彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
十数年前に海賊王ゴールド・ロジャーが処刑されて以来、この世は大海賊時代。
それでも、海を行き交う船の大半は海賊船ではなく、自衛武装した貨物船や貨客船であり、つまるところ海の主役は海賊でも海軍でも無く、世界経済を支える海運業界なのだ。
そして、海の商人達にとって『マーケット』は莫大な儲けを得られる楽園であり、成り上がりを目論む中小商人達は『マーケット』へ行くことを熱望していた。
海賊と手を組んででも、と考える博奕打ちはいくらでもいて、中には『悪魔の子』と呼ばれて追われる高額賞金首と手を組んでも良い、なんて奴も少なくなかった。
夜道をカラカラと走る
「そいつ、信用できるの?」
「元より信用も信頼も出来ないわ。でも、裏切らないなら問題ない。そうでしょう?」
「ん。確かに」
ベアトリーゼはロビンの反問に同意し、冷酷に口端を歪めた。
「バカな真似をしたら潰すだけだね」
「バカな真似、ね」
ロビンは肩を小さく竦める。
本質的に善良なロビンは基本的に流血沙汰や人死を忌避している。が、世界の悪意や敵意、人間の醜悪さに晒されながら生き抜いてきたロビンは、冷酷な決断や冷徹な判断を下すことを恐れない。ゆえにベアトリーゼの暴力を否定しない。
ベアトリーゼもロビンの気質を肯定する。命が捨て値以下の土地で生き抜いてきただけに、殺しに対して躊躇も逡巡もないし、後悔もしない。『ロビンが嫌がるような殺しはしない』くらいの自己抑制しかなかった。前世日本人の良識や倫理や道徳はちっとも戻っていないらしい。
「私達の賞金を合わせれば、1億ベリー越えよ? 判断を誤るには充分な額じゃない?」
「かもね。私なら1億ぽっちで地獄行きを選ばないけど」
「相手がビーゼと同様に賢明なことを期待しましょう」
どこか楽しそうに微笑み、ロビンはベアトリーゼの夜色の髪を弄る。
辻馬車が停まった先は、ビジネス街の一角に並ぶ煉瓦造りの建物。
ロビンに先んじてベアトリーゼが馬車から降り立つ。
月と星々が輝く夜空と同じ色の瞳を巡らせ、周囲を窺う。まるで建物を“見聞”するように。次いで、ブーツの右踵で石畳の地面をカツンと蹴り、数秒後に背後の馬車へ向けて首肯。
馬車からロビンが降り、ベアトリーゼにエスコートされながら煉瓦造りの建物内へ入っていく。
「この建物内に用心棒が3人。相手の傍に1人、応接室の隣に2人。別室に15人。能力者や覇気使いはいない。少なくとも周囲3ブロック以内に海軍部隊はなし」
ベアトリーゼはまるで“見てきた”ように告げた。
「高額賞金首2人と手を組もうって考えるだけに、あまり賢くないみたいだね」
「私が対応するわ」
ロビンの端正な横顔に冷厳さが浮かぶ。
アンニュイな細面に冷ややかな笑みを湛え、ベアトリーゼは言った。
「お任せするよ」
○
テルミノは14で賞金稼ぎの集団に加わり、20年ほど斬った張ったを続けた結果、どうにも将来に不安を覚え、鉄火場商売から足を洗うことにした。
元より学も金もコネもない貧乏人の小倅が腕っぷし頼りにゲソをつけた商売だ。足を洗うことに未練はない。
ただまあ、同じように足を洗った仲間や付いてきた部下と共に起こした海運会社が、いまいち繁盛していない点に関しては、些か想定外であった。大海賊時代の到来で海運が不安定化したなら、元賞金稼ぎによる武装商船は儲かると踏んだのだが……
