彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
めけめけさん、作中時系列の不備を御指摘くださってありがとうございます。
本話は劇場版『FILM RED』の内容に触れます。御注意ください
「ゥゥウウゥゥ――――――――――ウゥッ!!」
賞金3億2千万ベリーの海賊“脳食い”マカクは発作を抱えている。
動物系ヒルヒルの実の能力者であるマカクはヒル人間だ。
このヒルヒルの実は特異種というべき“特性”があり、通常の動物系で確認し得る人間形態、獣形態、人獣形態の三形態ではなく獣形態しかとれない。そして、ヒルヒルの実の獣形態は――人間の頭部に蛭の体躯を持つ惨めな生命体に成り果てるものだった。
が、マカクはこのヒルヒルの実のおぞましき特性によって、賞金3億2千万ベリーの強者に成り上がっていた。
蛭の中には寄生虫も存在する。ヒルヒルの実の異能もまた、人間を含めた他生物に“寄生”することが可能だったのだ。
ただ、他者に寄生して肉体を乗っ取る様子は、もはや人間というより化物の所業そのものだった。加えて、鼻と上下唇を削ぎ落とされた無惨な向こう傷顔が、彼の外見を一層人間離れしたものにしていた。
常軌を逸した容貌、他人の肉体に寄生して乗っ取る異能。もはやマカクは”人間”と定義して良いかどうかも怪しい。
マカクの精神面もまた、非常に危うい。
ヒルヒルの実の能力者になったことで人間だった肉体を失って以来、マカクは自身に残された人間的部位――顔に対する執着が凄まじく、海賊商売に於いて自身の顔を傷つけた相手を絶対に許さない。嬲り殺しにした後、死体を損壊してもなお収まらぬほど怒り狂う。
そんなマカクであるから、顔を無惨に破壊されて以来、ほとんど狂っている。壮絶なまでの加虐性と残忍性はもはやサディストなどという表現では追いつかない。
マカクは少なくない部下を率いているが、部下達はマカクの暴力と恐怖に支配された奴隷であり、いざという時にマカクが寄生する予備の肉体であり、マカクの異常食欲を満たす家畜なのだ。
いつもの発作を起こしたマカクは、自身の大事な顔を無惨なものに変えた男の手配書を、ナイフで滅多突きにしていた。
「ゥゥウウウウシャンクスシャンクスシャンクスシャンクスゥウウウウウ……ッ!!」
かつて、マカクは赤髪海賊団と抗争してボロ負けした。命からがら逃げ伸びることは出来たものの、顔を酷く損壊された。このシャンクスに対する憎悪と怨恨がただでさえ化物染みたマカクを、より怪物的存在に変えている。
「シャンクスシャンクスシャンクスシャクスゥゥウウウウ……ッ! 殺してやる殺してやる殺してやる貴様の脳髄を欠片も残さず食らい尽くし、その体を俺のものにしてやるぅうッ!」
剥き出しの歯茎と前歯の隙間から涎と呪詛を垂れ流すマカクだが、その実、一度も赤髪海賊団と再戦したことがない。
恐ろしかったからだ。シャンクスの強さはさながら竜の如くだった。顔の傷を見る度に憎悪と怨恨を新たにするとともに、シャンクスに対する恐怖と怯懦も新たに糊塗されている。
だから、マカクはシャンクスを憎み恨みながらも、再戦しようとはしなかった。シャンクスが四皇に至ってからは猶の事。
つまるところ、マカクは復讐と報復を渇望すればするほど、恐怖と怯懦の心的外傷後ストレス障害に苦悶する羽目になっていた。
「ゥウウウウウウウウ―――ウッ! シャンクスシャンクスシャンクス……ゥッ!」
この日、マカクがいつものようにトラウマの発作を起こしている時だ。
ニュース・クーが『不定期連載特集企画:エレジア滅亡の真実』を掲載する世界経済新聞を配達した。
マカクは震える手で新聞を引っ掴み、そして、見た。
記事と共に掲載されている、海軍が撮影したらしきエレジア滅亡時の生存者二名の写真を。
エレジア国王ゴードンと娘のウタの写真を。
「―――ぉおお……っ! おおお覚えている、俺は覚えているぞ、このガキをっ!!」
マカクは過去を幻視した。
往時、マカクは部下を引き連れてレッド・フォース号を強襲したものの、瞬く間に劣勢に陥った。その時、後船楼の出入り口から甲板の様子を窺う赤白二色頭の幼女を見つけ、人質に取ろうとした刹那。
――俺の娘に手を出すな……っ!
