彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
少しだけ時計の針を戻す。
嵐が吹き荒れる深夜の白骨海域。
「時化に巻かれた時はちっと焦っちまったが……風に乗っちまえば嵐だろうと関係ねェ。ジハハハハッ!!」
暴風雨の夜空に傲然と浮かぶ島船。その船首に立った金獅子のシキが高笑いを響かせる。暴風雨に晒された長い金髪が濡れそぼりながらも乱れ、鶏冠のように頭へ刺さっている舵輪に絡まっていたが、誰も指摘しない。
「それで――」
シキは荒れ狂う真夜中の海に展開する白塗り蛮族達を睥睨し、片眉を上げた。
「あのイカした連中はなんだ?」
「この辺りの原住民みてェですが……情報はありません」と船員も首を傾げる。
「昔、ここへ来た時ゃあ、あんな連中は居なかったが……まぁいい。チレンとベイビーちゃんはここに居る。奴らが知って……」
シキが『――るなら聞き出すか』と続けようとした矢先。
眼下の白塗り蛮族共がボートや林立する白骨の上から、錆びた銃や怪しげな弩などを撃ち始めた。攻撃は島船に届かず、仮に届いても無意味だったが、その小賢しい敵意はシキの不興を買う。
「おうおう……元気が有り余ってるみてェだな」
乱れた金髪を撫でつけながら、シキは船員達へ冷徹に告げた。
「挨拶を返してやれ」
『アイアイサーッ!』
船員達が獰猛に応じ、島船の両舷砲列が慌ただしく準備を進めていく。各砲の班長達が音頭を取り、砲兵達が艦砲のケツにある砲尾開閉器を開け、弾頭と炸薬を装填して固く締める。照準手がハンドルをグルグル回して最大俯角を取り、砲口を眼下の蛮族共へ向けた。
「全砲、斉射ぁっ!!」
砲術長の号令が下り、全砲の激発縄が引かれ、獅子頭の船首飾りを持つ島船が咆哮を轟かせた。
〇
シキは意図していなかったが……島船の斉射砲撃は、海底を密やかに進んでいたベアトリーゼ達に効果絶大だった。
なんせ水中爆発の衝撃波と音波の伝播は強く激しい。
海底に忍んでいたベアトリーゼ達は、強烈な衝撃と音の圧力波に内臓と感覚器官を打ちのめされた。さながら、ダイナマイト漁に晒された魚のように。
ベアトリーゼは多眼式ヘルメット内で高圧力波のダメージに顔をしかめながら、頭上を見上げた。
「あの野郎、どうやって私達のルートを特定しやがった? チレンのビブルカードか?」
「多分」高圧力波に目を回しながら、チレンが呻く。「ど、どうするの? あんなの耐えられないわ」
ベアトリーゼは返答に詰まる。
爆撃を避けて海上に出れば、シキとこの海域の蛮族に捕捉され、嵐の中を鬼ごっこ。
このまま海中に潜めば、爆撃で圧し潰されかねない。少なくとも、チレンがもたない。
どちらが正解かは分からない。それでも、ベアトリーゼは即断する。
「探りを入れている間はまだ大丈夫。それに、この状況なら多少雑に動いても、海中なら海獣や魚と区別がつかない。奴らがじゃれ合っている今のうちにズラかろう」
スパルタンにサイボーグ化されたトビウオライダーに乗り、ベアトリーゼはチレンに言った。
「行くぞ。しっかり掴まってろよ」
〇
船楼やマストなどが施された岩塊が嵐の空に浮かんでいる。
想定外の闖入者に、ヒューマンガス・ジョーは戸惑いを隠せない。
むろん、長年に渡って『蝿の王』を演じてきただけあって、衆目の前で取り乱したりはしなかったが、それでも思わず目元を擦って二度見するくらいには、驚愕と困惑を覚えていた。
そして、嵐の夜空に浮かぶ岩船から砲撃を受けた今、こちらが圧倒的に不利という事態を理解しており、強烈な危機感を抱いている。
どうする。退くか。しかし、王としてのメンツが……