運送依頼は思ったより来ず、赤字が月単位で増えていく。銀行の目つきが厳しくなっており、女房や仲間が不安顔を見せることが増え、晩飯のおかずが一品減り、晩酌の酒が安くなった。
このままではプリティにヤベェ。
そんな不安と焦燥が日増ししていく中、テルミノの下に謎の女から会社の電伝虫に連絡があった。
『ミスター・テルミノ。マーケットに興味はないかしら?』
無い訳がない。
賞金稼ぎ時代からマーケットの話は聞いていた。
グランドライン内に存在する、ありとあらゆるものが遣り取りされる無法の大市場。世界政府も海軍も手出ししない商売の楽園。何より、マーケットに足を踏み入れた商人は例外なく大儲けする、という伝説がプリティグッドだった。
『私とその仲間を貴方の船に乗せてくれるなら、マーケットへ向かうログポースと海図を提供するわ。ただ――』
女はテルミノを試すように笑う。優雅な笑い声だった。
『私達を乗せたら、海軍を敵に回すけれど』
テルミノは思案した。
マーケットには行きたい。プリティに行きたい。そも大儲けが期待できる商売の楽園に行きたくない商人などいない。しかし、海軍を敵に回す輩――間違いなく賞金首か犯罪者――を船に乗せるリスクも無視できなかった。なんたってテルミノは元荒事師。海軍が本気で殺しに掛かった時の恐ろしさをよく知っている。
同時に、テルミノは海軍に好意や仲間意識を抱いていない。賞金稼ぎをしていた頃、賄賂やあれこれを要求する悪徳軍人はいくらでもいたし、手柄を横取りされたことは数知れず。ある仕事で揉めた時は留置場で一晩中小突き回されたし、海賊もろとも殺されかけた回数だって両手の指の数では足りない。
「一つだけ確認してえ」
テルミノは通話相手の女へ問う。
『答えられることなら』
「あんたらの賞金額は?」
『2人で1億3千万ベリーを超えているわね』
あ、こいつぁプリティにヤベェわ。
金は必要だし、マーケットには喉から手が出るほど行きたいが、危なすぎる橋は渡れない。女房子供がいる身だし、社員の家族を路頭に迷わせるわけにはいかない。
テルミノが決断しかけた時、郵便屋が封筒を届けてきた。
督促状だった。慇懃無礼な内容を意訳すると『年内に商売を黒字にしなきゃ船を差し押さえっぞ』という通告。
テルミノは改めて決断した。
「話を受ける。直に会って詳細を詰めたい」
で。
テルミノは決断した時を振り返り『あの時の自分を殴って止めたい』と強く思った。
なんたって、応接テーブルを挟んで向かい側に座る2人の美女――黒髪蒼眼の理知的な美女は世界的指名手配犯『悪魔の子』であり、夜色の髪と目を持つ小麦肌のアンニュイ美人は『
「私はR。彼女はB。どうぞよろしく」
ニコ・ロビンが偽名と称するにはあまりにも簡素な名乗りを口にする。もしかしたら、既に試されているのかもしれない。プリティにヤベェ。テルミノは顔から血の気を引かせていた。
『悪魔の子:ニコ・ロビン』は賞金額7900万。
『場合によってはその賞金首をとっ捕まえて借金返済に充てよう』と考え、元賞金稼ぎである社員達を別室に控えさせたが……こちらが皆殺しにされるのがオチだった。
もはやテルミノと社員が無事に生き延びる方法はただ一つ。
この商談を上手くまとめ、この怪物女二人の力を利用し、マーケットに行くこと。
マーケットに行くことが出来れば、1億3千万なんぞ端金に等しい。会社を大きくし、船も増やせる。大金持ちにだってなれる、はず。
こいつはプリティな正念場だぜ……っ!