一瞬だった。気が付いた時には寄生していた肉体は完全に破壊されつくし、鼻と上下唇が削ぎ落とされていた。
新聞を引き裂き、千切れた掲載写真を握りしめ、マカクは絶叫する。
「赤髪の娘ェあああああああああああっ!」
発狂したマカクは船内に轟くほどの怒号を発した。
「進路を変えろっ!! 目標はエレジアだッ!!」
震え上がった部下達が大慌てで船の進路を変えていく中、マカクは邪悪という言葉では表現しきれない凶相を浮かべ、笑う。悪意を垂れ流すように剥き出しの歯茎から涎をこぼして、狂い笑う。
「シャンクスゥ……っ! 貴様の“娘”を滅茶苦茶にぶっ壊してやるぞぉおおおっ!!」
○
「―――これがあの夜に起きた全ての出来事だ」
完落ちした犯人のように7年前の事件を語り終え、ゴードンは深くうなだれる。サングラスの隙間から流れ落ちる涙は自罰意識に染まっていた。
部屋に満ちる沈黙の静寂は酷く冷たい。窓から注ぐ陽光の温もりが感じられぬほどに。
「私が、この国を、滅ぼしたのね」
茫然自失状態のままウタが呻くようにこぼした言葉に、ゴードンは血相を変えて叫ぶ。
「違うっ!! そうじゃないっ! ウタは悪くないっ!! 私だっ! 私が悪いんだっ!! トットムジカの存在を知りながら、ウタウタの実の能力者である君から目を放してしまったっ! 私の不注意がトットムジカに君を誑かす隙を許してしまったっ! ウタは悪くないっ! 何も悪くないんだっ!」
「でも、私が歌ったから、私が歌ったから、この国の人達が」
ウタが茫然としながら薄紫色の双眸から大粒の涙をこぼしながら、自責の言葉を編む。
「私が、この国を滅ぼしたんだ」
「聞きなさい、ウタッ! 君は何も悪くないんだっ!!」
ゴードンが必死にウタへ説くも、ウタの心には届かない。
「この件は誰も悪くないんだよ」
ベアトリーゼが大きく息を吐き、ウタとゴードンの視線を浴びながら、続けた。
「どういう理屈かは知らないが、トットムジカには意思があり、自ら封印を解く力を有していた。その前提を知らなきゃあ封印管理人だって注意のしようがない。ゴードンさん、その意味で責任があるとすれば、トットムジカの危険性を正しく伝えなかったあんたの御先祖が悪いってことだ。あんたはむしろ被害者だよ」
呆気にとられるゴードンからウタへ視線を移し、ベアトリーゼは無感動に語る。
「当然、ウタちゃんにも責任はない。これは9つのガキが何も知らぬまま爆弾の起爆スイッチを押させられたようなもんだ。ウタちゃんもまた被害者だよ。罪なんて問われない」
「でも、私が歌ったから、この街の人達が死んじゃったことに変わりないじゃないっ!」
ウタは泣きながら叫び、両手で顔を覆う。
「私がこの街を滅ぼして皆を殺した。だから、シャンクスは私を捨てていったんだ……恐ろしい怪物を呼び起こしちゃうような人間だから、私が邪魔になったから捨てたんだっ!」
「違うっ! そうじゃないっ!! シャンクスはそんな理由で君を私に預けたんじゃないっ! ウタの夢を守るためだっ! 彼は断腸の思いで君をこの島に残していったんだっ! 断じて捨てたんじゃないっ!」
ゴードンが真摯な説得を重ねるも、ウタは逃げるように部屋を飛び出していく。
「ウタッ!!」
「待った」
慌てて追いかけようとするゴードンを呼び止め、ベアトリーゼはポットを傾けてゴードンのカップに新たな珈琲を注ぐ。邪魔をするなと言いたげに睨んでくるゴードンへ、ベアトリーゼは溜息混じりに言った。
「あんたも少し冷静になった方が良い。何も考えずに珈琲を一杯飲んで、それから今後のことを考えろ」
「今後?」
怪訝顔になったゴードンへ、ベアトリーゼは冷徹に告げる。
「ゴードンさん。あんたも向き合う必要があるだろう? 悪意の楽譜をどうするか。真実を知ったウタをどう教え導いていくか」
