彼女が麦わらの一味に加わるまでの話   作:スカイロブスター

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トリアーエズBRT2さん、佐藤東沙さん、NoSTRa!さん、茶柱五徳乃夢さん、ふーんさん、誤字報告ありがとうございます。


99:粘着気質ジジイの手は長い。

 “元”医療大国ドラム王国へ到着した麦わらの一味は、高熱を発したナミを治療すべく、魔女がいるという巨大な雪山『ドラムロック(標高5000メートル)』を登ったり、その道中に凶暴な人食い大兎達と戦ったり、巨大雪崩に出くわしたり。

 

 元王国守備隊長ドルトンや住民達と交流し、ドラム王国の事情――“黒ひげ”海賊団に襲われた際に国王と重臣その他が逃げ出したことや、現在はドルトンが済し崩し的に国の仮代表を務めていること、医療大国にも関わらず医者がほとんどいない理由などを聞いていたりしていた。

 

 なお、船番としてメリー号に残っていたゾロは何を血迷ったのか、『寒中水泳をしよう』と凍てつく川へ飛び込んで帰ってこない。カルーはいつまで経っても戻らぬゾロを案じ、渋々ながら極寒の川へ飛び込み、漫画のようにカチンコチンに凍った……。

 

 ともあれ、ナミは魔女と人に化けられる青鼻トナカイの治療で回復し、ルフィが青鼻トナカイを気に入って仲間にすべく追い回していたところ。

 ドラム王国へ『国を見捨てて逃げ出した、バカでアホでカスでクソで非の打ち所がないほどの暗君』なワポル君が帰国する。

 

 案の定というか当然の帰結というか、麦わら一味は済し崩し的にバクバクの実の能力者ワポル君一味を完膚なきまでにぶちのめし、ついにはワポル君を文字通り空の彼方にふっ飛ばし――

 今。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 小柄な青鼻トナカイが夜空を見上げて泣いている。

 悪魔の実ヒトヒトの実を食ってしまった“バケモノ”が、ドラム王国の夜空に咲く“桜”を見上げて泣いている。

 

 化学剤で桜色に染められた雪雲と粉雪が、さながら満開の桜が花吹雪を舞わせているような絶景。

 トナカイでバケモノで、卓越した医者であるトニートニー・チョッパーは涙を流し続ける。

 

 偉大なヤブ医者の夢が叶ったことに、歓喜の号泣をあげている。

 夜空に咲き乱れる桜を、”父”と共に見られぬことに哀切の慟哭をあげている。

 

 医術の師匠であり、今や母と変わらぬ魔女の心遣いと思いやりに、感謝の嗚咽をあげている。

 ドクター・ヒルルクの想いとドクター・くれはの思いを受け取り、大声を上げて泣いている。

 

 暗君の暴政によって病み衰えたドラム王国は、麦わらの一味によって病巣を切除され、偉大な男の遺志が花咲いたこの夜、見事に治療された。

 そして、雪夜に満開する桜に見送られ、2人の医師達から最高の心と最高の腕を継いだ弟子が、海へ旅立つ。

 

 新たに船医を迎え入れ、天才航海士が絶好調になった麦わら一味は、最高速度でアラバスタへ向かっていく。

 

      〇

 

 アラバスタに向かう航海中。

 燦々と注ぐ太陽の下。ナミはビビと一緒に後甲板に並ぶ蜜柑の木をお手入れ。

 

「そういやぁ、ナミとビビは知り合いだったんだな。どこで知り合ったんだ?」

 蜜柑の木の傍でチョッパーとじゃれていたルフィが、ふと思い出したようにナミへ尋ねた。

 

「んー? そうねえ……」

 ナミは作業を止め、ちらりとビビを窺う。ビビが首肯を返し、ルフィへ事情を話し始めた。

「私はバロックワークスに潜入していて、東の海のアラワサゴ島紛争に関わることになったの。それで、戦いに負けて島から脱出した後、ベアトリーゼさんにナミさんを紹介されたわ」

 

「私の方も似たようなもん。当時、潜り込んでた海賊船がアラワサゴ紛争のとばっちりで沈められて、遭難してるところをベアトリーゼに拾われて……まあ、色々あってビビと知り合ったわ」