ジョーが判断に苦心しているところへ、
「ジハハハハッ!」
空に浮かぶ奇怪な船が高度を下げてきて、獅子頭像が飾られた船首から豪快な笑い声が注ぐ。ジョーが久しく聞くことのなかった嘲りの嗤い声が。
容貌”怪奇”な老人が船首に立つ。
老いを感じない立派な体躯を黒と金のゆったりした着物で包み、両足に剥き身の刃という物騒な義足を装着している。それにどういう訳か、禿頭に舵輪が生えていた。
「俺は金獅子のシキッ! じきにこの海を支配する海賊だっ!」
金獅子と称する男は風雨の騒音を蹴り飛ばすような堂々たる名乗りを上げ、ジョー達を睥睨する。口元に嘲笑を湛えながら。
「でェ……? そちらさんはどこのどちらさんだ?」
「控えろ、下郎っ!!」ジョーの部下が叫ぶ。「こちらにおわすは、この白き骸の海に君臨する最強の王、無灯の世を照らすアヤトラ、ヒューマンガス・ジョー様ぞっ!!」
ででんと紹介され、ジョーは反射的に威厳たっぷりの仁王立ちを披露する。骨身に染み付いた演技力である。
「随分と立派な肩書を持ってやがるじゃねェかっ! ええ、おいっ!」
シキはげらげらと嘲り笑う。海賊として長く生きてきた男にしてみれば、ジョー程度の存在など猿山のボス猿に過ぎず、メッキの重ね貼り具合に失笑を禁じ得ない。
しかし、白塗り蛮族達は王と仰ぐジョーを侮られて即座に激昂し、殺意をぶちまけた。額に青筋を浮かべ、眉目を吊り上げ、得物を握る手に力がこもる。
「ほぅ、良く仕込んでるじゃねェの」シキはジョーをねめつけて「そういきり立つんじゃねェよ。テメェらに用はねェんだ」
「……ならば、如何なる目的で我が海を侵したのだ、海賊」
ジョーが厳格な調子で質せば、シキはニヤニヤと顎先を撫でながら応じる。
「俺が探してるベイビーちゃん達がテメェらの縄張りにお邪魔してるようでな。何か知ってるなら、教えてくれっと助かるぜ」
「我が海に侵入者が……っ!?」
ハッとジョーは気づく。悲憤のあまり鼻血を吹き出しながら怨嗟を吐く。
「そいつらか。そいつらが息子を。俺の息子をぉ……っ!!」
「あーん? テメェらもベイビーちゃん達に用事か? どんな事情があるか知らねェが、ベイビーちゃん達のガラはこっちのもんだ。テメェらは手を引け……っ!」
シキは威圧するべく覇王色の覇気を発する。
が、なんと白塗り蛮族共は誰一人として昏倒しない。
当然と言えば当然だ。白塗り蛮族達は死を恐れない。死に怯まない。むしろ戦いの中で死ぬことはこれ以上ない誉であり、歓びである。そんな連中が覇王色の覇気を浴びたところで、強敵と認識し、栄光の死を予感して悦に入るだけだ。
そして、唯一昏倒しそうな人物だったジョーにしても、覇王色の覇気に屈しないほどブチギレていた。
「失せろ、海賊……っ! いつもならば狩り殺すところだが、此度は見逃してやる」
「歌うじゃねェか」
シキは笑みを消し、獲物を前にした獅子のような殺気を放つ。
「俺とテメェ、どっちが強ェか分からねェわけじゃあるまい?」
「貴様こそ、此処が誰の海か分かっておらんな」
ジョーが大きく手を振るや否や、ビッグ・タジンポットの中腹から強烈な閃光が放たれ、一拍遅れて落雷染みた轟音が海に響き渡る。
「! チィッ!!」
シキは即座にフワフワの能力を強め、島船を急上昇させた。直後、船体の下を巨大な質量が通過し、海に着水。
夜闇を吹き飛ばすような爆炎の大輪が咲き、巨大な水柱が嵐の空高くに立ち昇る。
爆発の衝撃波で島船が激しく揺さぶられる中、シキは舌打ちした。
砲弾と爆発の規模から察して、かなり大口径の重砲。しかも、一門だけじゃねェ。俺自身だけならどうってこたぁねェが、島船にゃあ厳しい。
