彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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大変お待たせしました。

茶柱五徳乃夢さん、末蔵 薄荷さん、トリアーエズBRT2さん、佐藤東沙さん、NoSTRa!さん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。

Tipsに追記。本編に変更はありません(6/28)。


66:アフター・アラワサゴ

 蛮姫のアラワサゴ島襲撃から二日後。

 オイコット王国の港に負傷兵を満載した病院船が入港し、傷病兵が次々と運び出され、空き倉庫を利用して作られた負傷兵用の臨時収容施設へ移されていく。

 

「あれ? ここの女性兵士はどこ行った?」

「こっちのベッドにいたカール頭のオヤジは?」

 病院船内で衛生兵達が空になったベッドを前に困惑している頃、カール髪の中年男と水色髪の美少女が同港町の質屋を訪ねていた。

 

 2人はいくつかの宝石を換金後、その足でいくつかの服屋を巡り、カール髪の中年男は学者先生に、水色髪の美少女は助手の学生に化けた。

 

 ギンギラギンの太陽が海面を照らす正午。学者先生と美少女助手が飲食店のテーブル席に腰を下ろす。

 料理と飲み物を注文し、学者先生に扮したイガラムは大柄な背中を椅子に預ける。

「……なんとか上手くいきそうですな」

 

「ええ。悪い魔女さんの言う通りにね」

 美少女助手に変装したネフェルタリ・ビビはホッと息を吐く。

 

 アラバスタ王国の王女と護衛隊長の2人は、アラワサゴ島のオイコット王国軍拠点へ潜入するための変装を利用し、負傷兵としてオイコット本国へ移送される形で同島を脱出。オイコットに到着後、密やかに病院船から脱走。現在に至る。

 

 全ては悪い魔女――ベアトリーゼのアイデアと援助だった。謎の爆発による混乱と錯綜が無ければ、身元の精査で露見していただろう。博奕の要素が多分にあったが……無事に進みそうだ。

 

「彼女はなぜこれほど我々に、いや、ビビ様に協力的なのか……何か裏があるのか……」

 イガラムが懸念を披露する。相手は高額賞金首のお尋ね者。常識的な疑念と言えよう。

 

「かもね。でも、今の私達は彼女を頼るしかないわ」

 ビビは胸元に下げた首飾りを弄りながら、どこか嬉しそうに応じる。

 

 イガラムが抱いた疑念はあの日、瓦礫の中でビビがベアトリーゼにぶつけた疑問だった。

 手を差し伸べるベアトリーゼに『どうして』と。

 

 ベアトリーゼは即答した。微苦笑交じりに。

 ――僭越ながら、私は貴女の友を自認しておりますので。それにまあ……お詫びも込めて。

 お詫びが何を意味しているのかは分からなかったけれど、アラワサゴ島を無事に脱出できたことはありがたい限り。

 

「グランドラインへ帰還する船も用意すると言っていたわ……今は待ちましょう」

 ベアトリーゼの言葉をまったく疑っていないビビに、イガラムは危うさを覚えるも、確かに今は待つ以外の術がない。

 

 ゆっくりと深呼吸し、イガラムは話の水先を変える。

「此度の作戦は完全に失敗です。ミスター・7は戦死。ミス・ファーザーズデーは消息不明。ミリオンズは我ら二人を除いて全滅。帰還しても任務失敗の咎で処罰されるやもしれませんぞ」

 

「だとしても、戻らないという選択肢はないわ。潜入を続けられなくなるなら、違う方法を取るだけよ」

 ビビの意思は揺るがない。いや、あの小島で陰惨な戦争を体験し、一層強くなっていた。悪く言えば、強迫観念的。トラウマ的反応の一種と言っても良いだろう。

「とにかく、まずはグランドラインへ戻らないと。全てはそれからよ」

「……ですな」と護衛隊長は王女へ首肯した。

 

 料理と飲み物が卓に並べられたところで、店の表から喝采と歓声が上がり、若者が店に駆け込んできて叫ぶ。

「戦争が終わったぞっ! 勝ったんだっ!!」

 店内もまた歓喜に爆発した。

 

 客達が祝杯を上げて国歌を大合唱する中、ビビとイガラムはグラスを手に取り、

「全ての斃れた者達に」

「献杯」

 ビビの音頭にイガラムが応じ、2人はグラスを傾けた。

 