テルミノは腹を括った。
○
ロビンとミスター・テルミノの商談交渉を気だるげな面持ちで眺めながら、ベアトリーゼは応接室の隣室や周囲の状況を警戒していた。
ベアトリーゼはワンピース世界における強者の技――覇気を扱える。
ただし、ベアトリーゼが覇気を扱えるようになったのは、あの地獄より阿漕な地で最底辺の弱者として生き続けた日々があったから。無慈悲な世界に屈しない意志の力を宿していたため、サディスト教官から知識の伝授とコツの教導を得たことで、覇気を修得できた。
もちろん、ネズミが覇王の素質を持つわけもなく、扱えるのは見聞色と武装色のみ。
だが、見聞色の覇気の使い方に関しては極めて高い。同じ覇気使いに気取られぬほど隠密性の高い捜索探査が可能であり、同時に相手の見聞色の覇気を掻い潜ることすら可能だった
全てはあの腐れ故郷で生き抜くために獲得した技術。
ベアトリーゼは今の自分が一端の強者と自覚している。
しかし、自分を最強などと自惚れることは、決してない。
どれほど力をつけていようと、ベアトリーゼの気質は戦場漁りで糊口を凌いでいた頃と同じだ。
臆病なほど注意深く。
石橋を叩き割って鋼鉄の橋を架けるくらい慎重に。
動くと決めた時は大胆で勇敢に。
殺る時は相手を破壊するほど徹底的に。
ゆえに、ベアトリーゼは気怠そうに振る舞い、物憂げな面持ちをしていても、その実は怯えたハリネズミのように周囲を警戒している。
控えている連中は得物を手に固唾を呑んで、応接室のやり取りを窺っているようだ。今のところ、バカな真似はしないらしい。大いに結構。
そうして、
「――では、以上の条件で、出発は一週間後。それでよろしいですね?」
ロビンが商談をまとめに入る。幾度も汗を拭っていたせいで額や頬がツルツルに輝いているテルミノが大きく頷く。
「契約書は作りますか?」とロビンが微笑む。
「いや、御二方を信用する。契約書は結構だ」と首を横に振るテルミノ。
高額賞金首と取引したなんて物証が残ったら大問題だ。海軍にバレたら大変なことになる。
「良い取引が出来ました。出立の日を楽しみにしています、ミスター・テルミノ」
ロビンが腰を上げてから右手を差し出す。テルミノはまじまじとロビンのたおやかな右手を見つめ、慌てて汗まみれの手をハンカチで拭ってから、ロビンの右手を握った。
「こちらこそビジネスの成功を期待しています。ミス・R、ミス・B」
ロビンの隣に立つベアトリーゼは握手を求めず、代わりに妖しい微笑を寄こした。
プリティに怖い。
2人が応接室を出ていき、テルミノはその場にへたり込む。
「プリティにビビりっぱなしだったぜ……今日だけで生え際が随分と後退しちまった気分だ」
テルミノが小粋なジョークを飛ばしている頃、ロビンとベアトリーゼは表に待たせていた辻馬車に乗り込み、
「この一週間、何事もなく済むかな?」
「あの社長さんがさっきの交渉中のように社員の手綱をきっちり握っていれば、何も起きないわ。そうでないなら――」
ロビンは小さく吐息をこぼす。
「この街に海軍や賞金稼ぎ達が押し寄せるでしょうね」
社長のテルミノが沈黙を通そうとも、2人の賞金に目が眩んだ社員が海軍や賞金稼ぎに通報/密告をすれば、結果は同じ。
「そいつは一大事だね」
ベアトリーゼは窓枠に肘を預けて頬杖をつく。
「出立は一週間先か……何をして時間を潰すかな」
「何を言ってるの、ビーゼ。私達も準備をしなきゃダメよ」
どこか呆れた視線を返し、ロビンは続ける。
「マーケットで活動するためにもっと資金を集めないと」
一瞬、きょとんした後、ベアトリーゼは怪訝そうに眉根を寄せた。
「……資金ならこの間のなんちゃら海賊団から奪ったものがあるじゃないか」
「あれだけじゃ足りないわ。向かう先はあのマーケットなのよ」
ロビンは珍しくオンナノコな笑みをこぼす。
