彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
佐藤東沙さん、金木犀さん、烏瑠さん、NoSTRa!さん、誤字報告ありがとうございます。
ウィスキーピークを目前に、ミスター・9とミス・ウェンズデーが忽然と姿を消していたが……麦わら一味は特に気にすることなく島へ向かい、日暮れの迫る港へ船を入れた。
と、住民がわらわらと港へ集結して熱烈な大歓迎。果ては町長自ら挨拶にやってくる。
しかし――
「あんたもか」
ナミは町長を名乗るカール髪の大柄な中年男へ、底冷えする目線を浴びせた。
「マッ!?」
まったく予期していなかった再会に直面し、ウィスキーピーク町長イガラッポイ――かつてナミに対して旅の学者イガラッポイを名乗ったイガラムは、冷汗をだらだら流し始めた。
「……そっちの事情に首を突っ込む気は無いから、安心して良いわよ。“町長さん”」
「お、お気遣い痛み入ります」
ナミの冷ややかな眼差しを浴び、イガラムはごくりと生唾を呑み込む。怪訝顔のルフィ達へ引きつり気味の笑顔を向けた。
「ま……ま~♪ マ~♪ ゴホンッ! ここウィスキーピークは海の冒険者達を歓迎し、もてなすことが伝統なのです。今宵はあなた方の冒険の話を肴に、宴の席を設けさせていただけませんかな?」
「「「喜んで――――ッ!!」」」
ルフィとウソップとサンジが肩を組んで快諾した。
「三バカめ」とナミが目を覆い、「ちっとは警戒しろよ」とゾロが至極真っ当なツッコミを入れるが、浮かれる三人の耳には届かない。
そして、街をあげての大歓迎会が始まった。
麦わら一味は散々に飲み食いし、散々に騒ぎ、航海の疲れも手伝って寝入ってしまう。
“住民達の狙い通りに”。
ウィスキーピーク。
グランドライン入りした新米海賊共を狙い撃ちする賞金稼ぎ達の街であり、今は秘密犯罪会社バロックワークスの縄張りの一つである。
ビビもイガラムもナミの扱い――ベアトリーゼの縁者に不義理な真似はしたくないという心情と、祖国を救うため非情にならねばならない――という現実に頭を悩ませつつも、バロックワークスの一員として、周囲と足並みを揃えて一味の捕縛に動く。
賞金稼ぎ達が寝入ってしまった麦わら一味を踏んじばろうとした矢先、ウィスキーピーク入り前にたらふく睡眠を取っていたゾロが、元気いっぱいで現れた。
「仲間は航海で疲れてンだ。寝させておいてやってくれ。なに、俺が相手してやるから、がっかりするこたぁねェぜ」
ゾロは牙を剥くように笑う。
「“バロックワークス”」
「なぜ我が社の名をっ!?」
驚愕する住民達へ、
「昔、お前らの仲間に勧誘されたことがあってな。まあ、その野郎は俺が斬っちまったが」
ゾロは獰猛に口端を吊り上げつつ、腰から刀を抜いていく。ローグタウンで入手した妖刀の三代鬼徹と良業物の雪走。最後に愛刀和道一文字。
アラワサゴ紛争に参加したビビとイガラムは、ゾロが先代のミスター・7を斃した“海賊狩り”だと気付き、顔を大きく引きつらせる。しかし、ここで引くわけにはいかない。
三刀を構え、ゾロが挑発的に嘯く。
「タダ酒とタダ飯の礼だ。命は取らねェでやるよ」
「戯言をっ! 者ども、社の秘密を知るものだっ! 必ず殺せィッ!!」
『おおっ!!』
町長イガラッポイことバロックワークス下級幹部ミスター・8を演じるイガラムは、賞金稼ぎ達に大音声で命じた。
宴の二次会が始まる。
とはいうものの……有象無象の木っ端共に、現時点で既に世界最強の剣士から一目置かれる剣士を、どうこうできるはずもなく。
ゾロにしてみれば、平々凡々な賞金稼ぎ達の相手など、晩飯後の腹ごなし程度のことに過ぎない。
言葉通り、誰一人命は取ることなく、あっさり賞金稼ぎ達を叩き潰してしまった。
ただ、ゾロが殺しを避けた本当の理由は、もちろん飯の礼のためではない。賞金稼ぎ達の命を奪えば、バロックワークスも本気で麦わらの一味を殺しにかかる。相手の規模と手の内が分からぬまま、一線を越えることは不味い。という判断だった。
