宇宙戦艦ヤマト2202リテイク   作:MinorJunction 太華日

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 筆者は別段、旧作至上主義というわけではありませんが、アーカイブとして旧作とPS版のゲームを使ってる感じです。


第6章・黄色い悪夢
第20話「(いか)れる者たち」


 ヤマトがアゼルメニアを救ってから二日が経とうとした頃。

 白色彗星帝国の帝都ゴレムに揺れるような衝撃が走った。

 

「何だと!?それはまことか!?」

「えぇ、動かぬ証拠もございます」

 

 その震源地は帝都中央のセントラルタワー基部にある宮殿の一室。

 ズォーダーが公務をこなすためにある執務室からだった。

 その執務室へ突然やってきたガイレーンに、彼の手のものから齎された情報を知らされ、普段は激昂することの少ないズォーダー五世が、この時ばかりは額に青筋を浮かべていた。

 ガイレーンから渡されたデータパッドの内容を見たズォーダーは余計に怒りを露わにする。

 

「えぇい!バルゼーとゲーニッツはどこ行きおった!?」

「エンジェンティアに……」

「すぐに呼び戻すのだ!」

 

 そして思わず持ってきたデータパッドを机に叩きつけるのだが、流石はガトランティス製、この程度では傷一つ付かないほど頑丈だった。

 国のトップが怒り心頭、しかしそれでもガイレーンはズォーダーに尋ねられれば、尚悪いニュースを臆せず伝えた。

 

「ミルヴァールは何処におるのだ!?」

「ミルヴァール殿下を何度も呼び出しておりますが、一向に応答がございませぬ」

「あの愚息め……!」

 

 だが、机に叩きつけたデータパッド上に表示されたものが目に入ったズォーダーは落ち着きを取り戻した様子で呟く。

 

「……そうだ、デスラーだ」

「大帝陛下?」

「……ガイレーン。デスラーに通信を繋げられるか?」

「あ、はい、直ちに」

「よろしい。あやつの邪魔にはなるかもしれん。だが、愚息にはお灸を据えねばならんからな……!」

 

 こんなに怒ってるズォーダー五世を見るのはガイレーンですら珍しかった。

 怒ってる人物の傍には近寄りたくないものだ、すぐにデスラーを呼び出すためにガイレーンは大帝の執務室を後にする。

 そして、ズォーダーがデータパッドを操作すると、ガトランティスのカラクルム級約千隻の艦隊が《レオギネルカノーネ》の発射隊形を取った状態でエネルギーを蓄積し、放射しようとしたタイミングでヤマトが波動砲を撃ち込む様子が動画として再生された。

 


 

 デスラー・ガミラシア艦内。

 その作戦指令室にはデスラー率いる艦隊の主立った指揮官や将官たちが集まっていた。

 

「総統閣下。ヤマトの艦隊がアゼルメニアを出港して間もなく48時間になります。こちらが現在の予測進路と座標です」

 

 ヴェルテ・タランが起動していた作戦用の床下のモニターには、アゼルメニアから続くヤマトの航路と現在地が実線で示される。

 デスラーはそれを見て、当初の予測位置を示した点線と実線との間に開きがあることに気付く。その距離、およそ2500光年に相当する。

 

「……少し遅れているな」

 

 と呟くように言う。

 

「ヤマトはワープをあと数回行なえばルマティ星系に到達します」

 

 ヴェルテがそう解説を添えるも、デスラーは腕を組んで、呆れたような顔をした。

 

「数回か。アゼルメニアへの寄港は想定通りだったが……まさかゲーニッツたちが勝手をするとは」

 

 デスラーは不機嫌さを隠さずにそう言った。

 

「総統、ゲーニッツ参謀長が勝手をしたと断言できる根拠は?」

「ゲーニッツとバルゼーはアゼルメニア侵攻を計画して支持していたが、私はそんなゲーニッツたちと大帝陛下の前でアゼルメニア侵攻作戦は損害が大きくなる上に失敗すると諫言した。大帝はアゼルメニア侵攻を取り止めになられたのに」

 

 イスラ・パラカスの疑問に対してデスラーはあり得る推測をありのままを答えた。するとパラカスも反論した。

 

