宇宙戦艦ヤマト2202リテイク   作:MinorJunction 太華日

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 今日から29日まで三話連続投稿の予定です。

 あと、ご意見・ご感想、お待ちしてます。

 最近UA数が急に増えてビビってます(汗)


第15話「ヤマト、アゼルメニアに入港す」

 地球から遥か5万光年離れた銀河外縁部の宇宙空間。

 銀河系を離れると星の数は疎らになり、一抹の寂しさと孤独感がどこからか湧き上がる。

 だが、例外もある。

 例えば、アゼルメニア宙域外縁部。

 そこには超新星の残骸で出来た星雲の幻想的な風景が広がる。

 しかしワープ中の船を待っているのは、一種の障壁である。

 

「な、何だ!?」

 

 まるで壁にぶつかったような衝撃がヤマトや地球艦隊各艦のクルーたちを襲った。

 就寝中のクルーも何人かがベッドから投げ出された。

 

「報告!」

「艦内に負傷者多数!」

「レーダーシステム、長距離センサーが機能障害!」

『徳川より第一艦橋』

「古代です、どうぞ」

『機関室は大混乱だ。何があった?』

「まだ調べているところです……真田さん?」

「古代、原因ならわかるぞ。あれだ」

 

 真田が自身のモニターに映っている物体をスクリーンに映した。

 

「宇宙ブイ……でしょうか?」

「ワープ妨害フィールド発生器付きのな。これがヤマトと艦隊のワープを阻害して壁にぶつけた犯人だ」

「そんなバカな……何でこんな所に……」

「島?」

「ここはキーマンに指定された座標だ。間違いない」

「航路座標を再計算してくれ」

「了解」

「艦長、グナイゼナウのエスシルト艦長から入電です!」

「繋げ」

『こちらグナイゼナウ』

「どうぞ?」

 

「グナイゼナウの機関は故障! 補助エンジンへのパワー連結器も破損、映像スクリーンも割れ、通信は音声のみ!」

 

 グナイゼナウの第一艦橋ではスクリーンが割れ、コンソールもいくつか破裂。負傷したクルーたちが医務室に運ばれている最中だった。

 

 一方で、サツマとコンゴウはヤマトと映像通信は繋がったものの、第一艦橋の状況は大なり小なり混沌としていた。

 

「サツマよりヤマト」

『どうぞ?』

「こっちは何とか動けるが、武器の復旧に時間が掛かりそうだ」

 

「コンゴウよりヤマト。我が艦はレーダーを損傷。火器管制システムも故障しました!」

『了解』

 

「艦隊の被害はかなり酷いようだ。相原、手の空いてるクルーを……」

「艦長! レーダーに感あり!」

 

 古代が各艦の状況を聞き、復旧を指示しようとした矢先。

 森雪がレーダー上に艦隊とは異なる艦影を確認した。

 

「雪、それをメインスクリーンに映せるか?」

「……えぇ、何とか」

 

 ヤマトも細かい部分が所々故障していたが、レーダーで捉えた物体をスクリーンに投影するシステムは生きていた。

 

「あれは……!」

 

 ヤマトに迫っていたのは、ガトランティスの艦隊。艦は紫と桃色で塗装されていた。

 

「まさか、待ち伏せか……!?」

「ガトランティス艦隊だ!全艦戦闘態勢!」

 南部は奇襲を疑い、即座に戦闘態勢を指示する古代。しかし、その数は50隻を超え、ヤマトと艦隊の前面で扇状に展開していた。

 グナイゼナウは機関故障で動けない、サツマは武器システムをやられ、コンゴウはレーダーと火器管制システムを失っている。

 復旧している時間はない、最悪のタイミングだった。

「艦長、タンカー船から入電です、6隻とも異常認められず。軽巡ユラ、オオイ、キタカミも戦闘可能とのこと!」

「古代、航路座標の再計算が終わったぞ。何も間違っていない。ここはキーマンが指示したアゼルメニア宙域の外縁部だ」

「なら何故ワープ妨害フィールド発生装置が……?」

「島、それを考えるのは後にしよう」

「……そうだな、古代。第一船速!」

「了解、全艦、これより第一船速に移る!」

『機関室より第一艦橋、あまりエンジンに負荷をかけないでくれ。さっき無理矢理ワープから放り出されたせいでエンジンがオーバーヒートし易くなっている!』

「了解」

「第二船速に移行します」

「艦長、敵艦隊より通信です」

「……繋げ」

 

 まさかガトランティス側から降伏勧告だろうか?

