宇宙戦艦ヤマト2202リテイク   作:MinorJunction 太華日

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前回の第11話から後半部分を分離した回です。


第12話「コズモダード・ナスカが二人」

 メーゼライテオの戦死は、すぐにも報告会の場でバルゼーの口からズォーダーに知らされた。

 

「そうか、メーゼライテオが……」

「大帝様、悪い知らせを齎したこのバルゼー、どのような裁きでも受ける所存であります」

「……いや。其方を許そう。それよりもカラクルム級の方が深刻だ。事の仔細を」

「は、ははっ。敵の植民星プロクシマ3を攻撃中だったデスタール艦隊にはカラクルム級34隻が配備されておりましたが、この内の約半数が地球軍の戦闘機によって撃沈されました」

「バルゼー、戯けたことを言うな。カラクルム級戦艦が航空攻撃如きで悉く沈んだなどと戯言も良いところだ!」

「し、しかしゲーニッツ参謀総長。私は嘘偽りは申しておりません!女神ザーベリア様と大帝様に誓って真実であります!」

「……ゲーニッツ。確か其方はカラクルム級戦艦のことを「ガトランティス軍艦の究極形態」と銘打っていたと記憶しているが?」

「その通りでございます大帝様。カラクルム級の外殻はニュートロニウムで覆われており、地球軍もガミラス軍もカラクルム級の装甲を破れませんでした。故に無敵です。地球軍の蚊蜻蛉のような戦闘機部隊に潰せるなどとはとても……」

「侮りすぎだったのではないか?」

「い、いえ。戦闘記録のログを確認したところ、我がガトランティス帝国の戦闘機と戦った地球軍の戦闘機は10機中10機が撃墜されることも珍しくありませんでした!」

 

 ゲーニッツは慌ててその参考資料となった映像を呼び出した。

 

「ご覧ください。これは敵が「イプシロン・エリダニ」と名付けた星系での戦闘記録でございます!」

 

 ゲーニッツが見せた映像では、確かに地球軍のコスモファルコンがデスバテーターの猛攻を浴びて次々と撃墜されている。中には不用意に駆逐艦や巡洋艦に近づきすぎて集中砲火を浴び、火だるまになった機体まで。

 

「ガミラスの戦闘機とカラクルム級が遭遇した時の映像も……」

 

 続けて見せたのは、ガミラスのスヌーカ急降下爆撃機がカラクルム級戦艦に向けて爆弾を落としていくが、カラクルム級は無傷。反撃を浴びたスヌーカ隊は次々と護衛の巡洋艦や駆逐艦に撃ち落とされていった。

 

「だが、バルゼーの報告通りであるならば、カラクルム級を航空攻撃で沈めたのは地球軍戦闘機だったはずだぞ」

「バルゼー!」

「は、はい。確かに地球軍の戦闘機がカラクルム級を撃沈したと前線から帰還した兵士たちより聴取しております!」

「……」

 

 一方、ガイレーンは地球軍戦闘機とデスバテーターの戦闘記録を見直して、ある結論に行き着いた。

 

「……無人戦闘機だ」

「ガイレーン、お前今何と言った?」

「ゲーニッツ。我らの軍が敵の星系で戦った相手は有人機ではなく無人機だ。このぎこちない動きは、敵の母艦からの遠隔操作によるものだろう」

「敵のパイロットの練度が低いだけではありませんか?」

「違うだろう」

 

 バルゼーはすっかり地球軍パイロットの練度が低いと決めつけたが、ガイレーンはキッパリ違うと言い切った。すると、ラーゼラーが手を挙げて、

 

「大帝様。発言してもよろしいですか?」

「ラーゼラーか。良いだろう言ってくれ」

「……私は文官ゆえに戦術には疎いのですが、デスラーが我々に伝えた情報にこそ、その理由が隠れているように思います」

「デスラーが語ったことだと?」

「よせゲーニッツ。……ラーゼラーよ、続けろ」

「はい。デスラーが語ったところによると、地球人という種族はほんの10年前まで次元波動機関は愚か、原始的な星間航行技術しか持っていなかったそうではないですか。故に、ガミラスの艦隊相手に当時の地球人は手も足も出なかった。やがて本星である地球を遊星爆弾により爆撃され、ガミラスは地球軍艦隊を壊滅させた。……ヤマトが現れるまでは」