「大帝陛下が命じられたのでは?」

「私はそうは思わん。大帝陛下は一度下した決定を気まぐれで覆しはしない。そもそもカラクルム級の前線からの引き上げを命じられたのも大帝陛下だったはず。それがこのアゼルメニア侵攻だ。それらの命令に明らかに反している」

 

 そこまで言われるとパラカスは「……確かに」と言って頷くしかなかった。

 

「お陰で、ヤマトの到達予定がズレてしまった。実に腹立たしい話だ」

 

 デスラーが不愉快さを隠さない顔でそう言い、一方のイスラ・パラカスは苦虫を噛み潰したような顔でカラクルム級艦隊の大敗を惜しむ。

 

「そして、総統の読み通り、アゼルメニア侵攻作戦は失敗し、我々は賭けに負けました。カラクルム級を用いた大砲撃陣形(レオギネルカノーネ)という狂気的策を以ってしてもアゼルメニアを落とせないとは……」

 

 そう言ったリセル・サーベラーの心境はもう少し複雑であり、アゼルメニア攻略失敗よりも、カラクルム級戦艦にこのような使い方が隠されていたことに困惑し、もし正常に動作していたら、間違いなくアゼルメニアは滅んでいたかもしれないことを惜しくも思っていた。

 だが、

 

「……総統閣下。無礼を承知で申し上げますが、その代わりに我々はヤマトを嵌めるための罠を入念に準備する時間を得られました。悪いことばかりではないはずです」

 

 周りがデスラーの怒りの飛び火を喰らうまいと発言を躊躇っている最中、エコーは口を開き、そう告げた。

 その言葉に周りは「エコーはこれで終わったな」と思った者もいたが、

 

「……そうだな。君の言う通りかもしれないな、大佐」

 

 改めて冷静に思い返したデスラーは頭を冷やし、エコーの発言に肯定した。

 心なしか、デスラーの怒りが少し収まったように周りは感じた。

 すると、そのタイミングでキスカから通信が入った。

 

『リセル様、至急電であります!』

 

 通信の相手はパラカスの部下。キスカ副長のキチェ・トールギンであった。彼の迅速な判断によりキスカはヤマトとの戦闘から脱して生還できたのである。

 

「トールギン、どうした?」

『パラカス司令官。本国から……ズォーダー大帝陛下より至急電であります!』

「何!?……今すぐお繋ぎしろ!」

 

 そう言って、リセルとパラカスは映像が繋がる前に跪く。

 一方でデスラーはガミラス式の敬礼をする。それに従いガミラスの将兵たちも皆、ガミラス式の敬礼をする。

 

「ご無沙汰しております、ズォーダー大帝陛下」

『デスラー総統、久しいな。ムスタラービアの戦いは聞き及んでいる。見事であった』

 

 初めて見るズォーダー大帝の物腰、そして圧倒的な威圧感にエコー達は緊張するが、デスラーは違うものを感じていた。

 

「本日は何用で我々に?」

『それなのだが……恥ずべきことに、我が息子ミルヴァールがやらかしおったわ』

「……と、いいますと?」

『先のアゼルメニア侵攻は皆も知っておると思うが……あれはミルヴァールがゲーニッツを嗾けたものだ。これを見よ』

 

 すると、ズォーダーはアゼルメニアでヤマトの波動砲によりカラクルム級千隻の艦隊を航行不能にした際の映像も流した。

 映像が終わるとデスラーは納得したように述べた。

 

「……やはりアゼルメニア侵攻は大帝陛下の本意では無かったのですね」

『その通りだ。そのミルヴァールに帰還命令を出しても一向に返事がない。私から逃げているのかとも思ったが、どうやらそうでもないらしい。その原因が判明した。ヤマトだ。ミルヴァールはパンレケ級潜宙艦でヤマトを追っている。発見次第帰還させて欲しい』

 

 パンレケ級の映像とデータが作戦室のホログラムに送られてきた。

 

「タラン。我々で潜宙艦の探知は可能か?」

「潜宙艦と次元潜航艦、言い方は違えど基本的に同じ艦種でございます。次元潜望鏡が露出していれば、レーダーや目視でも補足できます。しかし、潜航中は亜空間ソナーでピンガーを打って位置を特定せねばなりません」