 そんな嫌な予感がした古代だったが、スクリーンに映ったのは、意外な人物だった。

 

「え……ガトランティス人……じゃ……ない!?」

 

 古代ですら驚いたのは、ガトランティス艦隊(少なくとも見た目はそう見える相手)を指揮していたのは、

 

『所属とここへ来た目的を述べろ』

 

 威圧感たっぷりにそう尋ねてきた相手は、

 

「……ディノサウロイド……」

 

 まるでティラノサウルスのような顔をした相手を見て真田はそんなことを呟いた。

 ディノサウロイド。つまり別の言い方をするならば「恐竜人間」。

 地球には太古の昔、恐竜が繁栄を謳歌していた時代があった。

 「その恐竜がもしも人間のような進化を遂げて二足歩行をしていたら?」という過程の元、考えられた姿がディノサウロイド、恐竜人間というわけだ。

 

「……我々は地球連邦宇宙軍臨時遠征艦隊。私は艦隊指揮官の古代……」

『地球軍だと? 目的は侵略か!』

「違う、我々は……」

『イオン加速粒子砲用意!』

「大変……!敵艦に高エネルギー反応!」

「島、回避行動!」

「了解。ヨーソロー」

「艦長、グナイゼナウは動けませんよ!」

「しかし、今攻撃を受けたら……」

 

 そこへキーマンがやってきた。

 

「何しているんだ?」

「キーマン!今戦闘中なんだぞ!」

「待て待て」

 

 キーマンはスクリーンに映った相手に会釈をし、

 

「……御無礼をお許しください。我々の目的は交易だけであります」

『交易?嘘ではないだろうな?』

 

 すると今度は雪が、

 

「艦長、後方から5隻、こちらに向かってきます。包囲、右舷152°、上下角プラス4°」

「スクリーンへ」

 

 厳ついディノサウロイドの指揮官の映像は一旦スクリーンの脇に。

 代わりに映し出された艦船の種別を太田が答える。

 

「ガミラスのガイデロール級巡洋戦艦です。次元潜航艦4隻も確認」

 

 スクリーンには以前ヤマトがイスカンダルへの旅で遭遇した次元潜航艦と同型の艦が4隻と、白を基調とした塗装が施されたガイデロール級がこちらに向かってくる様子が映っていた。

 

「ガトランティス艦の次はガミラス艦……?何がどうなっているんだ……?」

 

 南部の疑問は尤もだったが、

 

「艦長。あの艦より認識信号が入りました。艦名は……《シンドバッド》?」

「シンドバッドだって?」

 

 ガミラス艦なのに地球の名前……?

 妙な組み合わせだったが、キーマンは先程のディノサウロイドの指揮官に言った。

 

「見てください、あれが我々の迎えです。我々はアゼルメニアに交易の品を運ぶついでに、ガミラス・地球領事館に用事があるだけなのです」

『……それで、交易の品は?』

「海水です。数千tはある」

『司令官、ガミラス領事館所属護衛艦隊のフラーケン司令から通信です』

 

 画面の向こう側では、ディノサウロイドの指揮官に向けてガミラス艦が通信を入れてきた。

 その通信の内容は彼とヤマトの両方で大きく表示された。

 

『フラーケンよりティラル。ティラル、応答せよ』

『ティラルだ。フラーケン、何だ?』

『その地球艦隊はアゼルメニアに用事がある。悪いが通してくれないか? 許可コードをそちらに送る』

 

 そう言ってフラーケンが目の前のコンソールを操作すると、何かのデータがディノサウロイドの指揮官であるティラルの元へ送信された。

 

『……何と。これは失礼しました。全艦、武装解除。……機関故障した艦を曳航する準備をしろ』

『キーマン、久しぶりだな』

「フラーケン艦長、遅いですよ」

『そちらが指定座標からだいぶ外れた位置にいたからだ』

「こっちだって。ワープ妨害フィールドがこの座標まで広がっているなど知りませんでした。……いや、何かありましたね? ティラル司令官率いるあのガトランティスの艦隊はアゼルメニアの警邏艦隊所属。その警邏艦隊がここに待ち伏せていたということは……」

