彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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ココヤシ村編のエピローグ的な。

佐藤東沙さん、NoSTRa!さん、烏瑠さん、誤字報告ありがとうございます。


87:ココヤシ・デパーチャー

 月光が優しく注ぐ穏やかな夜。怪物の襲撃を受けた傷痕が生々しいココヤシ村は、随分と明るく賑々しい。

 

 戦いの後、村人達は海兵達の亡骸を丁重に埋葬し、重傷のアーロン達に最低限の手当てをし、海軍屯所にあった海楼石製の頑丈な鎖で縛り上げた。まぁ、いっそ殺してしまえという声も少なくなかったが。

 

 そうして、破壊の後片付けやらなんやらをひとまず脇に追いやり、広場で祝いの宴を催している。

 

 一方、宴の喧騒を余所に、村の医院では、老医者が複雑な面持ちで重傷のハチを治療していた。

「ハチの奴がそんなことを……」

 ゲンさんはサンジからハチの事情を聴き、なんとも言えない表情を作った。

 

「和解しろとか、仲良くしろなんて言うつもりはねェ。ただ、あいつはあいつなりに自分のやったことを悔いていて、ケジメをつけるために命を懸けた。その事実だけは認めてやって欲しい」

 サンジが頭を下げた。

 

「認めるさ」ゲンさんは帽子のツバを下げつつ「あいつは私達のために命を懸けた。完治するまで、村できちんと面倒を見てやるつもりだ」

「感謝するよ」

「礼には及ばん」

 ゲンさんは空いたベッドを一瞥し、別ベクトルの何とも言えぬ顔を作る。

「それより、君の仲間達はどうなってるんだ?」

 

 ズタボロだったルフィは、簡単な手当てだけでケロッとしており、今は宴で肉を食いまくっている。

 

 傷口が開き、大出血で死にかけていたゾロはドクターに傷を縫い直された後、酒を飲みに行ってしまった。失った血の量を考えると、点滴に繋がれてしばらくは動けないはずなのだけれども。

 

 ウソップはウソップで左肺を撃ち抜かれるという重傷なのだが、傷口を縫い、化膿止めを塗り終えたら、しれっとゾロと一緒に医院を出ていき、宴に参加している。

 

 訳が分からん……と、ドクターが頭を抱えても無理はない。

 

「ウチの連中は体の作りが普通より頑丈なんでね」

 サンジは小さく肩を竦めた。自分のことを棚に上げた言い草だった。

 

 ルフィはがつがつと料理を平らげ、ゾロはぐびぐびと酒を呷り、ウソップは村人達に尾ひれ背ひれをつけた武勇伝を聞かせていた。ヨサク&ジョニーが村人達と踊りまくり、コヨミが村人達にいろいろ話を聞いて回っている。

 

 その頃――

「今度こそ終わったのね」

「うん。終わったわ」

 ココヤシ村の郊外。穏やかな夜の海に臨む岬。母ベルメールの小さな墓の前に腰を下ろし、姉妹はチビチビと蜜柑酒を舐めていた。

 

「でも、今回のことで、故郷が別の意味で危なっかしいことが分かったけどね。ゲンさん達はともかく、ノジコまで銃を持ち出すなんて」

 ジト目をした妹の指摘に、姉はバツが悪そうに目を逸らし、蜜柑酒を呷る。

 

「……あいつら、良い仲間ね」

「うん。“最高の仲間”になると思う」

 ノジコの優しい言葉に、ナミは面映ゆそうに答え、

「そだ。村を出る前に、この上に刺青を入れようと思ってるの」

 アーロン一味の墨を取り除いた、傷跡が残る左肩を示した。

 

「へぇ。どんな図柄?」

「それはね―――」

 興味を示したノジコへ、ナミは悪戯っぽく微笑んで腹案を打ち明ける。

 母の墓前で、娘達は楽しげに酒杯を傾け、語り合った。

 

       〇

 

 時計の針を少し戻す。

 グランドライン前半、“楽園”にある負け犬の町にて……。

 