「―――ッ!」ゴードンはうなだれて「……そうだな。その通りだ。でも、ウタを放っておくわけにも」
「私が様子を見てくるよ」
ベアトリーゼは腰を上げ、夜色の髪をゆっくりと掻きあげる。アンニュイ顔の双眸にどこか優しいものを湛えて。
「赤の他人の方が気楽に接せられることもあるからね」
○
港の突堤、その先端でうずくまるように膝を抱え、ウタは泣いていた。
残酷なほど青い空の下。哀しいくらい穏やかな海を前に、ウタは泣きじゃくる。
自分の“罪”を知らされ、ウタはただただ大粒の涙を流し続ける。
シャンクスは何も悪くなかった。それどころか、私のために汚名まで背負わせてしまった。自分が原因だったのに。自分がこの国を滅ぼしたのに。
ベアトリーゼの言う通りだ。ウタウタの実は皆を幸せにする能力なんかじゃない。人を傷つける“兵器”だ。自分は大勢の人達を殺した犯罪者だ。
私の歌は人を幸せにするどころか、命を奪うものだ。
シャンクスが、赤髪海賊団の皆が自分をこの島に棄てていったのも当然だ。こんな危険な人間を手元に置いておけるわけがない。
「私が全部悪かったんだ……っ!」
「だったら、どうするの?」
不意に背後から声を掛けられ、ウタは華奢な身を大きく震わせた。わずかに顔を上げ、泣き過ぎて真っ赤に充血した目を肩越しに背後へ向けた。
いつの間にか、ベアトリーゼが三歩ほど後ろに立っていた。夜色の髪を潮風に揺らしながら強い日差しを浴び、心地良さそうに目を細めている。
「あっち行ってっ! 私を放っておいてよっ!」
ウタが拒絶の言葉を浴びせるも、ベアトリーゼは委細無視してウタの隣に腰を下ろし、長い脚を畳むように胡坐を組み、
「後悔も自己嫌悪も自罰思考も構わない。内に引きこもったって良い。ただし、そこで立ち止まったらダメ。そこで立ち止まった人間は大抵が負け犬に成り果てる」
冷酷に告げる。
「負け犬じゃ歌姫にはなれない」
歌姫という単語にウタは身を震わせ、ぽろぽろと涙をこぼす。
「……もう歌姫になれないよ……誰も私の歌なんか聞いてくれない」
「じゃあ、どうするの?」
ウタの泣き腫らした横顔を窺い、ベアトリーゼは先ほどの問いを繰り返す。
「歌姫になることを諦めて金輪際歌うことを止める?」
「それは――」
歌うことを断つのか。その冷厳な詰問にウタは答えられない。ウタにとって歌は自分自身を形成し構築する全てだから。
「歌うことをやめて修道女にでもなってみる? 犯した罪の赦しを求めて神様とこの街で死んだ連中に祈り続けてみる? まあ、後ろ向きではあるけれど、選択肢としては有りかもね」
淡々と言葉を紡ぎ、ベアトリーゼはウタへ三度問う。
「でも、ウタちゃんは歌を捨てることが出来るの?」
無機質な暗紫色の瞳が傷心の少女を捉え、容赦なく問い詰める。
「ウタちゃんにとって歌とは何? ウタちゃんはどうして歌が好きなの? 歌手になろうと思ったのはなぜ?」
「私は―――」
ウタは泣きながら自問する。
私はどうして歌が好きなのか。私はどうして歌手になろうと思ったのか。
脳裏に赤髪の父がよぎった。優しく笑ってくれる父の顔がよぎった。
瞼の裏に“父達”が浮かんだ。楽しそうに歌ってくれる“父達”の姿が浮かんだ。
あの日、自分を置き去りにして去っていくレッド・フォース号の姿が鮮明に思い出された。
苦しい。哀しい。辛い。悲しい。心が血を流してすぐにも壊れそう。魂に亀裂が入って今にも砕けそう。
「……私が歌うことが好きになったのは、皆が喜んでくれたから。私が歌えば、皆が嬉しそうに笑って、一緒に楽しんでくれたから。皆が私を褒めてくれたから」
何より――
「私が歌うとシャンクスが喜んでくれたから。私はシャンクスに喜んで欲しかったから。私はシャンクスに褒めて欲しかったから」
