宇宙戦艦ヤマト2202リテイク   作:MinorJunction 太華日

17 / 22
第16話「美影を探せ」

 ヤマトの船内外では、修理のためにドライドックのAIが複製したホログラムたちが、ヤマトのクルーたちに混じって作業を行なっていた。

 特にレーダーが基部ごと酷く壊れている。

 船外作業服を着ている新米と小島は427のホログラムの一人と一緒に作業を始めていたが、

 

「え?」

「すげぇ……」

 

 二人はホログラムの女性が両手を合わせたと思ったら、両手のひらをゆっくりと離していくと、何もなかったはずの場所に突然レーダーの基部の長方形の部品が実体化して現れた。

 これをヤマトの損傷したパーツと交換して取り付けると、元通りだ。

 続いてドライドックから伸びているアームが同じように、大きいレーダーアンテナの複製を作って実体化させ、それを元の場所に取り付けた。

 

 ドライドックで修理中のヤマトから、コスモハウンドが発進する。

 パイロットは山本。副操縦士は鶴見。

 他には、星名と斎藤、マーリン、美沙、雪が乗り組む。真田もアゼルメニアに降りることにした。空間騎兵隊からは安祥を含めて数人が同行した。永倉は残った空間騎兵隊のまとめ役として留守番。アゼルメニアに軍隊や兵士が集団で乗り込むのは警戒されるだけだとマーリンが言ったためだった。

 コスモハウンドはタンカー船や他の船団の船と共に、アゼルメニアの地表へと降りていく。

 その地表には森と緑豊かな山々と湖が広がっていた。

 切り立った崖も多く存在し、それらの崖の上に建物が多数見える。

 地上を移動するホバークラフトは、それらの建物や崖を縫うように飛んでいく。

 船団は地表の巨大なクレーターのような場所に案内され、地表の降り立とうとしたら、突然パックリと地面が口を開けた。

 まさにそれは巨大なドア、あるいは巨大なハッチだった。大きさは最低でも半径10kmはある。

 

 コスモハウンドと船団は、アゼルメニアの「中」の世界に入っていった。

 そして、そこに広がっていたのは、広大な交易港と、鮮やかな色調でビル群の並んだ超科学惑星文明だった。

 

 アゼルメニアの貿易港に接岸したタンカー船からは、早速積み荷である海水の組み上げ作業が始まっていた。

 

「これは……凄いな」

 

 真田はコスモハウンドを降りて早々、外に広がる世界に圧倒され、興奮していた。

 

「キーマンの言ってた通りだわ。中にも太陽がある」

 

 山本は空に太陽が輝いている様子を見て驚いている。確かにここは「惑星の中」のはずなのに明るい。

 周りの街には多種多様な人種の人々が犇めき合い、様々な品物を売り買いする市場まである。

 ホバークラフトが人々の足として使われていて、中にはバスやタクシーのような役割をしている乗り物もあるようだった。空を見ればそれらのホバークラフトがハイウェイのような列を成している。

 

「確かにすげぇが、それどころじゃない。美影が攫われたんだろ!? こんなところでのんびりしてる場合じゃないぞ!」

「あ、あのぅ……」

「あ?」

 

 斎藤に声を掛けたのは、緑色の髪をした少女。髪にカチューシャのようなものを付け、メイド服を思わせる服装、もしくは制服を着ていた。

 彼女はもう一人の少女と一緒にいた。

 

「あら、大丈夫?」

 

 そう言って斎藤と少女たちの間に割って入ったのは雪だった。

 

「え……ユリーシャ……様……?」

「ごめんね、怖がらせちゃったかも……あれ?あなたは確か……」

「ヒルデ、早かったわね」

「ま、マーリン様!お迎えに上がりました!」

「……思い出した。確か……」

「ひ、ヒルデ。ヒルデ・シュルツです! ユリーシャ様、お久しぶりでございます!」

「ヒルデ。待って。この人はイスカンダルのユリーシャ様ではないわよ?」

「え……?」

 