 夕陽の照らす汚い港の一角で、ハートの海賊団船長のトラファルガー・ローは不機嫌面を浮かべていた。

「水の補給に失敗したなら、素直にそう言えば良いだろう。なんで誤魔化した」

 

「キャプテンに怒られたくありませんでしたっ!」

「キャプテンに叱られたくありませんでしたっ!」

 双子みたいにそっくりな二人組ペンギン&シャチが正座して、反省してるんだかしてないんだか分からない言上を返した。

 

「お前らはまったく……水の補給に失敗したとなると、航海の予定が狂っちまうな」

 ローは溜息交じりにぼやく。

 

 ハートの海賊団は、船舶技術がファジー極まるワンピース世界においても珍しい潜水艦を使用しており、また船内医療設備を充実させている関係からも、真水の貯蔵が非常に重要だった。

 

 どうする。ローが渋面で思案し始めたところで――

 

「クライヴ達が殺られたぞっ!!」「ザパンの奴が死にかけてるっ!!」「得物を用意しろっ! すぐに追うぞっ!」「急げ愚図共っ!!」

 近くに停泊していた海賊船が俄かに殺気立っていた。

 

「? また抗争でも起きたか?」

 団員の一人が小首を傾げる。

 

 海軍が放置している関係上、モックタウンは海賊共が集まり易い。そして、面を突き合わせた海賊共は、些細なことから個々人の殺し合いや団同士の潰し合いまで起こす。

 

「重傷者がいるみたいだ。キャプテン、治療してやる? 水を得る取っ掛かりになるかも」

 正座させられている古参幹部のシャチが提案するも、隣で正座している同じく古参幹部のペンギンが首を横に振る。

「いや。関わらねェ方が良い。あの舵輪とタテガミ髑髏の旗。ありゃたしか“金獅子”の海賊旗だ。あいつら、評判がよくねェんだ」

 

「……“金獅子”か」

 ローは騒々しい海賊船と、その旗を鋭い目で観察する。

 

 ロジャー世代の大海賊“金獅子”シキ。地獄の大監獄インペルダウンから脱獄した唯一人の海賊で、以来消息が定かではない。

 ただし、それはシキが死んだり、引退したといった話にはつながらない。

 なぜなら、金獅子傘下の海賊船があちこちで略奪や誘拐を繰り広げているからだ。明らかに物資を調達し、人材や労働力を確保している。

 

 ――頭目本人は姿を見せず尻尾を出さず、手足に働かせる……か。

 気に入らねェな。

 恩讐の記憶が疼き、ローは鼻息をつく。

 

 ローには計画がある。幼かった頃に必ず果たすと誓った計画が。

 そのためには海賊として名を上げる必要があった。金獅子シキを討ち取ったなら、大いに名が上がり、計画が前進するだろう。

 

 しかし、グランドライン入りした今、もっと力をつける必要を感じていた。自分自身も団も、もっと強くならなければ。

 

 金獅子はまたとない獲物だが……今回は見送るべきか。

 ローが理性的に思考を巡らせていると、

 

「キャプテーンッ!」

「キャップテーンッ!」

 買い出しに出ていたハートの海賊団の紅一点イッカクと、荷物持ち兼護衛として同行していた航海士の白熊――ミンク族のベポが荷物を抱えながら走ってきた。

 

 幅広のヘアバンドを巻き、もしゃもしゃの長髪を垂らしたイッカクの手には、手配書が握られている。

「キャプテンっ! これ見て、これっ!!」

 イッカクが手配書をローへ差し出す。

 

 ローは怪訝そうに受け取った手配書へ目線を移す。他の面々もローの手元に握られた手配書を覗き込み――

 

「キャプテンを逆ナンした美人のお姉さんじゃねーかっ!」

「服の趣味はアレだけど美人のお姉さんだっ!!」

「懸賞金はえーとゼロがひぃふぅみぃよぉ……3億8千万。さんおくはっせんまん!?」

 

 吃驚を上げる団員達を余所に、ローは眉根を寄せ、手配書に掲載されたアンニュイ顔の美女を見つめた。

 

