彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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佐藤東沙さん、NoSTRa!さん、春梟さん、誤字報告ありがとうございます


81:頂に立つ者。頂を目指す者。

 ルフィがバラティエの雑用係を務め始めて二日目。

 レストラン帆船に並走しながら、船長を除く麦わら一味の面々はグランドライン入りの計画を話し合っていた。

 

「ベアトリーゼから聞いた話だと、グランドライン内は地磁気が特殊で、通常の羅針盤は使えないらしいの。だから、ログポースっていうグランドライン内専用の物が要るわけ。というか、これがないと……」

 ナミの説明に、ウソップが相槌を打つ。

「それがないと?」

 

「まともに航海できないって」

 ゲゲッと唸るウソップ。ゾロは顎先を撫でながらナミへ尋ねた。

「そのログなんちゃらは手に入るのか?」

 

 ナミはテーブルに広げた海図を示しながら説明し、

「東の海では流通量が多くないけど、このローグタウンって町で入手できるみたい。東の海におけるグランドラインの玄関口よ」

 勝気な眉を大きく下げる。

「ただ、お金がね……航海に必要な諸々の経費を考えると、ログポースのために使える予算はそう多くないわ。何らかの金策が必要かも」

 

「海へ出て最初の難関が金かぁ」

 思わずぼやくウソップへ、ゾロが苦笑いを返す。

「そんなもんだ。俺が海賊狩りって呼ばれるようになったのも、日々のアゴアシ代稼ぎが理由だからな」

 世知辛い話にウソップが溜息をこぼした、直後。

 

 蹴り破られるような勢いでドアが開かれ、居候中の賞金稼ぎヨサクが叫ぶ。

「大変です、ゾロの兄貴っ! ウソップの兄貴! ナミの兄貴っ! すぐに来てくだせぇっ!」

 

「なんで私まで兄貴なのよっ!」

「どうした、そんなに慌てて」

「とにかく来てくださいっ! 説明するより早いっスっ!」

 ナミのもっともな抗議を見事にスルーし、ヨサクが暢気な調子のゾロ達の尻を叩くように大声を重ねた。

 

 泡を食ったヨサクへ怪訝顔を返しつつ、ゾロ達が船楼から甲板へ出てみれば。

「でけえっ!? なんだありゃあっ!?」

 バラティエに向かって進んでくる巨大ガレオン船を目の当たりにし、ウソップが吃驚の声を上げた。

 

 ヨサクの相棒ジョニーが顔を恐れと怯えに歪めながら言った。

「髑髏の両脇に砂時計の旗、ありゃあクリーク海賊艦隊の旗艦ですぜっ!」

 

「……えらくボロボロだな」

 ゾロの言葉通り、巨船は酷く損傷しており、水面を進む姿もどこか痛ましい。

 

「なんらかの自然災害か、海王類にでも遭遇したのかも」

 ナミは警戒心を全開にしつつも、怯えた様子を見せない。バギー一味、黒猫海賊団相手の戦闘から、よほどの相手でなければ能力者のルフィと海賊狩り――東の海における上澄みのゾロが、何とかできると判断していた。

 もちろん、いざという時はゴーイングメリー号でさっさと退避するつもりだが。

「ウソップ、単眼鏡を持ってたわよね? 向こうの様子や周囲を探ってみて。艦隊って呼ばれるくらいだし、手下の船がいるかも」

 

「お、おうっ!」

 ウソップは促されるままに腰のパウチから折り畳み式の単眼鏡を取り出し、巨大ガレオン船の様子を窺う。

 

「―――なんだあ?」

 戸惑うウソップの声音に、ゾロが片眉を上げた。

「どうした?」

 

 ウソップは単眼鏡を覗きながら、

「それが……」

 見たままを告げた。

「あいつら、死にかけてるぞ」

 

      〇

 

 クリークの海賊艦隊は鷹の目、ジュラキュール・ミホークに襲われた時点で大半を沈められ、カームベルトへ逃げ込んだ。その後、残っていた僚船達は海洋ホラー映画さながらに、次々と海王類の餌食になってしまった。

 

 唯一生きて東の海に帰ってこられた旗艦にしても、船体は損傷が酷く沈没寸前。乗員達に餓死や衰弱死が発生しており、仲間の死体を食う体力すら残っていない有様だった。

 