 ハサミと手袋をエプロンのポケットへ収め、ナミは三白眼でビビをじろり。

「その時のビビは旅の学生の振りをしてたのよ? それも育ちが良さそうなお嬢さんの。ところがリヴァースマウンテンで再会してみれば、どうよ。あんな場末の娼婦みたいな恰好で……」

 

「あれは潜入するために変装っ! 好き好んであんな恰好してたわけじゃないわ!」

 ビビが力を込めて釈明する。ミス・ウェンズデーの装いを趣味だと思われたくない。

 

 チョッパーがつぶらな瞳をぱちくりさせ、美少女達へ尋ねる。

「2人ともベアトリーゼってのが共通してるんだな。誰だ?」

 

「賞金4億弱の大悪人よ」ナミは言った「凄く頼もしいけど、いろいろ滅茶苦茶だし、いろいろ雑だし」

「? なんで俺を見るんだ?」

 ナミにジトッとした眼差しを向けられたルフィが小首を傾げる。

 

「すごく良い人よ」ビビは微苦笑しつつ「礼儀正しくて義理堅くて、優しくて、面白くて、凄く頼りになるわ」

「ホントに同じ人物か?」

 説明を聞いて困惑するチョッパーに微苦笑を返し、ビビは胸元に下げたペンダントを見せる。

「それとね、御守りを作ってくれたわ」

 

「綺麗な青色だな」チョッパーはしげしげとペンダントを見つめ、気づく。「ん? これ鉄か? ……すげーなっ! こんな高純度の鉄、見たことねーっ!」

「ナミは貰ってねェの?」無自覚に爆弾を投げるようなことを言うルフィ。

 

「……貰ってない。でもまあ、私は故郷を取り返してもらったし、それで十分」

 ナミは張り合うつもりはないけれど、ペンダントの贈り物に張り合うつもりはないけれど、すまし顔で応じて、美貌を少し翳らせた。

「でもまあ……ベアトリーゼと言えば、ニコ・ロビンよね」

 

「……ええ」とビビも麗貌を曇らせる。

「ニコ・ロビン?」ルフィは思い出して「サボテンの島で会ったイジワル女か」

 

「『悪魔の子』ニコ・ロビン。ベアトリーゼさんは彼女と組んで、西の海からグランドラインに乗り込んできたの」

 ビビの説明にナミが接ぎ穂を足す。

「西の海を牛耳る5大ファミリーを始め、数々の悪党相手に強盗殺人を重ねてね。殺した相手の返り血塗れになるから、ついた二つ名が“血浴”」

 

「こえーよ!! ちょー物騒じゃねーかっ!! ほんとに良い奴なのか、ビビ!?」

「あ、あははは……」

 チョッパーが悲鳴を上げ、ビビは誤魔化すように笑うしかなかった。

 

 ある意味で期待通りの反応を楽しみつつ、ナミが説明を続ける。

「そんなベアトリーゼが無二の親友と認める存在がニコ・ロビンよ。海軍の精鋭部隊に追われた時、ベアトリーゼはロビンを逃がすため、たった一人で立ち向かった」

 

「友達のためか。良い奴だな」とルフィがしみじみと頷く。

「まぁ、ね」ナミは悩み顔を作り「辛辣なことも言ったけれど、ビビのベアトリーゼ評も間違いじゃないの。ただ……あいつは敵やどうでも良い人間と見做した相手には、恐ろしく冷酷非情になれる。何十人、何百人殺したって平気なくらい」

 

 オウィ島の海賊殲滅。アラワサゴ島の海岸線爆撃。アーロン一味の暗殺。ナミが知るだけでも相当な人間を殺傷している。

 ビビも無言で同意した。ベアトリーゼが護送船の海兵達と囚人達を皆殺しにして脱走したことを知っている。

 

「もしも……」

 ナミは密やかに抱いていた危惧を口にする。バロックワークスにニコ・ロビンがいると分かってから漠然と抱いていた不安を。

「私達がニコ・ロビンと事を構えることになったら、ベアトリーゼが敵に回るかもしれない」

 同じ憂慮を抱いていたのだろう。ビビも眉を大きく下げ、密やかに手を握る。

 

 美少女2人が沈鬱な面差しを作り、チョッパーがおろおろし始めた矢先、ルフィがあっけらかんと言い放つ。

「敵になるなら、戦うしかねェな」

 