なるほど。奥の手はあるってわけだ。猿じゃなく古狸だったか。
「この嵐の中、その“風船モドキ”で我らに勝てると思うなっ!」
ジョーもまた、島船の回避運動から察した。見た目ほどに機動性は高くなく、挙動が気象条件にかなり影響されるようだ、と。これなら、やりようはある。
「ジハハハハハッ!!!!」
シキは獰猛に哄笑した。
「面白れェっ! ジョーとか言ったか。ベイビーちゃん達を捕らえるのは俺が先か、テメェが先か、ゲームといこうじゃねェか」
「死にたいなら望みを叶えてやるぞ、海賊。侵入者共々、生皮を剥いで敷物にしてやる」
ジョーは受けて立った。
刹那。
水面から半ば突き出している海王類の頭蓋骨の傍らから、怪魚が勢いよく浮上した。
怪魚の背に乗っていた二人組の女が、もがくようにヘルメットのバイザーを開け、風雨の叫び声を掻き消すように、
「「おええええええええええっ!!」」
盛大に吐いた。
シキとジョーと島船の船員達と白塗り蛮族共が、思わず目を瞬かせた。
ビッグ・タジンポットの重砲から放たれた大口径榴弾は、結果として海底に潜んでいたベアトリーゼ達を激烈な高圧力波と猛烈な突発性激流で散々に痛めつけていた。そのダメージたるや、チレンはもちろんベアトリーゼすら嘔吐してしまったほどである。
シキが腹を抱えて爆笑する。
「ジハハハハハハハッ!! 予想外の展開が続きやがるっ!」
ジョーが顔貌を憤怒に染めて絶叫した。
「奴らか。奴らが、俺の息子をっ! 俺の息子をぉ殺しやがったクソ侵入者かぁああっ!」
空で嗤う爺様と水面で怒れる爺様に気付き、ベアトリーゼはヨレた頭を振って無理やり意識をクリアにし、胃液臭い唾を吐き捨てる。
「夜中にボカスカ撃ちまくりやがって……っ! お魚さん達と私達に迷惑なんだよっ!!」
ズレた啖呵に耳朶を打たれ、意識が飛びかけていたチレンが遅れて周囲の状況に気付く。
島船の船首で金獅子のシキが残響を引くほど高笑いしており、白塗り蛮族達の首領らしき老人が貧血を起こしかけるほど激昂していた。
「? ? ? なんなのこの混沌とした状況はっ!?」
そんな困惑と混乱に目を回すチレンへ、
「チレン。俺の下に戻れ。今なら諸々を不問にしてやる」
シキが冷酷な眼差しを注ぎ、次いで、ベアトリーゼに通告する。
「それと、小麦肌が魅力的なベイビーちゃんよ。俺の配下になれ。それなら、俺の手下達を手に掛けた件を大目に見てやろう」
ベアトリーゼは片眉を上げ、肩越しに背後のチレンと目を合わせる。
2人の美女は大きく頷き、揃ってシキへ向かって中指を立てた。
「おとといきやがれ」「地獄に落ちろ」
「こりゃこっぴどくフラれちまったなぁっ!!」
シキはゲラゲラと笑い、獰猛に眉目を吊り上げた。
「まあ、お前らの意向なんかハナからどうでも良い。欲しいもんは力づくで分捕るのが海賊の流儀。美女なら尚のこったっ!」
と、立ち眩みから回復したジョーが絶叫した。
「今すぐ奴らを殺せえっ!! 皆殺しだああああああっ!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
嵐の音色を蹴飛ばすように吠え、白塗り蛮族共がベアトリーゼ達へ向かって襲い掛かり、
「めんどくせーなっ!!」
ベアトリーゼは即座にフルサイボーグ・スーパートビウオライダーを発進させ、
「ゲームスタートだッ!」
シキが島船を動かし始めた。
かくて嵐の夜に
〇
この夜、リトルガーデン島は賑やかだった。
原作考察において、リトルガーデンの出来事は半日足らずのこと。麦わら一味は事件が片付いたら、てきぱきと発っている。