 飢えと渇きと疲労に衰弱しきった首領(ドン)・クリークは、副長のギンに肩を担がれながら『バラティエ』に入り……その大柄な体躯を折るように跪き、頭を垂れ、食事を食わせてくれと懇願した。ついには土下座までし、残飯でも良いからと乞食のように食べ物を乞い願う。

 その姿は憐れ極まり、『東の海の覇者』と称された威容は微塵も見られない。

 

 だが、バラティエのヤクザなコック達は飯を出すどころか捕縛を提案する。なんたって、クリークという海賊の逸話は『騙し討ち』ばかりなのだ。本当に衰弱しているかどうか怪しいもの。

 それに飯を食わせてやったところで、この男が『ありがとうございました』と立ち去るなんて……“あり得ない”。

 シケた海賊ばかりの東の海において、ドン・クリークは数少ない“ガチ”で凶悪な海賊なのだから。

 

 しかし、周囲の制止や反対を無視し、サンジはクリークに飯を与えた。それがサンジの”信念”だから。

 

 そして、飯を食って体力を取り戻したクリークはあっさり前言を翻し、その身に備えた武器を振るってコック達を蹴散らし、宣言する。

『部下100人分の食い物とこの船を寄こせ』

 

 客達が我先にと逃げ出し、連絡船に乗ってバラティエから大急ぎで遠ざかっていく中、

「にゅーっ! この店を奪うだとぉ!? そんなことさせるかっ!!」

 満を持して、タコの魚人ハチが姿を見せた。

 

 その三対の手に得物は無いが、素手でも問題ない。鈍っているとはいえ、かつては世界政府相手に喧嘩を売ったタイヨウの海賊団の一員。クリーク“如き”に、ハチは後れなど取らない。

 ましてや、大事な“仲間達”を傷つけられたことで、ハチは既にクリークをぶちのめすことを決めていた。

 

 予期せぬ魚人の登場にクリークも身構える。

 

「待て、ハチっ!」

 ところが……ゼフが割って入り、クリークに食い物を与えてしまった。サンジ同様、ゼフの”信念”によって。

 

 クリークは食い物を担ぎ、バラティエの面々へ一時間の猶予を与え、ズタボロの旗艦に戻っていった。要求にゼフ――かつて“赫足”と呼ばれたグランドライン帰りの海賊が持つ、航海日誌を追加して。

 

 入れ替わるように、ゾロ達が店内にやってきて、ルフィへ問う。

「どうすんだ?」

 

「戦う」ルフィはあっさり告げ「あいつは海賊王を目指すって言った。ならいつかやり合う相手だ。ここでぶっ倒しても構わねーだろ」

 

 ルフィの意見へ賛同するように、コック達も『さっさとお前らも逃げろ』と言ったゼフへ逆らい、『この店を守る』と戦意を露わにする。サンジも煙草を吹かしながら「この店を奪おうってクソヤローは殺す」と冷たい覚悟を剥き出しにした。

 

 意気軒高な野郎共を前にナミは小さく頭を振り、ルフィへ提案する。

「私はメリー号を離れさせておくわ。巻き込まれたら敵わないし」

 

「おう。俺達の大事な船だ。任せたぞ、ナミ」

 ルフィはナミへ大きく首肯し、『すまねえすまねえ』と詫び続けているクリーク海賊団のギンに好奇心から尋ねる。

「お前、グランドラインのことは何も分からねえって言ってなかったか? その割にゃあ、あいつは色々知ってそうだったぞ?」

 

「何も分からねえのは本当さ……」

 ギンは告解するように応じた。

 突然襲ってきた一人の男に……“鷹の目の男”によって、50隻5000人から成る海賊艦隊が壊滅させられた、と。

 

『そんなことあり得ねえ!』と騒ぐコック達。しかし――

「にゅ~。“鷹の目”に限った話じゃあないぞ」とグランドライン出身のハチが言う。「グランドラインには強ェ奴がいくらでもいるからな」

 

「そうね」ナミは蛮族女を思い浮かべながら「ベアトリーゼも海岸線を吹き飛ばしてたし」

 