 こいつってホントに踏ん切りが良いというか、即座に覚悟を完了できるというか……ナミは呆れと感心を抱きつつ、出来の悪い弟を諭すように“優しい”顔を作る。

「私はルフィが強いと思ってるわ。ゾロもサンジ君も、ウソップとチョッパー……はまあ、ともかく頼りにしてる。でも、ベアトリーゼは海岸線を吹っ飛ばすのよ? ルフィみたく地味じゃないのよ? 軽く考えてると危ないわよ?」

 

 ルフィは自尊心を引っぱたかれた気分になり、唇を尖らせてナミに厳重抗議する。

「地味言うなっ! だいたいチョッパーの方が地味だろっ! バケモンになるだけだ!」

 

「そうだぞ。俺はバケモンになるだけ……誰がバケモンだコノヤローッ!!」

「いてぇーっ!?」

 見事なノリツッコミでルフィに噛みつくチョッパー。

 

 ナミが溜息をこぼし、ビビが楽しげにしていると、船楼のドアが開き、

 

「皆、聞いてくれっ!!」

 サンジが全員へ聞こえるように声を張る。

「食料について話があるっ!」

 

 瞬間、ルフィとチョッパーとウソップとカルーが逃げ出した。

 コックと航海士による鉄拳制裁が下るまで、あと少し。

 

      〇

 

 麦わら一味が食糧難で困窮したり、オカマを釣り上げたりしていた頃。

 ベアトリーゼが操縦するツギハギ化物トビウオがふらつきながら、ロッキー島を目指して進んでいた。

 

 道中の雰囲気は悪くない。

「惑星流体力学の観点から言えば、海流が不規則な複雑性を持つことは本来あり得ない」

 ベアトリーゼはトビウオライダーを操縦しながら合いの手を返す。

「まあね。海流は惑星流体だから、星の自転が一方向である以上、回転軸に並行して揃わないとおかしい。それに重力が働いて、地表に対して垂直方向の運動や変化が混ざり合わないはずだ」

 

「ええ。でも、グランドラインに限らず四海も惑星流体力学の理論に反した海流や気象をしてるわ。本来、大気現象や海洋現象は二次元で完結するはずなのに」

「つまり、この星には星の自転や重力にくわえた、第三の要素があると」

 チレンの言いたいことを察し、ベアトリーゼが先を促せば。

 

「ええ。私はレッドラインに第三の要素があると思う。四海の潮流が衝突するリヴァースマウンテン。グランドラインを挟むように広がるカームベルト。一般的なコンパスを無力化するほど強力な磁気を発している島嶼群。これらはレッドラインに由来する『何か』が影響しているとね」

 うーむ、とベアトリーゼはチレンの指摘に唸る。

「万国みたく、御伽噺が顕現したような海域や土地の存在はどう説明する? 菓子で出来た島に、清涼飲料水の海。どういう理屈?」

「その辺りは地質学者達や土壌研究者達へ投げるわ」とチレンは苦笑い。

 

 こんな調子で海上学会をしながら、2人を乗せたパッチワークなトビウオが進んでいく。間違っても本調子ではないから、移動速度は本来の最高速度の三分の一程度だ(それでも時速100キロ以上は出ているけれど)。

 

「ロッキー島まであと三時間ちょいか。この休憩が最後だな」

 ぷかぷかと波に揺られながら、トビウオライダーの背で小休止。ベアトリーゼは長時間の前傾姿勢で首や肩や腰が痛かった。鞍上に立ってヨガ紛いの体操を始める。トビウオ同様につぎはぎだらけのタイトな潜水服がミチミチと悲鳴をこぼす。

「あんまり無理な体勢を取ると破けるわよ」

「ヘルメットもボロボロだしなぁ……」

 ベアトリーゼは多眼式ヘルメットを脱ぎ、まじまじと見つめる。

 多眼のいくつかは割れ、暗視機能などは破損。ハイテクが台無しだ。しかもなまじ未来チックな技術と部品が使われているから、修理も覚束ない。

 

「今の格好は仕方ないけれど、ジャヤに現れた時の格好は確かに酷かったわね」とチレンが意地悪く微笑む。

「どうせ血塗れになるから捨てても良い服で赴いただけだよ」

「それでも、あの芋ジャージはないわ。女を捨て過ぎ」

「捨てた覚えは無いんだけどなあ」

 小休止中にベアトリーゼとチレンは他愛ない会話を交わし、目的の地ロッキー島へ向かって再び進み始めた。

 

