彼女が麦わらの一味に加わるまでの話 作:スカイロブスター
麦わらの一味が医者を探して海を行く頃。
雲一つない青空の広がる白骨海域では―――
猥雑に立ち並ぶ白骨の森と波間に潜む骨の礁の間を、縫うように激走するトビウオライダー。
乱雑な隊形を組んで化け物トビウオを追い立てる小型快速ボート。暴音でイカレポンチ共を煽り立てる太鼓とガットギターを載せた平船。その背に続く仰々しい武装艇に厳めしい大型ボート。
水面に描かれる幾筋もの白い航跡を辿るように、海上の様子を傲岸に眺めながら傲然と空を進む島船。
意味不明な光景だが、当事者達は真剣で本気で真摯だ。馬鹿馬鹿しいほどに。
白骨海域の外までおよそ一時間強。
命が懸かった約一時間だ。
「! このままだと追いつかれるわっ! もっと飛ばしてっ!」
「これでめいっぱいだよっ!」
悲鳴染みた怒声を挙げるチレンへ、ベアトリーゼは苛立ちを込めて怒鳴り返す。
応急処置でツギハギなトビウオライダーは、何もかも不十分だ。出力も。速力も。機動性も運動性も、飛翔能力も、操縦の反応と応答性も。何より、安定性も。
高出力域までスロットルを開けたら、振動が激しくなって創傷部のあちこちから青い人造体液が滲み始め、呼吸器系に喘鳴が始まる始末だ。
まともに走れないトビウオライダーに向け、武装艇や大型ボート、その後方上空を進む島船から銃撃と砲撃が始まった。
炸裂する砲弾が高々と水柱を昇らせ、飛翔する銃弾が波間を跳ね回る。鉄と炸薬が荒れ狂う中、ベアトリーゼは集中力を極限まで発揮し、操縦技術の全てを駆使してトビウオライダーを激走させる。
水飛沫を掻き分け、爆煙を突き抜け、銃弾の嵐をかわし、砲弾を浴びて砕けて飛散する礁の骨片の嵐を掻い潜り、砲弾を浴びて倒壊する巨骨をぎりぎりで飛び越える。
クソッ! 野犬の群れに追われる兎になったような有様に、ベアトリーゼは苛立ちが募っていく。
徹夜の疲労。体中の痛み。思い通り走れない愛機。背後から迫る野蛮人共の鬱陶しい雄叫びと喧しいトライバルロック。傲然とこちらを見下ろす金獅子の島船。一方的に叩きこまれ続ける銃砲弾。神経をすり減らす逃避行。怯え切って邪魔臭いほど引っ付いてくるチレン。
神経をおろし金で削られているような錯覚。集中力が澱んでいく実感。
ベアトリーゼが臍を嚙んだ直後。
島船の艦砲斉射がトビウオライダーを交叉。四方八方から襲い掛かる轟音と衝撃波。背骨の芯まで痺れそうな圧に肺が震え、背後でチレンが声にならない悲鳴を上げた。
大量の水飛沫が豪雨のように注ぐ中、トビウオライダーの速度が急激に落ちていく。
出力が3割以上伸びず、水を蹴りつける尾の動きにキレがない。よくよく見れば、あちこちの創傷部に加え、鰓の隙間から青い人造血液が出血していた。砲撃の衝撃で損傷したらしい。
ベアトリーゼは舌打ちし、
「予想通りか、ここで一戦やるしかないな」
切り替えた。
情動が凍てつき、暗紫色の瞳が冷たく鋭くなる。
「……チレン」ベアトリーゼは肩越しにチレンを窺い「代われ」
「は?」
この野蛮人は何を言ってるのだろう? チレンは状況を忘れて素で小首を傾げる。
「操縦を、代われ。今すぐ」
戦闘騒音の中でも鮮明に届く、絶対零度の殺意を伴った声色に、チレンが『ヒェ』と悲鳴をこぼす。
「か、代われって……こんなのの操縦なんて」
「スロットル開けて、障害物をかわしながら進むだけだ。やれ」
有無を言わせぬ冷たい暴圧を放ちながら、ベアトリーゼは腰を上げて身を捻り、チレンの襟首を掴んで軽々と持ち上げた。
「ひぃっ!?」
細腕から想像もつかぬ膂力に恐れ慄くチレンを前席へ押し込み、代わってベアトリーゼが後席に立つ。
