宇宙戦艦ヤマト2202リテイク 作:MinorJunction 太華日
私生活の方で一大事が発生してしまったことと、暫く自分のメインのコンテンツが宇宙戦艦ヤマトから離れていました。
ちなみにこの作品はpixivで投稿している作品を再編集して投稿していますが、あちらではとにかく長さを気にせずに書いていたのがハーメルンでは「長すぎる」と気づいて仇になり……お気づきの方もいらっしゃるかなと思いますが、これまでハーメルンに投稿した回の中では半分に切って再投稿したものもあります。
ぼちぼち再開していこうと思います。
第11話「暗躍する者たち」
プロクシマ3の戦いから2日後。
地球から10光年の距離にあるイプシロン・エリダニ星系。
ここは地球・ガミラス連合艦隊にとっての最前線であり、ガトランティスも攻撃の手を緩めない。
その証と言わんばかりにガトランティスはカラクルム級戦艦100隻を戦線に投入してきており、ここ数日でイプシロン・エリダニ8と7の前哨地点を順番に陥落させてきた。
「地球人め。さっさと母星に尻尾を巻いて逃げればいいものを!」
中央艦隊を率いるカラクルム級戦艦の艦長は上機嫌だった。
無理もない。カラクルム級がこの部隊に投入されてからというもの、地球・ガミラスの防衛拠点として極めて強固だったイプシロン・エリダニ8のステーションはあっという間に破壊できたし、それからたった1日半でイプシロン・エリダニ7の衛星にあった前哨基地も破壊した。
彼の艦隊の周りには撃破した地球軍とガミラス軍の残骸が漂っていたが、そのほとんどにはまだ艦内に酸素が残っているらしく燃え続けていた。
「地球・ガミラス連合艦隊、第6惑星の軌道上に集結中」
「司令官。敵艦隊は反転してこちらに向かってきます!」
「まだ戦うか。それも別に構わないがな!」
イプシロン・エリダニ6号星はガス巨星であり、土星と木星の中間ほどの大きさを誇っていた。それだけに衛星の数もまた多く、地球・ガミラスがカタログ化しただけでこの惑星の衛星は89個もあるらしい。
とはいえ、ほとんどは小惑星のようなものだった。
その小惑星のような衛星やリングを構成している塵や隕石。それらの中を地球・ガミラス艦隊は進む。
「隠れたところで無駄なことを。主砲にエネルギーを集中!」
「敵艦隊、発砲してきました!」
「司令官、正面にいる艦が敵艦隊の旗艦のようです!」
オペレーターの一人が、彼らの艦の前方から迫ってくる地球軍の艦船にフォーカスを合わせて拡大表示させた。
黒い船体に、金色の艦首。艦の前部側面に白い文字で「E.F.S.NAGATO」と描かれているドレッドノート級重巡洋艦であった。
「あれか。その首もらった! 主砲、一斉射撃用意……っ!?」
指示を飛ばそうとしたところで艦が揺れた。
「何事だ!?」
「て、敵機直上!艦中央部の主砲塔破壊されました!」
「馬鹿な、何故見逃した!」
燃えている残骸に加えて、地球・ガミラス連合艦隊は熱源型チャフを次々にばら撒いた。
「敵艦隊が熱源をばら撒いているせいでレーダーが撹乱されています!」
地球軍のコスモファルコン二機と、ガミラスのDWG109デバッケ艦上戦闘機二機による四機編隊が垂直急降下。その内で紫色のデバッケ編隊が対空砲を潰した。
「撃ち落とせ!」
「対空砲も破壊された模様!」
「敵弾さらに来ます!」
次に緑色の二色迷彩が施されたコスモファルコン編隊は回転砲塔を破壊、そして、剥き出しになった基部に遅延衝撃信管を使った対艦ミサイルを撃ち込んでいった。
「……!?」
「爆発しない? 不発弾とは舐めた真似を……!」
残念ながらこのガトランティスの司令官の認識は誤りであり、不発弾ではなかった。
地球軍のドレッドノート級の41cm二連装主砲では相変わらずニュートロニウムの装甲は破れないが、回転砲塔を破壊して基部を露出させれば話は別だ。大型回転砲塔の基部は即ちカラクルム級の艦内に通じている。
遅延衝撃信管が間も無く起爆。さらにニュートロニウムの強固さは艦内爆発をより悲惨にした。
爆発で生じた衝撃波は艦内で反響して破壊のエネルギーを増幅し、それが機関部、もしくは、他にも外側に圧力を開放しやすい場所に届けば、衝撃波がそこを抜けるついでにカラクルム級の船体を引き裂いていくのである。
そして、同じように宇宙の塵になったカラクルム級は彼らだけではなかった。
ガミラスのDMB87スヌーカ急降下爆撃機と迷彩色のコスモタイガーの組み合わせはまさにこの任務に適していたかもしれない。
コスモタイガーが対空砲を破壊し、スヌーカが持ち前の急降下爆撃で大型回転砲塔を破壊、次いでその基部に爆弾を投下。こちらも遅延衝撃信管を使っていて、爆弾の弾頭は硬く、ドリルの様な形をしてカラクルム級の艦内に食い込んでいた。
