D・ガープだからだ』
「ガープッ!?」
その場の全員が悲鳴染みた声を上げた。
海軍本部中将モンキー・D・ガープ。純粋な覇気のみで数多くの強力な海賊達を叩き潰し、全盛期は『海賊にとっての悪魔そのもの』と畏怖された男。史上最凶の海賊ロックスを討ち取り、海賊王ロジャーを幾度も追い詰めている。“英雄”の二つ名に相応しい大豪傑だ。
「冗談じゃないぞっ!」「無理よ、危険すぎるわっ!」
シャーロット兄妹にしてみれば、最強ビッグ・マムに匹敵する恐るべき強敵。ガレットの鏡ピアスの奥――鏡世界に控えるカタクリも仰々しいほどの渋面を浮かべていた。
「無理ヤモ。無茶ヤモ。無謀ヤモ」「プリティに不可能だろ」
元海賊のジューコと元賞金稼ぎのテルミノには、ほとんど伝説上の存在。
「報酬とリスクが釣り合ってないよ。解散だ解散っ!」
ベアトリーゼにとっては穴開き原作知識でもはっきりと覚えている『最強格の原作キャラ』だ。敵う気がしない。
『提供するトリコロール・メロンは最高級品だ。間違いなくビッグ・マムの舌を満足させるだろうし、テルミノ氏の問題もつつがなく解決するだろう』
電伝虫の先から滔々とセールストークが続く。
『繰り返すが、ビッグ・マム海賊団に求めていることは、シャーロット・ブリュレの能力による移送だけであり、暗殺はジューコ殿とベアトリーゼ殿に委ねる予定だ』
「勝手に委ねるなよ」
ベアトリーゼの抗議を無視し、
『海軍大将クザンと海軍中将つるとその精鋭を単独で相手取ったベアトリーゼ殿ならば、ガープ相手に時間を稼げるはずだ。その間にジューコ殿が件の麻薬商を暗殺すれば良い。そして、ブリュレの能力で脱出する。それだけだ』
「そんな簡単に行くと思うなら自分でやれヤモ」
悪態を吐くジューコへ自称政府関係者は言った。
『勘違いしないで欲しい。ジューコ殿。君には受ける“理由”があるだろう』
暗に『首輪付きであることを忘れるな』と仄めかし、次いで、電伝虫の目がベアトリーゼを捉えた。
『君には特別な報酬を用意してある』
「へえ、どんな?」
小馬鹿にするような態度でベアトリーゼへ、電伝虫は淡白に告げる。
『君の過去だ』
Tips
自称政府関係者
性格が陰険なオリキャラ。
シャーロット・カタクリ。
原作キャラ。
ビッグ・マムの次男坊で、シャーロット家子女で最強の男。
色物が多いシャーロット家では珍しい純粋な武人気質で、お兄ちゃんキャラ。
モンキー・D・ガープ。
原作キャラ。
本作では、色々破天荒な爺様だが、表に出さないだけで多くの苦悩を抱えているだろうな、という解釈をしている。
麻薬商クラック
オリキャラ。生贄役。名前の由来はクラックコカインから。
冷戦時代に麻薬カルテルが自国政府やアメリカと関与し、共産ゲリラの抹殺に協力してた逸話から、世界政府の裏とつながっているという塩梅。
ロス・ペプメゴ。
原作の出来事に由来するオリ設定。
いくらなんでも、ロジャーの血を絶やすために無関係な妊婦や赤ん坊を殺しちゃあかんでしょ。そんなことされて泣き寝入りする奴はいねえよ、という独自解釈から作った。
名前の由来は『ロス・ペペス』
麻薬王エスコバルに対抗して組織された自警団(実際は敵対カルテルの殺し屋集団だったが)