 血浴のベアトリーゼ。

 覚えがある。報道が伝えるところによれば、筋金入りの凶悪犯だ。かつては『悪魔の子』ニコ・ロビンと組んでいたらしいが、ここ数年の情報では単独で活動しているようだ。

 

 一匹狼のお尋ね者か。名を上げるには金獅子よりも“手ごろ”だな。

 そんな考えがよぎるも、武器を手に繰り出していく金獅子シキ傘下の海賊達を一瞥し、連中と噛み合うことは得策ではない、と思い直す。

 

 それに、とローは思考を続ける。

 先立って遭遇した時の様子を考慮すると、血浴屋はかなりヤバい。

 

 あの時の暗紫色の瞳。

 ローをからかいながらも、冷徹にローと仲間達の脅威度を“査定”していた。

 

 世界の残酷さに打ちのめされた経験を持つローには、分かる。

 あれは『クソ地獄の中で生き延びるための観察眼』だ。無自覚に他者を『こいつは敵か無害か獲物か、敵や獲物ならどうすれば殺せるか、殺せないならどうやって対処するか』を思考する怪物の目だ。

 

 あれは、鼠のように臆病で慎重で、狐のように冷徹で狡猾で、狼のように冷酷で凶悪、そういう女だ。

 

 自分なら……勝てる。ローは客観的に分析して判断する。

 だが、勝利の代償は安くは済まないだろう。少なからず仲間達が犠牲になる。

 

 ローは手配書を手にあーだこーだと騒ぐ仲間達を横目にし、即断した。

 “計画”のために名声は欲しいが……こいつらを犠牲にするのは絶対にナシだ。

 

 ”死の外科医”が決断した、直後。

 港の出入り口で、悲鳴と怒号と断末魔の合唱が起きる。

 

「なんだぁっ!?」

 ベポが目を真ん丸にして吃驚を上げ、団員達も慌てて港の出入り口の方へ顔を向ければ。

 

 つい先ほど出撃した“金獅子”傘下の海賊達の一部が惨殺され、鮮血と肉塊をぶちまけている。

 そして、パーカーと短パンと草履という干物女子染みた格好の小麦肌美女が、癖の強い夜色のショートヘアを潮風に揺らしながら、酷薄な笑みを湛えていた。

 

「HVPを確保したし、さっさとズラかろうと思ったんだけど……」

 両腕に装着した木目紋様の肘剣に蒼いプラズマ光を走らせ、美女は嗤う。

「ここでお前らを皆殺しにしておけば、追手を気にせず伸び伸びと移動できると思ってさ。……というわけで、ちゃきちゃき死んでくださいな」

 

 無茶苦茶なことを宣う美女は、手配書の女賞金首と同じアンニュイな美貌をしていた。

「“血浴”屋」

 ローが険しい顔で呟いた傍らでは、

 

「あんなヤバい美人のお姉さんに逆ナンされるとか、キャプテン凄くない?」

「ああ。激ヤバ美人に逆ナンされるなんて……流石は俺達のキャプテン!」

「俺達のキャプテンは激ヤバ美人も魅了しちまうぜっ!」

 ペンギンとシャチがベポに続き、他の面々もやんややんやと囃し立てる。

 

 ローは帽子のツバを深く下げて唸った。

 こいつらは力を強くする前に、賢くした方が良いかもしれない。

 

 

 

 で。

 

 

 

 東の海。ココヤシ村で祝いの宴会が催されている夜。

 グランドライン前半にある負け犬の町は、いつにも増して喧騒に包まれていた。

 原因はこの日の午後、高額賞金首“血浴”のベアトリーゼが大立ち回りを繰り広げ、金獅子傘下の海賊達を血祭りに上げたためだ。

 

 結論から言えば、生存者は重傷者4名。他は全員が惨殺された。

 彼らの所持品は金歯や血に汚れた下着まで街の乞食達に強奪され、周囲の海賊達によって乗り手を喪った船やオタカラや物資の奪い合いが発生した。

 

 モックタウンの喧騒は、そんな降って湧いた“祭り”の余韻だ。

 そして、“祭り”を起こした張本人はしれっと姿を消していた。

 

