イルルの襲撃から翌日。
俺は再びイルルと出会った場所へと足を運んでいた。
「やっぱりいないよなぁ」
昨日出会った場所に彼女はいなかった。
さすがに、昨日、トールさんと戦ったという事もあって、警戒して、なかなかに出てこないだろう。
「いや、本当に会う気なの、小林」
「そう言ってもな、少し気になる所があってな」
「気になるって、あの子が?」
「ああ」
そう、俺はあることが気になっていたのだ。
だからこそ、本人に会って確かめたい所だ。
そう考えている時だった。
「お前、あの時の」
そう考えていると俺達の前に人影があった。
ふと、見てみると。
「あっ、いた」「いた!」
俺は特に気にせず、ルリはそのまま俺の後ろに隠れるように見つめる。
イルルは、そのまま俺とルリを交互に見て、疑問に思うように首を傾げる。
「人間、なんでドラゴンを庇っているんだ」
「ドラゴン?
あぁ、ルリの事か?」
イルルが疑問に思ったのは、どうやらルリが俺の後ろに隠れた事に疑問に思っているようだ。
「別に答えても良いけど、その代わり俺の質問にも答えてくれるか?」
「ほぅ、交渉のつもりか。
別に良いぞ」
そう俺の言葉に対して、イルルは獰猛な笑みを浮かべながら、言う。
そうしていると、ルリが俺の後ろから声を出す。
「小林、なんでそうやって冷静な訳なの」
「えぇ、だってこれぐらい、別に慣れているし」
このような殺気に慣れないと、正直言って、死んでしまう。
だからこそ、慣れているので、特に気にしていない。
「それで、質問の答えだっけ?
別に大した理由はないよ。
ルリが怖がっているから。
それだけだ」
「ドラゴンで、お前よりも強いのにか?」
「女の子だからな」
その言葉に、少しだけ驚いたような表情をするイルルだったが、すぐに元の顔に戻り、「なるほど」と言って、再び俺達に視線を向ける。
「なら、そっちの女も、同じ理由なのか?」
そう言って指さしたのは、ルリの方だった。
ルリに関しては、最近、ドラゴンの血が混じっているという事もあって、こういうのは慣れていない。
だからこそ、無言で頷くしかなかった。
「まぁ、良い。
それで人間よ。
お前は私にどんな質問をするつもりなんだ」
「いや、イルルが前に言っていた破壊するのが楽しいとか言っていたけど、実際楽しいの」
「あぁ、楽しいねぇ。
それが混沌勢だからなぁ」
「いや、そういう意味じゃないよ。
イルル自身に聞いているんだ」
「なに?」
俺の言葉に疑問に思ったのか、イルルは首を傾げる。
「だって、お前、トールさんと戦っている時だって、無理矢理目を開かせたり、笑みを浮かべながら無理矢理やっているけど、特に面白そうな様子なかったから」
「はぁ、お前何をっ」
そう言いながら、俺はそのまま、ずかずかとイルルの目の前に立つ。
こちらから近づくのに予想外だったのか、以前の獰猛な様子とは正反対にうろたえていた。
同時に俺は真っ直ぐとイルルの目を見る。イルルもまた、俺を見つめ返していた。
そして、しばらくした後、俺が口を開く。
「やっぱり嘘だな」
「何の話をしている?」
イルルは眉間にシワを寄せて不機嫌そうな顔を見せる。
どう見ても、先程までの威圧感は感じられない。
「いや、だって……お前、全然楽しそうじゃないからさ」
「お前に、何が分かる」
「全然、分からないよ。
むしろ、俺が分かる事なんて、ほとんどないよ」
「……そっか」
僕はその言葉を聞いて、何とも言えない表情でいた。
「種の違いとか言うけど、後ろのルリなんて、いきなり龍と人間の混血児だって、この前知ったばかりだぞ。
そんなので、憎しみなんて、生まれるかよ」
「何を言っているんだ。
種が違えば、それがいずれ」
「人間だろうと、生き物だろうと、違う所なんて幾らでもあるよ。
イルルだって、トールさんだって、エルマさんだって、ドラゴンなのに全然違うじゃないか」
「それとこれとは全然違うだろっ」
「違わない。