「何が言いたいんだ?」

「……つまり、地球人はガミラスとの戦いで疲弊していた。それも絶滅寸前まで追い詰められていた。そして、ゲーニッツ参謀総長もご存知のように、エンジェンティアを穢した地球軍の巡洋艦には顕著なオートメーション化が施されていました。ということは、航空機を飛ばせるパイロットに人員を割く余裕がないのでは?」

「ラーゼラー執政官の言うことは尤もです。大帝様。パイロットは育成に時間も掛かります。それで地球軍は無人戦闘機を我らに嗾けたのでしょう。しかし、地球軍の無人戦闘機の技術、特に人工知能は幼稚で、遠隔操作が精一杯だったのかもしれません。ところが今回は有人機だった。それも、かなり練度の高いパイロットたちが……」

「緊急報告!緊急報告!」

「ミルヴァール、一体どうした?」

「会議の最中に失礼いたします父上! 先ほど伝令から仔細を聞きました。イプシロン・エリダニ星系攻略艦隊も旗艦であるカラクルム級が撃沈され、艦隊指揮官が死亡との報告を受けました!艦隊は現在敗走中とのことです……!」

「な、何ですと!?」

 

 ミルヴァールが慌てた様子で伝えに来た報告にゲーニッツは返って顔色をより悪くした。ズォーダーが続きを促した。

 

「報告を続けよ」

「ははっ。ザルツ戦線に展開中のカラクルム級100隻艦隊も壊滅状態! 被害甚大とのこと!」

「そんな、早すぎる!」

 

 イプシロン・エリダニでの最新の戦闘の様子を収めた映像が届いて早速見たズォーダーは、

 

「……もうガミラスにも伝わってしまったか。宇宙は広いようで狭い。こうして我々が長々とああでもない、こうでもないと無駄に時間を費やしている合間に、一度落ちた波紋は大きな波となって拡大していく……」

「た、大帝様……」

「ゲーニッツ。対策を急がねば、我々の戦線はどんどん追い込まれていくぞ?」

「し、しかし、今更……」

「一旦カラクルム級の艦隊を引かせるのだ。それと、ゲーニッツ。あれは持ってきたか?」

「は、……はい」

 

 そうしてゲーニッツはデータパッドをズォーダーに差し出した。

 それを受け取り、ズォーダーが端末を起動すると、立体映像のカラクルム級が出てきた。

 そして、ズォーダーはペンのようなものを用意して、

 

「ここと。ここと。それにここだ」

「た、大帝様……?」

「付け焼き刃程度だが、対空砲の代わりにはなるだろう」

 

 ズォーダーはカラクルム級の立体モデルで、既存の船体の中で僅かな隙間を見つけると、既に搭載されている砲塔に影響が出ない程度で小型の回転砲塔を6門書き足した。

 2門は後部砲塔すぐ下の側面、2門は船体中央の砲に作られた何もなかった段差に設置。

 そして、最後の2門は、船体側面の対空砲のすぐ下に追加された。

 これらのポイントは地球軍戦闘機がカラクルム級を狙ったポイントであり、ここに対空砲を設置されてしまうと、攻撃前から離脱後まで戦闘機はカラクルム級からの銃撃を受ける危険に晒されることになるからだ。

 

「し、しかし、これでは折角の美観が……」

「美観よりも対処が先であろう。もう一度言う。呼び戻せ。カラクルム級全艦をここに呼び戻してすぐにこの改良を加えるのだ、急げゲーニッツ!」

「は、ははっ!」

 

 そうしてゲーニッツはズォーダーからデータパッドを受け取り、バルゼーと共にその場を慌てて出て行った。

 

「……10年前まで地球人は未開の蛮族に過ぎなかった、か」

「大帝様?」

「いや、何でもない。独り言だラーゼラー。……ミルヴァールよ」

「は!」

「一体どうして来た?」

「伝令はバルゼーを探していた様子でしたが、誤って我々の部屋に」

「ほぅ?」

「あまりにも悪い知らせ故に伝令が困っている様子でしたので、代わりに私が来ました」

「そうか。それで、其方の妻の様子は?」

「ははっ。今は部屋で休んでおります」

「一週間休みを与えたが……ミルヴァール。其方ももう暫くここにいて良いぞ」

「エンジェンティアはよろしいのですか?」

「構わんさ。其方の副官も優秀なのだろう?任せておけば良い。……それに9日もあれば情事の一つや二つやれるだろう?」

「ち、父上……」

 

 ミルヴァールが珍しく顔を赤くしたように見えた。

 

「……今日は色々ありすぎた。休ませてもらうぞ」

「お、おやすみなさいませ」

 

 そうしてズォーダーはガイレーンを伴ってその場を後にした。

 