     〇

 

 戦勝報告に本国が沸き立つ頃、高地『フラムト』の頂上でオイコットの旗がはためいていた。

 実のところ、戦い自体は『謎の爆発』で解放軍司令部が完全壊滅した7日目に終わりを迎えていたが、オイコット王国軍の司令部も大きな被害を負っていたため、立て直しと後始末に時間を食った形だ。

 

 予想されていた解放軍兵士の捕虜に対する処刑――虐殺は起きていない。『謎の爆発』で毒気が抜けたのか、オイコット軍の兵士達は捕虜を常識的に扱っている。

 

 アラワサゴ島の西岸に新しく生まれた円形状の入り江。

「ヒッデェな」

 入り江の周囲を見回しながらゾロが呟く。

 

 ゾロは全身のあちこちに包帯が巻かれ、モモンガ女に折られた左腕をギプスで固定している。腰には和道一文字と無銘が一本。三刀流を名乗るには一本足りない。

 

 ゾロのぼやき通り、入り江の周辺は植生も生態系も破壊し尽くされている。焼け残った木々の幹が墓標のように佇み、水際には死んだ魚が大量に折り重なって腐敗臭を放っていた。解放軍の司令部があった辺りでは捕虜による戦場掃除が行われ、死体の処分と物資の回収が進められている。

 

 そして、軍の工兵達が入り江を調査していた。

 ゾロは仏頂面を浮かべながら屈みこみ、地面を突く。凍結した氷よりも滑らかで硬い。ガラス化現象だ。

 あのモモンガ女、本物の化け物か何か? 

 

「腕の具合はどうだね? 今からでも病院船に乗るか?」

 オイコット軍の将校がゾロに声を掛けてきた。一回りほど年上だろう将校は疲れ顔で、懐から煙草を取り出し、ゾロにも一本勧める。が、ゾロは首を横に振った。

「飯食ってりゃそのうち治る。それより、あのモモンガ女の行方は?」

 

 モモンガ女? 将校は小首を傾げつつ煙草をくわえ、美味そうに紫煙を吐く。

「分からん。我が軍の拠点を痛めつけた後、海に消えた。海軍も行方を追えなかったらしい。おそらく……悪魔の実の能力者だったのだろうな。能力者の中には桁外れの化け物もいると聞く。あの女はその類だろう。何が目的だったのか……まあ、結果として戦争は終わったが」

 

 将校はちらりとゾロを窺う。

「勲章授与も辞退したそうだな。やはり我が軍に仕官する気は無いかね?」

 

 ゾロは小さく肩を竦めて「高く買ってくれるのはありがてェが、宮仕えは性に合わねェ」

「それは残念だ」将校は紫煙を燻らせ「これからどうするのかね?」

 

「これまでと同じだ。旅を続けるさ。でもまあ」

 入り江を眺めながら即答し、ゾロはギプスで固めた左腕を撫でる。

 故郷を飛び出して以来、文字通り一蹴されたことは初めてだった。まったくもって腹立たしいし、悔しい。

 同時に、とんでもない強者の存在に心が躍っていた。

 

 あのモモンガ女、俺の居合斬りをあっさり払いのけやがった。

 もっと強くならなきゃならねェ。もっと体を鍛えて、もっと技を練らねェと。

 ゾロは愛刀和道一文字の柄に右手を添え、入り江の先に広がる海を見つめた。

「とりあえずは修行だな」

 

     〇

 

 アラワサゴ島紛争の終結が宣言された翌朝。

 ベアトリーゼはだらしない格好でぼりぼりと腹を掻いていた。

 ヨレヨレのスポーツブラとショーツ。ボロっちいサンダル。元々癖の強い髪は寝癖が加わって鳥の巣みたいだ。

 

 そんな恰好で安っぽい木造椅子に腰かけ、ベアトリーゼは長い脚を机に乗せて電伝虫の相手をしている。

「ちょっと張り切り過ぎたことは認めるよ」

 

『そうね。小規模とはいえ、島の海岸線を変えるほどだもの。さぞかし張り切ったんでしょうね。おかげで方々が大騒ぎしてるわ』

 電伝虫が優艶な声で皮肉る。諜報員にして歓楽街の女王は御機嫌斜めらしい。

『それに……なにやらまた“面倒事”を増やしたみたいだけれど』

 