それに、確認したいこともあった。
「お前とお前。ウチの航海士と顔見知りらしいが、どういう縁だ?」
ゾロは階段に腰を下ろして酒瓶を傾けながら、ぶちのめした町長イガラッポイとミス・ウェンズデーに問う。
細かいことは気にしないというか、大雑把というか……ともかくそんな船長を担いでいる以上、副船長である自分が目を光らせておくべきだ。それがゾロの考える役割の在り方だった。
「察するに」ゾロは顎先を撫でながら思案顔を作り「ナミが泥棒稼業をしてた頃に縁を持ったか、あるいは……」
ゾロは鋭い目つきで推理を披露した。
「血浴のベアトリーゼ。奴絡みだ。そうだろ?」
ビビとイガラムの強張った表情が、推理の正解を告げていた。
〇
『ミス・オールサンデー。ボスはミスター・8とミス・ウェンズデーが我が社に潜入したスパイという報告を受け、両者の抹殺にミスター・5とミス・バレンタインを派遣しました。既にウィスキーピーク入りしています』
ニコ・ロビンは電伝虫から届く直属の部下による報告を聞きながら、水陸両用亀のバンチでウィスキーピークに向かっていた。
ミスター・8とミス・ウェンズデー……アラバスタ王国護衛隊長とアラバスタ王女にはまだ死なれては都合が悪い。特に後者はベアトリーゼが目を掛けているのだから。
それにしても……とロビンは眉をひそめる。正体を知られたからといって、迷わず殺そうとするとは。クロコダイルはアラバスタ王家の血脈を断っても良いという判断なのか。それとも、他に何か考えがあるのか。
「報告、御苦労様」
電伝虫の通話を切り、ロビンは新たな番号を打ち込む。
「ミス・オールサンデーよ。そちらの状況は?」
『ああ、ミス・オールサンデー。こちらから報告するところでした』
ウィスキーピークに潜伏しているロビン直属の部下が、慌てた調子で報告を始めた。
『こちらは今、大騒ぎです。新人海賊を罠に掛けようとしたんですが、返り討ちにされちまって……おまけに、ミスター・5とミス・バレンタインが、ミスター・8とミス・ウェンズデーをスパイとして抹殺しようとしたところ、その海賊達にあっさりやられちまいました』
「へえ……」
能力者であるミスター・5とミス・バレンタインを容易く撃破できるとなれば、その新人海賊達の実力は相当なものだろう。
「海賊達の詳細は?」
『麦わらの一味という東の海の新人海賊です。船長のモンキー・D・ルフィは先頃、全世界指名手配されました。懸賞金額は3000万ベリー』
「D……」
失われた100年同様、謎に包まれた一族。
ロビンは思わず口端を緩める。
聖地に移り住まなかった王の末裔が、Dの名を持つ海賊と関わりを持つかもしれない……か。よくよく数奇な運命を背負っているようね、御姫様。
「御苦労様。状況に変化があり次第、連絡して」
通話を切り、ロビンは冷徹に思案する。
まずは件の一味と接触してみましょうか。御姫様を託せるなら良し。そうでないなら、こちらで確保しなくては。
御姫様に死なれてはいろいろ都合が悪い。それに……始まりの20王家に属するネフェルタリ家はポーネグリフ以外にも、情報を持っている可能性がある。カードとして押さえておくべきだろう。
「バンチ。速度を上げてちょうだい」
『ウィ』
テンガロンハットを被り、葉巻をくわえたカメは大きく頷き、亀とは思えぬ快速を発揮し始めた。
〇
「事情持ちだとは思っていたけど、まさか一国の御姫様と護衛隊長様が自ら潜入捜査してたとはね。なるほど、そりゃ素性を隠すわ」
夜も更け、未明を迎えたウィスキーピークの一角。
ボムボムの実の能力者である爆弾人間ミスター・5、自身と触れたものの軽重を操るキロキロの実の能力者ミス・バレンタイン、バロックワークスの上級幹部ペアを撃破した後、ナミとルフィとゾロは、同ペアの襲撃から保護したミス・ウェンズデーことアラバスタ王女ネフェルタリ・ビビから話を聞いていた。