 えぇ……とドン引きするウソップの隣で、ルフィが武者震いしていた。

「くぅ~~~~っ! ぞくぞくするなぁ! 俺も早くグランドラインに行きてェっ!!」

 ゾロが獰猛に口端を歪めて「同感だ。あの男はグランドラインに居る……っ!」

 

「お前ら、バカだろ。真っ先に死ぬタイプだな」

 サンジが冷めた調子で告げるも、ゾロもルフィも『とっくに死ぬ覚悟は出来てる』と言い、ウソップが負けじと『俺もだ!』と続く脇で、ナミは『私は嫌よ。死にたくないわ』と鼻息をつく。

 そんな四人に戸惑いを隠せないサンジ。

 

「ま、グランドラインのことは後だ」

 ルフィは右拳を左手に当てて不敵に笑う。

「今はあいつらをぶっ飛ばそう」

 

 そして――

 腹いっぱい元気いっぱいになったクリーク艦隊残党100名が雄叫びと共にバラティエへ襲い掛かろうとした、その刹那。

 

 巨大ガレオン船が“斬られた”。

 

 

 

 

 

 

「目的の相手と違うのに何で斬ったんです?」

 鯱に跨った新聞記者が呆れ気味に質すと、小舟に乗った世界最強の剣士は、悪びれることなく言った。

「ついでだ」

 

     〇

 

 海賊達の放つ銃弾を切っ先で容易く逸らす世界最強に、ゾロは歓喜で身が震えた。左腕に巻いていた黒布をほどき、頭を覆うように海賊巻きにする。

「なあ、俺はお前に挑むために海へ出たんだ。いっちょ、勝負してくれよ」

 

 鷹の目の男は片眉を上げ、

「何を望む?」

「最強」

 即答するゾロに小さく溜息をこぼす。

「力の差を見抜けぬわけではあるまい。この俺に立ち向かう勇気は、貴様の心力か。はたまた無知か」

 

「俺の野望。そして、親友との約束のため」

 ふむ、と小さく頷き、“鷹の目”は小舟から巨船の残骸に降り立つ。

 

「え……っ? ミホークさん、このお兄さんと戦う気ですか? “弱い者イジメ”は格好悪いですよ? お兄さんも悪いこと言いませんから、やめた方が良いですって。本当に死んじゃいますよ?」

 鯱の背に跨った潜水服姿の女の物言いに、ゾロはイラッとしたが、気づく。その声音に自身への嘲りが一切こもっておらず、”善意”から、ゾロへ忠告しているのだ。絶対に勝てないと見越して。

 

 ゾロは大きく深呼吸して腰の三本を抜く。

「望むところ……っ!」

 

「無益だが……暇潰しにはなろう」

 鷹の目は首から下げていたロザリオを外し、仕込まれていたナイフを抜く。

「井の中の蛙よ。世の広さを教えてやる」

 

「そんなもんで……っ!? 舐めやがって……っ! 死んで後悔すんじゃねえぞっ!」

 ゾロは世界最強へ向かって吶喊し、自身の大技“鬼斬り”を放つ。

 

 も――鷹の目は玩具みたいな小さなナイフで、いとも簡単にゾロの大技を止めた。

 

 誰も彼もが思わず息を呑み、我が目を疑う。

 そんな―――そんなわけねェ、いくら何でもこんなに遠いわけねェ!! 世界がこんなに遠いはずがねえっ!

 何より、ゾロが現実を受け容れられぬ中、潜水服女が小さく呟く。憐れむように。

「……だから忠告したのに」

 

     〇

 

 ルフィは拳を握りしめ、瞬きを忘れて戦いを見守っていた。

 

 ゾロは猛り狂った猛獣のように剣戟を繰り出し、剣閃を重ね、剣技を放っている。しかし、暴風のようなゾロの斬撃を、鷹の目は小さなナイフ一本で全て防ぎ、それどころかゾロを圧倒していた。

 

 剣のド素人であるルフィにも分かる。ゾロと鷹の目の間には隔絶した実力差があると。ゾロ自身も分かっているのだろう。あの凶暴で荒々しい太刀筋は、激しい動揺と焦燥の裏返しだ。

 

 隣のウソップは絶句して唖然としており、ナミもメリー号を避難させることを忘れ、戦いを凝視している。

 