 若作りババアめ。手が長いな。ベアトリーゼは内心で悪態を吐きつつ、しれっと嘯く。

「なんのことかしらん」

 

『まぁ良いわ。配達を完遂してくれる分には目を瞑ります』

「そりゃどうも」

 ベアトリーゼは小さく欠伸をこぼし、引き締まった腹を掻きながら続ける。

「それで配達先は?」

 

『フラウス王国。港で引取人が出迎えるわ』

「承りました、マダム。リボンを付けてお届けします」

 演技がかった調子で応じ、ベアトリーゼは通話を切った。鳥の巣状態の長髪を弄りつつ、襲撃時のことを振り返る。

 

 アラワサゴ島を強襲し、海岸線と人間を“ちょっと”吹き飛ばした後、オイコット軍の拠点で超重要人物(HVP)2名を発見。ベアトリーゼは保護を試みるも2名を連れての脱出が困難だったため、2名に『手札』を渡して島から撤収。ナミと合流してオウィ島へ戻っていた。

 

『手札』が上手くいったなら、HVP2名は“オイコット軍の”負傷兵に化け、オイコット本国に後送されているだろう。ドクトル・リベットをフラウス王国へ配達したら、トンボ返りでオイコットの2名がグランドラインへ帰還するお手伝いをせねば。

 何と言ってもビビ様は大恩人。万難を排してお帰り頂く。

 

 それにしても……。ベアトリーゼは大きく鼻息をついた。

「ナミちゃん、ビビ様に加えてゾロまで居たとは……分からなかった。この私の見聞色の覇気をもってしても」

 

 オウィ島に帰還後、ニュース・クーの新聞に目を通してビックリ。まさかあの島に麦わら一味の重要人物ゾロがいたとは。

 情報は常に最新のものを手に入れなきゃあかんね。

 

 うっかりぶっ殺しかけたことを知った時は思わず白目を剥き、口から魂が抜けかけてしまうほど驚愕したものだ(その様を間近で見ていたナミは、ベアトリーゼに奇癖が有るのではないかと疑った)。

 

「東の海に来てから予想外のことばっかだなぁ……原作開始まであと一年半くらい。どうなることやら」

 ロビンと出会う前――故郷から海に飛び出したばかりの頃は原作ブレイク上等くらいに思っていたけれど、今は心から原作通りに進んで欲しい。このクソッタレな世界が若き海賊王によってひっくり返される様を見届けたい。

 

 と、部屋に近づいてくる人の気配をキャッチ。

 身長体重と歩幅と歩調。ナミだ。

 

 ノック無しでドアが開けられ、蜜柑色のショートヘア娘が姿を見せる。今日も今日とて可憐なナミちゃんはベアトリーゼの格好に眉を寄せた。

「女を棄ててるわね」

 

 5つ以上年下の小娘から辛辣に評され、ベアトリーゼはぼさぼさの髪を指で梳く。

「御指摘が耳に痛い。スーパートビウオライダーは船よりも速いけど、積載荷物が限られる。“余計な荷物”もあるから余計にね。おかげで替えの服も下着もこのザマさ」

 

「お洒落とは無縁ってわけね」

 ナミは小さく鼻息をつき、机に小癪なお尻を乗せて電伝虫をちらり。

「あんたの“依頼人”と連絡は取れたの?」

 

 ベアトリーゼはゆっくりと立ち上がり、しなやかな長身を伸ばして悩ましげな声をこぼす。

「フラウス王国に“荷物”を配達したら、オイコットへ向かう」

 

「……オイコット? どういうこと?」とナミが怪訝そうに眉根を寄せた。

「急ぎの別件が出来た。悪いけど、優先順位の問題でこの島で保護した女子供は後回しだ」

「後回しって……別件って何よ」

 ナミの愛らしい顔つきが不快そうに歪み、ベアトリーゼは宥めるように話を続ける。

「言葉が悪かったね。別に子供達を放りだすわけじゃないから安心して良い。場合によっては信用できる預け先が見つかるかもしれない」

 