月光の注ぐ街角で、ナミは小癪な胸を抱えるように腕組みし、呆れ顔をビビへ向ける。
「しかし、無茶するわね。普通は密偵とかにやらせるもんでしょうに」
「ベアトリーゼさんにも言われたわ」
懐かしそうに微笑み、ミス・ウェンズデーことネフェルタリ・ビビは表情を引き締め直し、麦わらの一味へ語る。
「恩賞の話だけど、無理よ」
ナミが保護の謝礼として10億ベリーの恩賞を要求した件に、ビビは首を横に振った。
「今のアラバスタには余裕がないの」
「? 金がねェのか?」ゾロが片眉を上げ「グランドラインでも上から数えた方が早い大国なんだろ?」
「アラバスタはバロックワークスによる王国乗っ取り工作によって国土を酷く荒らされ、地方では内乱が始まってるわ。仮にバロックワークスを倒しても、国民の救済と国土の復興に大金がかかる。いくらあっても足りないのよ」
「予想以上に切羽詰まってるのね」目論見が崩れたナミが、口元をへの字に曲げる。
「そんで、その黒幕ってのは誰なんだ?」とルフィが軽い調子で尋ねる。
「ボスの正体!? ダメ、ダメダメッ! それは聞かない方が良いわっ! それだけは言えないっ! 知ってしまったら、貴方達も命を狙われることになるもの」
血相を変えて首を横に振るビビに、ナミもうんうんと首を縦に振る。
「一国を乗っ取ろうなんて奴だもんね。間違いなくヤバい奴に決まってるわ」
「ええ。貴方達がいくら強くても、王下七武海の一人、クロコダイルには敵わないわ。知らない方が……あ」
「言ってるじゃねーか」
凍りつくビビとナミ。しかめ面のゾロ。あーあと言いたげに微苦笑するルフィ。
それと、やりとりをじっとりと見守っていたラッコがさらさらと一同の似顔絵を描き、ハゲワシに乗って飛んでいった。
「すっごく絵が上手なラッコさんねー……」ナミはハッとして「ちょっと、今のラッコとハゲワシは何ッ! あんたが私達に秘密を喋ったこと、報告しに行ったんじゃないでしょうねっ!?」
「ごめんなさいごめんなさい。つい、口が滑っちゃって……」
胸倉を掴まれたビビが、肯定の謝罪を口にする。が、怒り心頭のナミはがっくんがっくんと、ビビを揺さぶり続ける。
「“つい”で済む問題かぁっ!! グランドライン入りした途端、七武海に狙われるなんて冗談じゃないわよっ!!」
「七武海が相手か。盛り上がってきたな」
「ああ、面白くなってきた!」
「黙ってろ、人外共っ!!」
ナミが暢気に笑うゾロとルフィへ、罵倒を浴びせていると、
「皆様方は追手が掛かる前に脱出を。自分がビビ様に扮した囮として時間を稼ぎますっ!」
イガラムがやってきた。
どういうわけか女装して。
「……いや、無理があるだろ」妥当なツッコミを入れるゾロ。
「なっはっはっはっ! おっもしれーおっさんだなっ!」爆笑するルフィ。
「どいつもこいつもバカばっかり……」膝を抱えてイジケ始めたナミ。
麦わら一味の反応を無視し、イガラムは策の説明を始め、
「私がエターナルポースで一直線にアラバスタを目指し、追手の目を引きます。その間に、皆さんはビビ様を連れ、通常航路でアラバスタへ向かってください。島を二つ三つ越せば、着くはずです」
不安顔のビビを落ち着かせるように歯を見せた。
「祖国で会いましょう」
それは命を懸ける意味を知っている漢の笑顔だった。
女装していたけれど。
そして、ビビ達が見送る中、イガラムが帆船で出航し――
港を出た直後に爆沈した。
夜の海を焼くように沈んでいく帆船を、少年少女達は唖然と見つめることしかできない。
ルフィとゾロは踵を返し、強く踏み出す。
「おっさんは立派だった! 行くぞっ!」
「ルフィはウソップとサンジを頼んだ。俺は船を出す準備を進めておく」
「おし、任せろ。ナミ、ビビ、急げっ!!」
「! 分かったっ! ビビッ! 行くわよっ!」
ルフィの指示で我に返り、ナミは燃え盛る帆船を凝視し続けるビビの肩を掴み、ビビが血をこぼすほど唇を噛み、眼前の事態に耐えていることに気付く。
この娘、強い……っ!