しかし、この世界線においては、事の決着がついた時分、日が沈み始めていた。よって、戦闘後の休息も兼ね、リトルガーデンで一泊して翌朝に発つことになった。
となれば、麦わら一味に宴を開かぬ道理無し。
赤鬼ブロギーと奇跡的に命があったドリーを交えての大宴会である。
「オラァッ! たらふく食いやがれっ!!」
大食らいのルフィに加えて、巨人が2人。鉄火場に参加できなかった鬱憤晴らしを兼ね、サンジが思う存分腕を振るう。
「肉だ――――ッ!!」
恐竜の肉塊に被りつくルフィ。
「ガバババッ! 食いっぷりは俺達並みだな、チビ人間ッ!!」
「ゲギャギャギャッ! 今度の酒は爆発しねェだろうなッ!?」
ブロギーとドリーは上機嫌で饗応され、冒険の話をねだるルフィとウソップに語って聞かせる。
「……食材はともかく、お酒は底を突きそうね」
「酒が無くなるのは困るな……」
物資の在庫を思い溜息を吐くナミ。酒瓶を傾けながら唸るゾロ。
「足をざっくり切ったのに、何で平気で食事できるの?」
そんなゾロに呆れ顔のビビ。隣でカルーが一心不乱に餌を食っている。
夜が更け、戦いの傷と疲れからか、野郎共とカルーがぐーすかと寝入り、ナミとビビはサンジが淹れた紅茶を嗜む。
「アラバスタではミルクで煮出したものと、ミントと混ぜたものが主流なの。王宮では前者がよく飲まれていたけれど、私は後者も好きよ」
カップを両手で包み持つビビが懐かしそうに語る。
「ビビちゃんの国の喫茶文化か。面白そうだ」と料理人らしい興味を示すサンジ。
2人のやり取りを、特にビビの様子を窺い、ナミは瞑目して少し考え込み、決断する。
「……見せたいものがあるの。二日前のものよ」
ナミは懐から取り出した新聞をビビに渡す。
「船の速度は変えられない。不安にさせるよりはと思っていたけれど……知っておくべきよね」
ビビは受け取った紙面に目を通し、端正な顔から血の気を引かせた。
「――!? アラバスタの地方都市で本格交戦!? そんな、これじゃ国中で……」
「そうよ。アラバスタのあちこちでアラワサゴ紛争と同じことが、いえ、もっと酷いことが起きるわ」
「!!」戦慄するビビ。
「アラワサゴ? ……いつだったかそんな名前が新聞に載っていたような」
グルグル眉毛を挙げて訝るサンジへ、ナミが言葉少なに語る。
「イーストで戦争が起きた島よ。規模は小さかったけど……両軍が捕虜殺しをしたり、近隣の島で虐殺が起きたり、酷いものだったわ」
「それはまた……そのアラワサゴよりヒデェとなると……」
顔を強張らせつつ、サンジがビビの様子を窺えば。
「何としても阻止しなきゃ……クロコダイルに国を乗っ取られるどころじゃない。一刻も早く帰らなきゃ、間に合わなかったら、100万人の国民同士が殺し合う大惨劇が起きちゃう」
ビビは新聞をぐしゃりと握り潰し、恐ろしい未来への不安と苦悩と使命感の重圧に、今にも泣きそうだった。
「大丈夫。大丈夫よ、ビビ」
ナミがビビの肩を抱く。かつて母が自分にしてくれたように優しく。自分を支え続けてくれた姉のように力強く。頼もしい野蛮人がいつもそうだったように自信をたっぷり込めて。
「サンジ君が手に入れたアラバスタ行きの永久指針があるもの。私が絶対に間に合わせてみせるわ」
緊張の糸が切れたのか、ビビは無言でナミに強く抱きつく。ナミがその背をあやすように撫でる。
しんみりした雰囲気の中、サンジは腰を上げた。いつもの軽佻浮薄振りが欠片もない爽やかな微笑みを添えて。
「茶請けを用意するよ。元気が出るような甘いやつをね」
「あいつらには内緒で」
ナミはぐーすかとイビキを掻く野郎共と一匹に向け、悪戯っぽく口端を和らげた。