「では、その亜空間ソナーは備わっているか?」

 

 その言葉に、ヴェルテは笑みを浮かべる。

 

「当然です総統閣下。次元潜航艦の対策は取っております。万が一、本国からフラーケン達が刺客として送られてきた時の為の装備です」

 

 それを聞いてデスラーは納得する。ズォーダー大帝もそれを聞き、

 

『なるほど。装備は備わっておるのだな?』

「大帝陛下。ミルヴァール殿下はこちらで発見次第、帰還するよう要請いたします。しかし……」

『もしミルヴァールがその要請を無視し、抵抗した場合だな? ……その時は、船を無力化し、引き摺ってでも私の前に連れて来い。この際だ、腕か足の一本や二本折ってでもかまわん。生きていればそれでよい』

 

 デスラーが言わんとしたことに先回りして答えたズォーダー。

 声を荒げてこそいないが、その言葉には静かな怒りが込められており、リセル達は勿論、その場に居た者は全員凍り付く様に察した。

 ズォーダー大帝はかなり立腹しているようだ。

 だがデスラーは初めからそれに気付いていたようであり、

 

「承知いたしました。可能な限り、傷付けないよう努力致しましょう」

『そうして貰えると助かる……ヤマトとの決着。勝利の報告を楽しみにしているぞ』

 

 こうして緊張の通信が終わると、皆、力が抜ける。

 デスラーはズォーダー大帝の近況を理解する。

 

「……ズォーダー陛下もどうやらご子息に手を焼いてるようだ」

 

 多くは語れないが、デスラーも自身の家庭環境に似たような問題を抱えていただけに、大帝に少し同情した。

 一方で、フラーゲは溜め息を吐いて言う。

 

「全く……。ミルヴァール殿下は余計な仕事を増やしてくれましたな。そのケツを叩いて帰らせる役を我々がやる羽目になるとは……」

 

 その言葉にパラカスが怒りを露わにする。

 

「無礼者め!それは殿下への侮辱である!言葉を控えよ!」

 

 そのパラカスとは対照的に、フラーゲは呆れた様子で言い返した。

 

「パラカス司令官、私は事実を述べただけだぞ。それもミルヴァール殿下は大帝の命令を無視して勝手をした。その尻拭いの役目が我々に回ってきた。ハッキリ言えば迷惑だ。これが余計な仕事でないなら何と言う?」

 

 それに激怒したパラカスが、日本刀の様に長い腰刀を抜く。

 

「クッ……!言いたいだけ言いよって!素っ首叩き斬ってくれようぞ!!」

 

 パラカスの激怒に、彼と交流があるエコー達も驚く。

 フラーゲに斬りかかろうとしたことでルーゲンスが素早く銃を引き抜こうとしたが、刀を持っているパラカスの手をリセルが制した。

 

「サーベラー様!?」

 

 それにパラカスは驚くが、さらにパラカスの前にデスラーが立ち塞がった。

 

「まぁ、落ち着きたまえパラカス殿。確かに今の発言は殿下への配慮に欠ける発言であった事は私が代表して謝ろう。後でキツく言っておく」

 

 デスラーからの目線にフラーゲは冷や汗を掻きそうになる。

 しかし、デスラーは彼から視線を逸らして再びパラカスらに向き直ると、こう言った。

 

「だが、フラーゲくんの言ったことも正論だ。これからヤマトとの決着を付けようと言う時に、余計な仕事が舞い込んできたのは事実……無論、大帝陛下からの依頼だ。当然引き受ける。だから、それをしまって頂きたい」

 

 そのデスラーの眼光に見つめられたパラカスは、

 

「チッ……よかろう」

 

 パラカスは自身の刀に物怖じしないデスラーに免じて刀をしまう。

 すると、リセルはパラカスに対して諭すように言った。

 

「パラカス。今回の件は我々に非があります。殿下がやらかしたりしなければ、この様な余計な仕事が起きなくて済んだのですから」

 

 パラカスの肩に手を当てて、彼を後ろに下がらせるリセル。

 

