彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
「……ぅ」
サボは目を覚ます。
知らない天井。規則的な揺れ。潮騒と木の軋み音。潮とカビと酒の臭い――船の臭い。見知らぬ小汚い部屋だ。士官室らしい。隣のベッドでは、傷の手当てを受けたコアラが穏やかな寝息を立てていた。
相棒の無事に安堵しつつ、サボは身を起こそうとする。も、体中に鋭い痛みが走り、思わず苦悶の呻きを漏らす。
そして、否応なく思い出す。
血浴のベアトリーゼに敗北したことを。しかも、手も足も出ず一方的に小突き回されて。
クソ……俺達は負けたのか……
「ここは……?」
痛みを堪えて意識を集中し、サボは見聞色の覇気を巡らせ――このしょぼくれた船に若い女性達と幼い子供達しか乗っていないことを把握し、困惑する。
「? ? ? どういうことだ?」
がちゃり、とドアが開き、サボはギョッとして身構えた。ドアが開かれるまで、見聞色の覇気でも捉えられなかったことに驚きを禁じ得ない。
ドア口に長身のアンニュイ美女――血浴のベアトリーゼが姿を見せ、物憂げな目線を向けてくる。
「起きたか」
ベアトリーゼが警戒心全開の子猫みたいなサボへ、右手に持っていたバケツから小瓶を抜き取って放る。未開封のシードルだった。
シードルを受け取りつつ、サボは警戒心全開でベアトリーゼを見据えた。
「俺達をどうする気だ?」
ベアトリーゼはベッド傍の椅子に腰かけ、自分もバケツからシードルを取り出し、蓋を開けて一口呷る。
「君らを連れてきたのはクソ海軍に手柄を上げさせたくないからであって、君ら自体に用はない」
警戒心全開で睨んでくるサボへ応じつつ、ポケットから子電伝虫を取り出して机に置いた。
「というかね、迎えも呼んでさっさと帰って欲しいんだよ。君らの扱いはヒッジョーに面倒臭いからさ」
「……あんたが何を考えてるのか、さっぱり分からない」警戒半分困惑半分のサボ。
「佳い女は謎めいているものよ、サボくん」
ベアトリーゼは薄く微笑み、シードルの小瓶を傾けた。小麦肌の喉を艶めかしくうねらせる。
サボはガキ扱いされて強く苛立ちつつも、小瓶の蓋を開けて口へ運ぶ。ぬるい発泡酒は酷い味だったが、喉が渇いていたのか、一気に飲み干してしまう。こふ、と大きく息を吐く。
大きく深呼吸し、サボは渋面をこさえて。
「これは好奇心から聞くんだが……どうしてこの船は女子供ばかり乗せてるんだ?」
「先のアラワサゴ島紛争の巻き添え。成り行きで生き残りを保護したの」
「彼女達をどうする気だ?」とサボが問いを重ねれば。
「安全な場所に連れていく。ああ、君らに預ける気は無いよ。戦争の巻き添えで家族を亡くしたガキ共や、親兄弟を目の前で殺された挙句に強姦された女達を革命の尖兵にする、なんてのは私の趣味に合わない」
ベアトリーゼの語った内容に、サボは言葉もない。大きく、とても大きく深呼吸し、少しばかりの警戒心を残したまま純粋な疑問を投げかける。
「……あんたは
小瓶を傾け、ベアトリーゼはしなやかな身体を椅子の背もたれに預けた。
「世界政府と海軍は死ぬほど嫌いだし、この世界の人間社会はクソだと思ってる。だけど、君らが起こそうとしているパラダイムシフトにも興味はない。この世界の在り方が変わろうと変わるまいとどうでも良い。私はただ適応し、立ち位置を見つけて、“大きな物語”を眺めたいだけ」
「? 大きな物語?」
「学びと教養も身につけろ、参謀総長閣下。それじゃ革命成就後が大変だぞ」とベアトリーゼはからかうように微笑む。
煙に巻かれ、サボは苦虫を100匹くらい噛み潰したような顔を作った。
