その日、俺とルリは特に目的もなく商店街へと来ていた。
ここ最近で、話題になっている鯛焼きを食べる事を目的にしていた俺達は、そのまま鯛焼きを食べていたのだが。
「んっ、小林さんの弟さんにルリさんじゃないか」
そこには俺達と同じ目的なのか、大量の鯛焼きを持って食べているエルマさんがいた。
何時もの事ながら、よく食べると思い、呆れてしまう。
「エルマさん、またそんなに食べて、給料は大丈夫なんですか」
「うっ…それは、まぁなんとかやりくりしているというか」
俺の一言を聞いて、こちらから目を逸らした。
給料日が少なくなる度に、よく俺の家で食事しに来るので、あまり無駄使いをして欲しくないのだが。
「とりあえず、「おんどりゃああああああ!!!!」あんまり」
「げぼあっ!?!?!?あっ!はむぅ!」
そう、俺が注意するよりも早く、何かが通り過ぎた。
見ると、その横には、トールがおり、どうやらエルマさんを殴り飛ばしたらしい。
「何事!?」
それにルリは思わず叫んでしまった。
それには、激しく同意するが、とりあえず俺はトールの方に目を向ける。
「トール、何をしているんですか?」
「んっ、これは弟さんじゃないですか。
聞いてくださいよ、エルマが私と小林さんの出会いの山を破壊したんですよ!!」
「山?」
そう俺が疑問に思っている間にも、エルマが立ち上がった。
「いきなり何するんだ!折角のたい焼きが地面にでも落ちたらどうする!?」
「えっ鯛焼きの方が重要なの!!」
ルリは思わず突っ込んでしまった。
まぁ、エルマさんは食欲の方が優先されるから。
「ねえエルマ、今朝のニュースでさ、山が」
すると、俺の横から来た姉さんもまたエルマさんに問いかけた。
「山!?そうだ!それなのだ!私も何かあったと思って調査をしてたんだ!私はてっきりトールかと」
「ってことはエルマも違うんだ」
「ちょっと!そこでなんで私が引き合いに出されるんですか!?」
そう言いながら、トールとエルマさんは言い争っていた。
「ルリちゃんは、さすがにないか」
「さすがに山を破壊する事なんて、できませんよ」
俺がそう思うのは至極当然だと思う。
しかし、エルマさんはそうもいかない。トールも。
それだけではなくて、カンナちゃんもまた山を破壊できる程の力を持っている。
「まぁなんにせよ、そのうちわかるさ」
「そうそう」
「うん・・・まぁそうなんだけど」
俺がルリにそう言うと同時に姉さんが同意してくれた。
それには、エルマさんも渋々と頷いた。
するとそこへ──。
「それをやったのは、私だよぉ」
聞こえた声。
見つめた先には、赤い髪、切れ長の瞳孔の深紅の瞳、竜の両手、そして尻尾、マント1枚に下着というとんでもない恰好ではあるが、明らかに人化した竜がそこにいた。
「見つかったか」
「・・・一応聞くけど、知り合い?」
そう、トール達に知り合いかどうか、確認するように確かめる。
「イルル」
トールは、既にその名を知っているようだ。
「混沌勢のドラゴン!?」
エルマさんは驚きつつも、臨戦態勢に移る。
どうやらエルマさんも知っており。
「・・・友好的じゃないよな、どう見ても」
俺は、自然とルリの前に立った。
ルリを庇うように前に出ると、イルルは。
「あぁ?」
まるで疑問に思ったように首を傾げる。
だが、すぐにイルルはこちらに向かって行く。
しかし、イルルに対して、トールが前に出て、対応して、戦いが始まる。
トールは、すぐに被害を出さないように、空を舞う。
「こっ小林、これって」
「ドラゴン同士の戦いだな」
「そう言えば、ルリちゃんはほとんど知らなかったな、ドラゴンには「混沌勢」、「調和勢」、「傍観勢」という3つの勢力に分かれていった。私は調和勢、トールは混沌勢に所属している」
「なんだか、聞いているだけでも物騒なんですけど」
「まぁ、向こうの世界と関わらない限りは関係ないだろ。そして、イルルは混沌勢の中でも最も過激な存在だ。とにかく、破壊を楽しみにしている。きっとトールにつられて来たんだ」
「「あぁ」」
同時に俺も姉さんも、トールに釣られて来た人物の1人であるエルマさんを見ながら、言う。
「それにしても、どうしよう」
「イルルの強さはトールの少し下、それにトールの後ろには町がある。当然ながら不利だ」
「エルマはさ、手伝ってあげないの?」
「私が?小林さん。
トールと私は本来敵なんだ。加勢なんてできない。それに私だけじゃない、他のドラゴンたちもしないだろう」
それと共に、まさにこの状況において、俺達では何もできない事を諭される。
「・・・破壊しか興味ないねぇ」
だが、俺は、あの時、一瞬だけ俺を見た時、どこか、イルルの中に破壊以上の別の興味を見つけられた。
だが、俺はその興味以上にルリを守る事が最優先だと判断した。
それが正しいかどうかはわからないが、今は正しかったと思っている。
しかし、それこそがイルルの興味だった事を知るのはずっと未来のことである。
それと共に、トールとイルルの戦いは進んでいった。
やはりエルマの予想通りだった。
トールは街に配慮しながらの戦い。対するイルルは街に向けて全力で攻撃していた。
今は、トールのおかげで、被害は出ていないが。
「エルマさん、この街を守る結界って、張れるんですか?」
「張れるには張れるが、私が加勢する訳には「お好み焼き」む?」
「たこ焼き、もんじゃ焼き。今度、大阪名物の粉物を作るから、それで対価に」
「・・・じゅるり」
同時に、先程までの真面目モードから一変。
その場で、結界を張り始めた。
「このドラゴン、食べ物に釣られたよ!!」
ルリのツッコミももっともではあるが、これで少しは安心して見ることができる。
それにより、トールは見事に逆転する事が出来た。
そのまま、イルルはトールの手によって、そのままいなくなるが。
「小林?」
「んっ、あぁ、なんでもない」
俺は、なぜかイルルに見られていた気がした。
あの時、一瞬だけ、その目に驚きがあった。
「・・・あれは一体、なんだったんだろうな」
イルルは2人目のヒロイン?
-
あり
-
なし