「……さすが大帝様だ。メーゼライテオ様の死に涙も見せないとは」

 

 そう言うラーゼラーを、ミルヴァールは複雑な思いで見ていた。

 


 

 同じ頃。

 

「あの……六角先生?」

 

 舟を漕いでる様子だった美沙に声を掛けたのは百合亜。その手には食堂から持ってきたらしき料理の乗ったトレーを持っていた。

 

「岬さん……?」

 

 声を掛けられて慌てて反応し、あくびをしながら伸びをする美沙。あくびが収まってから百合亜に尋ねた。

 

「どうしたの?」

「はい。食堂にいたら平田さんに頼まれて夕飯をお持ちしました」

「そう……わざわざありがとう」

 

 美沙は夏海を呼ぶ前まで絵本を朗読していたが、百合亜には膝に乗ったままだったそれの表紙が目に留まった。

 

「人魚姫?」

「そうよ。ただ、結末はオリジナルとちょっと違うの。これは20世紀に作られたバージョンよ。オリジナルでは、恋敗れた人魚姫が泡になって消えてしまうけど……」

「……人魚姫はオリジナルのままだと救いがない、ってあなた、よくそう言ってたわよね……」

「「え……?」」

 

 美沙も百合亜も声の主の方に目を向けると、

 

「透子!」

「桂木さん……でしたよね?」

「あなたは……?」

「あ、初めまして。岬 百合亜と申します!」

「……随分可愛いクルーもいるのね、この船には」

「あ、そ、そんな、可愛いだなんて……」

「気にしないで。この人天然なところもあるから……それより透子。あなた大丈夫なの?」

「え、えぇ……何だか疲れたような気分……」

「3日は寝込んでいたわよ」

「3日も!? 本当に? ……あれは夢だったのかしら……?」

「夢……?」

 

 もしや、脳波にθ波が出ていたことと関係があるのだろうか。

 

「……ねぇ、美沙」

「なぁに?」

「私のスケッチブックはある?」

「あ、それ良かったら私が取りに行きますよ?」

「私の客室はわかる?急がなくてもいいから」

「探してみますね」

 

 そう言って百合亜は医務室を後にした。

 

「……全く。若いって良いわね」

「勝手に老け込まないでよ。23歳のあなたに比べたら私なんてアラサーの売れ残りみたいじゃない」

「それいくら何でも自分を卑下しすぎじゃない? それに……」

「それに?」

「……前にあなたが話してくれた、確か新見さんだっけ?彼女の前でそれは言わないほうがいいと思う」

「Oh……」

 

 それを言われたらグウの音も出なかった。

 

「ドクター、とても承伏しかねます!」

「山田くん、星名くん、そこを頼むよ! このままじゃとあいつらは情報を喋ってくれる前に衰弱死してしまうんじゃ!」

「星名、山田、一体どうしたんだ?」

「あぁ、古代艦長。お呼び立てして申し訳ありませんが、ドクターが無茶振りをするんです」

「無茶振りじゃと? 二人を会わせて、拘束を限定解除してやるだけじゃよ!」

「何言ってるんですか、ダメですよ!」

「そこを頼むよ星名くん!」

「ダメです!」

「……星名。山田。佐渡先生に任せてみよう」

「え?」

「か、艦長、それ本気ですか!?」

「新型の拘束具を試すついでだ。それに、佐渡先生の言う通りだ。このまま彼らを衰弱死させるのは寝覚めが悪い。下手をすれば捕虜虐待だ。何かあれば私が全責任を負う」

「しかし……」

「古代。安心せい。お前の言う「何か」はわしが起こさせないからな」

 

 数分後。取調室に二人の「コズモダード・ナスカ」が連れて来られ、佐渡と山田、星名たちと対面した。

 二人とも山田、星名らが肩を貸さないと立てないほどに衰弱しており、取調室の椅子に辛うじて座らせるのが精一杯だった。

 マジックミラー越しの控え室から、古代はそのやり取りを見ていた。

 

「やぁ、こんばんは。ガトランティスの兵士さんたち」

 

 茶髪の男が佐渡に尋ねた。

 

「……お前は?」

「お前とは失礼じゃのう。ワシがアンタらを執刀した医師じゃよ」

「お前か!何故俺たちを生かした!お前が俺たちを生かしたせいで、こんな辱しめを受けているんだぞ!戦士としてなぜ死なせてくれなかった!」

 

 黒髪の男は力を振り絞って憤慨した。

 