「ともかくさっさと帰れ」ベアトリーゼは腰を上げ「それと、迎えが来るまでこの船の女子供と関わるな。一般人にとって、革命軍との関わりなんて面倒事にしかならない」
「まるで藪蚊か何かの扱いだな……」
大きく眉を下げるサボを残し、ベアトリーゼは部屋を出ていった。
〇
「で、あいつらは何者なの?」
士官室の外で、ナミが生意気な胸を抱えるように腕を組んで仁王立ちしていた。
「知らない方が良いよ。私とは別タイプの超お尋ね者だから」
「……超お尋ね者」
さらっと告げられた不穏極まる言葉に、ナミの可憐な顔立ちが引きつった。
「そ。世界政府が居場所を知ったら、即座に海軍か殺し屋を送り込んでくるレベルの超お尋ね者」
ベアトリーゼがしれっと告げれば、ナミはクソデカ溜息をこぼし、頭痛を堪えるようにこめかみを押さえた。
「それで……私達のプランに変更は?」
「ないよ。オイコットへ向かい、伝手と接触して子供らを委ねる。多分、この船を手放すことになるから、私とナミちゃんはトビウオでココヤシ村へ行き、魚人海賊団をぶっ殺す」
「ちょい待ち」ナミは眉間に皺を作って「この船を手放すの?」
「ああ、私にはもう不要だからね」
ベアトリーゼは歩き出し、隣を歩くナミを余所に溜息をこぼす。
「まったく、シナリオが狂いまくりだよ」
「シナリオ?」ナミが片眉を上げ「どういう意味よ、それ。何かよからぬことを企ててるんじゃないでしょうね。私をハメる気なら――」
「イジメられた子猫みたいに疑り深いな。まあ、そこが可愛いところだけど」
ベアトリーゼは微苦笑してナミの頭を撫でる。も、
「ガキ扱いしないでよっ」
ナミは仏頂面を浮かべてベアトリーゼの手を払いのけ、真摯な目つきで訴える。
「ちゃんと説明して」
「私には私の事情がある。ナミちゃんを拾ったことに始まり、アラワサゴ島、フラウス王国……シナリオにない出来事が多すぎる。“大きな物語”にどんな影響が及ぶことやら」
「何言ってんだかさっぱり分からないんだけどっ! 私、ちゃんと説明しろっつったわよねっ!?」
泥棒猫が蛮姫の左腕を掴み、食って掛かる。も、蛮姫は右人差し指を唇に添え、ニッと犬歯を剥く。
「内緒」
同性のナミでも背筋がゾクゾクするほど蠱惑的な笑みを向けられるも、ナミはイィィラッとしてベアトリーゼの尻を引っぱたいた。
「あいた!」
〇
まあ、ナミちゃんをはぐらかしたものの……うん。現状は控えめに言っても原作破綻が確定ルートに入ってますな。あーあ、どーしましょ。どーしましょ。麦わら一味が結成されなくなったら、どーしましょ。
ベアトリーゼはデッキチェアに腰かけ、ぼけらっと薄暮の海を眺めていた。
分水嶺はアーロン一味だよな。連中を潰したらもうリカバリーは利かねーだろ。
まっずいよなあ……ナミちゃんがルフィに心から信頼を寄せる超重要イベントだもんなぁ……最悪、麦わら一味入りしない可能性だってあり得る。それは避けたい。
となると――アーロン潰しで手を抜き、野郎を逃がすしかない。でもなぁ、手抜きがバレてナミちゃんに見限られたくねェしなあ。
「どーしましょ。どーしましょ。あー……懐かしのゲテモノ料理食いたい。サバクドクトカゲのたまひも、ミドリナメクジシチュー……」
頬杖を突き、故郷の味を思い出していたベアトリーゼは苦々しい顔で鼻息をつく。
「いや、別に美味いもんでもなかったな。食いたくねェわ―――と、……来たか」
ベアトリーゼが腰を上げて左舷に向かえば、薄闇に紛れて外洋航海用ヨットが近づいてきた。
船首には空手着姿の魚人男性が仁王立ちしている。
なんで空手着? ベアトリーゼが小首を傾げているところへ、船楼の出入り口が開き、サボとコアラが出てくる。見聞色の覇気で迎えの到着を捉えたのだろう。