『相変わらず察しが良くて助かる。最近この付近で交易船が破壊される事件が相次いでいる。敵の正体は不明。警邏艦隊が現行犯逮捕を狙っていたが、残念ながら今回は失敗だな。だが、安心してくれ。アゼルメニアまで我々が護衛する』

「了解。……もう戦闘態勢は解いていいぞ」

「……全艦、戦闘態勢を解除」

 

 キーマンにそう言われ、古代も戦闘態勢を解除したが、少々腑に落ちない感じだった。

 

 ガトランティスのナスカ級中型航宙母艦*1が、地球軍のドレッドノート級重巡洋艦グナイゼナウを曳航する姿は極めて妙だった。

 それ以外の地球軍艦船はアゼルメニアまでの僅かな道のりの中、航行しながら修理を続けていた。

 地球の艦隊とタンカー船は、アゼルメニアの警邏艦隊と、フラーケン率いる次元潜航艦4隻に護衛されながら、

 

「これは……」

 

 警邏艦隊が案内したのは、言うなれば交易船の行列だった。

 見たところ数百隻はいる。大きさも形もバラバラ。コスモハウンドと同じぐらいの大きさの貨物船から、ゼルグート級の全長とポルメリア級の全幅を合わせたような大きさを誇る豪華客船まで、艦種も形態も様々だった。

 

『これはアゼルメニアに向かう交易船の船団だ。これを逸脱しないようアゼルメニアへ向かえ。ただし、修理が必要な艦は、軌道上の修理ステーションを使用するように。それでは』

 

 そう言うとティラルは通信を切り、グナイゼナウを曳航する艦を除いて全て地球艦隊から離れて行った。先導するのは、《シンドバッド》という艦名が与えられたガイデロール級と、次元潜航艦4隻。

 

「艦長、シンドバットから入電です」

「繋げ」

 

 すると、スクリーンに現れた人物に、雪と古代たちは驚いた。

 

「ミーゼラ……?」

 

 雪がその名を口にするが、肌はガミラス人と同じ水色で、耳も尖っていない。

 

『……人違いです。私の名前はマーリン。マーリン・バレル。アゼルメニアのガミラス・地球領事館を預かる者です』

「バレル領事館長。お久しぶりです」

『クラウス。あなたがヤマトに乗ってここへ来ることは叔父上から聞いています』

 

 バレル。その苗字や二人の話の内容からすると、マーリンはどうやらあのローレン・バレル大使の関係者らしい。かつて雪を庇って撃たれたミーゼラ・セレステラとはやはり別人なのだろうか。

 

『……ヤマトの人たちに、こればかりはどうしても伝えないといけないわね。艦長。一時間後にそちらへお伺いするわ。内密に話したいことがあるの』

「……わかりました」

 

 一時間後。マーリンは連絡機として用いている白いスマルヒでヤマトを訪れた。

 本来スマルヒは二人乗りだが、連絡機仕様なので四人乗りである。また、ガイデロール級に搭載することを前提としていたのか、主翼も折畳式だった。

 ガミラスの空間偵察機がヤマトに着艦してきたことに、当然、甲板部のクルーや加藤を筆頭とした航空隊のパイロットたちも驚く。

 彼らは機体から降りてくる人物を大使や他国の重鎮であると聞かされていたため、整列して迎えた。

 赤い絨毯まで用意して。

 スマルヒの機首にある巨大なキャノピーが開き、機体から降りてきたのは……。

 

「あれ?人間だ……」

「シッ」

 

 ナツメグこと夏目 恵は操縦してきたパイロットがヘルメットを脱ぐと、人間の女性そっくりなパイロットだったことに驚く。ナツメグはすぐ横にいた愛子に私語を注意される。ちなみに、このパイロットこそがガミラス領事館の侍女長であるグラナーティス・エルシャヴィーアであることを彼らはまだ知らない。

 グラナーティスは後部座席にいる人物たちをエスコートしながら機体を降りてきた。

 この機体には三人が乗っていた。格納庫の床にその三人がようやく足を付けると、グラナーティスが後部座席に座っていた人物たちのヘルメットを取る。

 一人目は、ガミラス人の女性だった。少なくとも、そう見える。

 

「あの人は……」

 

 山本にも、そのガミラス人の女性は見覚えがあった。

 そしてもう一人も若い女性だったが、こちらは肌の色がアイスブルーで、耳が地球でいうエルフ耳をしている辺り、ガミラス人では無さそうだ。

 その時、古代が数名の護衛とキーマンを伴って格納庫へとやってきた。

 格納庫にいた全員が古代の登場とともに背筋を伸ばした。

 古代は敬礼し、

 