 ルフィは内に込み上がる不安を堪えながら、ゾロの挑戦を見守る。

 もしかしたら……ゾロはここで命を落としてしまうかもしれない。だが、この戦いに横槍を入れることは“絶対”に出来ない。これは仲間の戦いだから。仲間が命を賭して“夢”へ挑戦しているから。だから、ルフィは我慢する。我慢して戦いを見守り続ける。

 

 そして、ゾロは辛辣で残酷な現実に折れそうな心を奮い立たせるように、がむしゃらに剣を振るい続け、

「食らい……やがれェっ!」

“鬼斬り”に並ぶ自身の大技、“虎狩り”を放ち――

 

「遅い」

 いとも容易く後の先を取られ、鷹の目に胸を刺された。

 

「ゾロ―――ッ!」「兄貴ィ――――ッ!!」

 ウソップとヨサク&ジョニーの悲鳴が海上に響き、ナミも口元を手で覆い、身を強張らせていた。ルフィは割れそうなほど歯を食いしばり、戦いの行く末を見守り続ける。

 

「……なぜ退かん? 本当に死ぬぞ」

 胸を刺されてもその場から退かぬゾロへ、鷹の目が怪訝そうに問う。

 

 ゾロは吐血し、胸から多くの血を流しながら、

「“ここ”を退いたら、いろんな大事なモンがへし折れて、二度と“ここ”に立てねェ気がする」

「それが敗北だ」

 鷹の目を真っ直ぐに睨み据えた。

「なら退かねェ。死んだ方がマシだ」

 

「ほう」

 鷹の目はゾロの胸に突き立てたナイフを抜き、()()()()()()()()

「小僧。名を聞こう」

 

 ゾロは大きく息を吐き……三本の刀を構えながら、答えた。

「ロロノア・ゾロ」

 

「覚えておこう。久しく見ぬ“強き者”よ。そして、剣士たる礼儀を以って、世界最強の黒刀で沈めてやろう」

 鷹の目は背中の大刀を抜く。気づけば、潜水服女も真剣な顔で戦いを撮影していた。

 

「ルフィ……ルフィッ!!」ナミがルフィを揺さぶり「ゾロを止めて! じゃないとゾロが――」

「ダメだっ!」

 ルフィは戦いから目を離すことなく、自身を揺さぶるナミの手を押さえた。

「我慢して……、ちゃんと見届けろっ!」

 怖いもの知らずの権化みたいなルフィが手を震わせていることに気付き、ナミは息を呑む。

 

「三刀流、奥義……!! 三・千・世・界ッ!!!!」

 ゾロが最後の大技を繰り出す。今の自分が繰り出せる正真正銘、最後の鬼札。全てを注ぎこんだ最後の一撃。

 

 だが、ゾロの乾坤一擲の奥義は、無情にも鷹の目が振るう黒刀に容易く防がれ、挙句に両手の無銘が砕かれた。

 

 敗北。

 反撃の黒刀が迫る間際、ゾロは現実を受け入れると共に和道一文字を丁寧に鞘へ納め、鷹の目に向き直る。

「背中の傷は、剣士の恥だ」

 ゾロは嘯いて小さく笑い、堂々と世界最強の剣を受けた。

 

     〇

 

「うぉおおああああああああああああああああっ!!」

 斬られて海に落ちたゾロを、ウソップ達が慌てて引き上げる中、半ベソを掻いたルフィが衝動的に鷹の目を強襲する。も、その攻撃はあっさりとかわされ、鷹の目の傍らの残骸に衝突してしまう。

「この……っ!!」

 

「安心しろ。あの男は生かしてある」

“鷹の目”の言葉にルフィは慌てて振り返り、ゾロを引き上げたメリー号へ吠える。

「ゾロは無事かっ!?」

 

「全然無事じゃないわよっ!! でも、生きてるわっ!」

 ナミがルフィに怒鳴り返し、ウソップ達が救急箱やら何やらを抱えて駆け回っていた。

 

 そこへ、

「強くなれ、ロロノア。俺はこの先幾年月でも最強の座にて貴様を待とう。この俺を越えてみよ、ロロノアッ!!」

 鷹の目はゾロへ叱咤激励の言葉を贈り、安堵しているルフィへ問う。

「剣士の仲間よ。貴様は何を目指す?」

 