 思わぬ再会が続くものだな、と雪は思った。

 山本と鶴見はコスモハウンドに留守番。

 ヒルデはもう一人の少女と共にガミラス・地球領事館へ向かうホバークラフトへ一行を案内する。

 車内で雪とマーリンに挟まれる形になったヒルデは、頭を整理していた。

 

「えぇと、つまり、私がガミラスでお世話させていただいたのは、実はユリーシャ様ではなく、ユリーシャ様にそっくりなあなただったわけで……」

「森雪。雪と呼んで」

「ユキさん……綺麗な名前ですね」

「ありがとう」

「……」

 

 そんなことより美影を探しに行かなければ。そんな焦燥感を持っていた斎藤だったが、彼のすぐ横に座っている少女が、斎藤の袖を掴んだ。

 

「何だ一体……。……!?」

 

 その少女の顔を見た時、斎藤は驚きのような、どこからか怒りの感情も湧いて出てきた。

 何故なら、その少女がガトランティス人らしかったからだ。

 だが、少女は斎藤の目を見て言った。

 

「……おじちゃんを探して」

「……はぁ?」

 

 突然にそんなことを頼まれると、怒りはどこかに引っ込んで、代わりに困惑が出てくる。

 

「な、なぁ、マーリンさんよぉ、一体どういうことかもう一回最初から教えてくれないか? 美影が行方不明になったってのは聞いたが」

「美影さんが行方不明になったのと同時に、その子の養父も行方不明になってしまったのよ」

「私、リストージア。リズって呼んでいいよ」

「……確認だが、このリズって子の養父は?」

「イルミダス人を名乗っていたそうよ」

「イルミダス人?……聞いたことのない種族だな」

「斎藤。領事館に着くまでにまだ時間はある。だから、1から全部話そう」

 

 ガミラス・地球領事館へはコスモハウンドが誘導された発着場から30分と掛からずに到着した。

 領事館を目の前にして、斎藤は真田から説明されたことを自分なりにわかりやすくまとめているところだった。

 

「つまり、このリズ……とか言ったな。このお嬢ちゃんのおじさんとやらが、80年前にアゼルメニアを侵略した連中の一味だったんだな?」

 

 そう確認するように斎藤はマーリンに尋ねた。

 

「まぁ、大雑把に言えばそうなるわね。ガトランティス帝国はガトランティス人が主権を握る国家だけど、イルミダス人のような被支配種族もいる」

「80年?おじちゃんというよりじいさんじゃねぇか?」

「ガトランティス人やイルミダス人の寿命は地球人よりも長いみたいよ。最高齢は300歳にもなるとか」

「はぁ……お嬢ちゃんも俺より年上なのか?」

「私?私は12/30歳だよ」

 

 30分の12歳?聞き慣れない歳の数え方に、斎藤と星名は顔を合わせて困惑する。

 するとマーリンが解説した。

 

「アゼルメニアの一年は地球の単位で言えば30年になるの」

「……ということは、太陽系で言えば土星の公転周期と大体同じぐらいがアゼルメニアの一年に当たるのですね?」

「そうなるわね」

 

 真田はなるべくわかりやすい例を出してきたが、斎藤には結局よくわからなかった。ただし、この目の前の少女は見た目も年相応だということだけは理解できたが。

 彼らの乗ったホバークラフトが領事館に到着すると、そこは、物々しい雰囲気になっていた。真田は尋ねる。

 

「領事館前って、いつもこんなに混雑しているんですか?」

「いいえ。アゼルメニアの保安部とポリスカーだわ、何でこんなに……?」

 

 彼らが地面に足をつけると、より雰囲気は物々しかった。

 

「あぁ、マーリン・バレル領事館長とお見受けしますが?」

「あなたは?」

「アゼルメニア保安部第42451分署のディルガン・ジ・カール警部であります」

 

 そう答えたのは、毛先が丸みを帯びた白髪に青み掛かった灰色の肌をした中年の異星人*1。アゼルメニア保安部の警官が着用している制帽を被っていたが、服装は地球でサラリーマンが着ているようなスーツとそっくりなものだった。

 

「これは一体どういうことですか?」

「我々はアゼルメニア最高評議会の命を受けました。あなた方の事件解決に全面的に協力するように、と。最高議長が領事館でお待ちです」

「そんなまさか……」

 