       〇

 

 アラバスタ王国があるサンディ島の北側に、ロッキー島という小さな島がある。

 同国の領土であるこの島は、地質学的にあり得ないほど多種多様な岩石に満ちている反面、水源や農耕地に適した土地が乏しい。

 いきおいロッキー島の人口は少ない。というか、島にいる人間のほとんどがアラバスタからやってきた出稼ぎ労働者で、島の主要産業たる石材採掘に従事しているか、石材採掘業の関連者と彼ら相手に商売する者達ばかり。

 旱魃を機に国情が荒れる本土と違い、ロッキー島は平穏のままだ。明かしてしまえば、クロコダイルが無視する程度の島といって良い。

 

 そんなロッキー島に小さな土産物店がある。

 商売っ気のない店で、石材で作られたキーホルダーやら小さな飾り物やらを棚に並べているだけ。販売員もスレた婆様とその甥と称する男の2人のみで、愛想も悪い。小物を製作しているという工房の方は酷く閉鎖的で、周囲から作業の様子を窺うことは出来ない。

 

 さらに言っておくと、婆様が座りっぱなしのレジカウンターには、手元に散弾銃が隠してあり、甥は甥で身のこなしが素人を演じる武芸者のそれだ。

 怪しい。あからさまに怪しい。怪しすぎて周囲は『労働者相手に覚醒剤でも売ってんじゃねぇか?』『いやいや、きっと会員制の闇賭博だ』とか噂している。

 

 そんな怪しげな土産屋に、2人の美女が訪れた。

 一人は亜麻色のショートヘアが映える、三十路絡みの艶然とした美女。

 一人は癖が強い夜色のショートヘアに暗紫色の瞳が印象的な、小麦肌の若い美女。

 

 小麦肌の若い美女……ベアトリーゼが愛想の悪いババアへ言った。

「取引先の貴婦人に贈り物をしたいんだけど、お勧めはあるかな」

 

「ヨルグ! お客様を工房へご案内しな!」

「そげな大声出さんちゅうと聞ごえどるよ、伯母さん。どんぞこつらへ」

 ババアが言えば、甥が美女2人を店の奥にある工房へ案内していく。

 

 案内されながら、ベアトリーゼはこの施設を探る。

 店舗+住居と工房。店舗の方は普通だけれど……店舗から工房へ通じる通路は物が一つも置かれておらず、身を隠すところも一切ない。

 それと、肝心な工房は一見、煉瓦造りの小ぢんまりした建物にしか見えないが……煉瓦が分厚く、全ての窓とドアに銃眼付き鋼板シャッターが備えられている。

 これ、トーチカじゃん。

 

 大型掩体壕染みた工房に入り、作業場の奥にある事務所へ進む。

 いつぞやオイコット王国のレストランで出会った黒人紳士が、上品にお茶を嗜んでいた。

 

 黒人紳士はカップを置き、立ち上がりながら三つ揃えのボタンを締め直し、チレンへ丁寧に一礼する。

「ドクター・チレンですな?」

 

「ええ」

「無事の御到着をお祝い申し上げる。ここからは彼女に代わり、我々が貴女を保護します」

「確実なの?」チレンは不安と疑念を隠さない。

 

「そちらの彼女ほど荒事に長けてはおりませんが」黒人紳士は微笑む。「貴女を密やかに保護する分には釣りが来ます。御心配なく」

「老婆心から忠告しておくけど」ベアトリーゼが横から口を挟み「くたばり損ないの鶏ジジイが襲ってくる可能性は低くないよ。奴らは追跡の精度がやけに高いんだ」

「心得ている。対策済みだ」黒人紳士は小さく頷く。

 

「だと良いけど」チレンは猜疑を隠さない。

「まあともかく、私の仕事は完了だな」

 ベアトリーゼはチレンに向き直り、

「私の仕事はここまでだ。今後の幸運とあんたの復讐が達成されることを祈るよ、チレン先生」

「散々死にかけたけれど、ここまでありがとう、血浴のベアトリーゼ」

 チレンが差し出した手を握り返した。

 