彼らが退避すると、そのカラクルム級戦艦も大爆発を起こして沈んだ。
イプシロン・エリダニ6に侵攻して来たガトランティス艦隊は、この侵攻作戦の指揮を執っていた部隊だった。その艦隊にはカラクルム級が12隻配備されていたが、それら全てを航空攻撃によって地球・ガミラス連合艦隊は沈めてみせた。
「敵の大戦艦、全艦の撃沈を確認!」
「敵艦隊は混乱しているぞ。全艦隊に次ぐ。反撃開始!」
E.F.S.ナガトの山南艦長はここ数日苦しい戦いを強いられ、大勢の味方も失ってきた。
その鬱憤を晴らすが如く、カラクルム級を失って混乱状態に陥ったガトランティス艦隊に対して反撃の狼煙を上げた。
瞬く間に、ガトランティス艦隊は駆逐されていった。
「敵艦隊が撤退します!」
「追撃は控えろ。今の我々にその余裕はない」
ホッとしたように溜め息を吐く山南大佐。
彼の目の前には、ドレッドノート級の後部を空母仕様に変更したベアルン級戦闘空母「ユーゴスラビア」と、ガミラスからの事実上の払い下げ品であるガイペロン級に地球軍の装備を施したインデペンデンシア級多層航宙母艦「カタンガ」がいた。
その2隻に着艦していくコスモファルコンやコスモタイガー。
デバッケの部隊は、ガミラス艦隊のゲルバデス級戦闘空母「クテシフォン」に着艦した。かつてヤマトが七色星団の戦いで対峙した「ランベア」と同じような紫色の艦色であった。
スヌーカは黒い隊長機を先頭にして、紫色のガイペロン級多層航宙母艦に着艦___いや、この艦こそ、ヤマトとかつて七色星団で戦い、その後惑星シャンブロウにてヤマトと共闘し、ガトランティスとの戦いを生き延びた「ランベア」であった。
フォースフィールドが作動した与圧された艦内に戻り、黒いスヌーカからは、フォムト・バーガー中佐が降りて来た。
彼を出迎えたのは、艦長のネレディア・リッケ大佐だった。
「フォムト、お疲れ様」
「ありがとよ。損失機は無い。地球軍のお陰でな」
彼の言う通り、戦闘に出ていた機は全てが帰還した。駐機スポットにはそれらの機体と操縦していたパイロットたちが一堂に介し、整備員や同僚のパイロットたちと勝利を喜びあったり、労ったりしていた。
それを見ていたネレディアも思わず微笑み、地球のスポーツドリンクに似た飲み物が入ったボトルをバーガーに手渡して彼を労いつつも、少し悔しそうに呟いた。
「……皮肉よね。ガミラスでは航宙母艦の機動部隊なんて化石になりかけている代物だったのに」
「それな……。地球の連中のお陰だ」
今バーガーとネレディアがいるのはランベアの最下層の甲板。ここは着艦と発艦を同時にこなせる全通甲板であり、今はまだブラストドアが閉まっておらず、前にも後ろにも真空の宇宙が見えている。フォースフィールドが無ければ窒息死だろう。
その宇宙空間の先に、地球の艦隊がチラッと見えて、ふとバーガーはついこないだのことのように、惑星シャンブロウでの出来事を回想し、それが終わり現実に戻ると、こんなことを口にした。
「……そういや、小耳に挟んだことだが、この戦術を生み出したのって、あいつらなんだろ?」
「あいつら……っていうと、私たちの知り合いよね。実はそうらしいわよ?」
「やっぱりか。ヤマトの連中がこんな戦い方を考えついたわけか……」
そう言うと、バーガーは手に持っていた残りのスポーツドリンクを口に流し込んで飲み干して溜め息を吐いてから呟く。
「ヤマトか……今連中はどこで何をしているんだろうなぁ?」
「これは山南さんから聞いたけど、ヤマトは1、2週間前か前に地球を飛び立ったって」
「へぇー……連中も頑張ってるみたいだな。さてと……」
下部甲板のブラストドアが閉まるとほぼ同時に踵を返して艦内に戻ろうとするバーガーだが……右へ進もうとしたのでネレディアが呼び止めた。
「どこへ行くの?」
「シミュレーター室だ。今夜もスコアを更新してやるぜ」
すると、ネレディアは語気を強めて大声で言った。
「ダーメ!」
その声に下部甲板にいたクルーたちの注目がネレディアに集まった。
「な、何だよ……?」
「今はしっかり休みなさい!」
自分に注目が集まってるのにネレディアが気付くと矢継ぎ早に他のクルーたちにも命令を飛ばした。
「あなたたちもよ! 次の出撃まで仮眠を取って休みなさい! 今すぐに。艦長命令よ!」
「「「はい、艦長!!」」」
その命令と共に、下部甲板のクルーたちは一斉に艦内に引き上げてしまった。一部からは嬉しそうな歓声まで聞こえる始末である。
なお、バーガーが向かおうとした右の通路の先にはシミュレータールームがあるのだが、左の通路に行くと、食堂やクルー用の仮眠室やロッカールームなどの居住区があった。