 驚いたマーリンは早歩きで領事館に戻っていく。

 

「お、おい?」

 

 斎藤たちもマーリンに慌てて付いていく。ディルガンは彼らを見送ると、集まった警官たちの中に紛れて行った。

 

「マーリン様、最高議長が応接室でお待ちです!」

 

 留守居のガミラス人執事がマーリンに挨拶すると、彼女の前を歩き、応接室のドア前まで着くとドアを開けた。

 彼らが全員部屋に入ると、そこでソファーに座って待っていたのは二人の人物。

 

「!」

 

 斎藤が驚いたのは、目の前にいる壮年の女性が、ガトランティス人に似た肌の色をしていたからだった。ただ、ナスカやメーザーたちに比べると肌の色はやや黄緑色に近かったが。

 もう一人は、仮面を被った男。見るからに怪しいが、

 

「レーニアー最高議長閣下、お待たせして申し訳ありません。しかし……ミスター・オストヴェント?何故ここに?」

「バレル領事館長。こちらこそ急で申し訳ありませんね。このミスター・オストヴェントから面白い話を聞いたものでして」

「面白い話というと?」

「……単刀直入に。あなたの領事館の職員が行方不明になったとか」

 

 つまり、クライアントの情報が漏れたということだ。マーリンは当然怒る。

 

「ミスター・オストヴェント!」

「申し訳ありません。クライアントの情報を漏らすのは探偵失格ではあります。しかし、最高議長は関係者なのです」

「関係者? ……最高議長、どういうことなんですか?」

「本来ならば、アゼルメニアに駐在する領事館職員が行方不明になったとしても、アゼルメニアの保安部は48時間経過しなければ動かないでしょう。しかし、彼から事情を聞いて、私が最も信頼する分署に捜査協力を頼んだのです」

 

 その頃、アゼルメニアの某所。

 

「うぅ……ん……ここは……?」

 

 美影は意識を取り戻したが、当たり一面真っ暗だった。立とうとしたが、何かに縛りつけられているらしく、動けない。

 

「……目が覚めたか」

 

 その声には聞き覚えがあった。その方向に振り向くと、椅子に座っているが、何かを飲み食いしていた様子の、

 

「ザバイバルさん!?どうしてこんなことを……?」

 

 リズことリストージアのおじ、ザンツ・ザバイバルがそこにいた……。

 


 

 軌道上のドライドックにいるヤマト。修理作業中は動けないこともあり、第一艦橋では持ち場を離れていたり空席が目立ったりしている。

 それでも通信士席には相原が残り、レーダー席には西条が座っていたが、彼女の表情が一瞬変わったのを古代は見逃さなかった。

 

「……?」

「どうしたんだ、西条?」

「ヤマトにコスモゼロが一機接近中です」

「コスモゼロ?どこの所属だ?」

「艦長、そのコスモゼロより入電です。音声のみ」

「繋げ」

『こちらコンゴウの艦長、今井早紀です。ヤマトへ、着艦許可を願います』

 

 真田に代わり、技術科長の席に座っていた新見は今井早紀のヤマト訪問に少し驚いていた。

 

「今井艦長、今ドライドックはフォースフィールドが作動しています。通過周波数は受信しましたか?」

『ドライドック427です。通過周波数を送信します』

『確認しました。フィールドを現在通過中です』

『古代艦長。427です。左舷大型機発着パッドの修理を始めますがよろしいですか?』

「ちょっと待って欲しい」

『了解』

「着艦口を開けろ。相原。コスモハウンドを呼び出せるか?」

「待ってください、あと10秒……ここはあまりにも通信量が多くてコスモハウンドと回線を結ぶのも一苦労です」

 

 新見のすぐ横では太田がアゼルメニアの外殻を調べていた。しかし、何せダイソンの天球だ。巨大すぎてアゼルメニアの表面を調べるだけで一ヶ月は掛かるという。

 それでも、

 

