彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、拾骨さん、NoSTRa!さん、かにしゅりんぷさん、mnskさん、凶禍さん、誤字報告ありがとうございます。


78:それぞれのお使いイベント

 東の海の、戦う男ガイモンの島で一夜を明かした麦わら小僧達は、ナミの提案でしっかりした船を手に入れるべく、最寄りのゲッコー諸島シロップ村を目指していく。

 

 そのシロップ村では、17歳になっても定職に就いてないウソップが、“いつものように”『海賊が来たぞぉおお!!』と大騒ぎしながら朝の村を駆け巡っていた。

 

      〇

 

 同じ頃。

 グランドライン前半“楽園”の朝の海を、スーパートビウオライダーがかっ飛んでいた。

 

 赤黒のヨシムラカラーに塗られたその化け物トビウオは、もはや生物と言って良いのか怪しい。

 流体力学的理由からボディは本来の姿より滑らかな流線型になっている。一方で、強力な人造筋肉をぎっちり搭載した体躯は非常にマッシブだ。

 人造の超強力な心臓と鰓は、長時間の超高負荷運動を可能にしていた。人造の強靭無比な筋肉と頑健かつしなやかな各部のヒレは、水を切り裂くように海中を疾駆させ、風を引き裂くように空中を疾走できる。

 

「気ン持ちイイイィィッ!!!」

 トビウオの体躯にしがみ付くように前傾姿勢で操縦するベアトリーゼは、その楽しさに知能指数を低下させていた。

 スーパートビウオライダーと御揃いの赤黒のタイトな潜水服を着こみ、多眼式の多機能潜水ヘルメットを被った姿は……何処か人型宇宙人っぽい。

 

 ベアトリーゼはフルカスタム・フルチューンド怪物トビウオのスパルタンな性能を楽しみながら、海をかっ飛んでいく。

 目指す先は目標(HVP)が最後に確認された町だ。電伝虫の念波誘導でナビゲーションしているため、ログポースは使わずに済んでいる。

 

 計基盤の脇に据えた海図を一瞥し、ベアトリーゼはぽつりと呟く。

「時期的にいつ、麦わら一味が結成されてもおかしくないからなぁ。さっさと片付けないと」

 

 ルフィの名前が表舞台に出てくるのは、アーロン編が終わってからだけど、そのアーロン編は私がぶっ潰しちまったし。

 まあ、アーロン編が無くても、ルフィなら東の海で何かしらして賞金が懸けられるはず。

 その手配書の公開がタイムリミットだな。

 

 原作の航海日程はかなりスピーディで、たしかルフィは故郷を離れてから10日前後でグランドラインに入り、海賊デビューして約一月で王下七武海のワニ公をぶっ倒している。

 私の存在と干渉で原作チャートがどう狂ったか定かじゃないし、手配書が公開された後はアラバスタで麦わら一味の到着を待ちたいところ。

 つまり――

 

「この仕事をぱぱっと片付けて、ちゃっちゃとアラバスタ行って、ロビンと再会するっ! でもって、麦わら一味が来るまでのんびりバカンスして、特等席でワニ公をぶっ倒す様を見物だっ! うっひょー、たっのしみィーっ!!」

 

 またぞろ獲らぬ狸のなんとやら。そういうところだぞ。

 

 ・

 

 ・・

 

 ・・・

 

 そうして、グランドラインの海を走り続け、ベアトリーゼは日が沈みかけた頃にHVPが最後に確認された港町へ到着した。

 

 小さな港町だ。奇怪(ビザール)極まる怪魚に乗った怪しい女が入港すれば、どうしたって衆目が集まる。

 

 ベアトリーゼは桟橋に上がってヘルメットを脱ぎ、野次馬達に交じる港関係者の代表らしき年長者へ、ベリー金貨を投げ渡す。

「停泊代だ。明日、島を発つ時にもう二枚金貨を払う。ただし、私のお魚ちゃんと荷物に何かあったら、お前らとお前らの家族を殺す。しっかり管理しろ」

 

 泣く子も黙るほどの冷たい殺気を分撒いて周囲に理解させた後、ベアトリーゼはヘルメットをトビウオライダーのメットホルダーに掛け、宿泊用バッグを下ろした。タイトな潜水服の上着部分をはだけさせ、袖部分を腰に巻き終えると、桟橋から街へ向かって歩き出す。

