宇宙戦艦ヤマト2202リテイク   作:MinorJunction 太華日

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アルファ・ケンタウリの戦い、ラストスパート行きます


第8話「アルファ・ケンタウリの戦い」

 アルファ・ケンタウリ11号星の地球軍基地。

 軌道上でナスカ艦隊がヤマトの攻撃を受けるより少し前に時間を遡る。

 ガトランティスのデスバテーター雷撃機が放ったプラズマ魚雷の直撃を受けて基地はシールドと電力を喪失。司令部も事実上の壊滅状態に陥り、基地司令官を含む複数の死者が出た。

 しかし、空間騎兵隊の隊員たちは未だに1000人以上が戦える状態であり、その士気は高かった。

「ヤマトが来るってよ!」

「本当か!?」

「モスボール状態じゃなかったかあの船!?」

「まぁな、だがソースの出どころは隊長だぜ!?」

「なら間違いないな!」

 既に塹壕から引き上げてきた兵士たちにもその噂は伝わっていた。

 しかも、斎藤は「不器用で嘘を吐くのが下手」と評判。よくそれで同僚や、部下の永倉たちに揶揄われていたものだが、今回ばかりはそれが良い方向に作用した。

『隊長の斎藤だ。全員よく聞け。司令官に代わり、俺が指揮を執る。まず悪い知らせだが、この基地は間も無く陥落する。だが、タダでここをくれてやるつもりはない!』

「おうよ」

「隊長!」

「当然だぜ!」

『そこでだ。第1〜第4大隊の隊長はエントランスに来てくれ。作戦会議といこうじゃないか!』

 

 基地のエントランスには空間騎兵隊の隊員たちが大勢集まっていた。その数、およそ200人。半分以上が第1大隊所属であり、戦闘服に身を包み、臨時指揮官となった斎藤の命令を今か今かと待っていた。

「第2大隊長、鳥居、参りました」

「第3大隊長、西尾、参りました」

 そこへ新たに現れたのは先ほどまで塹壕戦を指揮していた第2大隊と第3大隊隊長の二人。

 斎藤が呼びつけた場所には既に第4大隊隊長の東堂が待っていた。

「鳥居、西尾、待ってたぞ」

「隊長、作戦って?」

「これを見ろ」

 斎藤はポータブルのデータパッドを用意し、そこにあのデータが収まったメモリーカードを挿入して映し出した。

「これは……?」

「この基地のすぐ北にある、放棄されたガミラスの基地だ。ここは地上設備こそガト公に破壊されてるが、地下の施設は無傷だ。万一のことに備えておきたい」

「じゃぁ、すぐ工兵を送って基地の復旧を?」

「いや。第3、第4大隊には非常食を持って、負傷者を連れてここに避難していて欲しい」

「た、隊長!?」

「俺たちはまだやれます!」

「そ、そうですよ!遺棄された基地に逃げ込んで隠れてろだなんて!」

「ですよ、そんな臆病な真似できませんよ!!」

「馬鹿野郎!」

 斎藤は抗議する三人や外野の兵士たちを黙らせるために一喝。

「……多分、知ってる奴もいるだろうが、ヤマトが来る」

「ヤマト?あの宇宙戦艦ヤマトが、ですか!?」

「そうだ。その到着は早くてあと24時間。長くても48時間だ。それだけ待てば助けが来るというのに玉砕なんざさせられるか!」

 そこまで言われると皆押し黙るしか無かった。

「ぶっちゃけるが、今この基地はプラネタリーシールドを破壊され、基地の電力も失ってる。俺たちが経験した訓練でもここまで酷い状況はそう無かったよな?」

 押し黙ったタイミングを見計らって、斎藤は真実を独白した。しかし、空間騎兵隊の兵士たちはなお悪い知らせを受けてもその闘志の炎は消えず、むしろ滾っているようだった。それを見た斎藤は頬を吊り上げて士気を鼓舞する。

「だが、敵にこの基地を放棄することを悟らせるわけにはいかねぇ。だからだ。第1、第2大隊、まだ動けて暴れ足りない奴らはここに残れ。これから派手なショーを連中にお見舞いしてやるぞ!」

「「「「おぉぉぉぉぉっ!!!」」」」

「よし、そうと決まれば第3防衛ラインを固めるぞ。連中に「窮鼠猫を噛む」って諺の恐ろしさを見せてやるぞ、いいな!!」

「「「「おぉぉぉぉぉっ!!!」」」」

 そうして兵士たちは各々武器を取り持ち場に向かっていった。

 すると、

「おっと、岡崎」

「はいはい?」

 小柄で帽子を深く被ってる様子の兵士の一人に斎藤は声を掛ける。

「派手なショーっていっただろ。立役者はお前だ」

 そう言われてその兵士は、笑顔で敬礼し、元気よく「はい!」と答えた。

 


 