「外殻と内殻を繋ぐ通信アンテナを見つけました。それがこの地域には最低でも数万本はあるはずですが……」

「待ってください、……ヤマトよりコスモハウンド。コスモハウンド、聞こえますか?」

 ザーザーというホワイトノイズしか聞こえてこない。と思ったが、

『…る…み、こ……ら…コス……ハウンド……つ……み』

「相原から第二艦橋。シグナルブースターを調整」

『市川です。今調整中です!』

『……るみ……ら…マト……こちら、コスモハウンドの鶴見です、応答してください』

「よし、繋がった」

「鶴見、聞こえるか?」

『は、はい、艦長』

「そちらの状況は?」

『真田副長や斎藤隊長たちが降りてからもう一時間近くになります。ゲストと一緒に領事館へ行ったっきりです』

「……わかった。これから大型機発着場がしばらく使えなくなる。それを伝えにきた」

 

 古代がそう言って首を縦に振ると、相原がドライドック427に次の修理箇所である左舷大型発着パッドの修理開始に許可を出した。

 

『了解しました』

「ところで鶴見。アゼルメニアの内側の世界はどんな感じだ?」

『あぁ、その……凄いの一言ですよ!お見せできないのが残念です』

『ちょっと鶴見、手伝いなさいよ』

『あ、はい、隊長。ヤマトと通信がつながりました』

『ホントに?』

『はい。でも、映像通信のやり方がわからなくて……』

『もう、何やってるの。貸してちょうだい』

 

 向こう側でガチャガチャと音がしたと思ったら、コスモハウンド船内の映像がヤマトの第一艦橋のメインスクリーンにデカデカと映っていた。

 コスモハウンドには仮眠用の居住スペースがあるのだが、そこのテーブルに何やら見たことのない料理が並んでいるのが見えた。

 

『あらやだ……第一艦橋のメインスクリーンに繋がっちゃった……』

「そのままで良い。山本。ハウンドの外側がどうなっているのか映像を切り替えてくれないか?」

『やってみます』

 

 山本が映像を切り替えてる傍ら、太田は「アゼルメニアにもテイクアウトやデリバリーサービスがあるみたいだな」と呟いた。

 暫くして山本が見せたアゼルメニアの内側の世界は、

 

「これは……」

「凄いな……」

「中はこうなっているの……?」

 

 古代、相原、新見を始めとするヤマトの主要幹部士官たちが思わず語彙力を失うほどの、想像を超えた世界が待っていた。

 

「……あぁ、太田。これを、艦内全てに流してくれないか?」

「あ、は、はい。やってみます」

 

 何を思ったか、古代は太田にその驚異の世界をヤマトのクルーたち全員に見せることにした。

 

「……艦長の古代だ。皆修理に忙しい所を悪いが、近くのモニターを見てほしい。我々の目の前には巨大な惑星型の人工建造物がある。その中には、驚異の世界が広がっているんだ」

 

 古代は艦内放送で全クルーにそう告げると、クルーたちは、近くのモニターに集まる。

 コスモハウンドがいるのはアゼルメニアの小型艇専用宇宙港。

 そこから見える風景は、当たり一面には大都市と蚤の市のような市場、商店街や飲食店が並び、緑豊かな公園も見える。

 空には人々の移動手段として自動車やバスのような大きさのホバークラフトが列を成して浮かんでいる。まるでそれは、道路のない高速道路のようだった。

 だが、コスモハウンドのすぐ近くから、何語かで書かれた大きな箱のついた一人乗りのバイクのような小型ホバークラフトが先ほどの飲食店街に飛んで行き喧騒の中に消えて行った。ちなみにドライバーの姿が一瞬見えたが、馬のような耳が生えた少女だった*2

 よく見れば、上空のスカイウェイより低い高度には、まるで移動式屋台のようなホバークラフトがゆっくりとしたスピードで移動している。

 すると、コスモハウンドのすぐ上を、大型の貨客船が通過していくのが見える。

 それらの壮大な光景を、三田冬子は録画して記録に残していた。

 

「……新見さん。まさに、驚異の世界ですね」

「そうね……その中にも人々の営みがある。宇宙で戦いばかりを繰り返しているとこういう光景を人は度々忘れがちになる」

「父さんが見たら、きっと喜んでいましたよ……」

 

