彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
佐藤東沙さん、金木犀さん、Nullpointさん、NoSTRa!さん、トリアエーズBRT2さん、誤字報告ありがとうございます。
ナミとココヤシ村の面々が旧アーロンパーク跡地・現海軍コノミ諸島屯所に到着した時、麦わら一味達は使い古しの靴下みたくボロボロだった。
ルフィは血塗れ。ゾロは胸の傷が開き、胸元はおろかズボンまで血に濡らしていた。サンジは金髪や着衣が血と泥で赤黒くなっており、ウソップは両膝をついて血反吐をぶちまけていた。ハチは血達磨で倒れ伏して嗚咽をこぼしている。
対して、アーロン達は並々ならぬ怪我を負いながらも、平然と麦わら一味を圧倒していた。
だが、ナミ達を何よりも驚愕させ、慄かせたのは、その変貌振りだ。
左目を失くしたアーロンも、右腕がないチュウも、背中に大きな怪我を負うクロオビも、肌に不気味なシダ状紋様が走り、首の付け根などに異様な瘤が出来ている。そして、真っ赤に血走った目が憎悪と殺意にぎらぎらと輝いていた。
怪物。
その一語が、ココヤシ村の人々の脳裏に浮かぶ。
ナミは傷ついたルフィ達に下唇を噛みつつ、仇敵を睨み据え、吠える。
「アーロンッ!!」
戦場に響く凛とした美声。
男達の戦いが静止し、目線がナミに注がれる。
「ナミィ……ッ!!」
血走った隻眼がナミを捉えた。
アーロンは元より恐ろしい男だったが、今のアーロンはナミの記憶にある姿よりはるかに恐ろしく、おぞましい。
「裏切リ者め……クソガキめ、思い知らセテヤるッ! お前ノ家族も大事ナ村人も故郷も、全テブち壊シテヤるッ!」
憎悪と復讐心に塗れた怒号を上げるアーロンに、ナミは絶対零度の眼差しを返す。
「裏切り? 笑わせないで。私はあんた達の仲間だったなんて思ったこともない。そもそも、私があんたを何度殺そうとしたと思ってんの? あんたはその度、私を打ち据え、嘲り嗤い、殺さずに捨て置いた。要はあんたのマヌケさが一年前のあの日と今日を招いただけ」
「―――ッ!」
牙をギリギリと軋ませ鳴らすノコギリザメへ、ナミは長棍を構えた。
「今日こそ、あんたから私の故郷を取り戻すっ! 今日こそ、あんたとの因縁を終わらせるっ! 私の、私達の手でっ!」
ノジコ達が銃を構え、ゲンさん達が刀剣類を構える。
ここでアーロン達を倒し、本当の平和を取り戻すため。
ここでアーロン達を破り、本当の自由を取り返すため。
たとえ、幾人斃れようとも。
「俺達を斃スダと……? 貧弱で愚カな下等種族が……調子に乗ルナっ!!」
アーロンがナミ達に向かって跳躍する。強化されたノコギリ鼻を切っ先とした突撃体当たり技『鮫・ON・DARTS』だ。元より常人を容易く轢殺し得る技だったが、身体強化を施された今は大口径の火砲並みの破壊力を誇る。文字通り一撃で村人達を虐殺しえるだろう。
ルフィとゾロが咄嗟に邀撃を試みるが、アーロンの動きが早すぎて間に合わない。ヨサク&ジョニーが村人達の前に立つが、この二人では肉壁にもなるまい。
「――させねェッ!!」
倒れていたはずのハチが立ち上がり、大きな体を飛び込ませてアーロンの突撃を妨げる。ノコギリ鼻がハチのどてっぱらを易々と突き破り、突撃の運動エネルギーと衝撃力がハチの体躯を破壊すべく、傷口を大きく広げていく。
「にゅ――――――――――――――――――――――ッ!!」
ハチは血反吐をぶちまけながらも精魂の全てを絞り出し、六本の腕と体でアーロンの突撃を止め切り、ナミ達を守り抜く。
「ハチッ!?」「ハチの兄貴ッ!!」
ナミとヨサク&ジョニーの悲鳴が上がり、