 アルファ・ケンタウリの空間騎兵隊たちがやる気を取り戻した頃。

 彼らの待ち望むヤマトは木星軌道上で戦闘態勢に移行し、その他の地球艦隊の艦船でも警報が鳴り響いていた。

 第一艦橋を島と雪たちに任せて、第二艦橋にあたるCICには古代、真田、相原らが降りてきている。

『僚艦「センダイ」、「オオイ」、「ユラ」、ワープ準備完了』

 第一艦橋にいた森雪がそんな報告をしてきた。

 ヤマトの目の前には右舷にプリンツ・オイゲン級パトロール型軽巡洋艦3隻。

『僚艦「キタカミ」、「サカワ」、「ユウバリ」、ワープ準備完了』

 左舷には同じくプリンツ・オイゲン級だが、雷撃型の軽巡洋艦3隻がいた。

「……! 艦長、先行したフリースラントより暗号通信です」

 CICの通信士席に座っていた相原がそう報告してきた。

「内容は?」

「〔我ジャンプポイントC地点にて、ガトランティス軍艦を発見す〕と」

「構成は?」

「……詳しくは言ってきませんが〔数は50隻以上、巨大な戦艦一隻を見た〕とのことです」

 CICに通信士席はもう二つ設けられており、そちらには岬 百合亜と西条未来が座っていた。複数の艦から同時に情報が入った場合に備えて彼女たちも通信をモニターしていた。

 相原に続いて報告したのは西条だった。

「艦長、ジャンプポイントA地点に敵はいないそうです」

 続いて百合亜が、

「ジャンプポイントB付近に先行したスヴァールバルより暗号通信です。……こちらにはカラクルム級の姿はないものの、ガトランティス艦隊が100隻……」

 信じられない、と言わんばかりの驚いた表情を見せた百合亜に対して古代が問いかける。

「どうした?」

「……ジャンプポイントD付近にも、敵艦隊100隻を確認したそうです」

 第二艦橋を重苦しい空気が支配した。

「……情報を一旦整理しよう」

 真田がそう言うと、新見がCICの底面にある巨大モニターの表示を切り替えた。

 そこに映るのは、二つの太陽を中心とした星系。

「我々がアルファ・ケンタウリと呼んでいる星系はこれだ。二連星だな」

 それを少し遠ざけて、アルファ・ケンタウリを中心に半径0.5光年の空間をモニターに映し出した。

 カーソルが乗っている暗い点に関して、真田がさらに解説を付け加える。

「この暗い星がプロクシマ・ケンタウリだ。旧時代の広義上はこのプロクシマも含めてアルファ・ケンタウリと呼んでいたのは、皆も習ったと思う」

 アルファ・ケンタウリ、ガミラス流に言えばセントーリ星系は太陽が二つある連星系であり、ここに0.2光年しか離れていないプロクシマ・ケンタウリを加えると三連星系になる。

 21世紀の初期、地球人類は観測の結果、プロクシマとアルファ・ケンタウリの双方で惑星が公転しているのを発見していたが、それも含めて、度々プロクシマをアルファ・ケンタウリに加えるべきか否かが議論されてきた。

 23世紀になると、広義のアルファ・ケンタウリはこの連星系を成しているA星とB星という扱いになった。

 ところで、クラウス・キーマンもこの場に呼ばれていた。

「我々ガミラスがこの、君らがプロクシマと呼んでいる恒星系と、セントーリ星系……君らが言うアルファ・ケンタウリ星系の両方に前哨基地を築いていた。君らは我々が破棄した基地を中心に開拓し、前者が農業開拓星に発展したが、後者の場合には地球外文明の古代遺跡が発見されたことで開発が棚上げになっていたな?」

「そうだ。アルファ・ケンタウリ11号星には、空間騎兵隊一個連隊約1200人が常駐し、遺跡の発掘調査のために考古学者チーム約50人が訪れていた。逆に、プロクシマ3にはコロニーが複数創設されて今や9万人が住んでいる。防衛拠点の重要度としては、11号星よりもプロクシマ3の方が上なのは確かだ」

 しかし、そこで古代がある映像を流す。

 それは赤城大六が船長を務めている輸送船「荒川丸」が命辛々ジャンプゲートに飛び込むまでのレコーダーに記録された映像だった。

「敵にもそれが分かっていたようで、プロクシマ3の軌道上には少なくとも200隻が侵攻していた。恐らくはまだまだいるはずだ」

 再び映像をアルファ・ケンタウリ星系の概略図に戻す。

「しかし、アルファ・ケンタウリ星系を見ると、敵が確認されたのは、ここと、ここ。そして、ここだ」

 スヴァールバルが赴いたジャンプポイントBと、フリースラントが赴いたジャンプポイントC、オガサワラが赴いたジャンプポイントD。

 ジャンプポイントBはちょうどアルファ・ケンタウリ星系とプロクシマ星系の間にあり、ジャンプポイントDは地球とアルファ・ケンタウリ星系との間に配置されていた。

 そして、フリースラントがカラクルム級を目撃したとされるジャンプポイントCは意外なことに、

「アルファ・ケンタウリA星とB星の間の共通重心か……」

 真田が共通重心と言った場所は、一見すると何もない空間だが、二つの太陽を重力的に結びつけている場所だった。

 A星とB星はそれぞれが同じ回転方向で公転軌道を描いていて、両者の軌道を円に見立てるなら互い違いに重ねた時のヴェン図に当たる部分が共通重心だった。

 両者が最も接近するのは太陽から土星の距離に相当する10AUまでであり、逆に両者の距離が最も開くと、太陽から冥王星までの距離に相当する40AUにもなる。

 前述したが、その10〜40AUの空間には互いが持つ惑星以外、本来は何もないことになる。

 なお、アルファ・ケンタウリ11号星の軌道はかなり特殊であり、両恒星の共通重心を公転している唯一の天体であった。 

 ところで、フェローが向かったジャンプポイントAは、そのヴェン図から10AU外側の宇宙空間であり、アルファ・ケンタウリ11号星の艦隊を破壊するのにナスカが利用したアステロイドベルトのすぐ内側であった。