「マーリン・バレル領事館長。ヤマトへの乗艦、歓迎いたします」

「えぇ、お出迎えありがとう。でも、ここまで仰々しくしなくても」

「いえ、領事館長ということは大使も同然です。これぐらいの歓迎を出来なければ失礼に当たります」

「……そちらの女性は?」

 

 キーマンも虚をつかれたかのようにマーリンに尋ねると、

 

「申し遅れました。私はラロットと申します」

「食堂ではシェフが腕によりを掛けたガミラス・イスカンダル料理を用意しております」

「申し訳ないわ、折角だけどそれどころじゃないの。本題に移りたいわ。静かに話せる場所はある?」

「……では、艦長室へ」

 

 艦内を移動する彼女たち三人の周りを戦術科のクルーと保安部のクルーが囲んでいる。

 まるで大名行列のようだった。

 

「何だ何だ?」

 

 大名行列といえば見物人も欠かせない。

 斎藤たち空間騎兵隊も何事かと様子を見にきた。

 

「こらこら、見せ物じゃないぞ!」

 

 戦術科の南部が斎藤たちを追い払う。

 未だにガミラスに対して嫌悪感を持つクルーも少なくないからだ。

 

 彼らは第一艦橋を経由して艦長室へ。

 第一艦橋のクルーたちはゲストであるマーリンたちに対し敬礼で迎えた。

 

「休め」

 

 古代がそう言うと敬礼をやめ、

 

「持ち場に戻れ」

 

 そう言うとクルーたちは普段通りの動きに戻る。

 ただ一人、森雪を除いて。

 彼女はマーリンのことがどうしても気になり、彼女が侍女や護衛たちとともに艦長室へ上る後ろ姿を見送ってから、レーダー手席に戻った。

 

 第一艦橋と艦長室は艦長席から見て右側のターボリフトを上がってすぐのところにある。

 艦長室のドア前は、星名とグラナーティスが警備に就いていた。

 部屋の中には、マーリンとキーマンと古代、そしてラロットの四人だけ。

 

「急かして申し訳ないわね。ヤマトがワープ妨害フィールドに衝突したと聞いたわ?」

「はい。負傷者多数。艦隊の艦船にも被害が出ましたが、幸い死者は無し」

「事前連絡が出来なくて申し訳なかったわね……。早速本題だけど、地球人流に言えば良い話と悪い話があるの。どちらから先に聞きたい?」

 

 それを言うなら「良い知らせと悪い知らせ」だ。そうツッコミたいもののその暇はない。

 

「では、悪い知らせを」

 

 古代がそう言うと、マーリンは暗い顔をして伝えた。

 

「……古代艦長。あなたはミカゲ・キリュウという人を知っているわね?」

「桐生美影……ですか? このヤマトの技術科のクルーだった」

「えぇ。その娘がね……」

 

「何ですって、桐生が行方不明?」

「一昨日の事よ、突然行方不明になったの。手掛かりを探しているところだけど……」

 

 古代にとっては寝耳に水というものだ。この話を聞くまで、まさか美影がアゼルメニアにいるなどとは思ってもいなかった。

 誘拐された可能性もある。

 確かにこれは表立って言えることではない。

 

「誘拐だとすれば、可能性としては……」

 

 マーリンが視線を向けた先にいたのが、ラロットだった。

 

「そういえば、ラロットさん、と言いましたか。彼女のことを聞いていない」

 

 ラロットはマーリンと視線を交わすと、

 

「……そうですね。彼らには明かした方がいいでしょうね」

 

 そう言うと、ラロットは20代の美女から、いきなり70代ぐらいの老婆になった。それも、肌の色も耳も地球人そっくりに。

 

「「え……!?」」

 

 キーマンと古代は当然驚いた。

 

「紹介するわ。彼女はラロット・アズテリア」

「アズテリアって……まさか失われた教皇女の!?」

 

 キーマンもザルツ・テレザート教の教皇一家のことは歴史と戦略の授業で習っていた。

 ザルツ・テレザート教最後の教皇アズテリア22世。彼の一人娘はザルツ戦役時に忽然と姿を消したことから「失われた教皇女」と呼ばれている。

 

「失われた教皇女?」

 

