お隣のルリドラゴン   作:ボルメテウスさん

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小林のバイト先

イルルが意気揚々とドアを押し開けると、「いらっしゃいませー!」という威勢の良い声が店内から響いてきた。

 

狭い入り口をくぐると、木の温もりを感じる壁に囲まれた空間が広がっていた。

 

カウンターには数人のお客さんが座り、奥のテーブル席ではサラリーマンたちがビールジョッキを交わしている。居酒屋特有の油と酒の香りが混ざった匂いが漂う。

 

「すごい……これが『いざかや』というものか!」

 

イルルが目を輝かせてあたりを見回す。

 

その横でルリは明らかに戸惑っていた。

 

制服姿の女子高生が入ってくると、一部のお客さんたちがちらりと視線を送ってきた。

 

「いらっしゃいませ!二名様ですか?」

 

女性の店員がにこやかに声をかけてきた。イルルが堂々と答えようとしたが、ルリが慌てて割って入った。

 

「ちっ違います!私たち……ええと、ここで働いてる小林という人に会いに来ました」

 

店員はきょとんとした顔をした後。

 

「ああ!小林君の友達ですね」と笑顔になった。

 

どうやら小林の話はすでにスタッフの間でも知れ渡っているらしい。

 

「今ちょうど休憩中なので、すぐ呼びますよ」

 

少し待っていると、奥からエプロン姿の小林が出てきた。驚いた表情で二人を見つめる。

 

「えっ、なんでここにいるの?」

 

「もちろん、小林の匂いを追ってきた!」

 

イルルが得意げに胸を張る。その説明に小林は半分呆れながらも納得した様子だった。

 

「仕方ないな……せっかく来たなら適当に何か注文して食べてってよ」

 

「本当!?やったー!」

 

イルルが喜ぶ一方でルリは困惑していたが、小林の好意に甘えることにした。

 

メニューを見ながら楽しそうに話し合う二人を見ていると、カウンターの奥からさらに聞き覚えのある声がした。

 

「おや?イルルとルリちゃんじゃないか!」

 

振り返るとそこにはスーツ姿の小林さんとエルマがいた。その後ろには滝谷真の姿もある。

 

「姉さん!?」

 

「まさかここで会うとは思わなかったよ~」

 

小林さんは嬉しそうに弟たちのもとへ駆け寄った。一方でエルマは少し心配そうな顔をしている。

 

滝谷はニヤニヤしながら三人を見つめていた。

 

「これはまた珍しいメンツだね。せっかくだから一緒にどうだい?」

 

滝谷の提案に小林さんは乗り気だったが、エルマは制止しようとした。

 

「おぉ!祭りか!だったら、私もやってみたい!」

 

「えっ、イルル!?」

 

そうして、困惑するルリを余所にイルルは乗り気だった。それを見た小林は仕方ないなと言わんばかりの顔をすると、「だったら案内するよ」と案内をする。

 

(イルルとルリが居酒屋内を見学)

 

店内は意外と広かった。

 

カウンター席にはビール瓶が整然と並び、テーブル席ではサラリーマン風の男性たちが乾杯をしている。壁には日本酒や焼酎の銘柄が書かれたポスターが貼られていた。

 

イルルは興味津々で店内を見回していた。

 

「これが人間の飲み屋か!なかなか豪華ね!」

 

「イルル……興奮しすぎじゃない?」

 

ルリが困惑気味に言うと、イルルはクスッと笑った。

 

「そりゃ初めて見るものばかりだからな!どんな料理があるのか楽しみだ!」

 

彼女の反応に小林は苦笑しながら案内した。

 

厨房では板前さんが手際よく料理を作っている。

 

「小林はここで働いているんだね……」

 

ルリが呟くと、小林は照れ臭そうに答えた。

 

「まあな。でも今日はお客さんとして楽しんでくれよ」

 

やがて彼らの案内により一つのテーブルへと辿り着く。

 

そこには既に小林の姉である小林さんとエルマの姿があり、二人は和やかに話していた。

 

「あっ!イルルちゃん来てたんだね!」

 

「小林君から聞いたよ。驚いたでしょうね」

 

小林さんが笑顔で挨拶し、エルマも軽く会釈する。二人に続く形で滝谷も現れた。

 

「おお、みんな揃ったね」

 

滝谷の登場に小林は一瞬驚いたが、「ちょうどよかった」と小さく呟いた。

 

「実はうちのバイト仲間でね……こうして集まれるのは珍しいんだ」

 

こうして予期せぬ形で五人が揃うことになった。

 

最初はイルルとルリの紹介から始まり、軽く自己紹介が行われる。

 

「私はルリと言います……よろしくお願いします」

 

「イルルだ!よろしくな!」

 

二人の元気な挨拶に小林さんは満足そうに微笑んだ。

 

「素敵なお嬢さん達じゃないの!」

 

こうして食事が始まると自然と話題が広がる。小林は妹たちのことを話しながら料理を取り分けた。

 

しばらくすると、アルコールが進みはじめた。

 

小林さんのグラスはすでに空になりかけている。

 

「もう一杯行っちゃおうよ!」

 

彼女の陽気な声に小林が慌てて止める。

 

「ちょっと姉さん飲みすぎじゃない?」

 

しかし小林さんは全く気にしない様子で更にグラスを傾けた。その隣でエルマは苦笑いしながら注意する。

 

「小林さん……もう十分だと思うが」

 

しかしエルマの忠告も虚しく小林さんはどんどんペースを上げていく。

 

その一方で滝谷はなぜかテンション高くしゃべり続けていた。彼の話は主にゲームやアニメについてだが、時折妙な例えを交えているため周囲の人たちには理解不能な部分も多い。

 

「つまり!今の状況はまさにRPGのパーティー編成と同じでして……!」

 

滝谷が熱弁すると、小林さんはゲラゲラ笑い出す。

 

一方ルリは少し困惑していたものの徐々に慣れてきたようだ。

 

イルルはといえば、そんな騒がしい空気の中で堂々としていた。

 

むしろ楽しんでいるようにすら見える。時折周りの会話に口を挟みながら美味しい料理を堪能しているのだ。

 

そのうちに小林さんは完全に酔っ払ってしまい、何故か突然メイド服の話題を始めた。

 

「やっぱりメイド服って最高だよね~!あの裾から覗くふわっとしたスカートと白いエプロンの組み合わせは完璧!」

 

小林が困惑した表情を浮かべる横で滝谷は大きく頷きながら同意していた。

 

「確かに!特にヘッドドレスの可愛さといったら……!」

 

するとエルマまで乗ってくる始末だ。

 

こうして彼らの会話はどんどん脱線していくばかりだった。

 

ルリとイルルは顔を見合わせると呆れたような表情を浮かべる他なかった。

 

「姉さんって、昔から酒癖がかなり酷いからね、店に来る時はかなり大変なんだよねぇ」

 

「あぁ」

 

小林からの言葉を聞いたルリもまた、納得するように頷く。

 

「・・・そう言えば、小林って昔はどんな感じだったんだ?」

 

「えっ?」

 

すると、イルルは首を傾げる。

 

「んっ、弟の事、知りたいの?」

 

イルルの言葉を聞いた小林さんは、イルルに聞く。

 

すると、無言で頷く。

 

「そうか…そうだねぇ、だったらついでだから話そうか」

 

「ちょっ姉さん!」

 

「おぉ!教えてくれ!!」

 

小林の制止も空しく、姉は話し始める。

イルルは2人目のヒロイン?

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