 アルファ・ケンタウリ星系とプロクシマ星系の中間地点でもなければ、地球とアルファ・ケンタウリ星系の中間でもなく、アルファ・ケンタウリ星系の中心でもない。

 フェローの偵察結果からわかるのは、アルファ・ケンタウリ星系が広すぎて敵にとってカバーしきれない脆い部分があったということだった。

「もしも艦隊を送り込むならば、このジャンプポイントAだろうな。だが、星系の中央にいるカラクルム級を何とかしなければ、軽巡など連中にとっては紙細工も同然に破られるだけになるぞ?」

 キーマンの指摘する事も尤もだった。

「……長野。サツマと軽巡洋艦の艦隊をこのジャンプポイントAで待機させてくれないか?」

 古代は目の前にある等身大のホログラムの人物にそう言った。

『それぐらいならお安い御用だ。だが、ヤマト単艦だけで50隻を相手にできるのか?』

 さらに言えばカラクルム級戦艦もいる。果たしてヤマトの主砲が通じるかどうかはぶっつけ本番だった。それを差し引いても古代は言った。

「……こんなの、カレル163でドメル艦隊を相手にした時に比べればものの数ではないよ」

『そうか……わかった。古代。こっちも一つ作戦を思いついたんだがいいか?』

 

 ドレッドノート級重巡洋艦サツマのCIC。主要な幹部クルーはたった6人だけだが、その設備はヤマトにも負けず劣らない。

 サツマの長野艦長の目の前には同じく古代の等身大のホログラムが投影されていた。

『どんな作戦だ?』

「場合によってはヤマトの援護に使う作戦になるかもしれないが、これを使えないか?」

 長野がコンソールを操作して表示したのは、所々が角張ったシルエットを持つ魚雷だった。

『これは……ステルス魚雷か』

「その通りだ。これの実戦テストはまだだったよな?」

 ステルス魚雷。レーダーに感知されない大昔のステルス機からヒントを得て作られた黒塗りの兵器であり、理論上はよほど相手の目が良くなければ回避は難しく敵艦に着弾するまで気付かれない。

『敵に気付かれない弾頭はいいが、これを一体どうするんだ?』

「……少し癪だが、これを次元潜航艇と雷装巡洋艦に積ませて使えばいい。せっかく次元潜航艇を借りることが出来たなら、敵に奇襲の一つでも浴びせたいじゃないか」

『長野艦長。ちょっといいか?』

「……あぁ」

 キーマンが通信に加わったことで長野は嫌な顔をした。

『あいにくと、スヴァールバル級にそれが使えるかは分からないぞ? 次元潜航艇には独自の空間魚雷がある』

「だが、他に方法はないだろう? 瞬間物質移送機と言ったか? あれを借りられればアウトレンジ攻撃ももっと楽になるんだが……」

『それは私の権限では許可が降りない』

「だと思ったよ」

『待ってくれ、長野艦長』

「真田技師長?」

『魚雷の射程の問題だが、解決できるかもしれない。太陽を利用するんだ』

「太陽を? どうやって?」

『スイングバイを使う。魚雷を特定のコースに乗せて重力による加速推進を得るんだ』

「でもそれをやると熱で魚雷が持たないのでは?」

 

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 それを言われて真田は一瞬ネオ・ゼムリアであったことを思い返す。

 まだヤマトがネオ・ゼムリアのドライドックから出航する前、古代たちを第二艦橋に残し、上田たちが波動砲の封印解除を行なっている時と同時刻。

「一応ヤマトに新しく装備された兵器も説明しとくべきやな」

 多摩恵莉がデータパッドを操作しながら第二艦橋のホロプロジェクターであるものを映し出した。それこそがステルス魚雷だった。

「これは?」

「ステルス魚雷。うちが設計した秘密兵器やで」

 そう多摩が言うと、小早川ナルが悔しそうに少し顔を歪める。

「ステルス魚雷?」

「その名の通り、通常のレーダーでは探知できない素材で出来とるんや。また外殻も電波吸収とか耐熱とかその他もろもろセット。外殻は8000度の高熱に3分間耐えられるよぅ作っとる」

「……シミュレーションだけだと不足とかいうもんだから実際に魚雷艇借りて実証にも行ったんだっけ?」

 やや拗ねた態度でナルがそう言うと、

「何や?あん時仕事量が増えたことをまだ怒っとんのか?」

 相変わらずねちっこい奴っちゃな、と多摩が呆れる。ところが、ナルが拗ねた理由は別のものだった。

「そっちじゃなくて! あんた、あたしのアンタレスに頭でっかちとか散々ダメ出ししときながら、自分が設計した魚雷はさっさと作って実証に行くとかズルくない!?」

「はぁ!?おま、アホか! 魚雷と航宙戦艦なんて規模がちゃうやろがい!」

「それはそれ、これはこれでしょ! 第一なんで真っ黒なのよ、ゴキ○リみたい!」

「ええやんか!黒かっこいいやんか!そもそも黒ーく塗っとるから、目視でも見つけ辛いで!」

「な、な、何それ!? すんごくイヤらしいわね!?」

「……クックック、そう、我ながら嫌らしい兵器を作ってしもうたなぁ。初期ロット分は木星ステーションに配送済みやで」

「な……っ、あんたねぇ……」

「というわけでヤマトにも装備しとる。きっと何かの役に立つはずや。持ってき」

 その直後だった。どこからか「ガコンッ」という音と共に、近くにあったコンソールの表示が変化する。そして、アナウンスが流れた。

『起動認証完了。波動砲は完全に起動しました。必要な状況下で発射が許可されます。波動砲の発射は常時半永続的に可能な状態です。宇宙戦艦ヤマト波動砲システム完全起動』

 