「……やれやれ、現金なこった」
「フォムト…バーガー中佐ぁ? 戦闘隊長のあなたが率先して休まないとね?」
「はいはい、わかりました、わかりましたよ、艦長」
そうして諦めたかのようにバーガーも左の通路に進路を変更した。
その頃ヤマトは、地球から1000光年離れた宇宙空間を航行中にあった。
ヤマトはアンドロメダ率いる第一艦隊とはプロクシマ3の軌道上で別れたが、サツマの他に第一艦隊からグナイゼナウとコンゴウがついて来た。
この他にプリンツ・オイゲン級軽巡洋艦のユラ、オオイ、キタカミ、ユウバリ、サカワ。キリシマ級ミサイル軽巡洋艦オオムロ。
これに加えてヴェールヌイ級新型駆逐艦四隻がヤマトに随行していたが、彼らが守るのはヤマトではない。
ヤマト並みの大きさを誇るタンカー船が6隻、この旅についてきたのだ。
ヤマト率いる艦隊はその護衛である。
第二艦橋には主要なクルーが集まっており、今回は機関部からも徳川機関長が来ていたが、彼はヤマトのクルーたちが疑問に思っていたことをまず口にした。
「何だって海水入りのタンカーなんて……」
「それはこれから説明する」
話の中心にいたのは、キーマンだった。CICでもあるこの部屋の床に埋め込まれた巨大なスクリーンには、ガミラスの宇宙地図が表示されていた。
地球を中心にすると、アンドロメダ銀河は銀経約10.6度・銀緯41度方向。大マゼラン雲は銀経約80.9度・銀緯:約-69.8度の位置にあり、ヤマトは現在銀経270度・銀緯-20度に進路を向けている。
「我々は今ここ。ゼータ200星域を航行中」
ゼータ200星域。ガミラスが暫定的にそう名付けたセクターはオリオン腕の中にあった。
「ザルツ星があそこだ」
ガミラスの属国惑星であるザルツ星は、ヤマトがいるオリオン腕よりさらに72000光年先。ペルセウス腕からも離れた銀河外縁部の星域にある。地球を中心にした銀経で言えば約275度方向。コンソールを操作しているのは西条未来。
「そもそもザルツ星攻略は、ガミラスによる天の川銀河系への入口を確保するのが目的に過ぎなかった。1世紀前のザルツ星は、星間航行技術こそ地球よりは優れていたが、ガミラスほどの軍事力は無かった。抵抗も激しくなく、あっという間に征服されたと聞く。そのザルツ星の位置はここ。我々の目的地であるテレザート星は、ここだ」
キーマンが示したのは、ザルツ星から7500光年先にある星系。射手座矮小楕円銀河系の中心に近い場所のある星系。
「我々がザルツ人とファーストコンタクトした時。彼らは「ザルツ・テレザート教」という星間宗教の下で成り立った社会だった。このテレザート星系の第10惑星は彼らの信仰の聖地とされ、ガミラスによる侵略が始まるまでザルツ星からテレザート星までの巡礼路があった」
「……で、ガミラスがザルツ星を降参させた後、このテレザートって星も侵略しようとしたのか?」
「その通りだ。だが、結論を言えば大失敗だった」
斎藤の問いがあり、キーマンは宇宙地図の次に、ある画像を見せてきた。古いガミラスの軍艦らしかったが、宇宙空間を漂っている残骸であり、明らかに錆びついたような姿に変わっていた。
「何だこれ……」
「まるで塩害だな」
「おかしい。宇宙で錆が出るなんて」
斎藤は思わず背筋が凍るような感覚に襲われて顔色も悪い。直感的に「心霊写真」のような不気味さに取り憑かれたようだ。
対する真田は冷静だったが、西条の言うとおり宇宙にはそもそも酸素がないのだから、金属の酸化は普通は起こり得ないはずだった。
「ザルツ人の伝説によれば、テレザート星には自らを「テレサ」と名乗る超次元的存在がいるらしい。便宜的に私は「彼女」と呼ぶが、彼女の力はとにかく驚異と脅威の二言に尽きる。彼女は自らに助けを求める者たちを暖かく向かい入れ、同時にテレザート星に悪意を持って近付く存在を許さない。それ故にこうなった。テレザート星系を覆うまるで繭のようなサルガッソーが出現した。サルガッソーでは時間の流れがおかしくなる。先ほど見せたガミラス艦隊の残骸はその影響で船体が突然に金属疲労し、船体が割れたり、最悪はリアクターに亀裂が入って爆発した結果だ」
「まるでバミューダトライアングルみたいだな……」
「古い伝説ですね」
キーマンの言うサルガッソーに似たものとして、徳川はバミューダトライアングルを挙げたが、島はそれがもはや「古い伝説」だと言う。
「バミューダトライアングルは、確か、バミューダ諸島の近海が大陸棚のようになっていて、元々波も荒れやすく、不規則に隆起した岩に船が衝突するなどして遭難事故がよく起きていたと記憶している。さながらテレサの力は大西洋によく起きるハリケーンみたいなものだろうな」