「待って。話が見えない。あんた、この前は信頼できる相手はいないって言ってたじゃない」

「事情が変わったんだよ。今、極めて信用性の高い人物が東の海に居る。その人に協力することで保護した女子供に健全な保護環境を与えられる可能性がある」

 ベアトリーゼはアラワサゴ島で遭遇した王女と護衛隊長を脳裏に浮かべる。2人の帰還に協力すれば、女子供をアラバスタ王国で保護できるだろう。内戦は控えているけれど、この世界で数少ない仁君が治める国だし、国の民度も桁違いに高い。

 ココヤシ村がダメということもないが……アラバスタ王女殿下の裏書き付きで保護される方が安心ではなかろうか。

 

「……信用して良いの?」ナミは詐欺師を見るような目を向けてくる。

「私だって保護しておいて放りだすような真似はしたくないよ。気分が良くないからね」

 アンニュイ顔に冷ややかな薄笑いを浮かべ、ベアトリーゼは机に腰かけているナミの隣へ座った。

「さて、ナミちゃんに持ち掛けられた提案だけど」

 

 瞬間、ナミが可憐な顔と華奢な体を強張らせる。その一方で、橙色の瞳の奥で強烈な感情が業火のように燃え盛っていた。殺し屋(ベアトリーゼ)を用いて仇敵(アーロン)を消す、という決意は固いらしい。

 

 ベアトリーゼは物憂げ顔で言葉を続けた。

「一緒に鉄火場を潜った“戦友”として、正直に明かそう。私とドクトルはかなりヤバい連中に追われている。グランドラインからこの海まで追ってきそうな奴らで、状況次第ではドンパチ沙汰になるかもしれない。海上、フラウス、オイコット、もしくはナミちゃんの故郷でね」

 

「そんな大事なことを今さら明かすの?」

 不審と不快に綺麗な顔を歪めるオレンジ髪の少女に、ベアトリーゼは小さく肩を竦め、

「誠意だよ。黙っていても良かったけど、土壇場でやっぱ無しって言ったら怒るでしょ?」

「絞め殺してやるわ」蛮姫を睨み据える橙色の瞳はマジだ。

 さもありなん、と気まずそうに髪を弄る。

「言っておくけれど、私を的にする以上、向こうはそれ相応の腕利きを送り込んでくるだろうし、私も周りを気にしていられないかも」

 

「……巻き添えを出すってこと?」

 ベアトリーゼは不安そうなナミへ顔を近づけ、魔女のように犬歯の先を覗かせた。

「人を呪わば穴二つ。リスクフリーの陰謀なんて無いよ」

 

「そんなこと、言われなくたって分かってる。私だって修羅場をくぐってきたわ」

 負けん気を露わにし、16歳の少女は蛮姫を押し退ける。きゅっと眉目を吊り上げた。

「だけど、私の大事な人達を犠牲にしたら、ただじゃ置かない。あんたがどんなに強くたって関係ない。あんたにしてみたら私なんて鼠みたいなもんだろうけど、鼠だって噛みつく牙を持ってるわ」

 

 本気で睨みつけてくるナミに、ベアトリーゼはロビンと出会った時を思い出し、郷愁の微笑をこぼす。

 

「バカにしてるの?」

 ナミが美貌に怒りを混ぜるも、ベアトリーゼは首を横に振る。

「親友のことを思い出しただけ。初めて出会った時、ナミちゃんのように睨まれた」

 

「……それって、『悪魔の子』ニコ・ロビンのこと?」

 ナミは腕組みしながら尋ねる。怒気は収まっていなかったが、興味が勝った。

 

 なんせ、ナミは新聞で『血浴』と相棒の『悪魔の子』の“活躍”を追いかけていた。ベアトリーゼがグランドラインで逮捕され、海難事故で死亡したと報道された時は少なからずショックを受け、生存が報じられた時に嬉しさを覚えたものだ。本人は決して認めないだろうけれど……一種のファン心理に近いかもしれない。

「何年か前、あんたが逮捕された時にコンビを解消したって新聞で読んだわ」

 

「コンビ解消をしたわけじゃないよ。私が海軍に捕まって別れただけ。まぁ、いろいろあって再会できないまま数年経っちゃったけどね。そのうち会えるさ」

 ベアトリーゼは机から降り、独りごちるように呟く。

「生きてさえいれば、ね」

 