 しかし、古代には何が何だかさっぱりだった。そこでキーマンは地球人にも分かりやすい例えを使うことにした。

 

「古代。アナスタシアって映画を知らないか?」

「知ってるが、突然何だ?」

「もしこの人が失われた教皇女本人であるならば、それはロマノフ家のアナスタシアがロシア革命を生き延びたのと同じかそれ以上の衝撃になるぞ」

「当然、教皇家のザルツ帰参を歓迎しない者たちもいる。例えば、ザルツ革命戦線とか」

「つまり、ザルツ革命戦線がその、ミカゲ・キリュウという女性を誘拐したかもしれない、と?」

「可能性はある」

「あの、ちょっと。話についていけないんだが……」

 

 事情を知る二人の会話に対して、古代はすっかり置いてけぼりにされていた。

 

「えーと、つまりわかりやすく言えば、ザルツという星でガミラスとの戦いの最中に革命が起き、その革命の首謀者たちが教皇夫妻を殺害。この女性はその教皇夫妻の娘で、戦争から逃れるためにこの星に逃げ延びてきたと、そういうことか?」

「……まぁ、大筋はそんな感じね」

「私は普段はこの格好でスラム街に住んでいるのよ。若い女に比べたら見向きもされないから逆にありがたい」

「スラム街……アゼルメニアにもそんなところが……」

「アゼルメニアは交易国家よ。ガデリス球の外側と内側、両方の世界に全部で270兆人が住んでいる」

「270兆人……」

「出生届がない人や不法就労者諸々を含めたら300兆人はいるかもね。広く大きく人工密集惑星でもあり、銀河外縁部の経済が動く場所でもある。それ故に貧富の差も激しい。ここで夢破れた人々もいるの。だからスラム街もある」

 

 すると、艦長室に掛かっていた太陽光が突然に何かで遮られたことに古代は気付く。

 インターコムが鳴った。

 

「古代だ」

『艦長、正面に巨大な建造物を発見しました』

 

 太田がそう報告してくると、

 

「噂をすれば、見えてきたわね」

 

 マーリンがそう言い、指さしたその先には、緑色の巨大な惑星が太陽の周りを回っていた。

 ヤマトが身を寄せている船団の行き先こそ、その惑星であるが、近づくにつれてそれは幾何級数的に大きくなっていくように見えた。

 実際には、ヤマトが向かっている天体そのものが巨大すぎる故にそう見えるだけなのだが。

 驚愕し、興奮も感じた古代に対し、マーリンは微笑みを浮かべながら言った。

 

「ようこそ。アゼルメニアへ」

 

 アゼルメニアへ向かう船団は、地表から45〜50万キロ地点で、大きさが様々な宇宙ゲートを潜るよう誘導される。

 宇宙ゲートの大きさは1番小さいと直径20m、1番大きいと直径5kmのものまである。

 目的は検疫と荷物の確認であるため、「検疫ゲート」という通称で呼ばれている。

 アゼルメニアへ寄港する交易船は1日に1万隻もある。それら一隻一隻に検査員が乗り込んで調べていたら恐ろしい時間が掛かってしまうので、入出港の効率化を図るためにゲートにはセンサービームを備えている。言うなれば宇宙船のMRIを撮るか、もしくは空港の荷物検査でX線を使うようなもの。ゲートを潜れば一瞬で全てがわかる。

 地表から38万キロ地点。アゼルメニアがあまりにも巨大なために実際は月と地球ぐらい離れていることが分からない。

 ここには管制室及び検疫ステーションがあり、ゲートを通過中の艦船、船舶を1000万人体制で常時監視している。常駐者の多さから、このステーションだけで一つの都市としての機能を有していることは言うまでもない。

 その時、ヤマトやドレッドノート級のスキャンデータがアゼルメニアの検疫官たちの目に触れると、彼らは顔を強張らせた。

 

「これは……かなりの重武装だな」

「地球軍の戦艦と重巡洋艦だそうだ」

「どこと戦争するつもりだ?」

「アゼルメニアじゃないことだけは確かだな」

 

 彼らは肌の色どころか姿も形も起源惑星も異なるエイリアン種族たちであり、中には星を滅ぼされるなどしてアゼルメニアに流れ着いた種族の子孫であったりする。それ故にヤマトのような宇宙戦艦の存在には警戒感を強める。

 一方、別のゲートでは客船が通過しようとしていたが、けたたましい警報音が管制室に響いた。

 