ああそうだ。これこそ私の
私の歌でこの世界の全ての人達を幸せにしたい。シャンクスは私には出来ると言ってくれたから。
私は世界で最高の歌姫になって、この世界の全ての人達を幸せに出来ると、大好きな父が言ってくれたから。
ああそうだ。だから、私は誓ったんだ。ルフィの前で誇らしく宣言したんだ。
海賊王になると誓った彼に、私は新時代を開く歌姫になるって誓ったんだ。
でも――
「でも、私、私が歌ったから、この島の人達が死んじゃった。私のせいで、この島の人達が」
「私もゴードンもウタちゃんのせいじゃないって何度も言ってるんだけど……まぁいいや」
ベアトリーゼは腰を上げ、すらりとした長身を伸ばし、言った。
「そんなに自分が悪いと思うなら、まずやることがあるでしょ」
「やること……?」
泣き腫らした顔を上げ、ウタは戸惑いながらベアトリーゼを見上げる。
野蛮人はアンニュイ顔を悪戯っぽく和らげ、
「悪いことをした時はまず謝るもんだろ」
「謝る……」呆気にとられたウタへ、
「そ。気が済むまで、ごめんなさいって叫んでみなよ。何かが変わるかもしれない」
手を差し伸べる。
「ほら、早く」
ウタは怯えた子兎のようにおずおずと手を伸ばし、ベアトリーゼの手を、掴んだ。
不安げなウタへ、ベアトリーゼは優しく告げた。
「大丈夫だから。さ、やってごらん」
ウタは目を瞑り、大きな深呼吸を何度も繰り返してから、
「……ごめんなさい」
震える声で廃墟の街へ詫びた。も、隣のベアトリーゼがダメ出しする。
「そんなか細い声で誰に届くんだよ。しっかり声を出せ。世界最高の歌姫の声はそんなもんか?」
「ごめんなさいっ」
声から震えが解けた。が、ベアトリーゼは認めない。鬼教官の如くウタを叱咤する。
「聞こえねーよ。歌手として鍛えてきたんだろ? 後悔してんだろ? この街の人達に悪いと思ってんだろ? 本気でやれよっ! 半端すんなっ! 全力でやれっ!」
「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
ウタは謝罪の言葉を繰り返す。力いっぱい、本気で、真剣に、歌手として鍛えられた発声を全力で用いて、喉が張り裂けんばかりに、肺の空気を全て絞り出すように、腹の底から、心の奥から、魂の核から、
「皆、ごめんなさいっ!!」
歌姫の声が廃墟の隅々まで響き渡り、染み込んでいく。
どれほど叫び続けたのか。空高くにあった太陽が気づけば、西へ向かって沈みかけていた。
「ごめんなさい」
ウタは無理な発声を続けて喉を痛めていた。それでも涙はいつの間にか止んでいて、飲食を取らずに叫び続けた体はくたくたに疲れ切って汗塗れになっていて、力の入らぬ膝ががくがくと笑っている。
「ごめんなさい」
虫の囁き声みたく呟き、ウタは体力の限界を迎えて意識を失った。
ベアトリーゼは崩れ落ちるウタを抱きかかえ、少女の憑き物が落ちたような顔を見下ろし、小さく鼻息をつく。
「とりあえずは対症療法成功、かな。まぁ大丈夫だろ」
ウタは半日近く『ごめんなさい』を続けたが、一方で『赦してください』と口にすることはなかった。無自覚かもしれない。しかし、重要なことだ。
「流石は大海賊の娘。タフな心を持ってる」
ベアトリーゼはウタを背負い、王宮に向かって歩き出す。
いつもの『酔いどれ水夫』ではなく『ビンクスの酒』を子守歌のように口ずさみながら。
「ビンクスの酒を、届けに行くよ。海風、気まかせ、波まかせ」
その歌声は意識のないウタの耳にも届いていて。
少女は夢を見る。
レッド・フォース号の甲板で、フーシャ村の酒場で、皆と共にビンクスの酒を合唱していて、シャンクスが、“父達”が、ルフィが、幸せそうに笑って歌っていて――
少女の目から一滴の涙がこぼれた。