ナミは母性本能のままにビビを強く、そして優しく抱擁する。
「大丈夫、大丈夫よっ! 私達が必ずアラバスタに送り届けるから!」
〇
サンジとウソップは酒に酔って気持ちよく寝ていたところを、ルフィにゴミ袋の如く引きずられながらメリー号まで連行された。右も左もどころか訳も分からぬまま『今すぐ出港する』といわれ、当然ながらブー垂れた。
が、ゴツンゴツンッ! とナミの拳骨で”説得”された。憐れである。
「カルーが居ないわっ!? ここに置いていくわけにはいかないのに……っ!」
愛馬ならぬ、愛鴨が見つからないことに慌てるビビ。
「おい、どうした?」
何事かと質すゾロへ、ナミが説明する。
「カルガモが居ないんだって。口笛で呼べばすぐに来るらしいんだけど」
「こいつのことか? 俺より先に乗り込んでたぞ」
ゾロの隣に、騎乗カルガモのカルーが現れ『クエッ!』と翼を振る。
「「どういうことよっ?!」」
ビビとナミのツッコミがシンクロした。
正しくドタバタしながら、ゴーイングメリー号は出港。空が白み始め、朝靄が立ち込める湾を進み始めた。
直後。
「いい船ね」
テンガロンハットを被り、レザーの上下を着た黒髪碧眼の美女が、いつの間にか後部船楼の手すりに腰かけていた。
麦わら一味の面々が驚愕する中、
「なんで……あんたがこんなところにいるのよっ!」
ビビが刃鞭を収めた両腰のホルスターに手を伸ばしながら、怒気を発する。
「だ、誰!? あいつ、バロックワークスの追手!?」
おっかなびっくり状態のナミに、ビビはいつでも刃鞭を抜ける体勢のまま説明した。
「ボスのパートナーよ。バロックワークスでボスの正体を知っている唯一の人間。私とイガラムはあの女を探ることで、ボスの正体を知ったの」
「精確に言えば、探らせてあげたのよ」
優美に微笑む美女を睨み、
「そんなこと知ってたわっ! そのくせ、ボスに私達の正体を告げたのも、あんたでしょっ! いったい何が狙いなのっ!? 目的は何ッ!? 答えなさいっ!」
ビビは獅子のように吠えた。
「ミス・オールサンデーッ! いえ、ニコ・ロビンッ!」
「ニコ・ロビン!? あの女がっ!?」
予期せず“血浴”のベアトリーゼの親友である”悪魔の子”ニコ・ロビンを前にし、ナミは驚愕に目を剥く。
「? 誰だ?」「知らねェ」「美人なオネェ様だ」「ヤバい雰囲気ビンビン感じる」
一方、無知な野郎共は気楽に構えていた。いや、ウソップだけは正しい反応をしているか。
「目的、ね」
綺麗な右手人差し指で顎先を撫で、ロビンはからかうように口端を緩める。
「滅びる国のために頑張る御姫様に御褒美をあげたの。健気でイジらしくて可愛いから」
「バカにして……っ!」
激昂したビビに向け、ロビンが危険な冷笑を浮かべた、その刹那。
ルフィを除いたクルー達が、ロビンの気配に“動かされる”。ウソップがパチンコを構え、サンジが慣れぬ手つきながら拳銃を構え、ゾロが和道一文字を抜き、ナミが素早く長棍を組み立てて構えた。
「物騒ね」
ロビンが疎ましげに眉を下げた瞬間、クルー達の身体からたおやかな腕が生え、全員の武器を取り上げ、その場に組み伏せた。
「なんだこりゃあっ!?」「う、腕っ?! 腕が生えてる!?」「悪魔の実かっ!?」
取り押さえられて狼狽する面々を見回し、ルフィがロビンを睨みつけた。
「おい……俺の仲間に手を出すなっ!」
「争うつもりはないわ」
ロビンが微笑むと、同時に腕が花弁のように消散して面々が解放され、神秘的な美貌に似合う碧眼をルフィへ向けた。
「貴方が船長さん?」
「そうだ! 俺はモンキー・D・ルフィッ! 海賊王になる男だ!」
ルフィが清々しいほど堂々と名乗る。
「素敵な夢ね」
ロビンは柔らかく目を細め、