「血浴屋め。鬱陶しいことに巻き込みやがって」

 ローは潜水艦ポーラータング号の甲板で仏頂面を浮かべている。

 

“血浴”のベアトリーゼは“金獅子”傘下の海賊達を瞬く間に殲滅した後、遠目に様子を窺っていたロー達に気付くと、

「あら、格好良いお兄さんと愉快な仲間の皆さん。これから出港? 気をつけてねー」

 ベポ達に返り血塗れの手を振り、ローには艶めかしい投げキッスを送って寄越した。

 

 心底迷惑そうに顔をしかめるローを余所に、暢気なハートの海賊団の面々はベアトリーゼに手を振り返したり、エッロぃ投げキッスを送られたローを囃し立てたり。

 

 そうしてベアトリーゼが悠々と去った後、ロー達は全滅した金獅子傘下の海賊船の略奪競争に巻き込まれ、街に居た賞金稼ぎや海賊達から『オメェら、血浴の仲間かぁ!!』と誤解著しい因縁をつけられ……結局、水の補給もままならぬまま、騒ぎから退避せざるを得なかった。

 

「気の良いお姉さんだったね、キャプテンッ!」

「……ベポは誰の話をしてるんだ?」

 隣でニコニコしているベポに、ローは思わず皮肉も返すも、ベポは気にした様子を見せずに続けた。

「あのお姉さん、戦ってる最中にずっと嫌な音を出してて困ったよ」

 

「……嫌な音?」ローは片眉を上げて「そんなもの聞こえなかったが……」

「人間には聞こえない音域の超音波って奴。俺、ミンク族だから聞こえたんだ」

 ベポがプリチーなクマ耳を摘まむ。

 

 ローは顎先に指を添えながら、考え込んだ。

 海賊共が戦闘中、不意に調子を崩したように見えたが……血浴屋が不可聴域の超音波を発していたせいか。それで三半規管や自律神経を乱した? 技? いや悪魔の実の能力か? だとしたら、何の能力だ?

 

 沈思黙考を始めたローへ、ベポが名案を思いついたとばかりに明るい顔で言った。

「そだ、今度あのお姉さんに会ったら、クルーに誘おうよ、キャプテ――え、何その顔っ!? すっごい嫌そうっ!!」

 

      〇

 

 優しい月光の注ぐ宵の口。

 嘲りの町、郊外にて。

 ベアトリーゼが握る子電伝虫から、馴染みのある貴婦人の声が届く。

『御苦労様。ベアトリーゼ。首尾はどう?』

 

「HVPの確保成功。とりあえずの追手は殲滅したわ」

 ベアトリーゼがさらっと報告すると、電伝虫の向こうで貴婦人が悩ましげな溜息をこぼした。

『……やりすぎ。まぁ良いわ。配達先はサイファー・ポール(ウチ)秘密拠点(ブラックサイト)よ。そこで受取人にHVPを渡して』

 

「ブラックサイトはどこ?」

『貴女の行きたい場所のすぐ傍よ』

 ステューシーは、どこかからかうように告げた。

『ロッキー島。砂だらけのサンディ島の傍にある、岩石だらけの島よ。貴方に渡したアラバスタ行きのエターナルポースを使って近海まで行けば、後は“玩具”の念波誘導で辿り着けるわ』

 

「そいつはいいね」

 ベアトリーゼが声を弾ませると、電伝虫の先から寂寥感が伝わってくる。

『……ニコ・ロビンと再会したら、もう会えなくなるわね』

 

 「どうかな?」ベアトリーゼは子電伝虫相手に肩を竦め「私はロビンと一緒にいたいけれど……それが叶うとも限らない」

『? それはどういう――』

「また連絡するよ」

 訝るステューシーを放りだすように通話を切り、ベアトリーゼは子電伝虫を装具ベルトのパウチへ収めた。

 