     〇

 

 ロッキー島の夜更け。

『お仕事、御苦労様』

 

 チレンと別れた後、ベアトリーゼは石材のバイヤーなどが利用する宿に泊まり、数日振りに文化的な休息を取っていた。

 ベアトリーゼは宿で美味い飯をたらふく食い、部屋で温かい風呂とシャワーを思う存分に堪能し、薬局でたらふく購入してきた包帯やら痛み止めやら抗生剤やらであちこちの傷や痣の手当てをし終え、下着姿で清潔なシーツのベッドに寝転がりながら、白電伝虫を添えて、“依頼人”と連絡を取っていた。

 

 電伝虫の向こうにいる金髪碧眼の貴婦人へ、ベアトリーゼは嫌みを返す。

「私にシキを殺させるつもりだったんだろーけど、失敗したよ。残念だったね」

 

『あら。何のことかしら』

 間違いなくすまし顔でしれっとすっとぼけているだろうCP0の女諜報員に、ベアトリーゼは悪態を浴びせた。

「食えない若作りババアめ」

 

『まぁ酷い』

 蛮姫の悪口を上品に笑い飛ばし、ステューシーが話を進める。

『玩具と装備一式を酷く損傷したようだけれど、どうする気? 流石に諸々の機材や部品を貴女の許へ届けることは出来ないわよ。直すなら一度“マーケット”に戻ってきてもらわないと』

 

「さてね」ベアトリーゼは天井を眺めながら「とりあえずはロビンと会ってから考える。あんたとの付き合いをどう説明したもんか、頭が痛いよ」

『……私との縁を切らないのね』

 どこか嬉しそうに、どこか切なげに、歓楽街の女王が応じる。

 

 引き締まった腹をぼりぼりと掻きつつ、ベアトリーゼは鼻息をつく。

「政府も海軍も大嫌いだし……故あれば、騙すし、偽るし、裏切りもするけどね。世話になった相手を然う然う無下にする気も無いさ」

 

『利用できるうちは、でしょう?』

「そこはお互い様だろーが」

 高額賞金を科されたお尋ね者が毒づけば、政府の猟犬が麗しく喉を鳴らした。

 

       〇

 

 時計の針を少し戻す。

 空中島嶼群メルヴィユに撤収する際、島船から大きな“棺桶(コフィン)”が投下されていた。

 シキのフワフワの実の力によって少しばかりの浮揚力を得た“棺桶”は、流星のようにグランドラインの空を弾道飛行して着水。

 

 着水衝撃で砕けた棺桶の中からリリースされた、怪人が怒涛の勢いで泳ぎ出す。

 

 チレンの血を浸み込ませたビブルカードを食わされた怪人は、2500万分の1まで希釈された血の臭いを辿る鮫のように、チレンの許へ向かって泳ぎ進む。ガノイン鱗で覆われた皮膚が水の抵抗を滑らかに切り裂き、さながら対艦ミサイルみたいな勢いで。

 

「べあとぉりぃいぜえええ」

 怪人は怨敵の名をこぼしながら夜の波を掻き分け、ロッキー島へ真っ直ぐに突き進んでいく。




Tips

麦わらの一味
 原作チャート通りに進行。
 ナミの治療のためにドラム王国へ赴き、暗君ワポルと大立ち回りを繰り広げ、面白トナカイを仲間にした。

トニートニー・チョッパー
 原作主要キャラ。CVは大谷育江(臨時に伊倉一恵)
 青鼻の小柄なトナカイ。ヒトヒトの実を食ったため、人間化できる。
 マスコット化が進むにつれ、狸と間違われるほど容貌が可愛くなっていく。
 
”万能薬”を志す小さな医者様。なお、その実力は既に超一流の模様。

海上学会
 いんたーねっつ上の情報を参考にしました。誤りがあったら御指摘ください。

ロッキー島
 オリ設定。
 サンディ島の近くにある岩だらけの小さな島で、グランドラインらしく地質学的法則性を無視し、様々な石材が採掘できる。

ブラックサイト
 諜報機関サイファーポールの秘密施設。ガワは土産物屋。実態はトーチカ。

怪人
『べあとぉりぃぜえええ』の発音は、某ゲームの生物兵器が繰り返す『すたぁああず』という発音に似てる。
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