 

 好奇と不安の視線を浴びつつ、ベアトリーゼは肩に担いだバッグから、防水処理した写真を取り出した。

 モノクロ写真の中で微笑む、幸せそうな男女と幼い子供。

 

 改めてHVPの顔を確認し、ベアトリーゼは見聞色の覇気を展開。歩きながら目標の捜索追跡を開始する。

 ベアトリーゼは、見聞色の覇気を用いた捜索追跡に長けていた。それは、ロビン仕込みの調査技術や軍隊流の痕跡技術と併用することで、ほんのわずかに残された痕跡を科学捜査班のように見つけ出し……脳内で精密なイメージを再構築できる。

 

 今も、ベアトリーゼの脳ミソは見聞色の覇気が捉えた無数の痕跡と情報を元に、幾日か前の町の光景やHVPの動向を幻視させていた。

 

 多少ぼやけた幻視映像の中で、HVPがとある宿に入り、204号室に宿泊。数日間、宿に留まった後……2人の男と合流して港に停まっていた武装貨客船へ乗り、この町を出ていく。

 

 用心棒を雇ったか……。

 ベアトリーゼが見聞色の覇気を切って、幻視を終えようとしたところで。

 ――ん?

 HVPが島を離れた直後、胡乱な手合いが件の宿に侵入し、HVPが宿泊していた204号室を調べた後、自分達の船でこの島を離れていく様を幻視した。

 

「追手が掛かってるのか。面倒臭ェことになりそう」

 小さくぼやき、ベアトリーゼは『酔いどれ水夫』の口笛を吹きながら、宿へ向かって歩いていく。

 

      〇

 

 翌朝。

 シロップ村の海岸で、麦わら小僧達と黒猫海賊団が激戦を繰り広げている頃……。

 

 ベアトリーゼは港の管理事務所を訪ねていた。

「数日前に出港した貨客船の行き先を教えてくださいな」

 

 受付窓口の垢抜けない受付嬢の手元に100ベリー札とカランビットを置き、ベアトリーゼは怖い笑顔を浮かべる。

「どっちを選んでも良いよ」

 

 垢抜けない受付嬢は顔を青くしつつ、おずおずと100ベリー札を手に取ると、入出港の記録簿を開き、不安顔で言った。

「そ、その船はルルシア王国に向かいました」

 

「ルルシア」

 ベアトリーゼはバッグから取り出した高縮尺の海図を開き、位置を確認。思わず舌打ちする。

「……くっそ。昨日、通り過ぎた島かよ」

 

 不意に前世記憶が疼く。

 退屈なサブクエ。かったるいお使いイベント。●●にいって、◆◆に会って、▼▼を貰って、××をしてきて! 

 ベアトリーゼはテレビに映るレトロなドット絵の画面を幻視した。

 サマルトリアの王子:いやーさがしましたよ。

 

 ざ け ん な。

 

「助かったよ」

 アンニュイ顔を強張らせたベアトリーゼは、受付嬢へなおざりな礼を告げて管理事務所を出ると、まっすぐに桟橋へ向かう。

 この仕事、ひっじょーに鬱陶しいことになるかもしれない。

 もしも、原作のアラバスタ編へ間に合わなかったら……

 

 気づけば、ベアトリーゼは桟橋に停泊するトビウオライダーへ向かって駆け出していた。

 

      〇

 

 ベアトリーゼが血相を変えてルルシア王国へ向かった頃。

 東の海、シロップ村。

 麦わら小僧とその仲間達+シロップ村のウソップ“海賊団”により、ギタンギタンに打ち負かされた黒猫海賊団が、ケツに帆かけて逃げ出していく。

 

 先ほどまで戦場だった海岸の坂道で、ルフィ達は島から遠ざかる海賊船を眺めながら、戦闘後の休息を取っていた。

 

「あー、腹減った。肉食いてェよ、肉」

 黒猫海賊団元船長“百計”のクロと戦い、ルフィは体のあちこちを斬られていた。血を流し過ぎたためか、どこか気だるげだ。

 