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 それらを回想していたが、すぐに現実に戻ってきた真田が解説した。

『……魚雷の表面温度は8000度の高熱に3分間耐えられる設計になっている。これを雷装巡洋艦から発射する際は、太陽のコロナや8000度を超えるエリアを避け、重力加速を得られるコースを魚雷に入力する。これが失敗した場合は、スヴァールバル級による次元断層からの空間魚雷での攻撃を試みてみよう。両方成功すれば効果は高いが、仮に失敗しても十分な奇襲になるだろう』

『いずれにしろ、あと3時間で戦闘開始だ。準備を急がないとならない』

「わかってるさ、古代。俺たちが先にジャンプポイントAに行く。その地点にいる次元潜航艇は、確かフェローだったな? できる限り急いで魚雷を積ませる。その前に雷撃巡洋艦でまずは真田さんの案を実証してみよう」

 すると長野は腕時計の時刻を合わせる。

 古代もそれに倣う。

「今から1時間後に俺たちがジャンプする。ヤマトはそれから2時間後にアルファ・ケンタウリ星系の共通重心にいるガトランティス艦隊に攻撃を加えてくれ。俺たちの艦隊もそれに合わせて雷撃を開始するが、失敗した場合に備えてフェローをヤマトのジャンプ予定地点付近に待機させておくぞ」

『了解』

「時刻合わせ」

 そして、長野と古代は共に時計をセットした。

『「よし」』

「さて、忙しくなるぞ」

『幸運を。長野艦長』

「お前もな、古代艦長」

 そうして通信が切れると、長野の指示が飛んだ。

「全員戦闘配置!」

 


 

 アルファ・ケンタウリ11号星の地球連邦の基地は、臨時指揮官となった斎藤の決断により放棄が決まった。

 しかし、基地内には多数の負傷兵と考古学調査団の民間人がいるため、第11連隊の第1、及び第2大隊の兵士たちが戦力の中核となり、基地で籠城し、彼らが地下道を伝って避難場所へ退避するまでの時間稼ぎをすることになった。