     〇

 

『血浴』のベアトリーゼがアラワサゴ島紛争に介入したという情報は、関係者の想像以上に素早く伝播した。

 海軍、政府情報機関、報道、有力海賊団、それに、“抗う者達”にも。

 

 

 その船は全長130メートル越えでマストが5本も立っており、帆はなんと42枚だ。乗員乗客併せて300人超え。ロイヤル・クリッパー型客船は優美な姿に相応しく優雅に水面を進んでいく。

 時たま、愚か者達がこの美麗な帆船を襲うこともあるが、大抵の場合は警備にぶちのめされて処刑ショーの出演者になり、乗客を楽しませて人生を終える。

 

 特等客室(デラックス・スイート)にて。

「報道の通りです。東の海で確認しました。ヴィンデ・シリーズの女が護衛についています。――しかし、それでは――……はい。かしこまりました。そのように対処します」

 そのしっとりとした女性の声は若い令嬢のようであり、老いた淑女のようであり。

 

 フラウ・ビマ。年の頃は三十路半ば頃か。

 結い上げられた濡れ羽色の長髪。優しげな顔立ち。気弱そうな目元。程よい肉付きの肢体を濃紺色の和風ワンピースで包み、陽光を避けるサマーストールをベールのように被っていた。

 

 美女と評するほどの麗貌ではない。が、ほどほどに整った容姿、柔弱な雰囲気と成熟した艶気といったものは、世の男達のリアル――少し強気に押せば、その体を好きに貪れそう―な欲望を刺激する。男を引き付ける優艶な姥桜、そういうオンナだ。

 

 そして、フラウ・ビマはその事実を “正しく自覚して”いる。

 安淫売のように明け透けなセックスアピールをするのではなく、ちょっとした所作や仕草でオンナを感じさせ、メスの気配を漂わせ、精妙に計算された大人の艶気を演出している。

 

 もっとも、それらはフラウ・ビマの本質ではない。

 彼女の本質、それは漆黒の瞳に宿っている。

 諦念と失望を超克した絶対零度の深淵。

 

 白電伝虫の通信を切り、フラウ・ビマは香り豊かな紅茶を口に運ぶ。その様は手弱女の容貌と相俟って一枚絵のように美しい。それだけに闇深い瞳の恐ろしさが際立つ。

 

 真っ黒な瞳で船窓の外に広がる海原をしばし眺めつつ、フラウ・ビマは思考を巡らせる。緻密に組み上げていく。

 ヴィンデ・シリーズの娘と伍して戦える駒。東の海にそんな者は皆無だし、グランドラインから素早く送り込むことも難しい。

 

 ――ああ。丁度良い連中がいたわね。

 彼らなら情報を流せば必ず食いつく。

 マリージョア内の情報は喉から手が出るほど欲しいだろうから。なにせ彼らは“本気”で世界政府を倒そうとしている。

 あの赤い大陸の頂に何が潜んでいるかも知らぬまま。

 

 フラウ・ビマは漆黒の双眸を悪意的に細める。

 白電伝虫の通話器を手に取り、番号を入力。通話口に出た相手へ静かに語り掛ける。導火線に火を点すように。

「革命軍に情報を流しなさい。天竜人の飼い犬だったドクトル・リベットが東の海に居る、と」

 




Tips

ビビ
イガラム
オイコット兵の変装を利用して島から脱出に成功。オイコット王国にて潜伏。

ゾロ
腕をへし折られたけど、飯食って酒飲んで鍛錬してれば治っちゃう。
頂を目指し、もっと強くなろうと誓う。

ナミ
いまいちベアトリーゼを信用しきれない。

ベアトリーゼ
原作の見届け人を気取っておいて、原作破壊まっしぐら。

フラウ・ビマ(ビマ婦人の意)
オリキャラ。”抗う者達”の一員。

元ネタは銃夢:火星戦記に登場するキョーコ・ビマ。
世界に絶望していた薄幸の日系女性。
とある陰謀のために幼いガリィの偽母を演じさせられ、悲劇的な最期を迎える。
ただし、彼女がガリィに注いだ愛情は本物だった。
木城ユキト氏が描く平凡な容貌が妙にエロい(唐突な感想)。
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