「俺は酒が飲みてェな……喉が渇いた」

 坂の岩壁に背中を預け、ゾロがぼやく。

 ゾロは道化のバギーに刺された腹の創傷が治っていなかったが、ニャーバンブラザーズと称する黒猫海賊団の船番コンビをあっさり蹴散らしていた。

 

「肉とか酒とか、朝から胃もたれしそうなこと言ってるわね」

 ナミは抱えていた大きな麻袋の中身を広げ、あれこれと数え始めた。

 何気に、ナミもベアトリーゼ仕込みの棒術で、黒猫海賊団の雑魚を叩きのめしていたりする。出来る女ナミ。

 

「それは?」とゾロが問えば。

「あいつらの船から迷惑料をいただいてきたの」

 つまり、黒猫海賊団が貯め込んできた全財産だ。

 

「抜け目がねェな」とゾロが口端を上げる。

「頼もしいな」とルフィもニシシと笑う。

 

 ナミは奪ったオタカラの査定と勘定を済ませ、

「200万ベリーくらいね。シケてるわ」

 眉を大きく下げて難しい顔を作った。

「バギーから奪ったお金と合わせても、グランドラインを目指せるような船を買うには全然足りない……。当分は、あの短艇を使い回すことになりそう」

 

「グランドライン入りはまだまだ先か」

 ゾロは大の字で寝転がっているルフィへ問う。

「で? あいつは……()()()か?」

 

「ああ。()()()だ」

 ルフィは上半身を起こし、太陽のような笑顔を浮かべた。

「ゾロ。ナミ。あいつ、船に乗せるぞ」

 

 だろうなとゾロは口端を和らげ、でしょうねとナミは微苦笑をこぼす。

 

「でも、その前に」

 ルフィは立ち上がって2人へ言った。

「朝飯を食いに行こう!」

 

      〇

 

 ルフィ達が村の食堂で少し遅い朝食……というには大量の飯をかっ食らっている時。

 

 ウソップは自身の“海賊団”解散宣言をした後、自宅に戻ってきていた。

 腹に入りきらなくなるまで水を飲んだ後、救急箱を取り出し、黒猫海賊団との戦いで負った傷を手当てしていく。

 

 だけど。

 上手く軟膏を塗れない。上手く絆創膏が貼れない。上手く包帯が巻けない。

 手先が震えて止まらないから。

 

 帰ってくるまでは平気だった。しかし、安心できる自宅に戻った瞬間……ウソップは耐え難いほどの恐怖に襲われていた。

 

 初めてだった。本気の殺意をぶつけてくる相手と対峙したことは。

 初めてだった。命懸けの戦いをしたことは。

 

 戦闘の興奮が醒め、勝利の充足感と村とカヤを守り切ったという達成感が落ち着くと、自分がどれほど危険な綱渡りをしたか実感し、恐怖が収まらなくなっていた。

 

 そして、カヤが敵に囚われ、彼女を救うべく強化パチンコを放った時を思い出し、ウソップは強烈な嘔吐感に駆られた。

 慌ててトイレに駆け込み、先ほど呑んだ大量の水を全て便器に吐き出した。しかし、胃の中が空っぽになっても、嘔吐感が収まらない。

 

 もしも、あの一撃が外れていたら。

 もしも、あの一撃が逸れてカヤに当たっていたら。

 

 その想像がウソップの胃袋をキリキリと締め上げ、ウソップの心をギリギリと締め上げる。

「よ"か"っ"た"」

 

 ウソップは便器に向かって吐露し、ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。

 ルフィ達にも、ウソップ海賊団のチビ達にも、カヤにも明かさなかったウソップの本心。

 

 よかった。

 本当によかった。あの一発が外れなくてよかった。あの一発が敵に当たってよかった。あの一発がカヤに当たらなくてよかった。

 誰も死なずに済んでよかった。ルフィ達が死なずによかった。大事な“友達”であるチビ達が死なずに済んでよかった。

 この村の人達を守れてよかった。亡き母が眠るこの村を守れてよかった。親父が帰ってくる村を守れてよかった。

 

「よ"か"っ"た"ぁ……っ!!」

 胃酸に焼かれて痛む喉を震わせ、ウソップは肩を震わせ、嗚咽を漏らす。

 誰に知られることなく村を守り通した若き英雄は、誰にも知られることなく恐怖と安堵に涙を流す。

 