2人のいたわりに釣られ、ビビも笑みを浮かべる。
リトルガーデンの夜は優しく更けていく。
〇
白骨海域の深夜。横殴りの暴風雨に加え、砲煙弾雨が吹き荒れる。
ベアトリーゼとチレンの尻を追い、上空から金獅子の島船が銃砲を撃ち、殺気立った白塗り蛮族達が荒波を駆けていた。
無数の障害物と荒れ狂う波に加え、砲弾と爆弾槍の爆発が水柱を乱立させる。頭上と背後から銃弾と矢箭の群れが絶え間なく降り注ぐ。爆炎の華が咲き乱れ、曳光弾と火矢が波間を跳ね踊る。
危険は海上障害物と荒波と銃砲弾だけではない。暴れる海面下には骨の礁や海藻の密林が潜んでいる。
ベアトリーゼは化物トビウオの背にしがみ付くような深い前傾姿勢を取り、雨と波と水飛沫に視界を遮られながら、障害物だらけの海を能う限りの速度で駆け抜けていく。
降り注ぐ銃砲弾と矢玉を避けるため、乱立する白骨の林間を縫うように走り、荒々しく波打つ水面を滑るように飛び、鞍上で姿勢を動かして荷重を制御し、爆薬の炸裂によって生じる衝撃波と水柱をいなす。
GPライダーさながらにトビウオを深く傾斜させ、膝だけでなく肘まで海面に擦らせて急旋回し。
モトクロスライダーさながらにトビウオを跳躍させ、水飛沫を曳きながら障害物を飛び越え。
対艦攻撃に臨む雷撃機のように水面スレスレを飛翔し、トビウオを横滑りさせて銃砲弾の群れを避け。
防御弾幕へ飛び込む急降下爆撃機のようにトビウオをロール運動させ、銃砲弾の群れを掻い潜り。
大胆にして豪快な疾走疾駆に対し、操縦――スロットルワークと重心移動の荷重制御は緻密にして繊細。限界まで集中しているため、暗紫色の瞳が瞬きを忘れて久しい。
後席でベアトリーゼにしがみ付くチレンは、怖すぎて涙も出なかったし、悲鳴も上げられなかった。
舞うように駆け、踊るように飛ぶ赤黒トビウオライダー。
「逃がしゃあしねェぜ、ベイビーちゃんっ!!」
空から砲声に混じって金獅子の高笑いが降ってくる。
「殺せぃ殺せぃっ! 奴ばら共を皆殺せぃっ!!」
『おおおぉおおおおおおっ!!』
背後から爆発音に混じってジョーの怒号と白塗り蛮族の咆哮が届いてくる。
「”荷物”が無けりゃ返り討ちにしてやるのに」
ベアトリーゼが毒づいた直後。
ビッグ・タジンポットの中腹でキラキラと鋭い閃光がいくつか煌めいた。
“城”の砲列群が放った大型砲弾が嵐を掻き分け、砲撃標定区画D9――ベアトリーゼが飛び込んだ辺りへ降り注ぐ。
「!? 誘いこまれた!?」
ベアトリーゼが咄嗟に退避運動を試みるより早く、嵐の夜空と水面に爆発の大輪が咲き乱れる。
重砲の大口径砲弾の至近爆発により、ベアトリーゼとチレンを乗せたトビウオライダーは軽々とふっ飛ばされ、荒れ狂う波に飲まれた。
「やってくれるじゃねえか、古狸ッ!」
シキを乗せた島船もまた、衝撃波と爆風に煽られて大きく傾ぐ。
そこへ嵐の暴風が襲い掛かり、姿勢を崩した島船はたちまち高度を失って海面間近まで降下。船底が着水し、大きな水飛沫を巻き上げる。
好機とばかりに白塗り蛮族達が鉤縄を投げ、島船に取りついていく。敵の敵は別の敵というわけだ。
海賊と蛮族が繰り広げる死闘。
そこに蛮姫の姿は、無い。
Tips
金獅子のシキ
劇場版キャラ。
久々の鉄火場と深夜のテンションで笑いまくりのレジェンド海賊。
ヒューマンガス・ジョー
オリキャラ。
海賊界のレジェンド相手にも一歩も引かない蛮族の大首領。
麦わら一味。
原作では数時間だけ滞在だったが、拙作ではリトルガーデンに一泊した。当然、宴会も開く。
ベアトリーゼ
オリ主。
ゲロ吐きヒロイン(25歳:独身)。