 さて、今更だがこの基地の周りには訓練の一環として基地を囲むように上空から見ればまるで輪を描くように掘られた塹壕が3列ある。

 空間騎兵隊の兵士たちは基地に近い方の2つ塹壕を「内側」。それらよりも数百メートル離れた場所にある塹壕を「外側」と呼んでる。

 「内側」の塹壕は互いの距離が数mと離れておらず、これらは基地の地下室とトンネルで繋がっている。

「チッ……やっぱ、迂闊には進んで来ねぇか……」

 斎藤はうつ伏せの姿勢で双眼鏡で基地の屋上から地上の様子を確認する。敵の進撃が思ったよりも鈍いことに斎藤は気付き、舌打ちをした。

「……敵さんもバカじゃないね」

 その横で永倉はコスモ狙撃銃(スナイパーライフル)を構えつつスコープを覗いていた。

 彼らの視線の先には「外側」の塹壕から僅かに離れた場所。基地を囲むように配置された地雷があり、特に対戦車地雷は目立つように置かれている。

 ガトランティス兵はその内の一つを撤去しようとしていたが、あるものが目についた斎藤は胸ポケットに入れてる通信機をオンにして指示を出した。

「……岡崎。アルファ238を点火」

『了解⭐︎』

 カチッとそんな音が通信機の向こうで聞こえたと思ったら、対戦車地雷を撤去しようとしたガトランティス兵が土柱に突き上げられたかのように空中へ吹っ飛んだ。

 正確には、足元にあった何かが爆発した。

 それの爆風が対戦車地雷にも引火したらしく、近くにいた兵士たちをニードルスレイブ数体諸共吹き飛ばした。

『おーおー、派手に吹っ飛んだ』

「炸薬の量多すぎじゃねぇか?」

『いやいや、あれぐらい派手に爆発してくれたほうが良いじゃないですか』

 ガトランティスの地上軍は警戒してか、歩兵たちは掘られた「外側」の塹壕へ転がるかのように潜り込んだ。

 間も無く、その塹壕は入り組んだ迷路のようであると気付いただろうか。

「連中、外側の塹壕に潜り込んだね」

「基地にも繋がってない独立した塹壕だなんて連中にはわからないだろうよ」

『ま、連中が気付く前に吹き飛ばせますけどねー』

 無線機から生意気さを隠そうともしない岡崎の間の抜けた声が聞こえた。

「おっと、大変だ」

「えぇ、見えてます」

 右往左往していた兵士たちだったが、そんな中で塹壕を這い上がる者が現れたので、これまたとぼけたような口調の斎藤が永倉に注意を促した。

 当然、ガトランティス兵たちの目標はここだ。

 だが、連中が一歩、二歩と歩んだところで、一人、また一人、ガトランティス兵の頭には音もなく風穴が開き、血が吹き出し、地面に血の池が出来る。

 サイレンサー付きの狙撃銃。自慢の得物で永倉は敵兵の頭を害獣や狩りの獲物に見立てて次々と撃ち抜いていく。

 5、6人が地面に倒れ込んだ辺りでガトランティス兵たちは残る全員が塹壕に慌てて再び引っ込んだ。

 ガトランティス兵たちには塹壕から出られない心理状態が構築されていく。

 後からやってきたガトランティス兵たちも塹壕へ続々潜っていくのを双眼鏡で見ていた斎藤は頬を釣り上げた。

「いいぞ永倉。岡崎、手筈通りにやれるか?」

 そう斎藤が双眼鏡で敵兵たちの様子を確認しながら、岡崎に実行を促すかのように尋ねた。

『簡単ですよー。さぁて、3…2…1…起爆☆』

 すると塹壕の至るところに隠された爆弾が起爆されて、塹壕が次々に吹き飛んでいく。

 基地に籠城する事になった斎藤たちは外側の塹壕を全て放棄。代わりにこれを罠に使ったわけだ。

 塹壕全体が、身を隠したガトランティス兵たち諸共巻き込んで大爆発し、歩兵と共に前進していたニードルスレイブも大半が爆発に巻き込まれて破壊された。

『ふー。汚い花火ですが、でっかいのが出てスッキリした気分です』

「よくやったぞ岡崎」

「まったく……「(すず)」って可愛らしい名前なくせに口は下品でやることもホントえげつないんだから」

『副隊長には言われたくないでーす』

 一応、通信相手の岡崎(おかざき) (すず)は女性兵士だ。いや、女性と言うには少し幼いかもしれない。数週間前にこの基地に配属されたばかりの新兵なのだが、

「新人のくせして相変わらず生意気言うわね」

「まぁまぁいいじゃねぇか。この方が俺たちらしいだろ?」

『そうそう!』

「はぁ〜……」

 変なところで岡崎と斎藤に意気投合されて永倉は深く溜め息を吐いた。

 ちなみに、対戦車地雷の8割は、実は爆薬の入っていない偽物のダミー爆弾であり、訓練用のトラップとして本来用意されたものだった。

 ガトランティス兵たちの進撃スピードは相変わらず鈍いのだが、これはガトランティスの歩兵に対する空間騎兵隊側の心理戦が効果を発揮している証拠でもある。

 初めて見る地球製の爆弾に、どれが本物で偽物かの判断が付かないからだ。

 ところが、慎重に慎重に進んでいて、ある兵士が通った所に別の兵士が地面に足を付けると、そこの地雷が突然に爆発し、踏んだ兵士は足どころか体全部が引きちぎれてバラバラになった。斎藤は双眼鏡を手放して流石に苦い顔をした。

「我ながらえげつねぇな……」

 斎藤自身が考案した作戦とはいえ、自分が攻める側だったらと思うとこの上ない嫌がらせだと思った。

「……!隊長!」

 永倉に声を掛けられて彼女に指定された場所へ双眼鏡を向けて見た斎藤は、その方向から、ニードルスレイブがまるで何重もの壁を構成したような布陣で基地に迫ってきているのが見えた。

 そのニードルスレイブの壁の後ろから歩兵たちが続いている状態だった。

「奴ら、真っ正面から突撃する気だな……やれるか永倉?」

「狙撃中隊。敵の突撃部隊を迎撃せよ」

 その合図と共に、各々物陰に隠れたり匍匐状態だった狙撃兵たちの一斉射撃が始まる。

 彼らの狙撃はそのほとんどが正確だった。だが、全てニードルスレイブに防がれてしまった。

「……駄目です、ニードルスレイブが邪魔です」

「奴ら、コスモガン程度ではビクともしないってことか……。岡崎、あの辺りの地雷や爆弾を爆発出来るか?」

『あー……』

「あー、じゃないぞ、どうなんだ?」

『隊長、あの辺りはダミーしか無いですよー!』

「となると……奥山。お前たちの出番だ」

『はい隊長。トーチカ、手動砲撃準備完了。目標はすでに捕捉済みです』

「なら撃て!」

『了解。砲撃開始!』

 すると、今度はコスモガンのような小口径弾ではなく、重砲やトーチカから放たれる砲弾がニードルスレイブとガトランティスの歩兵部隊へと一気に襲いかかった。

「よしもういいぞ、撃ち方やめ、撃ち方やめ!」

「連中、逃げていきます」

「電力がダウンしたから、敵もまさか対空砲が動くとは思っていなかったんだろうな」

『やはり実弾さまさまですね』

「全くよ」

「時代遅れと謗られようが、やっぱこういう時に頼りになるのは俺の大好きなローテクだってわけだな」

 軽口を叩いた斎藤だが、それも束の間。砲台のスコープから敵の動きを見ていた奥山(おくやま)彦治(ひこはる)が訪ねてきた。

『一時撤退だと思われます。敵は態勢を立て直してやって来るはずです……隊長、いかがしますか?』

「そうだな……今度は不意打ちを使えんし、敵は爆撃機を送り込んでくるだろうな。もしくは軌道上からの砲撃か……」

「私たちができるのはここまで?」

「隊長」

『隊長、斎藤隊長!』

「鳥居。あと、村山?」

 第2大隊隊長の鳥居が駆け寄ってきて、無線機からは明るい声色が聞こえた。相手は工兵の村山(むらやま) (しのぶ)だった。

『隊長、基地の電力に復旧の目処が立ちました!』

「そうか。わかった」

 少し遅れて永倉の部下である酒井もやってきて、彼もすぐに永倉たちと同じくうつ伏せになり狙撃銃を構えた。

「永倉さん」

「酒井?」

「隊長、ここは俺たちに任せてください」

「鳥居、酒井……。ならここは任せるぜ。村山の作業を見に行ってくる。永倉来い」

「了解」

 一旦基地の中に斎藤と永倉は引っ込む。

 彼らが目指すのは、先ほどのプラズマ魚雷の直撃で壊滅状態に陥った司令室だった。

 


 