 古代、新見はアゼルメニアの世界に宇宙の広さや神秘を感じ、いつの間にか第一艦橋に戻ってきた島は、父・大吾に想いを馳せていた。

 ずっとこの光景を眺めていたかったが、

 

「……艦長」

「……ですね。鑑賞に浸るのはここまで」

 

 名残惜しいが、そこで艦内の映像放送を中断した。

 

「艦長の古代だ。みんな。……仕事に戻ろう」

 

 そう言うと皆、修理作業に戻っていった。

 しかし、クロノメーターを見ると、地球時間で午後8時55分であることに古代が気付く。

 

「相原」

「はい」

「岬くんに、あれを頼めるかな?」

「あれ、ですか? みんな修理作業で停泊中なのに」

「だからこそだよ。グナイゼナウとコンゴウ、サツマ、それに、ドック内に停泊している全地球船に繋いで欲しい。艦長より放送室」

『は、はい、岬です!』

「サウンドブースターの準備は出来てるな?」

『え、えぇ、大丈夫、だと思います……』

「岬くん。今夜からは艦隊にオンエアだ」

『……了解です!』

『YRA、放送開始まで、3、2、1……スタート!』

『こんばんは。私は、E.F.S.ヤマト船務科乗組員、岬 百合亜です。階級は准尉です。今夜からこの放送はヤマトだけでなく、同じ地球艦隊の艦船でもリアルタイムでお届けします! まず始めに皆さんからのリクエストソングを流しまーす!まずはラジオネーム、ブルータイガーさんのリクエストで、ヘイゼル・ディーンの「Turn in to Love」』

 

♪ 「Turn in to Love」

 

 ヤマトラジオ放送局。MCを務める岬 百合亜の声と、リスナーからのリクエストで掛けられた曲は、ヤマトだけでなく、サツマ、グナイゼナウ、コンゴウを始めとするドライドックに停泊中の地球船全てで流れている。

 

 ラロットはその音楽を聴いて頬を釣り上げて微笑んだ。

 

 ナスカは読書に集中しており、腕立て伏せをしていたメーザーも艦内で流れている曲に耳を傾けるため、オーディオコンポの音楽を止めた。

 

 この通信電波は、先程通信が回復したコスモハウンド内でも聞くことが出来、待機中の山本と鶴見は、テイクアウトしたサンドイッチのような食べ物を頬張りながら音楽を聴いていた。

 

 ヤマトに着艦したコスモゼロは、機首が黒で胴体が赤かった。その機体からパイロットスーツに身を包んだ早紀が降りてきた。

 

 地球艦隊の艦船で音楽が流れる間も、ヤマトクルーとアゼルメニア保安部による美影捜索は続いており、スラム街での聞き込み調査も行なっていた。

 ミッターはリズに案内されて、彼女とおじが暮らしている長屋を調べ始めていた。

 

 ヤマト、コンゴウ、グナイゼナウ、サツマでは船外服を着ているクルーたちが作業中。残念ながら彼らには音楽は聞こえない。しかし、グナイゼナウ以外では作業はやや順調に進んでいるようだった。

 

 機関室では、徳川と427のホログラムがコンジットに潜り込んで機器の修理と調整を行なっている所だった。

 

 山崎、美奈子たち他の機関部員はフライホイールを427のホログラムたちと一緒に修理・部品交換中だった。

 

 そして、冬子と夏海は通信システムをハッキングし、ネオ・ゼムリアに通信を繋げて、彼女たちが「お母様」と呼ぶ存在である上田に、アゼルメニアの内部の世界を収めた映像を嬉しそうに見せており、通信先にいる上田も思わず頬を釣り上げていた。

 

 ヤマトの乗員たちにとって、今宵は修理に忙しい。しかし、その間も音楽は流れ続けていた……。


 ミッターはリズとザバイバルの住んでいる長屋にて、面白い発見をしていた。

 

「これは……地下室への階段か?」

 

 ミッターが長屋のある壁に仕掛けがあることを見抜き、それを作動させてみると、長屋の床に地下への階段が現れた。

 

「え、ウソ……私の家にこんな仕掛けが……?」

 

 リズの反応はわざとらしく見えたことだろう。だが、マーリンにはそれが彼女の本心だとすぐに分かった。

 