「どうした!?」

「ゲート574通過中の貨客船から感染性の強い伝染菌を検知しました!」

「ゲート574を封鎖。その船を即座に隔離しろ」

「了解!」

 

 ヤマトを含んだ地球からの艦船は問題なくゲートを通過し、ゲートで足止めされた貨客船を素通りして行った。

 

 そのまま、ヤマトを含む地球艦隊の主要な艦船の内損傷を受けたものは、アゼルメニアの地表から10万キロ、もう既にアゼルメニアの成層圏にあたる場所に設けられた修理ステーションのドライドックへと入った。

 

『相原から艦長』

「どうした?」

『ドライドックからメッセージです。繋ぎます』

『こちらアゼルメニア修理ステーションドライドック427です。地球艦BBY-01、E.F.Sヤマトへ。設計図と部品リストはありますか?』

 

 それは女性の声だったが、どこか機械的な雰囲気もした。

 

「設計図だと?何故要求する?」

『艦の損傷具合を診断し、部品を複製するために必要だからです』

「……気が進まないな。もしデータが盗まれたりしたら……」

『アゼルメニアではデータが厳重に管理されています。設計図がない場合は、ゲート通過時のスキャンデータを基に修理を開始します』

「……真田さん、どう思います?」

『ヤマトの場合、設計図は逆にあてにならないかもしれない。かなり改良を加えているからな。部品リストは送ろう』

「それなら……ドライドック。部品リストを送るが、船のスキャンデータを元に修理を進めてくれ」

『了解。修理概算……完了。全工程完了まで8時間56分です』

『艦長!』

 

 第一艦橋から相原の驚くような声がした。窓の外を見ると、修理用のアームがヤマトに伸びてくるではないか。

 

『修理中は船を固定します。修理プラン送信……失敗。データ物理入力ポイントを検索。……発見』

 

 すると、アームの一本が第三艦橋に繋がる。

 

『修理プランを送信中です、お待ちください』

 

 しばらく間があって、

 

『艦長、真田副長、第二艦橋の西条です。こちらに来ていただけませんか?』

「?」

 

 何事だろうか。古代は艦長室を出て第二艦橋のCICに向かうが、マーリンとラロット、キーマンたちも続く。

 

 第二艦橋に辿り着くと、当直クルーの西条たちの目の前で誰が作動させたわけでもないのに、ホログラフィックジェネレーターが稼働し、ヤマトの損傷箇所を表示していた。

 

「艦長、突然に動きました。私たちは何も触っていません」

 

 損傷箇所は赤で表示されるが、ヤマトの損傷箇所はかなり細かい部分が多かった。

 ほとんどが戦闘後に甲板部や船外作業班が補修を行なった箇所である。

 

「……ここまでされると、我々も肩無しだな……」

 

 真田は感心しつつもどこか悔しそうな表情を見せる。古代ですらそんな真田の顔は初めて見る。

 

『修理の第一段階は機関部のエンジン交換。部品はこちらでレプリケートし、既存のクルーによる修理も可能ですがいかがしますか?』

「部品をレプリケートだと?」

『はい。損傷した部品を部品リストに登録されているものと比較し、複製します。なお、私に任せていただければ30分で修復出来ます』

『30分だと!?』

「徳川さん?」

『通信回路は機関室にも繋いであります』

『古代、今聞こえたが、この声は誰なんだ?』

『私はアゼルメニア修理ステーションドライドック427の管理AIです』

「管理AI……まるで人と話しているみたいだったな」

 

 先ほど悔しさを滲ませていた真田が、一転して笑みを浮かべた。

 

『お、おい……艦長、ちょっといいか。機関室のモニターをオンにしてくれ』

「?」

 

 今度は何だろう。

 言われるがまま機関室と映像を繋ぐと、

 

「え……?徳川さん、その女性は?」

『知らんよ、突然現れたんじゃ』

『私が427。管理AIのホログラムです』

 

 人類でならあり得ないような薄ピンク色のおかっぱ頭に、サイドテールの髪型。目はエメラルドのような緑色。服装はどこか作業服のようなツナギを着ていた。

 

「あなたが、このヤマトの機関長ですか?」

「そうじゃが」

「エンジンの修理をお手伝いします」

「でも、ホログラムが物を持つなど……」

 