後ろ腰に下げたダマスカスブレードを抜き、両腕の装具にセット。腰の装具ベルトに挿したカランビットに手を伸ばし、柄頭のリングに指を通してくるくると回転させながら抜き放ち、逆手に握った。
ベアトリーゼは無情動な思考を巡らせ、無機質に状況をまとめていく。
チレンに影響が及ぶ可能性があるため、得意の不可聴域催眠音波は展開しない。
海水で通電する可能性があるため、静電気の発生は慎重を要する。潜水服の背中にある水中呼吸器が壊れたら不味い。それに、万が一にもトビウオライダーに通電したらどうなるか分からない。
使える得物は、覇気。接触時に絞っての能力発動。我流の
敵は眼前に白塗り蛮族の軍団。その後方上空に空征く大海賊の海賊船。さらには重砲群の砲撃。敵の武器は刀剣類に弩弓に銃砲に爆発物。
味方ナシ。応援の到来ナシ。
背に重要証人を護り、傷ついた愛機が足場。海王類や大海獣の大きな骨が乱立し、骨の礁が波間に見え隠れする。
状況は最悪。圧倒的劣勢で圧倒的不利。
されど空は晴天。風浪穏やか。
死ぬには良い日だ。
宇宙人染みたヘルメットの多眼が、ぎらりと冷酷に光る。
蛮姫は宣言した。
「魚の餌にしてやる」
「殺る気になったか、ベイビーちゃん」
特等席――島船の船首に立って“ゲーム”を観戦していたシキは、凍てついた殺意を嗅ぎ取り、短くなった葉巻を宙へ投げ捨てて嗤う。戦いに臨む獅子のように雄々しく。
「腕前を見せてもらおうか」
「――むぅ」
厳めしい大型ボートの舵を取りながら、ヒューマンガス・ジョーは熱量が一切ない殺気を感じ取り、密かに顔を引きつらせた。だが、相手の逃げ足が鈍った以上、今ここで口にすべきことは決まっている。
ジョーは吠えた。『蝿の王』に相応しく。自身の作った虚像通りに。
「掛かれ掛かれ掛かれェいっ! あの女郎共を殺せィっ!!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
白塗り蛮族共は雄叫びで水面を振るわせ、小型快速ボートの群れが化物トビウオへ迫り――
彼らはベアトリーゼの二つ名の意味を知り、3億8千万ベリーという懸賞金の理由を知る。
〇
白塗り蛮族達が飛び道具を雨霰と打ちかけ、投げかけたならば。
蛮姫は舞う。
武装色の覇気をまとい、漆黒に染まった両手両腕の四刀を振るい、愛機に乗る自分と護衛対象を捉えた矢玉を全て斬り払う。武装色の覇気をまとい、漆黒に染まった爪先で投げ込まれる投槍や爆弾槍の穂先口をひっかけ、投手や他の砲弾に向かって蹴り返す。
血を流しながら駆ける怪魚の小さな鞍上で、蛮姫はプリマドンナのように軽やかに舞い続け、愛機と護衛対象に決して攻撃を許さない。
しなやかな長身の体の線をまったく隠さないタイトな潜水服も手伝って、蛮姫の舞う姿はどこまでも鮮烈に美しい。
白塗り蛮族達の小型快速ボートが直接攻撃を目論んで肉薄してくれば。
蛮姫は躍る。
素人が操縦する不安定な足場にも関わらず、新体操選手のように激しく躍り、逆手に握った鉤爪状の刃を振るい、腕に装着した肘剣を走らせる。白塗り蛮族達を斬り。裂き。貫き。抉り。断つ。
悪魔の実を食して宿した異能を発揮する。新体操的躍動のあらゆる姿勢から殺人的高周波を宿した拳打足蹴が放たれ、白塗り蛮族達を殴り潰し。叩き砕き。蹴り千切り。小舟ごと吹き飛ばす。
時に愛機から高く飛翔し、宙返りしたまま乱立する死した巨獣の骨を殴り砕き、落石代わりに蛮族共へ叩きつけ。
時に水面を横転しながら、積み上げられた骨の礁へ高周波振動の強打を撃ち込み、破砕した骨片を散弾の如く蛮族共へ浴びせる。
