「よーし! いよいよ遊園地だー!」
日曜日の朝からテンションMAXなイルルの声が響く。俺の家の前にはすでにカンナとルリ、そして今回はなぜか姉の小林達もいる。姉は「暇だから」と言っていたが、多分弟の様子を見に来たんだろう。
「まったく……人が多いところ苦手なんだけど」
ルリは少しむくれた顔でそっぽを向いている。でもその瞳がキラキラしているのはバレバレだ。
「それにしても、遊園地ってこういう所だったのかぁ」
「私もあんまり知らなかったからねぇ」
俺と姉さんはいつものようなペースで話している。
見てみると、既に幾つかのグループに分かれており、姉さんはトールさんと。カンナちゃんは一緒に遊びに来た才川さんと一緒に行くようだ。
「さて、遊びに行くけど、具体的にはどこにするか?」
イルルは遊園地の入口に並ぶアトラクションを指さしながら目を輝かせた。
「わー!ジェットコースターだ!あれ乗りたい!」
「ジェットコースターか、結構ハードだぞ」
俺が心配そうに言うと、イルルはピョンピョンと跳ねながら振り返った。
「大丈夫だ!私はドラゴンだから高さなんて平気だ!」
その自信満々な姿にルリが腕を組んで冷ややかな視線を送る。
「ふん。あんなのに乗ったら死ぬんじゃない?私はゆっくりクルーズ船みたいなのがいいな」
「えー?もったいないぞルリ!絶叫系は人生一度は乗るべきだ!」
イルルがぐいっとルリの腕を引っ張ると、ルリは軽く舌打ちしつつも渋々ついていくことに。なんだかんだでノリがいいんだよな。
ジェットコースターに乗り込む際、イルルが一番前の席を選んだ。
「小林も前の方がいいよな?風を感じるもん!」
そう言われて半ば強引に隣に座らせられる俺。
「おいおい……まあいいけど……」
安全バーが下りる瞬間、イルルが嬉しそうに俺の腕にしがみついてくる。胸の感触がダイレクトに伝わってきて顔が赤くなる。
「ちょっ……!」
「えへへ~楽しみだね!」
満面の笑みで俺を見上げるイルル。反対側ではルリが不機嫌そうにプイッと視線を逸らしていた。
発射ベルが鳴り響き、ジェットコースターが猛スピードで駆け上がる。頂点に達した瞬間──フワリとした浮遊感とともに急降下が始まる。
「ひゃああああ!!」
「うおおおおおっ!!」
耳元で風の唸りと叫び声が交錯する中、隣のイルルがさらに俺に抱き着いてきた。
「こっ小林ぃっ!!」
「おっお前っ!離れろって!風圧で飛ぶぞ!」
「いやぁ!怖いよぉ!」
絶叫しながらしがみつくイルル。俺も必死で掴まるがその豊満な感触が腕に押し付けられて集中できない。後ろからはルリの冷めた声。
「あのバカップル……死ねばいいのに……」
恨み節のようなつぶやきが聞こえた気がしたが、ジェットコースターの轟音でほとんど聞こえないふりをした。
その後はルリの提案でメリーゴーランドに向かうことになった。
「やっと平和なものに乗れる……」
ルリが安堵のため息をつく隣でイルルはケラケラ笑っていた。
「メリーゴーランドもいいね!私も乗る!」
だが今回はペアごとに別々の馬に乗ることになり、俺は自然とルリと一緒に。
「あーあ……なんか退屈かも……」
「そう言わずに楽しもうぜ」
ルリの隣でゆったり揺れる馬に乗ると彼女は無言で俯いてしまう。しかし少しずつ顔を赤らめながらちらちらこちらを見ている。
「……小林ってこういうのも好き?」
「まあ悪くないかな。たまには静かなのも落ち着くし」
「そう……」
しばらく無言で回る中、ふとルリが手を伸ばして俺の袖をキュッと摘まんだ。
「……あのさ」
「ん?」
「さっきは……その……楽しそうだったね……ジェットコースターの時」
声が震えていて俺が思わず顔を覗き込むと彼女は耳まで真っ赤になっていた。
「別に!なんでもないからっ!」
慌てて手を離そうとするルリを俺はそっと引き寄せた。
「ほら、ちゃんと掴まってないと危ないだろ」
「……ッ!!」
俺の言葉に一瞬固まった彼女だったが、最終的には渋々という形で俺の肩に頭を預けてきた。その温もりが妙に心地よくて俺も何も言えなくなる。
最後は3人で観覧車に乗ることになった。窓から見える夕暮れの景色にイルルが歓声を上げる。
「すごーい!こんな高いところから街が見えるなんて!」
狭いゴンドラの中で彼女はぴょんと跳ねるが、すぐさまルリが肩を押さえ込んだ。
「動くなバカ!揺れるでしょうが!」
「だって楽しさが止まらないんだもん!」
騒ぐ二人の間で俺は苦笑い。ゴンドラがゆっくり上昇していく中でルリがぽつりと漏らした。
「……今日はなんか疲れた」
「確かに」
イルルはまだ興奮冷めやらぬ様子で外を眺めている。
「でも楽しい一日だったよね!」
その言葉に俺も頷く。
「まぁ、こうして遊ぶのも悪くないな」
ルリが少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
イルルは2人目のヒロイン?
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あり
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なし