「サーベラー様まで……我が国唯一の皇太子が小バカにされたのですぞ?」

「その殿下が、小バカにされる様な事をしたのです。恥ずべきは殿下で御座いましょう? デスラー総統、我が殿下が至らぬばかりに……」

 

 そう言って、リセルはデスラーに頭を下げる。

 だが、デスラーはそんなリセルに、

 

「リセル殿が謝る必要は無い。殿下はきっと功を焦った。若気の至りで少々自信過剰が過ぎたのだろう。相手の実力も知らず戦いを挑んだばかりに……しかもよりにもよって相手がヤマトだった。当然のごとく敗北した。それだけだ」

 

 と言って場を治める。

 

「では総統。作戦決行前にミルヴァール殿下を保護する事が先になりますな」

 

 ガデル・タランはデスラーに予定の変更を伝える。

 

「そうだな、タラン。殿下を発見次第、保護するなり、拘束するなり、送り返すなりして、ヤマトに挑まねば。……あの殿下がまた余計な事をして私の計画を邪魔する前に、なんとかせねばな」

 

 デスラーはミルヴァールがかなり厄介な人物だという予感がしていた。

 

「……さて、我々は気を取り直して、作戦内容をおさらいするとしよう。大佐の言う通り、我々には二日の猶予ができたのだからな。タラン」

 

 デスラーに合図されたヴェルテが再びヤマトの予測航路図を表示すると、ヤマトの現在の進路上にルマティ星系と言う星系が映る。その周囲に大きく4つの星系が取り囲む様に映る。

 その内の一つにデスラー艦隊のアイコンが置かれている。

 

「ヤマトは現在ルマティ星系に向かっていますが、この星系の周辺には他にも4つの星系が存在します。パクマラ星系、マルカヴ星系、ブラキリ星系。そして、今我々がいるドラジア星系です」

 

 すると、ヴェルテはザルツ系チェトニカ人のガミラス将校、ミュラム・ディッソーニ中佐に説明を引き継いだ。

 

「ヤマトがテレザートへ向かうのであれば最短ルートであるこれ等を通過すると考えられます。そして、最もテレザートに近い星系であるブラキリ星系。ここを目指す筈です」

「ディッソーニ中佐。何故そう言い切れる? ヤマトの現在位置は確かに直進すればルマティ星系に行くが、他の4つの星系にもヤマトは現れるのか?」

 

 ダス・ルーゲンス准将は要領を得ないのでそんな質問をした。

 ディッソーニは「これらはテレザートへの巡礼者が辿る進路だからです」と答えた。

 

「アゼルメニアでの我々の工作員の情報が正しければ、ヤマトにはあのラロット・アズテリアが乗艦したようなのです」

 

 それを聞くと、ガミラスの将兵、特にザルツ勢が騒がしくなった。

 

「静かに!」

 

 そう言ってアンディラ・ムッソー代将が騒がしさを沈める。

 

「ほう……失われた皇女が本当に生きていたか」

 

 デスラーはそんなことを感心気味に言った。

 

「しかし、その巡礼路を何故ヤマトが通ると断言できるの?」

 

 その質問をしたのはムッソーだった。

 ディッソーニはブラキリ星系の第5惑星の軌道上を拡大表示した。

 それを見たエコーの顔色が変わった。

 

「これは……亜空間ゲートか?」

「ガミラスの概念から言えばそれに近いですね。しかし、これを作った文明は古代アケーリアス文明では無いみたいです」

「このゲートは我々が今まで目にしたものとは少し性質が異なり、特定のキーを用いないと作動しません」

 

 ヴェルテがそう言って次に表示したのは、パクマラ星系の第4惑星、ルマティ星系の第6惑星、そしてドラジア星系の第8惑星とその衛星。それらの軌道上を拡大すると、ルマティ6号星とドラジア8号星のものを除くと他は軌道上に亜空間ゲートが二つ等間隔で並んでおり、両方とも地上からの構造物に支えられているように見えた。

 

「これはゲイトブリッジと呼ばれていました。ルマティ星系のものを起点として特定のゲイトブリッジを経由することでブラキリ星系にある亜空間ゲートと接続され、テレザートに直結することになります」

「何故その様な回りくどい仕組みを?そんなことをするよりは……」

「テレザート星系へ直接ワープした方が早い、か。その意見は尤もなんだが、君はテレザート宙域に関して重要な知識を忘れてはいないか?」

 