たおやかに鍛えられた肢体を強調するタイトな潜水服も手伝って、蛮姫の踊る姿はどこまでも苛烈に麗しい。
縦横無尽。舞うように剣林弾雨を避け、かわし、受け流し、いなし、防ぎ、払う。
縦横自在。踊るように斬り。突き。返し。殴り。打ち。蹴る。
あらゆる姿勢で守り、あらゆる体勢から攻め、指一本触れさせず、毛ほどの傷も許さない。
まあ、それでも矢玉が傍を駆け抜け、蛮族達が迫る度、チレンが涙声の悲鳴を上げていたけれど。
蛮姫は演義みたくいちいち御託を並べない。戯画的に必殺技の名を叫んだりしない。
ただ滑らかに躍動し、ただ激しく駆動し、ただ流麗に守り、ただ華麗に殺す。
愛機の航跡は死者の血で紅く染まり、朱く染まった航跡に点々と肉塊と屍が浮かぶ。波飛沫が幾度も蛮姫を洗うも、絶え間なく浴びる返り血が雪がれることはなく。
血に塗れた多眼式フルフェイスヘルメットの顔貌が、正しく怪物に見える。
死を恐れぬ狂信の蛮族達すら、その圧倒的な暴威とその妖美艶麗な暴力を前に、気圧され始めていた。
しかし、死を恐れるという価値観を持たぬ彼らは、恐怖を前にして怯え竦むという本能を拒絶し、歓喜する。
「サイコーの敵だっ!」「俺達は生きて、死んで、甦るっ!」「なんて日だっ! 最高だっ!」
白塗り蛮族達が喜悦の絶叫を挙げた。
「ウィットネ―――――――スッ!!」「ヴァルハーラ―――――――――ッ!!」
狂猛な雄叫びを上げる戦士達や倅達に囲まれるヒューマンガス・ジョーは、密やかに嘆く。
退きてぇ。
一方。
後方上空から文字通り高みの見物をしていた金獅子は、
「最高じゃねェか、ベイビーちゃん……っ!」
支配者気質らしい人材収集欲に駆られ、強者の自尊心が強く刺激されていた。
「気に入った。なんとしてもお前を配下に収めてやるぜ」
にたりとシキが口端を歪めた、刹那。
蛮姫が狭い鞍上で後方宙返りしながら野蛮人達の首を刎ね、そのまま空中でくるりと身を捻り込み、野蛮人達が持っていたサーベルや槍をサッカーボールのように蹴り飛ばす。しかも、御丁寧に武装色の覇気でコーティングして。
蹴り放たれたサーベルは、ミサイルの如く飛翔して白塗り蛮族の戦闘艇を一艇撃沈。ジョーの倅達を海へ叩き落す。
蹴り飛ばされた槍が島船へ向かって疾駆激走、船首砲座へ飛び込み、船首砲座の誘爆を引き起こす。
船首の一部が吹き飛ぶほどの爆発衝撃に、島船の巨体が激しく揺さぶられ、船体のあちこちから黒煙と悲鳴と怒号が広がっていく。
「船首砲座、人員全滅っ! 船体への被害甚大っ!」「船体内各部に火災発生、燃料や砲弾が誘爆するぞっ!」「負傷者なんて後回しだっ! 消火を急げっ! 船が吹っ飛ぶぞっ!!」
「味な真似してくれるじゃあねェの」
シキは大騒ぎする配下達を余所にげらげらと嗤い、表情を引き締める。
「贈り物には礼を返すのが礼儀ってもんだよなぁ」
フワフワの実の力を使い、両足の義足……と呼ぶには剣呑すぎる剥き身の名刀“桜十”と“木枯し”を浮かせることで自身も宙に浮かびあがり、
「! 大親分、出ますっ! 大親分、御出撃っ!!」
甲板長の号令を背に受け、風に乗って島船から眼下の戦場へ向かって飛行していく。
獅子の二つ名を持つ大海賊が、ついに自らゲームへ参じた。
〇
金獅子のシキは海賊らしく暴力性の強い男だが、戦いを愛する気質は乏しい。
そも、シキにとって暴力とは支配するための手段であり、戦闘は支配を確立するための手法の一つに過ぎない。
だから、戦うなら確実に勝つ手法を好む。戦うなら確実に勝つ策を練り、計画を立て、準備を整え、諸々を揃える。そのためなら、何年だって待てるし、耐えられるし、堪えられる。