「あー、例え話はもういい……つまり、俺たちは魔の海域を超えて目的地に行かなきゃならねぇ。なら、どうすりゃいいんだ?」
斎藤は無理矢理例え話を切り上げて、最も重要なことに言及した。
「実は心当たりがある」
キーマンは再び宇宙地図を表示させ、ビーメラ星系から172度方向の約6000光年離れた宙域を示す。
よく見れば、その宙域からテレザート、ザルツを繋ぐと、ヤマトがかつてイスカンダルへの旅に用いたルートから大きく外れていることがわかる。
さて、キーマンは示した宙域を拡大すると、一見すると緑豊かで湖が点在している巨大な惑星が姿を表した。
「この星は……?」
「アゼルメニアという。ただの星ではない、これを見てくれ」
すると、キーマンがアゼルメニアの概略図を投影させた。
「こりゃなんだ?」
「空洞惑星なのか?」
「違う」
驚く斎藤、問う古代、否定するキーマン。
しかしその構造を見て、真田は即座に答えに辿り着いた。
「……わかったぞ。ダイソンの天球だ」
「ダイソンの天球?」
「知らなくても無理はない。かなり古い理論だ。恒星を巨大な天球で囲むことで、星が放射するエネルギーを余すところなく取り込める。つまり巨大な天球の内側に住んでいる者たちは、恒星が安定している限り無限のエネルギーを利用できるというわけだ」
「確か、その学者の名前はフリーマン・ダイソン、でしたよね?」
そう言ったのは、技術科の青い制服に着替えた新米俵太。ただし、彼は甲板部で支給された帽子を未だに被っていた。
「正解だぞ新米」
「我々ガミラスにも似たような考え方をした者がいる。ドレン・ガデリスだ。しかし、今から80万年も前に、既にアゼルメニアはできていたらしい」
「要は、外にも太陽、中にも太陽があって……つまり、この星は中だけでなく外側にも人が住んでる、ってことになりますよね?」
「それも人口は270兆人を抱えてるそうだ」
「270兆人……」
想像を超えた世界がこの宇宙には存在することに、新米はロマンを感じた。
「確かに凄いが……この星に何かあるのか?」
「アゼルメニアは独立国家であり、銀河外縁部ではその名を知らぬ者がいない巨大貿易国家だ。ちょうど、我々が向かうテレザートを要する射手座矮小楕円銀河と地球の中間にある。アゼルメニア星系の外縁部はワープ妨害フィールドで囲われ、さらにこの星は超新星の残骸の星雲の中にあり、その星間物質を利用して、アゼルメニアは通常の兵器がまともに使えないディストーションフィールドまで作っている。ガミラスがテレザート諸共攻略に失敗した星であり、かつてはザルツ・テレザート教の生き残りたちも亡命した。しかし、彼らは外界からの侵略行為にこそ神経を尖らせるが、基本的には平和と星間交易を好む人々だ。ガミラスとは後に関係を修復し、主要な貿易国の一つになった」
「つまり、巨大な貿易港であり、人口密集地でもあり、さらにザルツ・テレザート教の人々の避難所でもあるのだから……」
「テレザート星に行く手段を見つけるには最適な星だ。それに、このアゼルメニアにはガミラスの領事館もある。情報を集めよう」
「待て待て。じゃあ、ついて来てるあの海水入りのタンカーは何なんだ?」
危うくその質問が忘れられそうなところで斎藤が再び言及した。
「アゼルメニアには海がない。しかし、人口は270兆人。多種多様な種族が街の中を行き交う大都市圏だ。彼らは完璧な汚水浄化装置を完備していて、人工の湖も多数持っているが、水の再利用にも限界がある。だから、アゼルメニアでは水は時に通貨となる。あのタンカー6隻に積んでる海水は、言うなれば地球からアゼルメニアへの交易品と思って欲しい」
「海水となると、水と塩分を分離しなければいけないが?」
「アゼルメニアにもそれぐらい出来る。地球側からすれば宇宙タンカーに地球の海水を満タンにして積めば良いだけだ」
「そして、海水をアゼルメニアに納品した後、空っぽになったタンカーに今度はアゼルメニアで調達した食料や医薬品を積み込んで、そのままザルツ星に救援物資を運ぶ。島。アゼルメニアへの航路を設定」
「了解」
「全員解散」
そうして各々の部署に戻っていくが、
「星名、南部。それと、榎本さん。ちょっと残ってくれ」
古代はその三人を呼び止めた。
「はい艦長?」
「空間騎兵隊の隊員たちとは話したか?」
「僕は斎藤隊長と」
「艦長。何であんな連中をわざわざヤマトに乗せたんですか?」
「藤堂長官から命令を受けたんだ。我々が向かうテレザートの周辺にはガトランティス艦隊が待ち受けていることは既に判明している。ということは、ガトランティスもテレザートに地上部隊を派遣している可能性が高い。長官はそう読んでいるみたいだ」