「ヨホホホ~ヨホホホ~ヨホホホ~ヨホホホ~」
ベアトリーゼは優しく、柔らかく、慈しむように口ずさみながら、夕焼けに染まる廃墟の中を歩いていく。
翌日、ウタが喉を酷く傷め、熱を出して寝込んだことに、ゴードンからこっぴどく叱られると知らずに。
○
「7年前にエレジアで何があったか教えてくださいっ!」
「お嬢ちゃん。状況分かってるか?」
四皇“赤髪”のシャンクスは溜息をこぼした。
レッド・フォース号が水と食料を補給するため、とある港町に寄港したところ、どこから情報を掴んだのか自称『世界経済新聞の特派員』という若い女性記者が単身で現れ、『突撃取材させてくださいっ!』と言葉通り突撃してきた。
堅気に手を出さない赤髪海賊団であるが、古傷を無思慮に突かれ、塩を塗りたくろうとする相手にまで紳士的に対応できない。
というわけで、コヨミと名乗った女性記者はグルグルと簀巻きにされていた。が、そこは流石の世界経済新聞記者というべきか。図々しくインタビューを試みている。
「猿轡もすべきだったか」と副船長のベン・ベックマンが溜息混じりに言った。
「この嬢ちゃんは猿轡を食い千切りそうだぜ」とヤソップ。
「世界は真実を求めているのですっ! 面白おかしい真実をっ! だから、教えてくださいっ! エレジアでいったい何があったのかっ! さあっ! さあっ! さあっ!!」
下手したら殺されるより酷い目に遭わされるかもしれないのだが、コヨミはお構いなしに取材を要求する。
「野次馬根性で人の過去へ踏み込んでくるな」
シャンクスは鋭い双眸でコヨミを睨み据える。
生半な者なら失禁失神しかねない四皇の威圧に晒されながらも、コヨミは怯え竦むどころか、目をらんらんと輝かせた。
「触れられたくない過去、というわけですね? なればこそのビッグニュースッ! だからこそのスクープッ! プライバシーなんてクソ食らえ! 私がここで命を落とそうとも、真実を追求するメスは止まらないのですっ!」
「お頭。このお嬢ちゃん、頭がちょっとおかしいぞ」とラッキー・ルゥ。
「世経の記者だからな。さもありなん」とホンゴウ。
「やれやれ」
仰々しく溜息を吐き、シャンクスは小さく頭を振った。
「このまま転がしておけ。街の人間に俺達が出港した後に縄を解くように頼んでおく」
「あーっ! せめてコメントをくださいっ!」と諦めの悪いコヨミ。
「ノーコメントだ」
シャンクスはつっけんどんに応じ、他の面々もレッド・フォース号のタラップを登っていった。
「あああああああああああああ」
簀巻きにされたまま出港していくレッド・フォース号を見送り、コヨミは慨嘆をこぼす。
「大丈夫かい、お嬢ちゃん」と街の人間が縄を解こうと近づいてきたが、
「はい! 大丈夫ですっ!」
コヨミはするりと自身をぐるぐる巻きにしていたロープをあっさり解く。
「記者たるもの、拘束から自力脱出できて当たり前ですからっ!」
「そうなのか。記者ってすげーなぁ」純朴な街の人間は素直に信じた。
「赤髪海賊団への突撃取材は失敗っ! となれば次に行きますっ!」
コヨミはグッと拳を作り、目をランランと輝かせる。
「目指すはエレジアっ!!」
Tips
マカク
オリキャラ。元ネタは『銃夢』無印に登場するサイボーグの魔角。
元ネタでは他者(サイボーグ)のボディを乗っ取る特異なサイボーグだった。
元ネタの過去は悲惨過ぎて草も生えない。
ヒルヒルの実
オリジナル悪魔の実。
上述の魔角の特異性を再現するために捻りだした。
ウタ
苦悩する16歳。野蛮人に叫ばされる。
ベアトリーゼ
苦悩する思春期少女に脳筋的対処療法を施す。
ビンクスの酒
原作に登場する重要な劇判曲。
コヨミ
元ネタは銃夢に登場する女の子。
本作では名前と記者という設定以外ほぼオリキャラ状態。
原作ファンの方ごめんなさい。