と、ナミもしれっと姿を現す。流石は泥棒猫ちゃん。好奇心旺盛だ。
「一応礼を言っておく」「手当てしてくれて、ありがとうございました」
あからさまに不承不承といった体のサボと、どこか気後れ気味のコアラ。
「ま、貸しにしとくよ」
ベアトリーゼはひらひらと手を振り、顎先で近寄ってくるヨットを示す。
「あの空手着の魚人親父が迎え……で合ってる?」
「はい」コアラは頷いて「私達の仲間のハックです」
「……魚人」とナミが眉間に深い皺を刻む。
サボとコアラがナミの様子に気付く。橙色の瞳に宿る強い感情も。種族差別的な嫌悪ではない。それは革命軍の一部兵士達が天竜人や世界政府に向ける感情に近い。
個人的体験に基づく恐怖と憎悪だ。
「魚人と、何かあったのか?」
「……あんたには関係ない」
サボの問いかけに、ナミは険しい目つきのまま顔を背けた。
「身柄引き渡しの時に喧嘩はやめろ。要らぬ誤解を招いて余計なトラブルを招く」
ベアトリーゼはアンニュイ顔で口を出し、ナミへ告げる。
「ナミちゃん。中に戻って子供達の様子を見ておいてくれる? “お願い”」
不満アリアリに鼻を鳴らし、ナミは踵を返して船内へ戻っていった。まあ、船楼出入り口傍に控えて立ち聞きする気満々だろうが。
サボがナミの背を見送ってから、ベアトリーゼに火傷顔を向けた。
「あの子の事情を知ってるのか?」
しかし、ベアトリーゼは答えずに小さく肩を竦めるだけ。
ヨットが近づいてきて船首に立っていたハックが跳躍。シュタッと甲板に降り立つ。
「サボ、コアラ。2人とも無事で何よりだ」
エビスダイの魚人ハックは若人達の無事な姿に厳めしい顔を和らげ、
「「ハック!」」
子犬のように駆けよってきた少年少女の頭頂部へ、ごちんと拳骨を落とした。
「いてぇっ!?」「いたぃっ!?」
ハックは頭頂部を押えてうずくまるサボとコアラを見下ろし、
「無茶はするなと釘を刺しておいただろうがっ! 反省せいっ!」
若者2人に雷を落とした後、ベアトリーゼに一礼した。
「2人の命を取らずにくれたこと、感謝する」
「ふむ」
ベアトリーゼは夜色の髪を弄りながらプルプルの実の力を密やかに展開。この場のやり取りが盗み聞き中のナミに届かないよう大気中の音の伝播率を細工してから、革命軍の三人へ問う。
「今、この東の海に魚人の海賊団が居ることは把握してる?」
「いや……儂は長らくグランドラインに居ったから、東の海の事情には明るくない」
ハックは太い腕を組んで大きく唸った。傍らでコアラが顔を曇らせている。
「魚人の海賊団か……首領か幹部の名は分かるか。知己かも知れぬ」
「知り合いだろうな」ベアトリーゼは冷笑し「首領の名はアーロン。幹部も元タイヨウの海賊団のメンバーだ。今は東の海の片田舎を恐怖支配し、王国ごっこをしてる」
「――なんと」ハックは顔を強張らせ、コアラが『そんな』と思わず口元を覆う。
「私はとある依頼を受けてね。アーロンとその一味をぶっ潰しに行く。まあ、皆殺しにするつもり」
さらっと告げられた内容に、
「ま、待ってっ!」
かつて天竜人の奴隷だったところをタイヨウの海賊団――特に船長のフィッシャー・タイガーに救われたコアラは、真っ青な顔でベアトリーゼに詰め寄る。
「タイガーさんの仲間だった人達がそんなことするわけありません! 何かの間違いです!」
「勘違いするな」
ベアトリーゼはぴしゃりと言い放ち、冷厳な目つきで革命軍の三人を順に見回す。
「黙ってアーロン一味を始末しても良かったところを、善意から通告してやっただけだ」
「そんな――」
「落ち着け、コアラ。頭を冷やせ」
ハックは取り乱し気味のコアラを制し、瞑目して大きく深呼吸した。