「でも、あのテレサとかいう存在が作り出したサルガッソーがあるじゃないですか」
「そのサルガッソーもガトランティスはもしかすると抜け道のようなものを見つけているかもしれない。仮にプロクシマ3やアルファ・ケンタウリ11みたいな事になったら? 地上戦のエキスパートたちがいないと対処がやりきれないかもしれない。そこで、彼らにもこの船にいる間、仕事を与えたいと思うんだ」
「仕事を、ですか?」
「例えば、甲板部でなら力自慢の歩兵がいれば役に立つ。そうでしょう?艦長」
「その通りです榎本さん。それに南部。パルスレーザーの銃座も半分以上がオート射撃になっていたはずだろ?」
「まぁ、そうですが……」
「これまではガトランティスの航空戦力は大したことがなかったが、これからはそうもいかなくなるかもしれない」
「保安部にも欲しいですね」
「艦長がそこまで言うなら……」
「斎藤には私から話しておく」
同じ頃。ヤマトの食堂では五人の女子クルーが食べ終わった食器も片付けないまま集まって浮かない顔をしていた。
「このまま情報を吐くまで、閉じ込めるのはかなり酷ね……」
先に呟いたのは新見だった。彼女はここ数日、保安部の山田安彦と共にガトランティス人の捕虜二人から情報を引き出そうとしていたが、成果は芳しくなかった。
「主計科の皆で定期的に食事や飲み物を持って行ってるのですが……」
「一切、手を出しませんね。飲み物ですら……頑固と言うか、意地っ張りと言うか……」
赤毛に近い茶髪の女性クルー篠田と、カールの癖毛がついた髪をポニーテールで結っている梅田も困り顔である。
「和食や洋食も見ることは見るのですが、目を閉じて堪えてる様子でした」
「試しに香りの強いヤマトオリジナルブレンドのヤマトカレーを用意したら、お腹を鳴らしていたので、食べますか?と聞いたら、顔を真っ赤にして、そっぽ向かれました」
鶯色に近い髪の色をした峯岸と、濃い茶髪をポニーテールにしている岩佐も溜め息を吐く。新見以外の四人は黄色い制服を着ていた。
「つまり、空腹であるのよね。食事を与えない訳にはいかないけれど、向こうが拒否をする以上は……」
「なので、私は冷めても美味しい常温のヤマトカレーを部屋に置いて香り責めを提案します!」
「まさに拷問ね……」
「女の子の手作りカレーで落ちない男は居ませんよ!」
「やめてやりなよ。見てるこっちもツラい……」
岩佐と梅田はカレー攻めに賛成。峯岸と篠田は反対していた。
新見はガトランティス人も空腹を感じる辺りが人間とさほど変わりないことから何処か安堵していたが、その一方でガトランティスの二人がこのままハンガーストライキを続けたら衰弱死の危険もある。どうしたものかと悩む新見だったが。
「なんじゃなんじゃ?女子会か?」
そこへ現れたのはこのヤマトの船医、佐渡酒造だった。
「あ、佐渡先生。実は、料理や飲み物を運んだ主計科から様子を聞いていた所でして……」
「料理も飲み物も拒んでいて……このままだと栄養失調で衰弱なんて事も……」
「強情な奴らじゃのう。せめて水ぐらいは口にさせんと3日で死ぬやもしれん」
「……確か、3・3・3の法則でしたよね?」
梅田がそう言うと、佐渡は肯定して続けて言った。
「空気がなければ"3分"しか生きられない。水がなければ "3日"しか生きられない。食べ物がなければ"3週間"しか生きられないんじゃ」
「あと、"26度の限界線"と言うのがあって、体温が35度以下になると低体温症。26度以下になると意識を失ってしまうのよ。体内の栄養素が不足していくと、体温を維持する為の燃料となる脂質が枯渇して、体温が徐々に下がっていく。心臓が血液の循環を行なって体温を維持するけれど、それは一時的な物。体温を上昇させて体を温めるには脂質が必要なのよ」
「新見くんはよく知っておるようじゃな」
「一応精神科でも習うことですからね。空腹が精神のバランスに影響を与えることもありますから。女の子は太るのを気にして脂質を避けるけど、脂質は体内で燃焼して体温を高めるのに必要なのよ。だから、私は栄養バランスを考えて、野菜とお肉を頂くのよ」
「それで新見さんは体が温かいし、細すぎず、太過ぎずの抜群のプロポーションなんですね」
「そうなの?外観は、私あまり気にした事はないけれど……」
「そして、脂質とプリン体を取りすぎるとこうなるんじゃ!」
佐渡が腹太鼓をすると、
「佐渡先生はお酒の飲み過ぎです!医師ならそれぐらいは気にして下さい!」
「へへへ……酒は自身への褒美じゃよ。誰だって自分が頑張ったご褒美に何か取っておくものじゃろ? 例えば女の子ならパフェとか」
「あぁー、わかる」