「……何故生かしたか、じゃと?愚問じゃなぁ……それはわしが医師だからじゃ。目の前で怪我してる。まだ救える命があるなら救うのが医師の務めじゃ!これが答えじゃダメか?」

「……ヒポクラテスの誓いか?」

 

 茶髪の男がそう答えると、佐渡も驚いた。

 

「知っておるのか?」

「あぁ。我らの聖地でお前たちの船を撃退したが、その船のデータベースから知った」

「メーザー、そのヒポクラテスって誰なんだ?」

 

 すると、佐渡は茶髪の男の目を見据えて言った。

 

「……おぬしがメーザーというのか」

「「あっ……」」

 

 二人のガトランティス人は思わずそんな声を漏らした。

 

「聖地というのは、ガリア4号星のことかの?」

「……あの星はエンジェンティアだ。我らが祖先の母なる星だった」

「母星? では、あなたたちはこの銀河系の種族なのですか?」

「……教えられん。喋りすぎた」

 

 しかし、その会話は古代にもちゃんと聴こえていた。

 

『古代。俺たちに聞いてほしい事というのは、これのことなのか?』

「あぁ。……俺たちは、知らない間に彼らの星を侵略していたのかもしれない」

 

 同行するドレッドノート級重巡洋艦「サツマ」の長野艦長と、「グナイゼナウ」のエルナ・エスシルト艦長、それに「コンゴウ」の今井早紀艦長たちは古代の求めに応じて、その回線をこの取調室と控え室に直結させていた。

 古代の目の前のコンソールには、手のひらサイズで3人のホログラムが投影されていた。

 

「地球人の文化をドミニオンの残骸から知ったということは、ジュネーヴ条約も知っているんですか?」

「……いや、聞いたことがない」

「その条約には戦時捕虜の取り扱い規定がある。要は、捕虜も一人の人間として扱えと、そういう決まり事じゃよ」

「そんな規定、お前たちのエゴじゃないか!」

「どうせ奴隷として俺たちを使う気だろう? そんな辱めを受けるぐらいならいっそ殺せ!」

「馬鹿もん!!」

 

 佐渡はそう言うと、机を割らんばかりに拳を叩き付けた。

 

「そもそも奴隷と捕虜を結びつける事自体が地球の文化では間違いだと言っておるんじゃ。おぬしらは故国のために戦った。聖地を穢したわしたちと戦って負けた。だが、命を拾った以上、わしらはおぬしらを粗末に扱うつもりもない」

 

 そう言うと、今度は黒髪のガトランティス人に対して佐渡は言った。

 

「……特におぬし。コズモダード・ナスカと言うたな?」

「……」

 

 もはや隠しても無意味だと悟った黒髪の男は肯定した。

 

「おぬしは我々の仲間を捕まえたが、殺さなかったと聞いた」

「俺は無抵抗な相手を傷付けるのが性に合わないだけだ。善意と言う訳ではない。勘違いするな」

「だが、だからこそおぬしたちを見す見す死なせるわけにはいかんのじゃ。だからな……」

 

 佐渡が合図すると、山田と星名がそれぞれでナスカとメーザーの拘束具を外し、代わりのものに付け替えた。

 二人は抵抗しようにも力など出なかった。

 

「何をするんだ……!?」

「これなら艦内を自由に移動できるじゃろう。もちろん、保安部の護衛付きが条件じゃが」

「どういうつもりだ?」

「おぬしたちはデータベースで地球のことを知ったんじゃろう? でも、地球人たちの暮らしや考え方までは理解に至っておらぬようじゃ。そこでじゃ。おぬしらを国に返す前に、それを体験してほしいのじゃ」

「お前たちに危害を加えたり、抵抗した時は?」

「その時は営倉に逆戻りじゃな。しかし、おぬしらを無碍に扱うことはこのわしがさせない」

「……信用できん」

「信用や信頼とはな、積み重ねてゆくものじゃよ?」

「……その通りだな」

「メーザー、この爺さんのことを信じるつもりか?」

「ナスカ。俺たちに今更失うものなどないだろう」

「……わかった。お前がそこまで言うなら」

「決まりじゃな。まずは食事と行こうかの」

 

 そうして二人は星名や山田たち保安部員に担がれながら、ヤマトの食堂へ向かったのだが、道中で百合亜と出会う。

 

「あ、星名くん」

「百合亜ちゃん……これからどこへ?」

「病棟へ。透子さんの意識が戻ったの」

「それは本当?」

「うん。あとでお見舞いに行ってあげてね」

 