「我が友ジンベエが王下七武海入りする条件として、獄に囚われていたアーロンを釈放させたことは儂も知っておる。しかし、まさか東の海に移り、無辜の民を虐げておったとは……ジンベエの恩情に仇で返しおって、あの馬鹿者めが」
苦悩顔のコアラとハックを横目にし、サボがベアトリーゼに向き直る。
「頼める立場じゃないことは承知だ。でも、そのアーロン一味を殺さずに済ませてもらえないか? もちろん見逃せという意味じゃない。ぶちのめして海軍へ引き渡す体で良いんだ」
「二つ条件を飲むなら、その頼みを聞いてあげる」
ベアトリーゼは暗紫色の双眸を鋭く細め、
「一つ。この件の邪魔をするな。嘴を突っ込んで来たら、今度こそ殺す。そしてもう一つ」
囁くように、だが、三人の耳朶を確実に打つように告げる。
「お前達にドクトル・リベットのことを
〇
すっかり日が沈んだ夜の海。女妖を乗せた船が水平線の陰に隠れていく。
革命軍のヨットの客室で、コアラは膝を抱えて俯いていた。サボがそんなコアラの隣に腰かけ、無言のまま慰めるように背中を撫でている。
「タイヨウの海賊団の皆は、天竜人の奴隷にされて心が壊れてた私に、本当に良くしてくれたの。私がまた心から笑えるようにしてくれて、故郷へ、お母さんの許へ送ってくれた。あの人達が何の罪もない人達を傷つけ、虐げてるなんて……私、信じられないよ」
ハックが苦渋に満ちた顔つきで呻くように言葉を紡ぐ。
「儂はタイヨウの海賊団に加わっておらなかったから、詳しい事情や経緯を知らん。だが、タイガーの死後に解散し、アーロンが姿を消したことは事実だ。よもや東の海で悪行に走っておったとは思わんかったが……無いとは言い切れん」
2人の言葉を聞きつつ、サボは推理を巡らせていた。
ナミと呼ばれた蜜柑色の髪の少女。魚人のハックへ向けられた恐怖と憎悪の眼差し。おそらく、彼女が魚人海賊団アーロン一味の被害者だろう。あれほど濃密な敵意を発していたからには、よほどの目に遭わされたと見ていい。
ベアトリーゼが
いや、ベアトリーゼの“善意”にも何かしら理由があるのだろう。本命はアーロン一味の件ではなくネタ元の特定か。お尋ね者なら自分の足取りを把握している者を気に掛けてもおかしくないが……何か引っかかるな。
「ハック。本当にアーロン一味のこと、このまま放っておいて良いの?」
コアラは今にも泣きだしそうな顔を師に向ける。
「儂とて思うところはある。だが、これはアーロン自身が招いた応報だ。それに……革命軍に身を置く者として、儂はお前達二人を無事に連れ帰る義務がある。あの女と戦わせるわけにはいかん」
弟子に苦悩顔を返し、ハックは大きな嘆息をこぼした。
「一見で分かった。アレは危険すぎる。儂らの手には負えん」
「信じるしかない」サボはコアラの背を撫でながら、言い聞かせるように「ベアトリーゼが約束を守り、彼らを殺さないと」
〇
去っていく革命軍のヨットを見つめながら、ベアトリーゼは思案する。
ナミちゃんと革命軍2人の接触――情報のやり取りは最低限に遮断した。このイレギュラーはぎりぎりまでリカバリー出来た、はず。
次はビビ様の件だけど、これもやりようはある、はず。
でもってアーロン一味の始末も“仕込み”を図れば、原作チャートに近づけられる、はず。
原作と流れが変わることは、もう仕方ない。でも、『麦わらの一味』は何としても原作通りに結成させなくては。
彼らこそ、この“大きな物語”の中核に他ならないのだから。
ベアトリーゼが船内へ戻ろうと踵を返せば、ナミが船楼の出入り口に背を預け、細面に露骨なほど不信感を浮かべていた。
あー……それと、このワケアリ少女の相手をせねば。
「ナミちゃん。ちょっとお話しようか」