そして、戦うならば。
勝つために手段など問わない。勝って相手を屈服させ、支配することがシキの悦びなのだから。
ゆえに、シキは基本的に空高く留まり、相手のアウトレンジから一方的に大威力の技を叩き込む。もしくは触れた無機物を能力で武器に変え、やはり遠間から一方的に攻撃する。
フェールセーフが高く、確実性に富んだ手堅い戦術こそ、シキのやり口だ。
「こっからは俺とベイビーちゃんのデートタイムだっ!! テメェらは沈んじまいなっ!」
潮風に乗ったシキはスポーツカイトのように海上を飛びながら、両足に装着した名刀を振るい、海が深々と切り裂かれるほど強力な斬撃を飛ばす。
「
ずんばらりん、と白塗り蛮族達が小型ボードはおろか海ごと両断されていく。
「ウィットネースッ!」「ウィットネス・ミーッ!!」「ヒィイイハ―――――ッ!!」
それでも、死を歓喜と狂信する蛮族は怯むことも恐れることもなく大海賊へ挑んでいく。錆びた銃を撃ち、奇怪な弩弓を放ち、銛や爆弾槍を投げつけ、後先考えずにシキへ襲い掛かる。
「その気概は嫌いじゃねェが……今は邪魔くせェだけだなっ!!」
シキは一気に高度を下げ、波打つ水面に手を浸しながら飛翔し、
「獅子威し“
技の名を叫べば、海面が大きく隆起して巨大な獅子頭に化け、白塗り蛮族の小型快速ボートや戦闘艇を次々と呑み込み、圧し潰して海底へ引きずり込んでいく。
「戦士達っ! 息子達っ! おのーれぇえ―――――っ!!」
ヒューマンガス・ジョーが、超常現象的攻撃によって戦士や息子達を乗せた舟艇が沈められていく様に、プロレスラー染みた体躯を震わせて慟哭する。
「もぉ―――――勘弁ならねェっ!」
ジョーは舵輪傍に置かれた革製の小型トランクケースを開く。
瀟洒な彫刻が施されたライフルド・ピストル。蛋型弾頭は口径30ミリの弾頭重量1600グレイン、総薬量は一般的な小銃弾の5倍を用いる。バカのための銃だ。
弾薬を銃口から薬室へ詰め込み、撃鉄を起こす。
「死にゃあがれ、鶏頭野郎ッ!!」
銃声というより砲声に近い轟音がつんざき、馬鹿馬鹿しいほどの初速と銃口エネルギーを持った大口径弾が放たれる。
「下らねェ」
が。シキは冷めきった顔で吐き捨て、武装色の覇気をまとった漆黒の拳で容易く大口径弾を殴り払った。唖然とするジョーや側近達へ、冷酷な声音を浴びせる。
「誤解させちまったようだな、古狸。お前の大砲は俺の船にとって脅威であって、俺自身にゃあ屁でもねェ。もちろん鉛玉もな」
獅子が虫けらを見るような目付きをジョーへ向け、
「ま。お前とのゲームはそれなりに楽しめた。あばよ、古狸」
両足の刃を激しく振るう。
「獅子・
「海賊如きがああああああっ!!」
ジョーの怒号を掻き消すように、強烈無比な剣閃が荒れ狂う。
瞬間的に切り刻まれた海が大量の水滴群にまで粉砕され、ジョーを乗せた厳めしい大型ボートが文字通り細かく寸断された。物理学の法則に従って海が元の姿を取り戻す際、生じた波濤がジョー達と大型ボートの破砕片を波間に吹き飛ばす。
赤黒く染まった水面を一顧にせず、シキは一直線にベアトリーゼへ向かって飛ぶ。
「さぁ踊ろうぜ、ベイビーちゃんっ!」
〇
白骨海域の現人神に等しい教祖が死んでも、信者達は戦いを止めない。むしろ、信者達は現人神の”帰天”に続かんと一層激しく猛り狂う。
そんな信者達を血祭りに挙げながら、半ベソのチレンが操縦するトビウオの鞍上に立つベアトリーゼは白骨海域からの脱出を目指し、老境の大海賊“金獅子”シキがベアトリーゼに追い迫る。
「邪魔臭い奴」
心底うざったそうに吐き捨てる蛮姫。