「ハチだと!? なぜお前が――」
ナミから事情を聞いていなかったゲンさん達が驚愕する中、アーロンは心底冷めきった目でハチの腹から血肉塗れのノコギリ鼻を引き抜き、崩れ落ちたハチを足蹴にした。
「テメェにハ心底失望しタゼ、ハチ。魚人の面汚シメ」
「アーロンさん。もうやめてくれ……タイの大兄貴は、こんなこと、望んじゃいねェよ……」
「“タイの兄貴なんザドウでも良イ”っ!」
アーロンはハチの血に塗れた顔で咆哮した。
「フィッシャー・タイガーは、復讐すル気概モ報復スる度胸モナカった負け犬ダッ! 奴隷ニサレた屈辱を忘レて人間共に甘ェ顔ヲシて、その結果殺さレチマったマヌケ野郎だっ! 泣き寝入リノ末に死ンダ……臆病者だっ!」
「アーロンさん……どうして……」
英雄フィッシャー・タイガーすら蔑むアーロンに、ハチは悲哀に顔を歪めながら意識を手放した。
「俺は違ウっ! 俺は泣キ寝入りなンザシねェっ!! 俺の野望を台無シニシた、あのクソ女に必ズ復讐すルっ! 俺ヲコンな目ニ遭わセタ奴らに、必ず報復スるっ!! 俺の邪魔ヲスる奴ラハ一人残らズ! 全員殺すっ!」
アーロンは血走った眼をナミに向け、
「まずハオ前だっ! ナミッ! お前の大事ナモのを一ツ残らズブち殺し、ぶち壊シテから、八つ裂キニシてヤるっ!!」
足元に倒れ伏しているハチを冷酷に見下ろし、
「……同胞だロウと、容赦ハシねェっ!」
首元を踏みつけようとした。
刹那。
「ゴムゴムのぉ~~~ロケットハンマーッ!!」
ルフィが体ごと叩きつけるようなジョルトパンチをアーロンの横っ面へぶち込み、
「虎っ、狩りっ!!」
飛び込んできたゾロが、大技でアーロンの頑健な体躯をふっ飛ばした。
ルフィとゾロはハチとナミ達を背に置くように立ち、
「これは俺達の喧嘩だっ!! 手を出すんじゃねェッ!!」
ルフィは肩越しにココヤシ村の人々を怒鳴りつけ、倒れているハチに微笑みかけた。
「ハチ。ナミ達を守ってくれてありがとな」
「根性見せすぎた。おかげで体力を使っちまったぞ」ゾロもハチへ、敬意交じりの微苦笑を向ける。
「ルフィ」
不安と期待といろんな感情がこもった眼差しを向けてくるナミに、
「ナミ、ハチを手当てしてやってくれ。このままじゃ死んじまうからな」
ルフィはいつも通りの不敵な微笑みを返し、
「それと、預かっててくれ」
麦わら帽子をナミに預けた。
――俺の宝物なんだ。
ルフィが大切にしている麦わら帽子を委ねられ、ナミはその覚悟の重さを悟り、息を呑む。
だから、ナミは麦わら帽子を大事に抱きかかえながら言った。ルフィに。ゾロに。サンジに。ウソップに。
……最高の仲間達へ向かって。
「勝ってっ!!」
「任せとけ」船長は白い歯を見せ、
「おう」副船長は短く応じ、
「ナミすわぁんッ!! 声援のおかげで元気百倍だよっ!!」
コックが目をハートマークにして答え、
「キャプテン・ウソップの勝利を待ってろっ!」
狙撃手が足をガクブルさせながら吠えた。
戦いはクライマックスを迎える。
〇
蛮姫は窓から突入した。
ぶち破られた窓ガラスの欠片が入射光を乱反射し、水晶片のように煌めき散る中……室内に飛び込んだ蛮姫が身をしなやかに躍らせる。
天井スレスレを横宙返りしながら武装色の覇気をまとった蹴撃を放ち、マヌケAの首をへし折るようにふっ飛ばす。着地寸前に体をスピンさせて両腕のダマスカスブレードを振るい、マヌケBとCを真っ二つに斬り飛ばす。2人分の鮮血が室内だけでなく、
着地でバネを溜め込みつつ、瞬間的に周囲の状況を把握。
HVP周囲に敵は無し。残る脅威は部屋の入口方面に3。室外――廊下に4。