「ワープ開始!」

 一方で、ヤマトは地球圏をワープで離脱し、アルファ・ケンタウリ星系の中心に現れた。

 

「何だ!?」

「地球軍の艦艇です!」

「いつの間に現れた……!? 直ちに攻撃を……」

 カラクルム級戦艦の艦長が攻撃命令を下そうとした時、突然に駆逐艦や巡洋艦が爆発した。他にも数隻がダメージを負った。

「何!?」

「駆逐艦9隻、巡洋艦2隻が大破しました!」

「バカな! ワープしたての戦艦が魚雷でも撃ってきたというのか……!?」

「敵主砲にエネルギー反応! 我が艦に向けて発砲してきました!」

「……ふん、何かと思えば地球軍艦船の主砲か! そんなもの痛くも痒くもないわ!」

 しかし、この艦長にとってはそれが命取りになった。

 ヤマトのショックカノンから放たれた波動エネルギーの塊は、カラクルム級戦艦の外殻を覆うニュートロニウムの装甲を貫通し、瞬く間に致命傷を負わせた。

「ば、バカなぁぁぁっ!?」

 轟沈するカラクルム級と共に、名もなきガトランティスの艦長は命を落とした。

 

「敵旗艦撃沈! 敵艦隊は体制を立て直そうとしています!」

「そうはさせないぞ。相原通信を繋げ。出番だぞ長野!」

 雪の報告に、古代は矢継ぎ早に指示を飛ばした。

 

 混乱するガトランティス艦隊の眼前に、13隻の地球連邦防衛軍の艦が姿を表した。

 6隻は雷装型プリンツ・オイゲン級軽巡洋艦。

 3隻はパトロール型プリンツ・オイゲン級軽巡洋艦。

 3隻はミサイル戦型キリシマ級軽巡洋艦。

 そして、最後の1隻は、ドレッドノート級重巡洋艦サツマであった。

「各自、自由に攻撃して良し!!繰り返す、各個に撃て!!」

 サツマの第一艦橋にて豪快に指揮を飛ばす長野。

 キリシマ級ミサイル軽巡洋艦のミサイルと、雷装型プリンツ・オイゲン級軽巡洋艦の魚雷が入り混じり、それらが次々にガトランティスの艦船に突き刺さっていく。

 パトロール型のプリンツ・オイゲン級はその索敵能力を活かして主砲の精度を上げ、ガトランティスの艦を次々に串刺しにした。

「長野艦長、支援ありがとう」

『これぐらいどうって事ないぞ。ヤマト、ここは任せろ!』

「了解。徳川さん、もう一度ワープしますよ」

「わかっておるよ。ただ慎重に行かねばな。機関をパワーアップしたとはいえ、こう頻繁にワープを繰り返せばエンジンに負担が掛かる。山崎、エンジンは大丈夫だな?」

『はい、おやっさん。一回と言わず五回か六回は連続で小ワープできますよ』

「一回あれば十分じゃ。艦長。行けるぞ」

「ありがとうございます。島、いいか?」

「宇宙酔いが心配になるが、それを除けば問題ないぞ」

 冗談を言える暇があるなら大丈夫だな、と古代は思った。

「この場の敵艦隊を殲滅後、アルファ・ケンタウリ11軌道上にワープジャンプする。その前に、艦載機格納庫と甲板部へ」

『こちら榎本』

『加藤だ』

「ワープ完了後、虎の出番になる。準備を」

『了解です』

『了解!』

「敵艦隊、残り28隻。あっ……駆逐艦2隻が離脱していきます!」

「逃がすな。主砲、左舷の駆逐艦2隻を狙え」

『第一主砲準備よし』

『第二主砲準備よし』

「ってぇーっ!!」

 その号令と共に、ショックカノン砲から放たれた光の束が、駆逐艦2隻を追いかけるように飛んでいく。そして、両主砲共に目標を撃滅した。

 残りのガトランティス艦隊はサツマと地球軍艦隊による攻撃で全滅した。

 その直後、真田が気になる分析結果を持ってきた。

「艦長。アルファ・ケンタウリ11の付近を調べていたら気になる分析結果が出たぞ。これを見てくれ」

 真田が少し慌てた様子でその分析結果をメインスクリーンに映した。

 緑と黄色に彩られた美しい惑星と共に、ガトランティス艦隊の姿が映り込む。

「あれがアルファ・ケンタウリ星系第11番惑星ですね?」

「その通りだ。だが、気になる結果というのがこれだ」

 真田がその映像にフィルターを被せてみると、惑星の周辺をモヤのようなものが覆っているのが鮮明化した。

「何だ、このモヤは……?」

「まるで霧ですね」

 島と太田が口々に反応を漏らした。

「このモヤの正体だが、大量のメトリオン粒子を検知した」

「メトリオン粒子?」

「古代。あの付近ではレーダー誘導は使えないぞ。メトリオン粒子はレーダーの機能を混乱させる」

「とすると……」

 古代は一抹の不安を感じていたが、

「艦長。手動でもちゃんと撃てます! こういうこともあろうかとこの二日間訓練してきたではないですか!」

「南部……わかった。各砲に通達。射撃管制システムをオフライン。手動発射に備えさせろ」

「了解」

 


 