「痛いほどわかる!」
「そう考えると、あの二人は何だか可哀想に思えるかも……」
「自由に飲食が出来る環境が必要かもね……」
「とは言え、ここが彼らにとっては敵地である事実には変わりないし、私たちは彼らの情報が欲しい。お互いに気が抜けないわね」
「ここまでくると、もはや情報なんていいから何とか助けたいですよね……」
女子五人はほぼ同時に溜め息を吐いた。
「あいつらはわしの患者じゃ。このまま放置しとると餓死することは変わりがなかろう。そこで新見くん、わしに任せてくれんか?」
「先生?」
「なぁに!わしの患者じゃ!全部ワシに任せとくれ」
佐渡がそう言うと、艦内全域でアラームが鳴った。
「おや? もう夜の9時か……」
「大変、行かないと!」
「お風呂!」
新見以外の女子四人が慌てて食器を片付けて食堂を出て行った。
「新見くんは?」
「あぁ……私は部屋に一回戻ってからにしますね」
「そうじゃな……君も疲れておるだろう」
「美沙……六角軍医には仕事を押し付けるみたいで申し訳ないですけど……」
「気に病むな。行こうとすればわしがドクターストップを掛けるところじゃよ。今の新見くんは顔を見ただけで疲れが溜まってるのがようわかる。本来ならわしも美沙くんを止めとるとこなんじゃが……」
「ふふふ……医者の不養生っていうんですよね、それ」
そう言うと、疲れを見せつつ席を立ち、食器の乗ったトレーを返却口に戻してから新見は食堂を後にした。
一方で、ヤマトの病棟。
そこでは未だに目覚めない桂木透子が眠っていた。
その傍らで絵本を読み聞かせするように朗読する六角美沙の姿があった。
「こうしてお姫様と王子様は、幸せに暮らしましたとさ……」
「六角軍医?」
そう声を掛けられて振り向くと、そこにいたのはピンク色の制服を着た三田夏海だった。
「あなたが三田夏海さん?」
「えぇ、そうです。何か私に御用があるとか?」
「あなたの専門知識を借りたいの」
「というと?」
「確か、脳神経外科が専門だって経歴に書いてあったけど」
「正しくは脳神経
「それ、確か衛生科のピンクの制服でしょ?」
「ファッションですかね。私が生まれ育った所ではそうでした」
「どういうファッションよ……」
ツッコミを入れたくなった美沙の様子を察して夏海は、
「冗談です。私の専門はバイオテクノロジー、なので強ちこの制服はミスマッチじゃないと思いますし、実は気に入ってます。それで、脳神経科学の知識が何か入用で?」
「……これを見て欲しいの」
美沙はデータパッドを夏海に手渡した。そこには波形が記録されていたが、即座にその正体に夏海は見ただけで気付いた。
「あぁ〜、脳波ですねぇ」
「しばらく前から活動が活発化してて……でも、目覚める気配がない。何が起きてるのか知りたくて」
「あー、これは……その……」
すると、夏海は波形をちょっと調べただけで顔を赤らめた。
さっきまで軽口を叩いていたはずの夏海が急にしおらしくなったことに驚いて美沙が尋ねた。
「ちょ、どうしたの?」
そう言われて、夏海はデータパッドを操作し、ある部分を拡大、と同時に、δ波とθ波のある部分を赤くマーカーして示した。
「こ、ここの部分が瞬間的に激しく出ていて、他にはハイベータ波とローベータ波、ハイガンマ波が出てますよね……?」
「うん?……そうね」
「δ波は無意識時に出る物で、θ波はエクスタシー。その両方が激しく出てますよね、それに、ハイベータ波とローベータ波は、一番強い興奮や緊張状態にある時に出るものですし、ハイガンマ波は、激しい運動をしながら集中してる際に出る、つまり、そ、その……」
「? だからつまりどういうこと?」
赤面しながら各波長の説明を行なう夏海に対して、事情を全く理解できない美沙。
「〜〜〜///……あーもうっ!だから、その、つまり……」
業を煮やした。夏海は美沙に真相を耳打ちした。
「――――、―――、――――――――――――――――――――んでっす!」*1
すると、美沙も頬を赤らめて、
「えぇぇぇぇぇっ!?///」
ようやく事情を理解できた美沙からは悲鳴にも近い驚きの声が飛び出した。
一方その頃。天の川銀河系の外縁部から約5万光年の空間。天の川銀河系へとひた走る白色彗星帝国の王宮では。
天の川銀河系方面侵攻軍司令長官という地位にいるティエラン・バルゼーは焦燥感に駆られていた。バルゼーは廊下を早足で歩き、目的の人物がいると思わしき部屋を見つけてノックした。……物音や喘ぎ声のようなものはしていたが、今のバルゼーにその情報が入るほど気持ちに余裕はなかった。
「ミルヴァール様!いらっしゃられますか?バルゼーです!」
その声に対する部屋の主からの返答は、
〔……一体何用だ?〕