突然の事態にマヌケ共が対応しきれない中、蛮姫はバネを解放して再跳躍。右のカランビットでマヌケDの首を切り裂いた。返り血を浴びながら余勢を駆り、覇気をまとう後ろ回し蹴りでマヌケEの胸部を蹴り潰し、壁をぶち抜いて隣の部屋へシーンアウト。
蹴りの慣性のままさらに回転。遠心力をたっぷり乗せた漆黒の回し膝蹴りをマヌケFの顔面へズドン! ぐしゃりと顔面を破砕されたマヌケFがドアごと吹っ飛んで廊下へリタイヤ。
室内に侵入していたマヌケ6匹を仕留め終え、ベアトリーゼは茫然としているHVPを横目に捉えつつ、廊下に残っている脅威の排除に向かう。
「な、なんだてめぇわっ!?」「うわああああっ!?」「ク、クライヴの兄ィが、頭ぁ潰れちまってるぅううっ!?」「て、てめ、俺達が金獅子のシキの傘下だと知ってんのくわぁっ!?」
慌てふためくマヌケ4匹へ、ベアトリーゼは無言で襲い掛かった。
マヌケGを、カランビットで肋骨ごと心臓を貫き抉り。
マヌケHを、ダマスカスブレードで頭からヘソまでずんばらりん。
マヌケIを、蹴り上げて顎から頭蓋まで叩き割り、天井に突き刺して。
最後のマヌケJが咄嗟に身を捻って漆黒の蹴りを避けるも、かすめた衝撃に顔面を削ぎ剥がされた。
「ぎぃっやぁあああああああああっ!?」
皮どころか骨が見え隠れするほど顔の肉を失ったマヌケJは顔を押さえながら逃げ惑い、廊下の窓へ突っ込んで外へ飛び降り――
表から肉塊が地面に衝突する独特な音が響く。
「殺し損ねたか。ま、あの傷じゃもうダメだろ。突入から制圧まで19秒。確認殺害9の無力化1。ちっと遅いな」
ベアトリーゼは返り血を浴びて真っ赤に濡れた自身を見回し、
「やっぱ芋ジャージで正解だった」
そんなことを呟きながら、室内に戻れば。
返り血を浴びた甘色髪の妙齢女性、
「ち、近づかないでっ!!」
「あらら。助けに来たってのに随分な対応だこと」
……むしろ、妥当な反応なのであろう。
ともあれ、ベアトリーゼはチレンを余所にカランビットとダマスカスブレードの刃をベッドシーツで拭い、それぞれを鞘に収める。
「私はベアトリーゼ。あんたを保護しに来た」
「ベアトリーゼ? まさか“血浴”の? なんで賞金首が私を保護するのよっ!? 私をどこかの組織に売る気っ!?」
恐慌して叫ぶチレン。
「依頼人は御上の筋だよ。あんたが海軍からも逃げちまったんで、蛇の道は蛇ってわけ」
猜疑と警戒を一層強くしたチレンへあしらうように答えつつ、ベアトリーゼは両腕のブレード用装具と腰の装具ベルトを外した。血で濡れそぼったジャージを脱ぎ捨てていく。卵の殻を剥くように下着姿になり、小麦肌を晒す。
「ふ、服なんか脱いで、どういうつもりっ!? ……ま、まさか“そういう趣味”なのっ!?」
凶悪犯が大量殺人現場で突如ストリップを始めたことに、アレな想像をしてガチビビりするチレン。
「着替えるだけだって」
ベアトリーゼは装具ベルトの雑嚢から替えの着衣を用意しつつ、
「軽く水浴びしてくるから、その間に荷造りしときな。逃げても良いけど、次に追いついた時は今回ほど優しくしないよ」
それじゃよろしく、とシャワールームに入っていった。
チレンは化け物を見るような目でベアトリーゼを見送り、銃を握っていた手をへなへなと降ろす。もっともな疑問を口にした。
「な、なんなのよ、いったい……何がどうなってるのよぉ……」
隣の部屋で乳繰り合っていた不倫カップルも同様の疑問を嘆いている。
〇
下手な銃よりも強力な水弾の弾幕に晒され、ウソップは瓦礫の陰を逃げ回る。
「お前。人間。じゃなくて。ネズミ」
チュウの嘲りは正鵠を射ていた。