ベアトリーゼは右手にソフトボール大の高熱プラズマ球を作り、海面に投げつける。海水を操れるからと言って、海水そのものを浴びて平気とはいくまい。
海面に触れた熱プラズマ球が相転移反応を招じ、強烈な気化爆発を起こす。白塗り蛮族諸共に海面を大きく吹き飛ばし、莫大な海水を空高くまで巻き上げた。
高圧衝撃波に骨の礁がいくつも砕け飛び、巨骨の林が次々と倒壊していき、巻き上げられた膨大な海水が金獅子を呑み込もうと迫る。
「味な真似をしゃあがるっ!」
シキは強烈な爆風に体勢を大きく崩しながらも、両腕を振るって周囲の水飛沫に異能を放つ。
「獅子威し“
水飛沫から生み出された獅子達が、シキを呑み込まんとする大量の海水を逆に平らげて巨大化し、そのままベアトリーゼに向かって襲い掛かる。
「しゃらくさい真似をっ!」
ベアトリーゼは忌々しげに吐き捨て、再び超高熱プラズマ球を作り出して投擲。海水で生み出された巨大獅子を爆散蒸発させた。
衝撃波に強く煽られるシキ。激しく波打つ水面に舵を取られた蛮族達が次々と転覆したり、座礁したりしていく。
そして、パッチワークな化物トビウオもまた、二度の強烈な爆発衝撃によって、さらなる不調へ陥っていた。
「ダメッ! また速度が落ちたわっ!」
チレンの泣き声がベアトリーゼの背を叩く。
もうシキを振り切ることはできない。
このままでは拿捕を免れない。かといって、抗い続ければ、第二次大戦の記録映像――米軍機が日本軍の貨物船や通報船(戦争に駆り出された民間漁船)を空から一方的に嬲り殺す映像――と同じことになるだろう。自分はともかくチレンは確実に死ぬ。
仕方ない。
「海中へ逃げろ」
ベアトリーゼは振り向かずに淡々と言葉を編んでいく。
「この海域外までもうすぐだ。今ならまだトビウオの人造鰓で空気を取り込みながら進めば、脱出できる。その後は海域外の岩礁なり島なりで待て。一日待って私が現れなかったら、電伝虫で
「貴女、まさか―――っ!?」
「さっさと行け」
ベアトリーゼは言い募ろうとするチレンを無視し、化け物トビウオの背から高々と跳躍。付近に屹立していた海王類の骨の上へ立つ。
「昨日今日知己を得たばかりの奴のために、命を懸けるか。そこまで絆されたか。よほど報酬が良いか。それとも、政府に首根っこ押さえられてるのか」
シキは宙で仁王立ちし、海中へ潜っていくチレンとトビウオライダーから視線を切り、巨骨の上に立つ蛮姫を睥睨した。
「ま、何でも構わねェ。俺の下に就くならな。そうすりゃ命だけは取らねェでやるよ、ベイビーちゃん」
「しつこいんだよ、くたばり損ないの老いぼれめ」ベアトリーゼは金獅子へ罵倒を返す。
「敬老精神が足りねェベイビーちゃんだ。確かに歳は食ったが、あっちの方は未だに現役ビンビンよ」
下ネタで高笑いを飛ばし、シキは古豪の大海賊らしい威圧を放つ。
「配下に迎えるなら、しっかり教えておかねェとな。これから従う男がどれほど強くておっかねェかを骨身によ」
「もうハンデは無しだ。お前のくだらない人生にトドメを刺してやるよ、雄鶏ジジイ」
悪罵を吐き捨て、ベアトリーゼは両腕のダマスカスブレードに青白いプラズマを走らせる。
生き残った白塗り蛮族達と、太鼓とガットギターを積んだ平船が巨骨の足元に集まり、金獅子と蛮姫の決闘を彩るように、チャントとトライバルロックを奏で始めた。
Tips
ベアトリーゼ
オリ主。
殺る気満々で大暴れ。最初からやれよ、とか言ってはいけない。チレンが泣いちゃう。
シキ
劇場版キャラ。
ついに暴れ出した。
キャラ考察は異論を認める。
ヒューマンガス・ジョー
オリキャラ。今回で退場。
そりゃ覇気も異能もなきゃあね……