 エコーの疑問にヴェルテが答えようとすると、エコーは思い出したように、

 

「……サルガッソーですね」

「そうだ。我々ガミラスも散々試したが、ワープでサルガッソーを飛び超えてテレザート星系に入ることは出来なかった。運が良ければテレザート星系を飛び越した程度で済むが」

「運が悪ければサルガッソーに突っ込んで宇宙の墓場の仲間入り、ですね」

「そういうことだ。さて……説明に戻ってくれ」

「はい。ルマティ星系のゲイトブリッジには地上にゲイトコントロールがあります。ここで予めテレザートへ向かう船の識別信号を登録する必要があります。ゲイトブリッジを通過することで各ゲイトブリッジが船にその通過データを刷り込み、そのデータをブラキリ5の軌道上にあるゲイトブリッジが読み取ることで最終目的地が分岐する仕組みになっています」

「つまり、分かりやすく言えば、ルマティを起点にしてドラジアとパクマラ。このどちらかのゲイトブリッジを経由することで、ブラキリ5の亜空間ゲートはザルツとテレザートに繋がることになるのだ」

 

 デスラーの説明はさらに分かりやすいものだったが。

 

「私の母星の星系に通じるのですか!?」

 

 エコーは驚く。まさかここに来て、母星の星系に通じる航路が存在するとは思ってもいなかったからだ。

 

「君が驚くのは無理もないか。ザルツ側のゲイトブリッジはここ50年ずっと使われていなかったからな。そのゲートは今、ザルツ星の月面にあったと思うが」

「確かに月にこれと同じものがあるのを見たことがありますが……ただのオブジェかと思っていました」

「なるほど、な……」

 

 尤も、エコーの世代は既にザルツ・テレザートが国教でなくなった世代であることや、ガミラスの親衛隊が幅を利かせてザルツ・テレザート教の影響をザルツから抹消していたことも関係している。

 皮肉なのは、デスラーが失脚して親衛隊も解体されたことから、このようなザルツ・テレザート教の遺産をヤマトとの戦いに利用できることである。

 

「お嬢。感傷に浸るのは後にしようか。作戦の説明はまだ終わっていない」

 

 階級では大佐に過ぎないシー・フラーゲだが、この場にいる中では最年長の長老のような存在であり、その場を引き締めるべく発言すると、横に立っている長身で大柄なギュンター・クライツェ中佐は「うんうん」と頷き、続いてデスラーが口を開いた。

 

「ミスター・フラーゲの言う通りだ。ヤマトと地球艦隊の行き先はそれぞれテレザートとザルツで異なる。ならば、このゲイトブリッジを使って両者を切り離してしまえば良いのだ」

 

 ヴェルテはモニターに、ルマティ星系、パクマラ星系、ドラジア星系、そして、マルカヴ星系とブラキリ星系を点々で映し出した。

 

「ゲイトブリッジには予め備わっているプログラムとして、ルマティ星系を入り口にして、ここからドラジア星系のゲイトブリッジを経由してからブラキリ星系のゲイトブリッジを作動させると、そのエネルギーの行き先はテレザートになります」

「一方で、パクマラ星系を経由する場合はザルツ星に行くことになる。そこでルマティ6のゲイトコントロールに細工した。もしヤマトの識別信号以外の艦がルマティ星系のゲイトブリッジを通過したとしよう。次に実体化するのはパクマラ4号星の軌道上でもなければブラキリ星系でもない。そのままザルツの月軌道上に実体化するという仕組みだ」

 

 デスラーが合図すると画面が切り替わり、ドラジア8号星の軌道上と、その第一衛星の軌道上にそれぞれ浮かぶゲイトブリッジを映す。

 

「一方でドラジア星系に向かうヤマトだが、ドラジアだけは片方のゲイトブリッジが8号星の軌道上、もう片方が第一衛星の軌道上にある。第一衛星と8号星は小惑星のリングを挟んで47万キロ離れている」

「その空間上で、エコー大佐率いるティルガス航空隊。君たちに奇襲攻撃を任せようと思う」

「我々が……でありますか?てっきりパラカス司令官が行なうものだとばかり」

 