まぁ、少なくとも、俺の周りで気にする人なんてほとんどいないよ。
第一、イルルは、破壊以外で楽しかった事はあるのか」
そう、尋ねると、イルルは「ないよ、そんなの」と答えた。
その表情には戦いの時に見せた表情はなかった。
「………………」
それに対して、俺は。
「飯、喰うか?」
「えっ、小林」
「何を言っているんだ、お前」
俺の提案に対して、ルリもイルルも驚きを隠せなかった。
「とりあえず、生物共通の楽しみは食事だろ。
丁度、美味しいのがあるから、一緒にどうだ。
まぁ、それとも、怖かったら、別に良いけど」
「ぐっ、良いだろ、どんなのが出たとしても、食べて見せよう!」
そう、イルルは挑発に乗るように、こちらを睨み付ける。
「ちょっ、本当に大丈夫なのっ!」
そう、ルリは俺に言うが。
「まぁ、とりあえず今日の晩ご飯はカレーだから大丈夫でしょ」
「いや、それで余裕な表情を出すな、馬鹿っ!」
そう俺の言葉に対して、ルリはこう答えた。
「俺はそんな事ないと思うけどなぁ。
とりあえずはカレーを作るぞ!」
その言葉と共に、俺達は真っ直ぐと、家に帰る事にした。
「……あそこにいるあいつは、もしかして阿呆なのか?」
「私からは何も」
そう、俺の様子を見たイルルからは罵倒を、ルリは否定せずに言う。
そうしている間にも、家に辿り着く。
その間、俺が毒を入れないか、ずっと睨んでいるイルル。
だが、料理を作っている内に、カレーの匂いに誘われてか、その口からは涎が出ている。
その様子は、既に子供同然であり、見た目相応の子供っぽさであった。
しかし、イルルの言動から察するに彼女はかなり長い時を生きているらしい。
そうしている内に、カレーは出来上がる。
「ほら、召し上がれ」
俺はそう言って自分の皿をイルルに差し出す。
「うーん! この辛さが良い!」
「あぁ……確かに辛いけど、その分旨味も強いからね」
そんな会話をしながら俺達は食事を続ける。
その様子を見ながら、イルルは警戒しながら、そのカレーを一口食べる。
「んっ!!」
イルルは思いっきり笑みを浮かべる。
そのまま行儀は悪いが、一心不乱に、それこそ口の中に入れた瞬間に飲み込むような勢いで食べ続ける。
そしてあっという間に平らげてしまった。
「ふぅ……」満足そうに息を吐くイルル。その様子に俺は思わず微笑んだ。
しかしすぐにハッとした表情を浮かべると、「い、今のなし! 違うから!」と言ってそっぽを向いてしまった。
何が違うのか分からないが、とりあえず俺は笑っておいた。
「この程度で、私の考えが変わると、思うなよ」
この程度でそこまで喜んでもらえるなら作った甲斐があったものだ。俺はそう思いながらスプーンを口元へと運ぶ。
「けど、美味しかっただろ」
「それはっまぁ、良かった」
俺も自分の作った料理を美味しいと言ってもらえることは嬉しい。
「けど、良かったよ。
面白い事が一つ見つかって」
「料理一つで、私の考えが変わるとでも思っているのか」
「思わないよ。
けどね、どんなに小さな事でも、一つずつ見つけたら、きっとそれが何よりも大切な一つになっていくんだよ」
その言葉にイルルは。
「……お前は変わった人間だ。
けど、飯を喰わせてくれた例に、今日は殺さない」
それだけ言って、イルルは
「何時でも来て良いし、泊まりに来ても良いからな」
「っ」
俺の言葉を聞く前にイルルはそのまま出て行く。
「あんな事を言って、大丈夫なの、小林」
「長い間に出来上がった考えは、そう簡単に変える事なんてできないよ。
それこそゆっくりと変えていけば、良いんだよ」
「そういう物か」
そんなルリの言葉を聞きながら、俺もまた頷く。
イルルは2人目のヒロイン?
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あり
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なし