さてさて。
俺は2人のドラゴン娘を担いで自宅へ向かった。
気絶したままのイルルとルリをベッドに寝かせ、姉さんに連絡した。
「そうなんだ、イルルはそっちに行ったんだ」
「あぁ。どうしようか、姉さん」
そうしながら、電話の向こうにいる姉さんに相談していた。
「まぁ、私がどうするべきかなんて答えられないけど、あんたはどうしたいの?」
「・・・少なくとも、俺はイルルがこっちで誰も傷つけないんだったら、少しでも助けになりたい。何というか、話を聞いていたら、本当にやりたい事をやらせて貰えなかった感じがしたから」
俺がそう言うと、電話越しで姉さんは笑った気がした。
「そっか…だったら、それで良いと思うよ。私もトールも力になるから」
「・・・色々と本当に世話になります、姉さん」
「こっちもトールに家事を教えてくれているからね。まぁ、お互いに協力していこう」
そう言って電話を終えた。
「あっ」
「起きたか?」
俺がイルルの方に近づくと、イルルが目を開けた。
「・・・俺が何をしても、イルルは満足しないかも知れない。けれども」
そうしながら、俺は近くにあったティッシュを持ってくると、そのまま水をイルルに飲ませる。
「うっ」
「焦らず飲むんだぞ」
ゆっくりと時間を掛けて飲ませると、イルルの瞳が潤んでいた。
「ありがとぅ」
それと共にイルルは涙を流す。その姿を見て、俺は一瞬驚きながらも優しく頭を撫でる。
「・・・ずっと苦しかった。本当はもっと皆と仲良くしたかった。けど」
「けど?」
「でも私は混沌勢のドラゴンだし、そんな私はどうすれば良いのか分からなくて」
涙が溢れ出していく。
それと共に俺はイルルの言葉を否定する気はない。
「そうだよな」
「だからっ、どうすればいいか分からなかったの」
「・・・まぁ、俺だって、将来の事は決められない」
イルルの言葉に反論せずに素直にそう答えてしまった俺。
確かに、彼女が抱える葛藤は想像以上に重いものだった。
人間とドラゴンという異なる立場。ましてやイルルのような混沌勢のドラゴンが平穏を求めることは容易ではない。
(でも……だからこそ支えてあげたいんだよなぁ)
そんな思考に耽っていると——突然、彼女が動きを止めた。
「小林っ!」
「ちょっ!?」
勢いよく抱き着いてきたイルルの豊満なバストに顔面を埋めてしまう俺。
柔らかく弾力のある感触が視界を塞ぎ、呼吸困難になる寸前だ。
「わわっ! これ以上はマジで窒息する!」
必死にもがいて何とか顔を出そうとするが、腕と胸がガッチリと固定していて抜け出せない。しかも背中に感じる体温が異常に熱い気がする。
そんな修羅場に突如響く声。
「小林ぃ〜!?」
扉の向こうから聞こえてきたルリの声が部屋の空気を一変させる。
慌てて振り返ると、寝起きでまだボーっとしていたルリがドアを開けて立ち尽くしていた。その視線が俺とイルルの抱擁(という名の捕縛状態)を捉えている。
「え……えぇー……?」
言葉にならない驚きを含んだ呟き。そして次第に口元が引き攣っていく。
「あっ……その、違うんだ! これは事故っていうか!」
言い訳する間もなく、ルリの瞳がキラキラと輝きを増していく。
いや、正確には——嫉妬と羨望が入り混じった複雑な表情で固まってしまった。
「な、なんでそんなにくっついて……!?」
「いやほんとに不可抗力! このイルルが離してくれないだけ!」
必死に弁明する俺とそれを無視してギュウギュウ締め付けてくるイルル。
そして固まったまま目を見開くルリ。
「なっなっなっ……何してるの!!?」
突然沸騰したように顔を赤くして叫ぶルリ。
「わっ!? 落ち着けってルリ! これは誤解だから!」
俺の制止も虚しく、ルリは眼をグルグルと落ち着きなく近づく。
「誤解って!? その状況見てどう誤解しろっていうのっ!!」
「だからっ……イルルがいきなり抱きついてきたから」
「だってぇ、今、やりたい事は、小林といたい。それで良いの?」
「えっ!? なっ、何ですって!?」
ルリが更に仰け反りながら叫ぶ。
俺は必死に説明しようとするが、興奮したルリの耳には届いていない様子。
「うう~ん……小林の匂い……好き……」
さらに密着してくるイルル。今度は耳元で囁き始めた。
「やめてくれぇ~! マジで理性が持ちません!」
その時ふとイルルがこちらを見上げる。
「ねぇ小林、これからどうすればいいのかな?」
不安そうに揺れる瞳。
イルルは2人目のヒロイン?
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あり
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なし