 などと言っている間に、目の前のAIのホログラム女性は、機関室の壁に掛かっていた巨大なレンチを軽々と持ってみせた。

 

「……できるのか」

「私は複製を作れます」

 

 そう言うと、目の前のホログラムは2人、4人、8人……最終的には32人に増えた。

 

「機関長!?」

「おやっさん!?」

 

 堀田美奈子と山崎は驚くと同時に少し恐怖も感じた。

 

「私だけでなら、作業完了までに30分で済みます」

「おやっさん、いくらなんでもそれは……」

「……そんなにいらんよ」

「え?」

「誰か一人に絞ってくれ」

「ホログラムの私一人では機関部の修理に6時間掛かってしまいます」

「誰が一人でやれと言ったかな? これはな、わしがずっと面倒を見てきたエンジンじゃ。赤の他人にベタベタと……いや、ホログラムかAIか。とにかく、わしはここばっかりは人任せにするのは嫌なんじゃ。でも、手伝ってくれるなら助かるぞ」

「しかしそれは……」

「わ、私たちを忘れてもらっちゃ困ります! 私たちもヤマトの機関部員なんですから!ね、伯父様!?」

「あ、あぁ、そうだ。そうだよな」

「……わかりました。では、お手伝いします」

 

 それが合図と言わんばかりに、ドライドック内はフォースフィールドで囲われた。

 

「閉じ込められた……?」

『いいえ。作業の効率化を図るために、ドライドック内をフォースフィールドでカバーしました。ドライドック内はあなたたちが呼吸できる大気を再現しています。これは修理完了まで作動したままになります』

「合理的だな。各部の修理のために船体を開かなければならない部分もある」

『アームが入れない細かい部分は、私の分身であるホログラムたちにお任せください。修理作業中のエリアには立ち入りを禁止します。左舷大型機発着パッドの修復は1時間2分後に開始します』

 

 すると、マーリンが思い出したかのように古代に尋ねた。

 

「艦長。この艦にはコスモハウンドという大型の汎用艇がそういえばあったわよね?」

「あ、はい」

「申し訳ないけど、一隻貸してほしい。あと、ヤマトに余っている個室があれば貸してほしい。出来れば二部屋」

「他にも誰か来る予定が?」

「えぇ。私の侍女の一人と、それに……」

「私の孫たちもテレザートへの旅に同行させてほしいのです」

 

 そう言ったのはラロットだった。

 何も聞いてないぞ、と言わんばかりに視線をマーリンに向けるキーマン。

 

「しかし、テレザートへの道のりは聞いた限り過酷を極める旅だとお聞きしました。そのようなところへお孫さんたちを……?」

「過酷だからこそ修行なのです。生きている限り学ぶということは、生きている限り試練と修行を続けよということ。テレサ様もそう言っておられます!」

「ですが……」

「艦長。ラロットのお孫さんたちに関しては私が責任を持ちます。テレザートへ行くにはラロットの存在は不可欠です」

 

 そこまでマーリンに言われると、古代は断れなかった。

 

*1
ナスカとメーザーがセントーリ11の戦いの際座乗していたのと同型の艦




 アゼルメニアのアイディアは「新スタートレック」のシーズン6「エンタープライズの面影」というエピソードにて登場した「ダイソンの天球」という人工天体からインスピレーションを受けて誕生しました。
 ただ、上記のエピソードに登場した「ダイソンの天球」は、表面がデススターみたいだったので、「ヤマトの世界観に出すとしたらこれはちょっと味気ないな……」となりまして。アゼルメニアの表面に人工大気と、人工的に作られた自然界のようなものを追加してみました。ついでに双子星の恒星も用意。

 アゼルメニアの住民たちを見ると、人型だけでなく、ケモ耳の生えた人種や、非ヒューマノイド種族、果ては人間性を取得したAIなどが登場していますが、これについては、……まぁ、日本では定番な「異世界」や「中世ヨーロッパ風」の作品の他、「DOGDAYS」などのいわゆる「可愛い系」、あるいは少し古いですが「鉄腕アトム」や「成恵の世界」などのSF系などなど、日本で描かれてきた様々なコンテンツの要素を融合させるという手法を試みてみました。
 もっと分かりやすく言えば、「この星から「エルフ」とか「魔法」に似た概念が地球に伝わっていったとしても、おかしくない感じ」と表現すれば果たして伝わりやすいでしょうか?

一話のストーリーとして長さはどうですか?

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