「きっとこの先に美影がいる。今助けに行くぞ」

「待て」

 

 そう止めたのはミッター。

 

「何だよ、マスカレードさんよぉ」

「ここはアゼルメニア保安部の管轄だ。彼らに一言もないのはマズイだろう」

「今更待っていられるか。何をされてるかわからないんだぞ」

「おじちゃんはそんな人じゃないよ……」

 

 地下室の存在に驚いていたリズだが、身内であるおじを擁護しようとする。

 

「ヤマトの情報を話せって?そんなの絶対ダメです」

「……話してもらえないならば、手荒い真似をすることになるが、良いのか?」

「そう言いつつも、実際にその鞭を振るわないじゃないですか」

「見損なうな!」

 

 そう言ってザバイバルは手に持った鞭で壁を叩いた。さっきからこの調子だ。もう何分経っただろうか。

 しかし、ザバイバルが自分に手を上げようとしないことから、自分を誘拐したことは彼の本意ではないと美影は考えていた。

 

「……何故こんなことをするんですか?ザバイバルさん」

 

 ここにきて初めて美影はザバイバルに質問を投げかけた。

 するとザバイバルは一旦押し黙り、そのまま美影の目の前に胡座をかいて座った。

 

「……お前の仲間はテレザートをも穢そうとしているからだ」

「ラロットさんにも言ったけど、私たちは……」

「わかっている。テレサ様の導きを受けたことはな。だが、ガトランティスにはそれを納得出来ない者もいるようだ」

「……どういうことですか?話がさっぱり見えません。あなたはイルミダス人と名乗りましたよね?」

「!……」

 

 そこを突かれたザバイバルは言葉を詰まらせながらこう釈明した。

 

「……あれは嘘だ」

「嘘?何故そんな……」

「分かりきったことを聞くな!」

「いいえ、分からない。どういうことですか?」

「……」

 

 目の前にいる少女は、見た目18歳ぐらい、ザバイバルの年なら娘や孫がその年齢でいてもおかしくないぐらいだ。そうふと思ったが、同時にその視線は年端の少女とは思えないほど据わっているようにも感じた。

 ザバイバルは意を決して、恥を忍んで、懺悔するかのように本当のことを打ち明けた。

 

「……実に簡単だ。リズに辛い思いをさせたくなかった、ただそれだけのこと。……お前には隠すのも馬鹿馬鹿しいことかもしれん」

「馬鹿馬鹿しい?何故そんな?」

「お前は領事館職員だと聞いた。ならアゼルメニアにガトランティスが侵略したのはとっくに知っているはずだ。80年前。80年も前だ。だが未だにガトランティス人と名乗れば我々は軽蔑の眼差しを向けられる……一つ幸いなことは、ガトランティスの文化規範を理解しない者が多かったお陰か、連中はガトランティス帝国にイルミダス人という種族が従属している事実を忘れるのが早かった。イルミダス人は我々ガトランティスの近縁に当たる種族だ」

「だから聞き覚えのない種族だったんですね……。ガトランティス人の資料は私もガミラスから提供されたものを見ました。それによると、あなた方の捕虜からの証言によれば……」

「お前たちがアンドロメダ銀河系と呼んでいる別銀河系だと言いたいんだろう?マゼラン星雲とも別方向の」

「その通りです」

「……雑兵から聞き出した程度の情報ならその程度だろう。指揮官クラスならば捕虜になる前に大抵が自害している。かく言う私もそうなるはずだった」

 

 どこか遠くを見るようにザバイバルは語る。

 

「……私は上陸部隊の指揮官だった。上陸する以前に船を航行不能にされて、あっという間に捕虜にされてしまったがな。敵は自害する暇すら与えてくれなかった。我々にとって捕虜になることがどれだけ屈辱なことか、お前たちにはきっとわからないだろう。だが、例え奴隷労働を課されようとも、いつの日かここを脱出して祖国に戻り、また戦いに戻る。我々はその機会を伺っていた。しかし、だ……」

 

 ザバイバルは顔を伏せる。悔しさで顔を歪めていることが美影には何となくわかった。

 