 そう。ロビンが麦わら一味に入るとしても、自分も入れるとは限らない。

 入団の是非はこちらではなく、向こうが決めるのだから。むしろ、現状の悪名と立ち振る舞いを考えると、拒否されてもおかしくないんだよなぁ……。

 ま、その時はつかず離れずの距離を保って、彼らの活躍を見物させてもらおう。

 なんにせよ、アラバスタでロビンと再会し、主人公様としっかり知己を得ておきたい。

 

「ねえ……これから、どうするの?」

 ほったらかしにされていたHVPことチレンが、おずおずと声を掛けてきた。

 

 妙齢……とはいえ、30前後の成熟した美女。目鼻立ちの整った顔貌。亜麻色髪のセミショート。メリハリのある体つきをハイネックのサマーニットと膝丈スカートで包み、船旅用のコートを羽織っていた。荷物はギュウギュウに詰め込まれたボストンバッグ一つだけ。

 

「あんたをサイファー・ポールに届ける」

「サイファー・ポール? 貴方、賞金首よね?」

 疑念の目を向けてくるチレンへ、ベアトリーゼは物憂げな微笑を返す。

「言ったろ。蛇の道は蛇さ」

 

「……信用はしない。でも、付いていくわ」

 チレンは猜疑と警戒を解かない。だが、大海賊に追われる身として背に腹は代えられない。

 

「それで良い。物わかりの良い荷物は歓迎だ」

 くすりと喉を鳴らした後、ベアトリーゼはチレンの格好を見回して、言った。

「とりあえず……その恰好は駄目だな。濡れても大丈夫な服を調達しないと」

 

 チレンは目を瞬かせた。

 

      〇

 

 麦わら一味はココヤシ村の後片付けを手伝いつつ、船旅に備えて支度を進めていた。

 

 ルフィはハチを見舞ったり、村人と後片付けしたり(余計に仕事を増やして困られたり)、村の子供達と船着き場でコヨミの愛鯱チャベスと遊んだり(乗せてもらおうとして溺れたり)。

 

 重傷のゾロは、寝て食って酒飲んでを繰り返し。

 

 ナミはノジコと共に実家を直しつつ、一味の資金を基に旅の計画と航路を計算し。

 

 サンジはナミの航海案を基に、近隣の町へ食料の買い出しに赴き。

 

『蜜柑の木をメリーに何本か積みたい』というナミの無茶振りに、ウソップが村の船大工と共に知恵を捻り。

 

 ヨサク&ジョニーは村人達に交じって後片付けと再建作業に従事し、爺ちゃん婆ちゃんから孫の婿にと誘われて困り顔。

 

 コヨミは村民達への聞き込み――特にアーロン達の手当てを行った、村医者の話を丹念に聞き込んでいた。

 

 そうして二日の休養と準備を終え、麦わら一味は出立の時を迎え――

「ここに居たのか。そろそろ出発するぞ、ナミ」

「ルフィ」

 左肩に蜜柑と風車のタトゥーを入れたナミの元に、ルフィがやってきた。

 

 ルフィはナミの背後――海へ臨む岬に建つ簡素な、だけど綺麗に整えられ、風車と真新しい花が供えられた墓を捉え、言った。

「墓か……えーと、ごしゅー……ごしゅーちょ、いや違うな。そうだ! ごしゅーぎさまです」

「御愁傷様?」

「それだ!」ルフィはナミと墓に向かって「御愁傷様です」

 

「ありがと」

 ナミは微苦笑してから、右手の人差し指と中指に口づけし、墓にそっと触れる。

 行ってくるね、ベルメールさん。

 

「それじゃ、行きましょうか」

 ナミが柔らかな笑顔で促せば、

「おうっ!」

 ルフィは太陽のような笑顔を浮かべた。

 

 2人は肩を並べて船着き場へ向かって歩き始め、

「ヨサク達とコヨミは、一緒に来ねェんだってよ。俺、まだチャベスに乗ってねェのに」

 唇を尖らせるルフィ。割と本気でチャベスに乗りたいらしい。

 

「能力者は海に嫌われるんでしょ。潜水服でも着ない限り無理よ」

 ナミは、化け物トビウオを駆る蛮族女を脳裏に浮かべた。

 

