残念ですが女帝との契約は見送らせていただきます   作:嘆きの大平原

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メジロトレーナー座談会的な話。

 

 


トレーナーの集い

「それではこれより、第一回メジロ会議を始めます。進行は私、メジロブライト担当の伊達尚子です。皆様宜しくお願いいたします」

 

 まばらな拍手の中、正真は胡乱な眼差しで周囲を見渡しポツリと漏らす。

 

「なんだこれ」

「まぁうん……言いたい事は山程あるだろけど、気を強く持って欲しい」

「ホントになんだこれ」

 

 呟きを拾った右隣の偉丈夫が苦笑交じりで答えた。確かアンちゃん……メジロライアンの担当で、名前は武井だったか。

 

「まぁまぁまぁまぁ。何せアルダンちゃんの担当が決まったんですから! 目出度い件で僕達が集まらないでどうするんですかセンパイってイダダダダダダダダダ!!」

 

 メジロドーベルが所属するチームのサブトレーナーで、名も知らない新人が無遠慮に肩を寄せて来たのをアイアンクローで迎撃しつつ、正面で茶をしばく室内最年長の男を半眼で睨む。

 

「……で? わざわざ召集かけて雁首揃えた理由を聞いても? 因みにアホみたいな理由だったら右手のコレを砕いてメジロ惨歌しますが」

「そんな歌はない。まぁ落ち着けや、浦河。末広を離してやれ」

 

 手を放し足元で悶絶する末広とやらを一瞥し、それから眉間を揉み解して溜息を一つ。

 

「そこの転がってるのがさっき言った通り、アルダンの担当が決まったとマックイーンから聞いてな? 将来親戚になるモン同士、一度顔合わせてしてもいいだろうと思ってな」

「なにそれきいてないんですけど」

「今言ったからな」

 

 宇宙猫みたいな顔で呆ける同期を気の毒に思いつつ、正真は口を開いた。

 

「野郎はともかく女性はメジロ送りにゃならんでしょう? 多分ですけど」

 

 そもそもメジロ送りなんて所業も存在しない。

 マックイーンの担当である安井の悪ノリに乗っただけである。

 

「俺もお前と親戚になるのは勘弁だ。さておき、真面目な話って奴をしようじゃないか」

「まぁ面通しってのは半分正解、担当のデビュー時期の確認、被る様ならクラシック戦線の大まかな指針の擦り合わせって所ですか」

  

 正真の言葉に安井がニヤリと笑う。

 

「分かってんじゃねぇか。今年はどいつもこいつも上手い事行ってるが、デビューが被れば同門対決どころかメジロ大戦になりかねんからな……まぁ俺はそれも構わんと思ってんだが、生憎ご当主様はそうじゃねぇらしい」

「俺も安井さん寄りですけど、婆様の言いたい事もまぁ分かりますよ」

 

 肩を竦めて正真は続ける。

 

「今学園に在籍してるのはラモーヌは除くとして……アーちゃん、アンちゃん、ベルちゃん、メーブちゃん、パマちゃん、でマーちゃんの6人でしたか。うちんとこ以外で本格化迎えてるのは?」

「パマちゃん……あいや、パーマーはまだかな」

 

 宇宙猫、もとい村瀬が頬をかきながら答えた。

 

「マックイーンにはそういう兆候はねぇな」

「ライアンもかな。当面は体作りがメインになるかなぁ」

「ブライトもまだね。ところで、メーブちゃんってブライトの事?」

「ですね。流石にブーちゃん呼びはホワチャァされますって」

「はいセンパイ! 本格化ってなんです痛い!?」

 

 末広を足蹴にしつつ、正真は「何だコイツ信じられん」と言った目で見下ろした。

 

「お前ホントにトレーナーか? それっくらい購買のバイトでも知ってんぞ」

「いや冗談抜きに痛い!? 一応確認したかったんですごめんなさい! 因みにドーベルもまだだそうですお千代さんが言ってました!!」

 

 お千代さんとはドーベルが所属するチームのチーフトレーナーである。

 

「アーちゃんだけですか。今回は楽させてもらえそうで何より」

「何が楽させてもらえそう、だよ。アルダン一人でも手に余るだろ……あの子の調子はどうだ」

 

 安井の言葉に、正真は肩を竦めてみせる。

 

「ここ一月は、拍子抜けするぐらい安定してますよ。いくらか重めのトレーニングに移行してますけど、それでも疲れの抜けが早いと感じます。初動の苦労ってんなら、ラモーヌの方が手を焼きましたね……まぁ俺の不慣れもありましたけど」

「お前の見立てなら、まぁ間違いねぇか」

 

 正真の強みである観察眼に加え、担当との交流期間の長さが状態の良さに繋がっているのだろう。ある意味メジロアルダン特化とも言える正真の手腕は、皇帝を手掛けたあの女に届き得る。

 

(とは言え……お互い入れ込み過ぎるのも考え物か)

 

 トレーナーはウマ娘のアクセルであり、ブレーキでもある。しかし正真とアルダンの二人は、こうと決めたらニトロとターボぐらいの勢いで突き進むだろう。

 そんな危うさを孕んでいる以上、周囲がそれとなく気を配る必要が出て来る。

 

(ったく面倒くせぇ……本当に勘弁してくれやご当主サマよ)

 

 安井はこっそりと溜息を吐くのだった。

  

 

 




正真:トレーナー業四年目。人間関係(特に後輩の扱い)は雑になりがち。
安井:マックイーン担当。インテリヤクザ風の三十路。正真の師匠的存在。
武井:ライアン担当。正真と同期で、現在チームの設立を考えている。ガチムチ。
末広:ドーベル担当(予定)の新人。言動チャラ目でドーベルとの相性に疑問が残る。
伊達:ブライト担当。正真と武井の1つ上。フィジカルよりロジカル派。
村瀬:パーマー担当。正真の同期で、すぐキャパる。

今回ライトな感じを目指したものの、ニトロ&ターボのあたりで重くなった説。
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