残念ですが女帝との契約は見送らせていただきます   作:嘆きの大平原

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デビュー戦後のお話。



日の射す場所へ

 ──トゥインクルシリーズへの挑戦を今、果たして急ぐ必要があるのか、それをもう一度ご一考いただきたい。以上が私の見解です。

 ──先刻、旦那様と奥様からアルダンお嬢様へお話がありました。曰く、レースの世界で生きることをもう一度考え直してほしい、と。

 ──どうかお嬢様にとって最良の選択を。正真様ならそれが出来ると信じております。

 

「ぶっちゃけ手遅れ(・・・)なんだよなぁ、これが」

 

 メジロ家の主治医の懸念も、アルダンの両親の心配も、婆やさんの願いも。

 どれも彼らの立場や心情を考えれば至極真っ当な言葉であった。

 だが、それら全てはアルダンが足を止める理由には不十分である、と言うのが正真の結論なのだ。

 

「学園から引き離すのが最良だったんだけど……」

 

 そうすればアルダンの安全は守られただろう。彼女自身の心はともかく、と言う話ではあるが。

 自己研鑽を欠かさず、自分と言う片翼(トレーナー)を得て、ターフを駆けてしまった。こうなると彼女が自覚した『熱』は、二度と冷めないだろう。

 

「まぁ、燃料作った俺が言う事じゃないか」

 

 同じく脆い脚を持って生まれた彼女の姉は、他ならぬ自分の手でメジロの至宝と呼ばれるまでに上り詰めた。ラモーヌと言う輝きを強め、アルダンの影を濃くしてしまったのは、自分自身なのだから。

 

「皆には悪いけど、俺は俺なりに責任を取るしか出来ないんだよねぇ」

 

 背を反らして大きく伸びをすると、正真は改めてパソコンに向き直った。

 ジュニア級・クラシック級・シニア級に区切られた各目標。それらを幾通りか設定し、その時々で修正・変更する場合も考えて案を立てていく。

 

「アーちゃんを影に引っ込ませたのは俺、そこから引きずり出したのも俺。……だったら、きっちり輝かせるのが、俺の役目ってもんでしょうよ」

 

 ウマ娘の、メジロ家の歴史に埋めさせる事など決して赦されない。魔性の青鹿毛と呼ばれた姉とは別の、メジロアルダンとしての蹄跡をしっかりと刻み付けてやるのだ。

 そうする事で初めて、抱える罪悪感も薄れるのだから。

 

「ま、薄れるどころか積み重なっていくんだろうけどさ。……はーやだやだ」

 

 自嘲気味な言葉とは裏腹に、正真は笑みを浮かべる。

 自分の渇望は、アルダンが輝くにつれて増していくに違いない。ラモーヌの頃から自覚のあった事だから、これは確実だろう。

 しかしその一方で、妹分がターフを駆け、己の存在を輝かせる様をもっとも近い所で見る事が出来る。その喜びは、何より代えがたい物でもあった。

 

「案外、天職なのかも知れないな」

 

 未来のクイーンメイカーは、そんな事を呟くのだった。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 




 俺達の重力はこれからだ!な尻切れトンボで恐縮ですがここで一区切りとさせていただきます。
 一話分だけの超短文で終わらせるつもりだったのですが、本話で一万文字ぐらいですかね。思った以上に続きましたが、数パターンの展開がどれもいくつかのアルダン引退で共に堕ちるとこまで行きましょうエンドだったので、こんな形になりました。
 一度脳味噌入れ替えて「残念(以下略)」の女帝編かベルちゃん編、もしくは本作の続きが書けたらなぁと思います。

 最後になりますが、アンケートご協力・評価・お気に入り・感想など、皆様ありがとうございました。
 
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