「潜水服……っ! そういうのもあるのか!」

 ルフィは名案を知ったと言わんばかりに、目を輝かせる。

 こいつはホントに……。ナミはルフィの笑みに釣られて、その美貌を綻ばせた。

 

 ・・・

 

 ・・

 

 ・

 

「おせーぞ、お前ら」

 甲板上からルフィとナミへ乗船を急かすゾロ。

 

「ルフィっ! テメェ、ナミさんと二人きりでお散歩デートとか、そんな羨ましいこと……許さねェぞっ!!」

 ゾロの隣でサンジが激しく憤慨しており、

「迎えに行っただけだろ。てか、ジャンケンで負けたお前が悪い」

 そんなサンジの隣で、ウソップがツッコミを入れた。

 どいつもこいつも、二日でけろりと治ってやがる。急速再生(リジェネ)能力持ちかもしれない。

 

「楽しんでこい」ノジコが告げ、

「ナミを泣かせたら許さんぞ」ゲンさんが父親顔で睨み、

「いろいろお世話になりやした」「また会える日を楽しみにしてやす」

 別れを告げるヨサク&ジョニー。

「またいずれお会いしましょう」

 手を振るコヨミ。海面に顔を出すチャベス。

 

「出発だ―――――――――――――っ!」

「じゃあね、みんなっ!! いってくる!!」

 ルフィが号令し、ナミの笑顔を振りまいて。

 帆にいっぱい風を受け、ゴーイングメリー号が進みだした。

 

      〇

 

 麦わら一味と入れ替わるように、海軍の軍船がココヤシ村へ到着した。

 彼らは重傷で口の利けないアーロン達の身柄を確保。破壊し尽くされた屯所に絶句し、村民達に埋葬された海兵達の真新しい墓へ敬礼し、葬礼と弔砲を行う。

 

 軍船の指揮官であるプリンプリン准将は兵士達に屯所の再建を命じ、ゲンさんを始めとする村の要職にある者達や、”偶然”居合わせたという世界経済新聞の記者コヨミから事情聴取を行った。

 

 そして、プリンプリン准将から海軍屯所玉砕の緊急報告を受けた東の海総司令部は、海軍本部に連絡。

 

 東の海にて――

 賞金1500万の“道化”バギー、

 賞金1700万の“首領”クリーク、

 何より、海軍屯所を壊滅させた賞金2000万の“ノコギリ”アーロン。

 

 これらを打ち破った事実から、この新米海賊を危険視し、賞金を懸けることを決定。

 全世界に手配書が発布された。

 

『麦わらのルフィ。賞金3000万ベリー』

 




Tips
オリ主の影が薄かったココヤシ編終了。

ハートの海賊団
原作キャラ。
ローを除く面々はおそろいのジャンパースーツを着ている。

 トラファルガー・”D”・ワーテル・ロー
 船長。
 冷静沈着キャラ……と思わせておいて、プライドが高く、煽り耐性がかなり低い。
 ルフィやキッドのような唯我独尊タイプに振り回され易いようだ。

 ベポ。
 白熊のミンク族。航海士。彼のツナギだけオレンジ。

 ペンギン&シャチ
 双子みたいにそっくりだけど、双子じゃないらしい。実はハートの海賊団最古参組。

 イッカク
 もしゃもしゃした髪の美人。ハートの海賊団唯一の女子船員。

 ポーラータング号。
 なんと潜水艦。ワンピ世界は本当に何でもアリやな。

プリンプリン准将。
 原作キャラ。
 本来なら、魚人海賊団の強さを示す演出でリタイヤさせられるワンポイントキャラだったが、本作では蛮族女による改変で生き延びた。


ザパン
 前話で顔面を削ぎ剥がされたマヌケJ。
 元ネタは銃夢に出てくる賞金稼ぎ。
 ガリィに因縁を吹っ掛け、転落人生を送った。最期はマッドサイエンティストによって……


ベアトリーゼ
 オリ主。
 弱い連中ばかり相手にしてきて、調子に乗り気味。
 そろそろ強敵と当たって慢心を思い知るかもしれない。
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