 アルファ・ケンタウリ11号星の地球連邦防衛軍基地の内部では、工兵たちが基地の防衛設備を補助バッテリーに繋いでの駆動を試みていた。

 工兵の一人がその作業を終えると、基地の電力が復旧した。

「隊長、電気戻りました!」

「対空砲と重砲にエネルギー行きます!」

「よくやったぞ。プラネタリーシールドは復旧出来そうか?」

「厳しいですね……プラネタリーシールドを起動しようにも、予備バッテリーだけでは30分しか持ちません」

「……クソッ。他に方法は無いものか……」

 永倉は思い出したかのように工兵に言った。

「そうだ。通信システムは使える?」

「敵の妨害が酷すぎて使えなかったはずです」

「それなら電源を入れれば使えるのね?」

「永倉、どうするつもりだ? 使えない通信機に電気を入れるなんて」

「無駄かもしれませんが、上で変化が起きたのかも。敵はプラネタリーシールドを破壊しておきながら、あんなに激しかった軌道上からの爆撃を突然ストップしてしまったじゃないですか」

「……確かに。この20分間、敵機による爆撃がない」

「じゃぁ、やっぱり上で何か起きているんでしょうか?」

「そう考えるのが妥当かもね。電源を入れて」

「は、はい」

 永倉に促された工兵は、通信装置へ電源を繋いだ。

 相変わらずのホワイトノイズだったが、それを安祥が調整して取り除いた。

「どうぞ、副隊長」

「こちら、アルファ・ケンタウリ11号星地球軍駐留部隊、軌道上の宇宙船へ、誰かいますか?」

 応答はない。ザーザーという音だけがスピーカーから流れる。永倉はもう一度呼びかける。

「こちら、空間騎兵隊第11連隊第1大隊第3狙撃中隊の永倉詩織軍曹です、誰か応答を!」

 応答なんて帰ってこないだろう。その場にいた斎藤はそう思っていたが、

『こち……、……ヤマト』

「! 通じたぞ!?」

「やっぱり上に誰かいる!」

「安祥、もっと音声をクリアにできるか?」

「はい、お待ちを」

 安祥が通信機器のコンソールを操作すると、

『こちら……ヤマト……こちら、地球連邦防衛軍宇宙戦艦E.F.Sヤマト。地球軍空間騎兵隊、応答願います!』

「通じたぞ!」

「味方だ!味方がいるんだ!」

「待て。永倉、俺が代わる」

 少し疑い気味に斎藤がヤマトとの通信に応じた。

「こちら地球連邦防衛軍空間騎兵隊第11連隊、隊長だ。本当にヤマトなのか?」

『連隊長。こちらはヤマトの相原義一通信士であります!』

「本当にヤマトか?」

「隊長……」

 疑い深すぎる。永倉はそう思ったが斎藤はこう言った。「ぬか喜びはごめんだ」と。

 その言葉で他の空間騎兵隊の兵士たちが平静になった。

 そうだ。ヤマトが来るとは聞いていた。だが、それがもしこの通信が敵の罠だったら?

 自分たちが一斉に攻撃に出ていったら敵が待ち構えていて全滅させられるのではないか。

 喜びのムードから一変して重苦しい雰囲気になった。

『連隊長?どうすれば信じてもらえるだろう?』

「そうだな……桐生美影はいるか?」

『桐生美影? ……あいにくとこの場にはいない』

「桐生美影って誰ですか?」

「あとで説明する。そうだな……そうだ。2199年のキリシマの艦長は誰だった?」

 これは敵味方を識別するための簡単な質問ゲームだった。

 もし相手が敵だったら、間違った答えが返ってくるはずだ。

 すると、ヤマトの通信士を名乗る相手はこう答えた。

『……山南 修です!』

「……確かそんな名前だったな。では土方 竜は誰だ?」

『土方提督のことですか? アンドロメダの艦長の?』

「アンドロメダ……地球軍の新しい旗艦か。あの親父はだいぶ出世したようだ。わかった。ヤマトだな? 俺は連隊長の斎藤 始だ。救援感謝する。今どこにいるんだ?」

 