「きっと欲しくなる物がいろいろとあるわ。これまで食べたことのない美味しいものとか」
あら可愛い。ベアトリーゼは微苦笑と共に頷いた。
「それじゃお金を集めようか」
○
2人の美女が危惧していた海軍の襲来も用心棒の集結も起きなかった。
代わりに、島の近海におぞましいほど破壊された死体だらけの海賊船が座礁したり(唯一の生き残りは海賊見習いの小僧達だけで、見習い達は凄惨な
あるいは、体中の骨をへし折られた死傷者に満ちた海賊船が漂流していたり(海賊見習いの少年少女は昏倒するだけに留められていた)。
いずれの海賊船もオタカラや売却可能な品が一つ残らず奪われていた。
ただ、賞金首の海賊は放置されていたため、当局は海賊同士の抗争と判断している。
そして、テルミノの武装商船『プリティグッド号』が出港する。
「俺はやれる俺はやれる俺はやれる俺はやれるぞ」
港を出てから、船長室でテルミノは鏡に映る自分へ発破をかけていた。
テルミノは此度のマーケット行きに賭けている。
渋る銀行を脅して賺して泣きついて、家と家財一切を抵当に入れて融資をもぎ取り、現地で売り飛ばす商材と現地で商材を仕入れる資金を搔き集めた。これで失敗したら倒産確定で夜逃げか一家離散しかない。この一週間で随分と生え際が後退してしまった。
「俺はプリティにやり遂げてみせるっ!」
鏡に向かって宣言するテルミノ。生え際からはらりと髪が舞い散った。
「社長さん、一週間会わなかっただけで随分と生え際が後退してなかった?」
「そこには触れないであげましょ」
ベアトリーゼの指摘にロビンが生暖かい優しさを返した。
そして、この船旅は――――
一見さんお断りの複雑怪奇な海流と海域は、ログポースと海図があっても容易いものではなかった。
「面舵――半分、いや4分の1、プリティに4分の1だっ! 4分の1だっつってんだろバカヤローッ!!」
操船を誤れば、座礁や沈没待ったなし。
「うわぁああああ、プリティにクソでけェアザラシだぁああああああっ!!」
警戒を怠れば、海王類とこんにちは。
「帆をたためっ! 急げ急げ急げっ! プリティに横転しちまうぞっ! 早くしろーっ! 間に合わなくなるぞーっ!」
横っ面を張り飛ばすように襲来する嵐やスコール。
「左舷に船影―っ! 距離3200ッ! 海賊旗っ! プリティに海賊旗を掲げてるぞーっ!!」
商売の楽園でたらふく稼ぎ、物資を満載した船が行き交うということは、その金と物資を狙う者が集まるということでもあり。
――安心して食事や睡眠をとれず、便所で気を抜くこともできやしない。
楽園へ至る道程に困難は付き物であるが、マーケットへ向かう航海は艱難辛苦に満ちていた。
「いやはや、大変な航海だね」
久し振りの好天の下。上甲板の隅で日光浴をするベアトリーゼが欠伸混じりに言った。
「評判通り、いえ、以上かしら。マーケットの存在が広く伝わっている一方で、出入りしている人間が少ないのも道理ね」
隣のロビンが学者的な口調で語る。
2人とも他人事のような言い草だった。まぁ、実際のところ、戦闘やその他に長けていても航海の素人であるベアトリーゼとロビンはお客さんに過ぎなかった。
もっとも、2人はただ漫然と船室で揺られていたわけではない。
海王類に襲われた時はベアトリーゼがその圧倒的な戦闘技能で撃退したし、襲ってきた海賊船に至ってはベアトリーゼとロビンの2人だけで海賊達を壊滅させ、逆に船を丸ごと鹵獲していた。積み荷と船はマーケットで売り飛ばす予定だ。
当初、テルミノは鹵獲船の牽引を渋ったが、ロビンが売却金を全員に等分すると言ったら、テルミノと船員達は満面の笑みで了承した。お金はいくらあっても困らない。
「でも」
ベアトリーゼは口端を和らげた。小麦色の細面に悪戯っぽい微笑が浮かぶ。
「こういう真っ当な船旅は良いね。まさしく『世界を旅しろ、冒険を楽しめ』って感じでさ」
「その標語は初めて聞いたけど……そうね」