逃げ回るウソップの姿はさながら猫に狩り立てられるネズミのようで、クチでどれだけ勇ましいことを並べようとも、無様この上ない。
だが、ウソップは屈辱を感じていない。命懸けの殺し合いなのだ。格好なんて気にしていられない。まして、ウソップの得物は強化パチンコ。弓のように構え、スリングを引き、狙い、打つの四段階の手順が必要で、即応性に乏しい。挙句、鉛玉も火薬の弾も、チュウの頑強な肉体にはまったく効かない。事実、チュウは既に回避すらせず、ウソップの健気な反撃を平然と受けている。
「無駄。無駄。無駄。お前。雑魚。ネズミ以下」
嘲り笑い、水弾を放つチュウ。
どれほど侮辱されても、ウソップは怒らない。
なぜなら、ウソップの
ウソップがネズミのように瓦礫の間を這い回り、水弾に身を削られ、至近弾で跳ねる飛礫を浴びながら“位置取り”を試みていることに気づいていないから。
そして、ウソップは絶好の位置に辿り着くや、迷うことなく物陰から飛び出し、パチンコを構えた。
「必殺、鋼芯鉛星っ!!」
「無駄。雑魚。死ね」
チュウがウソップへ向け、ひときわ絞り込んで初速を高めた水弾を放つ。
もはや実包以上の貫徹力を持つ水弾がウソップの胸を貫通した。左肺に穴が空き、ウソップは着弾衝撃と激痛に意識が飛びかける、も。
「これは、一対一の決闘じゃねえ……っ! 海賊団同士の潰し合いだっ!」
ウソップは構えを崩すことなく、狙い撃つ。
ガチで危険なので、シロップ村では封印していた鋼芯入りの鉛玉……それが、チュウを大きく外して。
これまた
「ぐがぁ……っ!!」
脳の処置で痛覚を鈍化されてなお耐え難い激痛に、クロオビが苦悶と共に動きを停めた。
「ナイス援護だ、ウソップ」
サンジはにやりと笑う。
頼もしい狙撃手は反撃の機会を作ってくれただけ“ではない”。教えてくれたのだ。サンジの蹴りすら通じない頑健無比な肉体の弱点を。
「
赫足のゼフ譲りの強力無比な蹴撃が、クロオビの歪んだ背中に突き刺さる。パチンコの鉛玉など比較にならない痛撃にクロオビは悲鳴すら上げられず、軋む背骨の発した激痛に全身の神経が痺れた。
意識も神経も巡らなければ、頑丈な皮膚も頑強な筋肉も、ただの硬い肉に過ぎず。
「
先ほどまで効かなかった蹴りが、次々とクロオビを打ちのめしていく。
「ぐ、がぁあああああああああっ!!」
ダメージの蓄積に意識が飛びかけ、クロオビは取り乱して魚人空手の構えを取る。しかして、それはサンジにとって、仕上げをぶち込む絶好の隙を見せたに過ぎない。
「
全身のバネを用いて繰り出し、全体重と速度と遠心力を乗せた大技が、クロオビの顎を捉える。靴を通じてクロオビの顎が割れる触感が伝わってきたが、サンジは躊躇も容赦もなく全力で蹴り抜く。肉を潰し、骨を砕き、頸をしならせ、頸椎を軋ませ、クロオビの巨躯を轟音と共に吹き飛ばした。
「満腹になったみてェだな、クソヤロー」
手応えから意識を刈り取ったことを確信し、サンジは口端を歪めて呟く。
「お前も決めろよ、ウソップ」
「!? クロオビッ!?」
チュウは驚愕しつつ、ふっ飛ばされてきたクロオビを受け止める。
仲間意識の行動。だが、右腕を喪っているチュウに、失神したクロオビを受け止めることは簡単ではない。否応なく生じる大きな隙。
「必殺、タバスコ星ッ!!」
その隙を、ウソップは逃さない。
「鬱陶ッ!!」
チュウは左腕一本でクロオビを受け止め抱えたまま、崩れた姿勢から水弾を放ち、迎撃。高初速の水弾は見事にウソップの弾へ命中する。が、砕けた弾から飛散した激辛タバスコ液は慣性の法則に従ってチュウに降り注ぎ、数滴が両目を捉えた。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああっ!?」