で。場所を船長室に移し――
優美な身体を背もたれに預け、脚線美の麗しい脚を机の上に置き、ベアトリーゼはグラスに指二本分注いだラムをグビグビと呷る。
机を挟んで向かいに座るナミは、両手でグラスを持ち、クピクピとラムを舐めていた。
「あいつらに随分と気を使ってたけど」ナミは猜疑の目を向け「そろそろ正体を教えなさいよ」
「革命軍って知ってる?」
「世界のあちこちで政府や国に叛旗を振ってる連中よね……あいつらがそうだったの?」
ナミが橙色の目をまん丸にし、心底嫌そうに美貌を歪める。
「なるほど、確かに超お尋ね者ね。深入りしたくないわ」
でしょ? とベアトリーゼは微苦笑をこぼす。
「私と関わりを持つだけでもリスキーなんだ。挙句に革命軍とつながりを疑われたら、故郷を解放しても司直に捕まって尋問、もしかしたら拷問されるよ」
「そんな厄介な連中を拾ってくんな」ナミは溜息と共にげんなり。
「まあ、煩わしい話はここまでにして、前向きな話をしようか」
ベアトリーゼはラムを飲み干し、グラスにお代わりをだぶだぶと注ぐ。
「故郷を取り戻したら、ナミちゃんはどうする? 何がしたい?」
「ココヤシ村を取り戻したら……」
ナミは両手で持つグラスへ目線を落とす。琥珀色の水面に映る自分を見つめながら、これまで想ってきた夢を思い返す。
いつか航海士として世界中の海を旅し、自分の目で見た“世界地図”を作る。
幼い頃、母の前で語った夢。母を殺されてからもずっと秘めてきた夢。
――ああ、そうか。
ナミは実感する。
ココヤシ村をアーロン一味から取り戻すということは、私の夢を取り戻すことなんだ。
酷く感傷的な思いがこみ上げ、ナミはグラスを口に運び、ぐいっと一息で飲み干す。酒精の熱で押さえ込まないと涙がこぼれてしまいそうだったから。
無言でグラスをベアトリーゼに差し出し、お代わりを要求。グラスへラムを注ぐベアトリーゼを見つめて、尋ねる。
「本当に、アーロン達を倒せるのよね?」
「五分かからねーよ」ベアトリーゼは即答し「ただまあ、海に逃げ込まれたらちょーっと不味いかな。悪魔の実の能力者は“海”に嫌われてるから」
「海に、嫌われてる?」
「拒絶と言っても良いかもしれない。どんな能力者でも海に身を浸けると脱力しちまう。これが能力の絶対的な弱点だ」
怪訝顔のナミにベアトリーゼが説明すると、ナミは怖い微笑を返してきた。
「じゃあ、あんたを殺す気なら、あの潜水服にこっそり穴を開けておけば良いわけだ」
「頼もしいね」ベアトリーゼは小さく肩を竦め「それで、私の質問の回答は?」
ナミは不敵に微笑み、唇の前に右手人差し指をかざす。
「内緒」
「これまでのお返しか」
くすくすと楽しげに喉を鳴らすベアトリーゼへ、ナミは表情を年相応に和らげた。
「ねえ、グランドラインの話をしてよ」
「そうだな……”マーケット”の話でもしようか」
船は静かにオイコット王国を目指して進んでいく。
Tips
ベアトリーゼ
原作改変は妥協するも、麦わら一味結成だけは原作通りにすべく悪あがきをする。
なお、ステューシーからの報酬『アラバスタ行きログポース』をまだ受け取っていないことに気づいていない模様。
ナミ
ベアトリーゼの小細工でフィッシャー・タイガーの活躍と悲劇、アーロンの慟哭を知らずしまい。それが彼女にとって良いことなのかどうかは分からない。
サボ
今回の作戦が失敗に終わった挙句、厄介な事情を知ってしまって頭が痛い。
コアラ
恩人の仲間が東の海で悪事を働いていることにショック。
ハック
革命軍期待の若者二人を迎えに来たら、曇らされてしまった人。
アーロン。
知らないところで命運を左右されている気の毒な鮫男。