「お休みのところ申し訳ありません!しかし……!」
突然に言葉を切ったバルゼー。ドアの向こう側にいるミルヴァールは何かを察したように、不機嫌さを隠さずに言った。
〔外では話せないことなのだな?……はぁ〜、承知した、だがつまらない知らせを持ってきたならば覚悟せよ!〕
「も、申し訳ありません……!」
〔暫し待て〕
ミルヴァールにそう言われ、ドアから離れて待機。それから30秒後。
「バルゼー、さっさと入れ」
申し訳程度にアンダーシャツを着ているミルヴァールは明らかに不愉快そうな顔を浮かべながら、バルゼーを部屋に招き入れた。
そこで待っていたのは……。
「シ、シファル様!?」
ベッドのシーツを掴み、それで申し訳程度に首から下の素肌を隠した。
「……バルゼー、一体何用だ?」
バルゼーとシファルの間に立ち、なお不機嫌そうにバルゼーに用事を尋ねるミルヴァール。
その無言の圧に思わず顔を逸らすバルゼー、次にその口から出たのは、狼狽した謝罪の言葉だった。
「も、申し訳ありませぬ!し、しかし、一大事ゆえ、大至急報告に参った次第でありまして……!」
「バルゼー。謝ってばかりでは話が先に進みませんよ? ミルヴァール様にお伝えしたい一大事とは何事?」
そうシファルに指摘され、少しだけバルゼーは落ち着きを取り戻した。
バルゼーに視線を向けたミルヴァールは、視線で彼を射殺さんばかりに鋭い目を向ける。しかし、意を決した様に口を開いた。
「……大帝への戦況報告前にミルヴァール様に伝えねばならないと思い、急ぎ参りました。緊急のご報告です。デスタール提督の艦隊が地球の植民星プロクシマ3において撃破されました」
「……今何と言った?」
「デスタール提督が敗死しました。その配下にいたナスカ提督……いえ、ナスカ司令官の座乗艦もセントーリ11において地球軍艦隊の奇襲を受けて撃沈されました」
「ナスカ……兄の友人だったな」
「まさしく」
「とすると、メーゼライテオ兄様も?」
「行方知れずです。恐らくは敗死されたものかと……」
「そうか……兄様が」
「……お悔やみ申し上げます」
バルゼーの内心では、目の前の刺激の強い状況から感じ取ったもの以外だと、例えば、当惑と悲しみと怒りが入り混じっていた。
まだ彼がミルヴァールに報告していない事だが、実はアゼルメニア攻略艦隊からプラズマ魚雷を搭載したカラクルム級30隻を引き抜き、それをデスタールの要請に従ってプロクシマ3攻略艦隊に合流させた。
その直後の通信では勝利は目前だったのに、地球軍艦隊わずか120隻の前に敗北、それもわざわざカラクルム級30隻を派遣し、全体的には地球軍の8倍以上の戦力が配置されていたにも関わらずの敗死であった。
デスタールからの最後の通信では、彼の艦の司令室が炎に包まれていた。彼は泣き言を一切言わずに「敗北」の事実と、「ガトランティスに栄光あれ!」と叫びながら宇宙の塵と消えていった。
バルゼーはデスタールの失態に怒りを覚えるが、大帝に忠義を尽くして炎に包まれていったことからガトランティスの軍人として恥じない最期だったと評価している。
しかし、彼の指揮下にズォーダー五世の次男メーゼライテオがいたことを知ると、プロクシマ3から敗走して来た艦隊をすぐに調査した。
その生き残りたちが、「ナスカ司令官がセントーリ11の戦いで乗艦を破壊された」と証言したことや、生存者を調べても調べてもメーゼライテオの姿がなかったことから、バルゼーは「メーゼライテオは戦死した」と報告せざるを得なかったのである。
そして、バルゼーは当惑していた。
カラクルム級34隻とその他の1000隻近い艦船を投入したにも関わらず、なぜその10分の1の戦力しかない地球軍艦隊に敗北したのか。考えは巡るが、しばらく答えは出ないだろう。
「……お悔やみは不要です。ご覧なさい。ミルヴァール様のお顔を……笑みを浮かべてましてよ」
「え……?」
悪い知らせを持ってきたことでミルヴァールが悲しむか激昂すると思って顔を伏せていたバルゼーだったが、シファルの一言で思わず顔を上げた。
すると、彼女の言った通りだった。それどころか。
「……フフフ……フハハハハ……こんなに嬉しい吉報、思わず顔に出てしまうわ! 次期大帝は余で決まったも同然であろう! やはり、宇宙は余を選んだ! これはまさに奇跡! これこそ天命! 余がズォーダー六世として大帝の座に即位する事は、遥か昔より確定していたと言う事だ!」
「ミ、ミルヴァール……様?」
「バルゼー!その報……よくぞ届けた!余が大帝になる時、其方にはガトランティスの全艦隊を指揮する権限を与えてやろう!この全宇宙に、我らの聖戦の正しさを知らしめる時は近いぞ!!フハハハハッ……ハハハハハ!」