 百合亜の手には、筆記用具とスケッチブックがあった。それには星名も見覚えがあった。確か透子の私物だ。百合亜は足早に去っていく。

 

「……あれは人間の雌、なのか?」

「見た目幼いが……」

「さ、さぁ、行くぞ」

 

 星名は照れ隠しで無理やりガトランティス人たちを引っ張っていく。

 その様子を、控え室から出てきたばかりの古代が背中を見送った。

 

 しばらく後。

 

「相変わらず綺麗なデッサンね……」

「透子さん、確かお医者様で、考古学者ですよね」

「遺跡の様子をよくスケッチしていたの。……そういえば、あの遺跡が崩れたって聞いたけど、本当?」

「あ、はい」

「それは残念ね……500万年の歴史が失われてしまったなんて……」

「でも、あなたを含めて遺跡に潜っていた人たちは全員無事だったんだし、良しとしなきゃ」

「そ、それに、アナライザーがあの遺跡の3Dマップを作成している途中みたいです。完成したら是非透子さんに見てほしいって、アナライザーが」

「……ありがとう。……出来たわ」

 

 そう言ってペンを置いた透子は、それを美沙に見せた。

 

「この人……夢の登場人物にしてはやけにリアルだわ」

 

 一方で彼女が書き出した人物に、百合亜は驚きを隠せなかった。

 

「え、この人って……!」

「百合亜ちゃん、この人を知ってるの?」

「……すぐに古代さんと雪さんを呼ばないと」

 

 一方、食堂で思いっきり食べたり飲んだりするメーザーとナスカ。

 我慢に我慢を重ねて空きっ腹だった二人はガツガツと食べ物を口の中に掻き込んでいった。

 平田は二人の食物アレルギーを気にしたが、杞憂に終わってホッとしていた。

 

「……お前たちが俺のいた星を襲撃したのか」

 

 前言撤回。地雷を踏んだかもしれない。

 運悪く斎藤をはじめとする空間騎兵隊の隊員たちと、ナスカ・メーザーは遭遇してしまった。

 空間騎兵隊の隊員たちはガトランティス人の二人を見て酷く殺気立っていたが、

 

「斎藤、やめるんじゃ」

「……佐渡先生か」

「もしこの二人に暴力を振るうというなら、わしがおぬしらを宇宙空間に放り出すからな!」

「だが、俺たちの仲間だってこいつらに殺されたんだぞ。プロクシマ3にいた植民者たちまで!」

「それを言うなら俺だって船とクルーを失ったんだぞ!」

「何を!!」

 

 斎藤は思わず手が出てしまった。

 ナスカの顔面に一発、メーザーに左ストレート。壁に飛ばされたメーザーとナスカだったが、すかさず斎藤に反撃したため、食堂が乱闘状態になる。

 

「おいやめろ!何するんだ!!保安部、戦術科、誰でもいいからこいつらを止めてくれ!」

 

 平田は食堂にいた男手をかき集め、慌てて乱闘を止めに入ると、その場に居合わせたある人物が、天井に向けて銃を撃った。

 コスモガンではない。旧式の回転式拳銃。もっといえばマグナムだった。

 

「みんなそこまで!」

 

 それの所持者は、伊東愛子だった。いつもは猫目の穏やかな顔が印象的な彼女だが、今は怒って目を見開いていた。突然の威圧感を漂わせるオーラに流石の斎藤ですら気圧された。

 

「……な、何だそれ?古いリボルバーじゃねぇか……」

「私のお守り。悪いけど揉め事はこんな所でやめてくれない?」

「だがよ……」

「だがもグルカもない!周り見なさいよ、メチャクチャじゃない!いい大人が周りの迷惑顧みずなんて恥ずかしいと思わないの!?」

 

 愛子の一喝で、斎藤もナスカたちも周りを見渡した。

 乱闘の結果、ひっくり返ったテーブルに、割れた食器やグラス、床に散乱した食べ物……。

 

「黙ってないで、早く掃除!」

 

 そう言って呆然とする彼らに愛子は発破を掛け、強制的に後片付けをさせた。

 平田をはじめとした船務・主計科の隊員たちはホッとした。

 

 

 

 そして、その食堂での乱闘騒ぎが古代たちの耳に入る前に、彼は雪と共に病棟へと赴き、透子の人物スケッチを見て一様に驚いた。

 

「これって……古代くん」

「あぁ……デスラーだ」

 

 二人は知っている。透子が記憶を頼りに描き出した人物こそ、大ガミラス帝国の元総統、アベルト・デスラーその人であることに……。

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