 泣きながらも、ウソップは立ち上がった。

 チビ共の前で宣言したからだ。もう遊びは終わりだと。本物の海賊として父のように海へ出る時が来たのだと。

 

 ウソップは自分の体より大きなリュックサックへ、詰め込めるだけ詰め込んでいく。

 必要なものも要らなそうなものも、大事なものも案外大事で無いものも。とにかく詰め込めるだけ詰め込んでいく。

 

 いつの間にか涙は引っ込んでいた。

 そして、二枚の写真を手に取る。

 

 一枚は少し前、チビ達とカヤと共に写したもの。カヤもチビ達もとても楽しそうだ。

 

 もう一枚は少しばかり古い。

 幼い自分を中心に、若い頃の母と父が仲睦まじく寄り添っている写真。

 

 ウソップは父を誇りに思っている。

 クラハドール……カヤの屋敷の執事に化けていたクソ海賊野郎は、父をこれ以上ないほど侮辱し、ウソップは憤怒した。

 だが、なんてことはない。それは父を貶められたからではなく、ウソップ自身が心の奥に隠し抱いていた感情を指摘されたからだ。

 

 当たり前だ。

 父は家族を置き去りにして海賊になり、便りも寄越さず、母を一人で逝かせ、自分を一人ぼっちにした男だ。母が生存中も、亡くなった後も、自分がどれほど寂しい思いをしてきたことか。

 

 ウソップが父を自分と母を棄てたクソヤロウと恨まなかったのは……ひとえに母が最期の瞬間まで父を愛し続け、我が子に父が誇るべき男だと繰り返し伝えてきたからだった。

 

「俺は親父を尊敬している。男として海の戦士である親父を誇りに思っている。だが、それとお袋のことは話が別だ。だから……ごめんな、お袋。俺は親父に出会ったら」

 

 まずぶん殴る。

 

 力いっぱいぶん殴る。これは絶対だ。俺のことは良い。しかし、お袋を一人で逝かせたことや、東の海に来ていながらお袋の墓に一度も詫びに来なかった件に関して、必ずケジメは取る。必ずだ。

 

 ウソップは二枚の写真をリュックの一番頑丈な所へ、この世の何よりも尊いものをしまうような手つきで収めた。全ての荷物をまとめ終え、家の外へ出る。17年を過ごしてきた小さな家を振り返り、その目にしっかり焼きつけた。

 

 お袋の墓に挨拶を済ませたら、出発しよう。

 俺もあいつらと同じように海賊を目指すんだ。

 

 ウソップの足取りに迷いはない。

 

 

 

 

 そして―――

 

 

 

 

 ウソップが海岸に到着すると、船首飾りが可愛らしい羊顔のキャラベルが停泊していた。

 カヤの家が所有する『ゴーイングメリー号』。小柄で今では古い型だけれど、とても良い船だ。どうやらカヤは、ルフィ達に船を譲ることにしたらしい。命を救われた恩返しだろう。

 

 カヤと別れの挨拶を済ませ、ウソップが小舟で出発しようとすると、メリー号の舷側に立っていた緑頭の青年ロロノア・ゾロがウソップへ言った。

「何やってんだ。早く乗れよ」

 

「え?」ウソップはきょとんとして「な、なんで……」

 後甲板からウソップを見下ろしていた麦わら小僧ルフィが告げる。

 

「俺達もう仲間だろ」

 

 ウソップはじわりと涙を滲ませ、歓喜の声を上げた。

「キャプテンは俺だろうなっ!!」

「バカ言え、船長は俺だッ!」

 ルフィが笑顔で怒鳴り返した。

 

        〇

 

 船を進めつつ……荷物を確認したり、操船を試したり、搭載砲を試し撃ちしたり。

 それから、絵心のあるウソップが主導となって麦わらを被った髑髏の旗が作られ、メインマストの帆にも同様の絵柄が描かれた。

 ルフィ達は無邪気に自分の旗揚げを喜んでいた。

 いずれ、彼らの旗が世界を揺らすことになるとは知らずに。

 

 ともあれ、一仕事を終えたルフィ達は船楼主室に集まり、簡単な昼食を摂りながら話し合う。

 

「グランドラインに入る前によ、もう一人必要なんだ」

 ルフィがおもむろに言った。

 