バルゼーの当惑は別の形で続いた。目の前のお仁は、大帝ズォーダー五世の三男であるが、彼は実の兄の死を悲しむどころか狂気の笑みを浮かべて高笑いしているではないか。
(なんと言うお人だ……実の兄の死をここまで喜ぶとは……)
呆れていいのか恐怖すべきか、あまりのインパクトにバルゼーの思考が追いつかなかった。
「おぉ、そうだ。その報告を更に詳しく教えてくれ。誰がメーゼ兄様を討ち取った?」
「ち、地球艦隊の宇宙戦艦との報告が……」
「艦名はわかるのか?」
「確か、ヤマト。そう報告を受けておりまする」
「ヤマト……噂に聞くあのヤマトか!ならば、そのヤマトを余が討てば、兄の仇を討った英雄となる訳だ!そうなれば民衆の支持も磐石な物となるだろう!これはもう、余が大帝になれというザーベリア様からの啓示ではないか!クックック……、漸く余にもチャンスが巡ってきたな……!」
バルゼーがやってきた時は不機嫌さを通り越した何かを抱えていた感じのミルヴァールだったが、途端に上機嫌になり、仕舞いには邪悪な笑みまで溢れ出す始末。
そこでシファルが別件を切り出した。
「……そういえば、バルゼー。貴様、アゼルメニアとかいう惑星を攻撃するつもりだとか。大帝様は確か、その攻撃を却下したと聞き及んでおりますけども?」
その問いにバルゼーは顔色を一気に悪くした。
「シ、シファル様が何故そのようなことを……!?」
「ハハハ、良いのだ。シファルは我が伴侶となる。それに此奴の策略には目を見張るものがあるからな!……あぁ、そうだ。それでその件はどうなったのだ?」
「……ははっ、ご指示通り、カラクルム級大戦艦1000隻はアゼルメニア宙域に向け、既に発進いたしました。大帝様には気付かれておりませぬ」
「よろしい、それは良い知らせであるな」
「あの……ミルヴァール様。一つお聞きしても?」
「何かな?我が妻よ」
「アゼルメニアは天然の要害だらけで、警邏艦隊も精強。80年前にアゼルメニアへ攻め入ったとされる斥候艦隊はほぼ全艦が拿捕され、乗っていた者たちもほぼ全員が
「ほぅ……其方は既にわかっておるはずではないのか?」
「私は大体理解しております。しかし、合ってるか自信がありませぬ。答え合わせのつもりでお聞かせいただけませんか?」
少し意地悪そうなシファルにそう言われ、頬を吊り上げながら「答え合わせ」を始める。
「……フッ、仕方ない。説明してやろうではないか、バルゼーよ」
やれやれ。そう言わんばかりの態度でミルヴァールは淡々と説明した。
「ゲーニッツが作ったあの巨体。単なる艦隊旗艦としての使い方しかできないのであれば父上の感心を引くことなどできまい。そのゲーニッツが余を頼ってきたのだが、それをどうすればいいかを其方に相談した時、其方は「敵を知りて己を知れば百戦危うからず」と言うたではないか?」
そう問われ、詰まり気味に答えるバルゼー。
「た……確かにそうでしたね」
「だから余はカラクルム級の設計図を見直した。すると、あの艦の特性は、数百、数千隻が集まれば、ある一点にその機関の莫大なエネルギーを放出できることに気付いたのだ」
そこでシファルは思い出したかのように言う。
「……波動砲と言いましたわね。地球人が使っているという最終兵器は」
「流石は情報庁局長を父に持つ其方だな。そうだ。其方の思ってるように、カラクルム級が千隻集まっただけでそれをも上回るパワーが得られるのだ」
そこまで話してから、ミルヴァールはバルゼーに尋ねる。
「ということは、砲の試射実験宙域の選定と、アゼルメニア侵攻の作戦日時の選定を含めた作戦会議を近い内に行なうのだな?」
「その通りでございます」
「うむ。承知した。作戦会議は父上への戦況報告会の後で、バルゼーの艦内で行おう。父上とゲーニッツにはこの後報告に行くのだろう?」
「は、ははっ」
「ではさっさと行くが良い。余もすぐ行くとしよう」
バルゼーを追っ払うかのようにそう告げると、バルゼーは軽く会釈をしてから踵を返し、部屋を後にした。
ベッドの上に腰掛けるミルヴァールに、シファルが背中から抱きつく。
「フッ……これが成功すれば、周辺の星々は我々ガトランティスにひれ伏すしかなくなる。防ぎ様のない砲撃で異教徒どもの安住の地である星が滅ぶ。誰にも止める術がない。これを父上が見ればさぞ喜ばれるであろう!」
「頼もしいお方……次期大帝になれれば、その覇道は確実に全宇宙に轟くでしょうね」
「クックックック……まさしくその通りよ、ハッハッハッハ!」
そして、狂ったようにミルヴァールは再び笑い出した。
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