 デスラーから説明を引き継いだヴェルテが実行要員としてエコーの名を挙げると、彼女とパラカスは当惑していた。

 

「大佐、不満か?」

「いえ、滅相もございません。大変な栄誉でございます。ですが、確かパラカス司令官は前回遭遇した際、ヤマトに一番槍を放ったと聞いております」

 

 エコーはパラカスに目を向けた。

 

「ヤマトへの奇襲の第一手は大佐に是非任せたいとの総統の御意向だ。総統は大佐の腕を見込んでおられる。パラカス殿。構わんかね?」

「……あの憎きヤマッテ……いやヤマトにもう一度、一番槍をと思って居たが。……まぁよい。エコー大佐に譲ろう」

 

 少々残念そうにエコーに一番槍を譲るパラカス。

 

「ということで、エコー大佐。頼めるかね?」

 

 その言葉にやる気が出たエコーはヴェルテとデスラーに対し敬礼する。

 

「はっ!このユリエカ・エコー!総統のご期待に見合った働きを、この身を持って果たす所存であります!」

「期待している。だが、くれぐれも無茶はするな。総統はこの作戦が万が一失敗した場合の次の作戦も考案されている。挽回する作戦があるのだから、無理をする必要はない」

 

 エコーの忠義は本物であるが故に、張り切り過ぎることを予期してかヴェルテは釘を刺した。

 ヴェルテは再びホログラムを操作し、エコーによる奇襲後の予定を語る。

 

「エコー大佐の奇襲が成功したら、ティルガス航空隊でヤマトを追い立てて、それとなくドラジア8の衛星にあるもう一方のゲイトブリッジに飛び込ませます」

「しかし、このドラジア8のゲイトブリッジにも細工をしてある。ヤマトが行く先はテレザートでもなければブラキリ星系でもない。マルカヴ星系だ」

 

 ここで今まで言及のなかったマルカヴ星系のことをデスラーが口にした。

 マルカヴ星系をモニターに映し出すと、黄色い星雲のようなものと、ガミラス艦の残骸がそこかしこに転がっている、まるで廃墟のような場所だった。

 

「マルカヴ星系はご覧のように墓場のようなものだ。ガミラスのテレザート攻略部隊の第一陣はここで消息を絶っていた。その原因はこれだ」

 

 デスラーが拡大してみせたのは、マルカヴ星系の隅にある黄色い星雲のようなもの。

 

「これは……?」

「かつてこの星系中に充満していた宇宙ボタルをかき集めて、隔離フィールドで覆った星雲だ」

「宇宙ボタル?ただの放射性アイソトープの塊ではないのですか?」

 

 リセルがそんな疑問を挟む。

 

「普通はそうだろう。ところが、この宇宙ボタルは違う。……その結果は諸君らが目にしているマルカヴ星系の有様だ」

 

 その話を聞いたガミラスの将兵たち、特にザルツ人の将兵たちは目に見えて顔が青ざめていた。

 宇宙ボタルに遭遇したクルーたちやその船がどうなったのか。マルカヴ星系に散らばる残骸を見れば明らかだった。

 

「マルカヴ星系には、ディッソーニのアウレリオスト、パラカスのキスカ、それにクライツェ率いるサルガタナスを始めとする空母艦隊を残骸の中に待機させ、その護衛にはムッソー代将率いる巡洋艦隊を貼り付けておく。これらの機動部隊の全戦力を以って、ヤマトを魔の星雲に追い込むのだ。ティルガスはワープでマルカヴ星系の機動部隊に合流。そして、デスラー砲でトドメを指す、これでヤマト諸共魔の星雲を消滅させられる。では諸君。他に質問はあるかな?」

「「「「ありません」」」」

 

 全会一致でそう答える。

 そんな時。デスラーはある事を思い出したかのようにヴェルテに尋ねた。

 

「よろしい……そうだ、タラン」

「なんでしょう?」

「ゲイトブリッジには安全装置があったな。それが役立つかもしれんぞ」

 

 厄介事に巻き込まれた。そんな顔をしていたデスラーの顔が一転して上機嫌になった。




 次回は下手すると読み手を選ぶ話になるかもしれません……。

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