「でも、このままだとその夢は叶わないわ。貴方達のログポースが示す先はリトルガーデン。とても危険な島よ。今の貴方達では命を落としてしまうでしょうね」
懐からエターナルポースを出し、ビビへ投げ渡す。
「その指針を使えば、アラバスタの近くにある島に行けるわ。航路もウチの社員が知らないものだから、追手も来ない」
「なんでこんなものを」と戸惑うビビやナミ達を余所に、ルフィがビビの手にあるエターナルポースを握り潰し、ロビンへ啖呵を切った。
「お前が俺達の進路を決めるなよっ!」
「ふふ……威勢のいい子は好きよ」
ロビンは微苦笑をこぼし、コツコツとブーツを鳴らして舷側へ向かい、
「生きていたらまた逢いましょう」
海へ飛び降りた。
「マジか!? 能力者なのにっ!?」
面々が急いで舷側に駆け寄ってみれば、ロビンはドデカいカメの背に組まれた座席に座り、メリー号の許から離れていた。
「亀の乗り物だ! 俺も乗ってみてェ!!」「あんなのもあるのか」「グランドラインってスゲー……」「美人だったなぁ」
ロビンを見送る野郎共は緊張感が続かない。
「あれが“悪魔の子”ニコ・ロビンか……ベアトリーゼから聞いてた話と全然違うじゃない。アレのどこが『優しくて知的なお姉さん』よ。危険な能力者じゃないの!」
「初めてあの女の素性を知った時、私もそう思ったわ」
ぷりぷりと憤慨するナミに、ビビは表情を和らげた。
かくて、麦わらの一味はビビを保護したことで、王下七武海サー・クロコダイルが率いる秘密犯罪会社バロックワークスと決定的に敵対したのだが……ビビとナミ以外に危機感を抱くものは、一人もいなかった。
〇
麦わらの一味が次の島リトルガーデンへ向かって航海を始めた頃。
絨毯爆撃みたいな雹の嵐が続くゴッカン島では、趣の異なる美女2人が航海計画を練っていた。
亜麻色髪の毛先を弄りつつ、チレンが情報を提供する。
「シキは気象学者や流体力学者なんかを大勢集め、いろいろな道具や機材を揃えていたけれど、結局のところ、メルヴィユは風や大気の影響をダイレクトに受けるわ。乱流や悪天候に対して非常に脆弱なの」
ベアトリーゼは癖の強い夜色のショートヘアを描き上げ、アンニュイ顔をしかめさせた。
「もっと早く言ってよ。そうすれば、ここの嵐に捕まらないルートが採れたのに」
「貴女は私の話をまったく聞かなかったじゃないっ!」チレンはご立腹。
「さて、向こうの事情を踏まえたうえで、どのルートが良いかな?」
お叱りを聞き流し、ベアトリーゼはしれっと宣う。
チレンは腹の虫が収まらぬと言いたげな顔つきのまま、海図へ目線を落として案を挙げる。
「私が覚えている限りだと、この南西方面へ回っていけば、シキの追跡を振り切れると思う」
「いや、そっちは時間が掛かり過ぎる」
ベアトリーゼは麦わら一味の動向を考慮しつつ、海図を指先でなぞる。
「回るなら、この北西ルートだ。こっちなら南西ルートの半分の日程で行ける」
「本気?」チレンは目を瞬かせて「そこの海域がなんて呼ばれているか、知らないの?」
「知ってるよ」
暗紫色の瞳を楽しげに細め、ベアトリーゼは事も無げに応じる。
「白骨海域だろ」
『白骨海域』
魔の三角海域フロリアン・トライアングルに並ぶ、グランドライン前半の危険海域である。
Tips
ナミ
オリ主との絡みによるバタフライエフェクトを発揮し、アラバスタ主従を困らせている。
ビビ
ゾロ戦でメマーイダンスをしたかどうか? 今は神のみぞ知る。
ロビン
原作通り、麦わら一味と接触に成功。ルフィの屈託ない様子に初期好感度が高め。
ベアトリーゼ。
懲りない。
チレン。
振り回され続ける人。
リトルガーデン&ドラム王国編はオリ主の影響が乏しいため、ほぼ原作通り。
地の文でざっくり流す予定。