ロビンは噛みしめるように同意した。この航海で感じている気分を一言で表するなら。
楽しい。
「居心地も悪くないしね。元賞金稼ぎ達が起こした船会社って割に賞金首の私達を見る目がギラついてないもの」
まぁスケベな目で見てくるけど、とベアトリーゼは微苦笑した。
「不満があるとすれば、この船は飯があんまり美味しく無いことかな」
「すっかり贅沢になっちゃったわね、ビーゼ」
くすりと喉を鳴らし、ロビンはからかうように続ける。
「出会った頃はどんなゲテモノでも『故郷で食べていたものよりマシ』って文句を言わずに食べてたのに」
「良い物を知ると悪い物では満足できない。私が身を以って発見した真理だね」と嘯くベアトリーゼ。
「舌が肥えちゃっただけとも言うわね」
くすくすと楽しげに笑い、ロビンはベアトリーゼの癖が強い夜色の髪を弄り始める。
仲睦まじく過ごす美女2人の様子を窺う船員達は呟く。『百合は美しい』『てえてえイイゾ~』『尊い』。どうやら業が深い連中のようだ。
「姐さん方」と船員の一人がベアトリーゼとロビンへ声をかけた。「船長が呼んでまさぁ」
2人が船長室へ足を運べば、この航海で頭頂部がすだれ気味になってきたテルミノがグラスを並べていた。
「順調に行きゃあ今日中にマーケットのある島が見えてくる。前祝いと行こう」
キャビネットから未開封の酒瓶を取り出し、テルミノは蝋封をナイフで切ってコルク栓を抜いた。三杯のグラスに指二本分のウィスキーが注がれる。
「航海の成功に乾杯」
テルミノの音頭に2人の美女もグラスを掲げ、琥珀色の酒を口へ運ぶ。芳醇な味わいと強烈な酒精。喉と胃袋を焼く感覚が何とも好ましい。
「契約じゃあ復路の乗船は含まれていなかったが、船員達はお二人の乗船を望んでる。道中、荒事で大いに助けられたからな。お二人が嫌でないなら――」
「申し訳ないけれど」
ロビンがテルミノの言葉を遮った。
「私達はマーケットに到着後、別れた方が良い。私達に深入りすると不幸な目に遭うわ」
それは善意の忠告であり、猜疑の警告でもあった。
これまで、ロビンを追う世界政府の手は巻き添え被害を無視しており、ロビンが身を寄せた組織や集団はことごとく壊滅している。むろん、ロビンを裏切って因果応報の目に遭った連中も少なくないが。
ともかく、ベアトリーゼ以外にロビンと深く関わって無事で済んだ者はいない。これは事実だ。ただし、この航海で寝食を共にして苦労を分かち合い、テルミノ達が気の良い連中だと分かった。ロビンとしては彼らをこのまま利用して危険な事態に巻き込みたくない。これも本心だった。
同時に――復路も乗船した結果、母港に海軍と賞金稼ぎの歓迎委員会が控えている可能性を無視できない。テルミノがビジネスの成功の余禄に2人の賞金を得ようと考えているかもしれないのだから。偽りの友誼や情愛に騙された経験がロビンの人間不信と警戒心を解かない。
「契約通り、ビジネスライクに行こうよ」
ベアトリーゼは淡白に告げる。
「あんたらのこと嫌いじゃないけれど、“良くないこと”が起きた時、私はロビン以外を守る気も助ける気もないからね。もちろん、事が起きれば容赦なんてしない」
仄めかすように語られた内容は宣告だった。
復路で海軍その他に襲われたら見捨てると。テルミノ達が裏切った場合は殺すと。
20年に渡って鉄火場で生きてきたテルミノは悟る。ここが引き際。マーケットに到着したら別れた方が良い。
「どうやらマーケットで帰りの用心棒を雇った方がよさそうだ」
「ええ。その方が良い」とロビンは頷き。
「賢い選択だね」とベアトリーゼが冷笑する。
「まあ……今は祝杯を楽しもう」
テルミノは酒瓶を手にし、自身と2人のグラスにお代わりを注いだ。
Tips
テルミノ。
オリキャラ。元賞金稼ぎのオヤジで現在は小さな海運会社経営。口癖はプリティ。
会社の経営状態がヤバいため、冒険することに。