知覚野を強化されているがために、刺激物に対する反応は激烈だった。脳を弄って痛覚系を鈍くしていても、耐えきれない激痛にチュウがのたうち回る。
ウソップはパチンコを投げ捨て、バッグからハンマーを取り出しながら、チュウに向かって駆け出す。水弾に撃たれた左肺がいうことを聞かず、一歩踏み出すごとに発する痛みによって意識が薄れていく。
それでも、ウソップはチュウに飛び掛かり、馬乗りしてハンマーを振るう。
「ウソップハンマーッ! ウソップハンマーッ! ウソップハンマーッ! ウソップハンマーッ! ウソップハンマーッ! ウソ……ゲェホッ! ヴゾップバンマーッ! ヴゾップバンバーッ! ヴゾッブバンバーッ! ヴゾッブバン、ア゛ッ!?」
無我夢中で振るい続けたためか、柄がへし折れ、ハンマーがすっぽ抜ける。ウソップは半狂乱になってバッグをひっくり返し、新たな得物を探す。
残っていた物は輪ゴムだけ。
「ウソップ輪ゴ――――――――ムッ!」
ぺちん! チュウの頬に輪ゴムが当たる。
チュウは反応を返さない。ハンマーで滅多打ちにされて意識を失い、痙攣を起こしていた。
ウソップは呆気に取られた後、チュウの隣に寝転がり、血反吐を吐きながら勝鬨を上げる。
「なめンじゃねェぞ、このやろ―――――――――――――――――――――っ!!」
「格好良いぜ、キャプテン・ウソップ」
苦笑いするサンジも疲労感に抗えず、その場に座り込む。くしゃくしゃに潰れた煙草を口にくわえ、火を点す。血でシケった煙草の紫煙は勝利の味がした。
「使エネェ奴らダ」
斃れた仲間に悪罵を吐き捨てるアーロン。
ルフィのこめかみに青筋が浮かび、ゾロは眉目をより鋭く吊り上げた。
「……あいつらはお前の仲間だろ。ハチだって、前はお前の仲間だったんじゃねえのか」
怒気を込めた声で、ルフィが質す。
「仲間? 馬鹿馬鹿しイ」
アーロンは血走った隻眼で、少年達を睥睨する。
「俺は地獄デ学んダ。邪悪トは何カヲ知った。力とハ何カを知ッタ。仲間? 同胞? そンナもの、クソの役にも立ちャアシねェ。役ニ立つ奴は従エ、役に立タネェ奴は使イ潰す。俺は今度コソ帝国ヲ築く。俺ノタメの、俺の帝国ヲなっ!!」
「下らねェ」
ルフィは心底倦厭した顔で呟く。
「俺は何も出来ねェ。剣を使えねェ。航海術が出来ねェ。美味い飯を作れねェ。上手いウソもつけねェ。仲間が居なきゃ、俺は海にも出られねェ……!」
「……ツまリ、テメェは役立タズッテことダ」
嗤うアーロンに、
「かもな。でも、俺は」
ルフィは拳を向けて気負いもなく、極自然体で言った。
「仲間を悲しませる奴をぶっ飛ばせる」
「充分だ」ゾロはにやりとして「俺も副船長として、手ェ貸さねェとな」
「劣等種族のクソガキ共ガ」
アーロンは隻眼を海王類のように細め、跳躍した。
「
ノコギリ鼻を鏃とした高速体当たりではなく、その強靭無比な牙を剥き、螺旋回転を加えたより殺傷力の高い残虐な突撃技。
「かわすか。受けるか」
「正面からぶっ潰す」
「同感だ。俺がさっき言ったこと覚えてるか?」
「ああ。後は任せろ」
麦わら一味の副船長と船長は、迫る死線を前に笑い合う。
ゾロは破砕機のように突っ込んでくる怪物へ立ち向かう。
流血が多すぎて視界がブレ始めている。失血が多すぎて意識がボヤけ始めている。しかし、刀を握ることに不足はない。和道一文字を噛んで支える顎は微動だにしない。
ゆったりとした構えから、
「三刀流……奥義」
精魂全てを賭し、ゾロは世界最強の剣士に冷や汗を流させた鬼札を切る。
「三千世界ッ!!!!!」
頂を目指す剣士の全身全霊の一撃が、250センチ超の質量を持つ高速運動体と激突する。