「……捕虜になった我々のことを、先帝様は早々に切り捨てられた。我々にはもはや戻る国などない。だから我々は収容所で命を絶つことにした。しかし、周りの部下たちは死んだというのに、私だけは助かってしまった……それ以来、何度か自害を試みたが死なせてもらえず、結局は70年間、刑に服した。そして、さっきも言ったが我々への偏見は半世紀以上を経ても残っていた。私は大都市区画での働き口の当てはなく、結局このスラム街で暮らし始めた。最初はアゼルメニアで破壊活動を起こすつもりでいた。そのためにこの地下室を作った。だがな……」

 

 そこでザバイバルは鞭を近くの机の上に置いた。

 

「……そんな時に、リズが俺のところにやってきた。あの薄緑色の肌は明らかにガトランティス人の血を引いていた。聞けば、あいつの父親は俺の副官だった。収容所で死んだと思っていたが、俺と同じく生き延びていて、集団で自害させないために別の刑務所へ送られていたらしい。そのリズの父親も何年か前にここで亡くなったが、ラロット様に引き取られ、そして、俺がスラム街に住み始めた。あいつの父親の話をもっと聞きたいとよくせがまれたものだが、そこで俺はわかった。俺が収容所で生き延びたのも、リズの父親が生き長らえたのも、全てはザーベリア様と、この銀河における崇高な存在であるテレサ様の導きだったのだとな。……だから、俺はこの地下室を封鎖して、テロ計画もやめた」

「それがどうしてこんなことに……?」

「……俺にも祖国への義務が残っている。ヤマトがテレザートへ向かうというのならば、そのヤマトの情報を聞き出して、ガトランティス艦隊に伝えねばならない。間も無く、その艦隊もアゼルメニアにやってくるそうだ」

「ならば、尚更話すわけにはいかない」

「そうか……」

 

 再び鞭に手を伸ばすザバイバル。

 

「……あなたは祖国の為なら、あの子の事は見捨てるんですか?」

 


 鞭に手を伸ばす手が躊躇う。

 


「おそらく、私を探して多くの人がここを目指すと思います。遅かれ早かれ、ここは見付かる。その時、あなたは逮捕されるか、撃たれるかもしれない……あの子のこれからを、少しでも考えたんですか?」

「……あの子にはラロット様がいる。同じスラム街にいる子供たちとも打ち解けてる。俺がむしろ邪魔者だ」

「家族が居なくなった時ってのは、例え18になっても辛いんですよ!」

 

 狭い密室で美影のそんな悲痛な声が響いた。

 思わずザバイバルもたじろいだ。

 

「……私は……お父さんがガミラスの空爆を受けて亡くなったんです……そうとは知らずに1年をヤマトで過ごして……地球に戻ったら、お父さんはもう……」

 


 美影の頬に涙が流れる。

 


「12でも18でも……何歳になっても、家族が居なくなるのはとても辛いんですよ!あなたを失ったら、あの子は絶対に辛いと思います……まだ、……まだ間に合います!あの子を悲しませるような事は……やめてあげて下さい……!」

「ではどうすれば良かったのだ? 任務を命じられたのならば、我が身可愛さでそれに逆らうわけにも行かなかったではないか! お前も軍人ならばわかるはずだ!」

「でも、ガトランティスの艦隊がここに向かって来ているんですよね!? それも、80年前の戦いであなたのいた艦隊はアゼルメニアの艦隊にいとも容易く行動不能にされた。そんな大敗北を被ってまた再侵略だなんて!……いや、既にガトランティスにも漏れている情報なら話しても問題ないか……」

「何が言いたい?」

「地球艦隊の主力艦には次元波動爆縮放射機、通称「波動砲」という強力な兵器が搭載されています。それはヤマトも同じです」

「……やっとヤマトのことを話す気になったか」

「続きがあります。その波動砲は、惑星を破壊する程の威力を持つ兵器なんです」

「何?地球軍の船にはそんなものがみんな積まれているのか!?」

「えぇ、まぁ……」

「そんな話を聞いたら、余計にお前たちをテレザートに近づけるわけにはいかん!」

「待って。私が言いたいのは、何故、今頃になってガトランティスがここを攻めて来るんでしょうか? 通常兵器ではアゼルメニアの艦隊とこの宙域の環境が合わさってまともに太刀打ち出来ないのに!」