「うん」ナミも首肯し「立派なキッチンがあるし、コックが欲しいところね」

「長旅には美味い飯と酒が欠かせねェしな」とゾロも同意する。

 

「そういうもんか?」

 船旅も長旅も知らないウソップが問えば。

 

「食料在庫の管理とか、栄養配分の面とか重要よ」

「飯が不味かったり、酒が切れたりするとマジでキツいぞ」

 船旅と長旅を知るナミとゾロがしみじみと語り、

 

「だよな。だから、入れようぜ」

 ルフィがうんうんと頷き、言った。

「音楽家」

 

「「「なんでだよっ!!」」」

 三人のツッコミが綺麗にシンクロした。

「お前はアホかぁっ!?」

「今の話の流れでそーはならんだろっ!」

「あんた、私達の話ちゃんと聞いてたのっ!?」

 ゾロとウソップとナミからヤイヤイと言われ、

 

「だ、だってよぉ、海賊っつったら歌うだろ? なら音楽家が要るだろっ!?」

 ルフィが身を仰け反らせて釈明しているところへ、

 

「出てこい海賊どもォオオオッ!!」

 突如、表から怒号がつんざいた。

 

「あ?」「ん?」と戦い慣れしているルフィとゾロは片眉を上げ、

「なんだぁっ!?」ウソップは吃驚し、

「朝に一戦したばかりなのに……」

 ナミはげんなり顔を作り、ルフィへジト目を向けた。

「ルフィ。さっさと片付けてきて」

 

「俺が代わりに行っても良いぜ?」

「いいよ。腹ごなしにちょっと行ってくる」

 ルフィは軽い調子でゾロに応じ、主室を出ていく。

 

 

 で。

 

 

 ルフィがワンパンで襲撃者を沈めたところ……

 この襲撃者は、ゾロが知る賞金稼ぎジョニーだった。

 

 なんでも、相棒のヨサクが壊血病に罹ってしまい、岩礁の上で安静にしていたところ、ルフィとウソップが大砲の試射を食らわせたらしい。で、怒り狂ったジョニーが報復に襲ってきたという顛末だとか。

 

 ぎゃーぎゃーと大騒ぎする男共に呆れつつ、ナミは応急措置としてヨサクにライムの絞り汁を大量に飲ませた。

「これでしばらく休んでいれば、良くなるわ」

 

「すげーな、ナミっ! これからは航海士と船医の一人二役だなっ!!」

「俺ぁお前が出来る女だと思ってたぜ、ナミ」

 ルフィが尊敬の眼差しを向け、ウソップがなぜか『ナミは俺が育てた』な得意面を作り、

「栄養満点、俺ふっかぁ――――つっ!」

 ライム果汁を呑んだばかりのヨサクが飛び起きる。

 

「間に合わない。ツッコミが間に合わないわ」

 ナミは思わず目元を押さえてぼやく。

 

 一同がトンチキなやり取りを交わした末……。

「よし、“海のコック”を探そうっ! うンめー飯を作れる奴なっ!」

 ルフィが方針を定めると、賞金稼ぎのジョニーが手を挙げていった。

「はいっ! はいはいはいっ! 俺に良い案がありやすぜっ!!」

 

「ほう? なんだ?」

 ゾロが合いの手を返すと、ジョニーはにやり。

「海のコックを見つけるのに、うってつけのところがあるんでさぁ」




Tips
HVP
 High Value Person(Package)
 高価値人物(高価値物)の意。HVTの場合は高価値目標の略。

ウソップ
 原作主要キャラ。
 本作における心理描写は全て作者の独自解釈。異論は認める。

ベアトリーゼ。
 そういうところだぞ。

お使いイベント。
 ゲームのボリュームを増すためにしばしば取られる手法。なお、ユーザーの見解は賛否両論の模様。

サマルトリアの王子。
 国民的RPG『ドラゴンクエスト』の第二作で登場する主要キャラクター。
 彼を仲間にする過程は、おそらく日本国内で最も有名なお使いイベントであろう。

ヨサク&ジョニー
 原作キャラ。
 ゾロをアニキと慕う賞金稼ぎコンビ。しばし、麦わら一味に同行する。
 原作では、アーロン編後に別れ、新世界編の頃には、賞金稼ぎから足を洗って漁師になったらしい。
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