「海賊王」

 ルフィの即答に、鷹の目は口端を和らげた。

 

 直後、瀕死のゾロが親友の形見である和道一文字を抜いて掲げる。

 

「ちょっと動かないでっ!」「安静にしてろってっ!」

 ナミやウソップの制止を無視し、ゾロは吠える。血を吐き、涙を流しながら。

「俺はもう……二度と敗けねェッ! あいつに勝って、大剣豪になる日まで、絶対にもう、敗けねェっ!!」

 

「……シシシ! ああ、分かったっ!!」

 誓いと決意を叫ぶだけ叫び、ルフィの返答を聞くと、ゾロは意識を失った。

 

「ゾ、ゾローッ!? しっかりしろーっ!」「兄貴ィ―――!! 死ぬなーっ!!」

 慌てふためくウソップと賞金稼ぎコンビを余所に、ナミは眉目を吊り上げながら手当てを急ぐ。

「このバカッ! だから動くなって言ったのにっ!!」

 

 ぎゃーぎゃーと騒がしいメリー号の様子に、潜水服女が身悶えしていた。

「なんという青春真っ盛り……っ! 素敵すぎるっ! 記事にして広めたいっ!! でも、これはスクープになるか分からないっ!」

 

「良いチームだ」

 踵を返し、鷹の目が立ち去ろうとすると……クリークが口を挟む。

「オゥ、鷹の目ェ……テメェは俺の首を獲りに来たんじゃあねェのか?」

 

「元より貴様らは“ついで”だ。偶さか見つけたので寄ったに過ぎん。もう十分楽しんだ。帰って寝る」

「えっ!? ミホークさん、黒い魚人を追うって話はっ!?」

「面倒だから止める」

「気分屋過ぎますよっ!?」

 

 自身を無視してやり取りを始めた鷹の目と潜水服女に、クリークは青筋を幾つも浮かべ、

「ついで、だぁ……? この東の海の覇者、首領(ドン)・クリークを、俺の艦隊を、“ついで”で……ふざけんじゃあねえっ!!」

 全身の銃器を斉射した。が――

 

「さらばだ」

 鷹の目は大刀をひと振りし、剣風で弾幕ごと巨大ガレオン船の残骸を吹き飛ばした。

 

     〇

 

 かくして、バラティエの戦いが“前座”を終えた頃。

 グランドライン前半“楽園”では――

 

 嵐の海を化け物トビウオが飛んでいた。激しく波打つ水面を避けて宙を駆け、時折、推進力を回復するために荒れた海へ飛び込み、海中を走る。

 

「こう荒れてちゃ休憩も取れやしない」

 雨と波飛沫を浴びながらスーパートビウオライダーを飛ばし、ベアトリーゼは計器盤の脇に貼りつけた海図とビブルカードへ目線を向けた。

「ジャヤか……ベラミーや黒ひげ一味とかち合いたくないんだけど……」

 

 時間的に原作と一月以上の開きがあるから、出くわすことはないだろう。

 

 ただ、懸賞金3億8千万ベリー(逮捕に来たG2支部の海兵達を半殺しにしたら増額された。命を取らずにおいてやったのに。解せぬ)を狙う者は賞金稼ぎに限らない。自身の名を上げようとするバカな海賊や、金に目が眩んだ意地汚い堅気も含まれる。

 

 負け犬の吹き溜まりと評判の島だ。一匹狼の高額賞金首であるベアトリーゼは、“人気者”になれそうだった。

 

「洗練された文化人の私としては、非文明的なドブ町には行きたくないんだけどなー」

 ベアトリーゼはぼやきながら、雨を切り裂くように怪物トビウオを走らせた。

 




Tips
原作との違いは、戦いの場にナミ達がいることくらい。

ミホーク
原作キャラ。
世界最強の剣士。自由人。

クリーク
原作キャラ。
海賊艦隊総督。気の毒な人。

ギン
原作キャラ。
海賊艦隊総隊長。チョロインな男。

コヨミ
オリキャラ。
世経記者。麦わら一味に目を付けた。


ベアトリーゼ。
扉絵連載に移った本作主人公。
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