落雷染みた轟音が旧アーロンパークに響き渡り、衝撃波が吹き荒れた。熾烈な斬撃に耐えきれなかった無銘の二刀が砕け折れる。が、ゾロの一撃はアーロンの凶悪な歯列もまた破砕し、その大柄な体躯を上空へ吹き飛ばしていた。
「ぐガァアアアああっ! くソガァあっ!」
宙高く飛ばされたアーロンは剛剣によって幾筋も裂かれた口腔からダバダバと大出血しつつ、鮫系魚人の特性――多生歯性を活かし、砕かれた歯列を引き抜き、即座に新たな歯列を生やす。
アーロンは大技で精魂尽き果てたゾロが崩れ落ちる様を睨みながら、
「死に損なイガッ! 噛み殺シテ――」
「ゴムゴムのぉ~」
潰れた左目の陰から声が聞こえ、ハッとして顔を向ければ。
いつの間にかルフィが自分の頭上に飛んでおり、両腕を高々と天に伸ばしていた。
アーロンは即座に理解する。ゾロの真の狙いが自分を打ち上げることだったと。
「下劣な生物風情があああアアあああああアアアアアアアアっ!!」
人間も魚人も本質的に飛ぶ生物ではないから。じたばたと足掻いたところで、自由落下運動以外に出来ることはない。そう特異な術や能力を持たぬ限りは何もできない。
そして、アーロンは持たぬ者であり。
「バズーカァアアアアアアアアアアアッ!!!!」
超加速度の双掌打がアーロンの真芯を直撃する。その間際、強固な信念と壮烈な意思を宿した両手が一瞬だけ漆黒に染まり、打撃の破壊力がアーロンの頑強な体躯の奥底まで貫徹した。
無自覚に武装色の覇気をまとった一撃に加え、アーロンは隕石の如き勢いで地面に叩きつけられ、断末魔を上げることなく意識を消し飛ばされた。
ルフィは大の字に倒れたゾロの隣に着地し、シシシと無邪気に笑う。
「やったぞ、副船長」
「当然だ船長」
ヘロヘロのゾロと拳を合わせた後、ルフィは戦いを見守っていたナミへ拳を翳す。
「ナミ。約束、守ったぞ」
「――――うんっ!!!!」
麦わら帽子を大事に抱きしめていたナミが、涙を滲ませながら大きく頷く。
「勝った……」
「アーロン達が倒れた」
「ああ、今度こそ……」
ココヤシ村の人々は目の前の現実を認識し……
「アーロンが倒れたぞ―――――――――――――ッ!!」
蛮姫の時と違い、歓喜の大喝采を上げた。
コヨミは撮影を終えたカメラを下げ、瓦礫の上に立って呟く。
「アレらを相手に、犠牲者を出すことなく勝ったか。これは……本物だね」
Tips
ルフィとゾロ。
『三千世界』からの打ち上げ→ゴムゴムのバズーカ(一瞬だけ武装色の覇気が仮発現)の連携攻撃。
サンジとウソップ。
それぞれがタイマンしているようで、互いにきちんと援護しあった。
鋼芯鉛星はオリ技。
クロオビ
背中の傷が敗因。
チュウ
慢心……環境の違い……
アーロン
憎しみと恨みと怒りで滅茶苦茶になった彼は、最後に何を見たのか。
ハチ
ちょっと悲惨過ぎだったか。
ナミ
100巻以上続く原作の中で、麦わら帽子を託されたことがある唯一人の女。やはりルナミなのか。
ベアトリーゼ。
オリ主。
突然現れた大量殺人犯がいきなり服を脱ぎ出したら、性的に襲われると思うわな。
クライヴ
マヌケF
元ネタは銃夢の賞金稼ぎクライヴ・リー。名前だけ借りた。
チレン
オリキャラ。金獅子シキに追われている情報提供者。
元ネタは銃夢OVAに出てくる元ザレム人の美人科学者。
ザレムに復帰するため暗黒街の顔役に体を売ったり、イドへの対抗心から凶悪なサイボーグを生み出したり、と自分の目的と感情に正直で、手段を択ばない性質。
もっとも、その自制心の乏しさが命取り。
自身の行いから暗黒街の顔役の怒りを買い、生体標本されてしまった。