「……言われてみればそうだ。が……」

 

 事ここに至って、ザバイバルは自分の行ないが、自分の望みすらも潰しかねない愚行だったのだと悟った。

 

「まさか……!!」

 

 ザバイバルは跪いて祈りを捧げた。

 

「テレサ様……ザーベリア様……お許しを……!」

 

 と、そこへドアを蹴り破って、斎藤たちが現れた。

 

「美影!」

「始兄!?」

「な……何故ここを……!」

簡単だよ(Elementary)。見落としていたものを見つけただけだ」

 

 そうミッターが言う。

 星名と空間騎兵隊の安祥たち3人、それにアゼルメニア保安部のジ・カールがザバイバルと美影しかいない狭い部屋に一気に雪崩れ込んでいく。

 斎藤はその勢いに押されるが、そのまま立ち上がったザバイバルの顔面に一発お見舞いした。

 しかし、それで倒れるザバイバルではなかった。殴られた彼は斎藤にも反撃。

 コスモガンを構えようとする星名たちだったが、

 

「待て、撃つな」

 

 ミッターは彼らの銃を下ろさせる。

 斎藤とザバイバルの取っ組み合いはその後30秒は続いたが、斎藤がザバイバルに馬乗りになった辺りで、ヤマトのクルーたちとアゼルメニア保安部の警官たちがようやく止めに入り、二人を引き離した。

 その隙にミッターが椅子に縛り付けられていた美影を解放した。

 

「大丈夫かい?」

「えぇ、何とか……」

「隊長、もういいでしょ!」

「離せ、離せ安祥!こいつ俺の妹分を誘拐して暴力まで振るいやがった!」

「ならば気が済むまで俺を殴ればいい!おい、離せ!」

 

 斎藤とザバイバルは未だに臨戦体制のまま。しかし、

 

「やめて!おじちゃんを殴らないで!無闇矢鱈に人をぶっちゃダメなの!」

「リ、リズ……やめろ、こんな所来ちゃダメだ……!」

 

 一人の少女の登場に、殺気立った場の空気が変わったように感じた。リズことリストージア。ザバイバルの養女であり、彼の仲間の忘れ形見でもあった。

 

「確かに彼に誘拐されたのは事実ですが……暴力までは振われていません」

 

 美影はスラム街のすぐ外側でヤマトクルーが持ってきたジャンバーを羽織り、ジ・カールたちに供述を求められたために証言した。

 一方、ザバイバルはアゼルメニア保安部の護送車へ連行されている最中だったが、

 

「ザンツ・ザバイバル将軍」

 

 そう声を掛けたのは、

 

「最高議長閣下、危険です」

「良いのです。……私にも責任はあったはずです」

「ダグエアー……貴様か……」

 

 ザバイバルはレーニアー最高議長をそう呼んだ呼んだ。彼女は改めて名乗った。

 

「私の今の名前はティエル。ティエル・レーニアーです、将軍。久々の再会がこのような形になり申し訳ありませんでした」

「艦橋の隅っこにいたようなお前が、今やアゼルメニアの最高議長、というわけか」

「何どういうことだ?」

「最高議長はジェタリア人だと聞いていたのに……」

 

 周りの警官たちも「それは初耳だ」と言わんばかりに呟き始める。しかし、

 

「無駄口を叩くな! さっさと連行しろ」

 

 ジ・カールがそんな警官たちを黙らせて、ザバイバルをホバークラフトの狭いパトカーに押し込んで警察署に直行した。

 それを残されたリズはただただ見送るしかなかったが、放って置けなかったマーリンはリズに胸を貸した。すると、リズは大声で泣き出した。

 そして、彼らのいる場所には再び夜が迫りつつあった。

*1
地球はまだジ・カールがディンギル人であると知らない

*2
ちなみにイメージはウマ娘のアイネスフウジン。

一話のストーリーとして長さはどうですか?

  • 短い
  • 普通
  • 長すぎぃ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。