「現在、軌道上の敵艦隊と交戦中だ」

「全砲門斉射!」

 周りを囲むガトランティス艦隊を高機動で翻弄するヤマト。主砲、副砲が左舷と右舷にそれぞれ展開し、古代の合図で次々と発射される。

 ククルカン級駆逐艦、ラスコー級巡洋艦などを次々と串刺しにしていくが、ヤマトを迎撃しようとデスバテーターが追ってくる。

 その追随を許さず、コスモタイガー数機がそれらを撃墜する。

 色鮮やかなコスモタイガー。ローグ中隊の乙女たちであった。

 一方、アルファ中隊とベータ中隊の各隊員は各々ロッテで行動し、この隙に惑星への爆撃を再開しようとする駆逐艦や巡洋艦、さらには兵員輸送船を集中的に狙う。

 狙われたのは空母も例外ではなかった。

 ナスカの眼前で、左舷にいた味方の軽空母がコスモタイガー隊の猛攻を浴びて撃沈した。

「僚艦「ディロカ」、撃沈!」

「早く撃ち落とせ!何をしている!」

「そ、それが……敵機の動きに対空砲がついていけません! 敵戦闘機の動きがこれまでの地球軍とは全く違います!」

「それは当然。人が乗っているからだ」

「メーザー、戻ったか。状況は?」

「俺の隊は17機を除いて連中に撃墜された。かなりの手練れだ」

 そこで彼の艦も揺れた。

「どうした!?」

「敵の攻撃が我が艦の機関部に!」

 次の瞬間には艦橋にいた兵士が次々に爆発で吹き飛ばされた。

「グワァァァッ!」

 艦橋のあちこちで爆発が起き、瓦礫だらけになった。

 メーザーは幸いにして瓦礫から逃れたが、ナスカは頭から血を流していた。

「く、クソッ、私の船が……!」

「艦長。早く脱出しよう」

「冗談じゃない、これは私の船だ。お前こそ早く脱出しろ!」

「……コズモダード。すまん!」

 そう言って、メーザーはナスカの顔面を殴って気絶させた。

「……悪いな。だが、お前はここで死んでいい奴じゃないぞ」

 メーザーはすぐに艦内放送のスイッチをオンにした。

「飛行隊長のメーザーだ。全クルーへ、艦を放棄する。繰り返す、急いで脱出しろ。捕虜も脱出ポッドに押し込んで地上に送れ!」

『警告、ガイゼンガン機関反応炉破損。あと5分で爆発します』

「……さらばだ。叔父上」

 去り際に操作したコンソールを軽く撫でて、メーザーは気絶させたナスカを担いで格納庫に向かった。

 バランタヌクス艦内の至る所で爆発が起きる中、複数の脱出ポッドが11号星に向けて発射された。

 一方で無理やりナスカを後部銃座に押し込んだメーザーはデスバテーターを発艦させた。

 他の機体も続くが、残存していた17機の内、7機は格納庫内で瓦礫に押し潰され、1機は発艦口に挟まり、後続の機体の発艦を妨げた。

 甲板の下側から爆発が起き、メーザーの他に爆発直前でバランタヌクスから脱出出来たデスバテーターはたったの7機。

 しかし、ヤマトの航空隊はその死に体の7機にも容赦なく襲いかかった。

「回避しろ、全機、回避!」

 メーザーがそう指示を飛ばす間も無く、1機、また1機と撃ち落とされていった。

 それ以前に、ガトランティスのパイロットたちにとっての精神的ショックは甚大だった。

 母艦を失い、数で地球軍を圧倒していたはずの味方艦隊は、敵の戦艦一隻と見えない魚雷に翻弄され、ヤマトと対峙した時には無傷だったはずの167隻が、今ではその3分の1を失っていた。

 戦艦一隻を相手に約40隻の駆逐艦と巡洋艦、そこに軽空母2隻までもが残骸の仲間入りとなった。

 ナスカは手など抜かなかった。

 メーザーの目には、地球軍の戦艦が、自分の数百倍の戦力の相手に戦い慣れているように見えた。

「あれが、ヤマトなのか……」

『た、隊長、自分ももはやここまでです……!』

 メーザーの僚機は必死の回避行動も虚しく、地球軍の艦載機に撃墜されてしまった。

 味方機は全て失った。

 そして、メーザーの機体にも敵弾が被弾する。

「クソッタレ……!」

 メーザーが操縦し、後部座席に気絶したナスカを乗せたデスバテーターは、そのままアルファ・ケンタウリ11号星の大気圏に突っ込んでいった。

 メーザーの眼下には地球連邦の基地が一瞬見えたが、空間騎兵隊の隊員たちはその「流れ星」に気付く様子はなかった。

 

 一方、ガトランティスの地上軍は空間騎兵隊の基地の目と鼻の先にいた。

「東堂、避難状況は?」

『非戦闘員の退避がまだ……』

「何やってんだ!?」

『桂木さんと軍医がまだ負傷者を運び出してる最中なんです! 第四大隊の隊員は私を含めて32人がまだ退避していません』

 それは暗に東堂たちも「残って戦いたい」と言ってたのだが、

「……避難しろ。時間を稼ぐ」

『しかし……』

「早くしろ。敵がすぐそこまで迫っているぞ!」

『……了解』

「さて、俺たちも負けてられない」

「でも隊長。ヤマトが来たなら、このまま籠城すべきでは……?」

「お医者さんたちが負傷した連中を全員避難させられるまでは時間を稼がにゃならん。第一大隊、俺に続け。第二大隊は基地の設備を使って援護してくれ。特に敵の戦車やニードルスレイブを狙うんだ!」

「了解!」

 空間騎兵隊、最後の攻勢に出る。兵士たちは蛮声を上げながら突撃する。

 敵の地上戦力を押し返さない限り、ヤマトが航空戦力を搭載しているかどうかが定かでない以上、斎藤は敵の歩兵や戦車部隊を打ち破って活路を見出すしかなかった。

 第一大隊は、一旦は放棄した塹壕に伏せ、そこから歩兵や戦車、ニードルスレイブへの攻撃を続行する。

 斎藤は近くに転がっていたガトランティス兵の死体からあるものを回収した。

「ほう、これは……」

「隊長、敵がきます!」

「来やがったな、機関銃とGMGで応戦!」

 塹壕にはあらかじめ複数の武器を隠している。敵に見つかって鹵獲されたものも多数あったが、大半は無事だった。

 GMGとは、自動擲弾発射機のこと。

 言うなれば、グレネードランチャーのマシンガンバージョンとも言えた。

 こんなもの、戦車はともかく歩兵に命中したら木っ端微塵である。

 実際、士気が低下していたとは思えないほど、第11連隊の兵士たちはこの一日半守勢の立場から一転して攻勢に入ったことで、今までの鬱憤を晴らすかの如く敵に銃撃を浴びせに行った。

「さて、これは、っと……」

 斎藤がガトランティス兵から拾い上げたのは、地球流で言えばミニガンに似た兵器だった。

 コスモ機関銃とGMGの普及によって実弾のミニガンは廃れていったが、これは差し詰め、コスモガンをミニガンにしてそのまま大きくしたような兵器だった。

「くらえ!!」

 斎藤は他の歩兵と共に突撃しながら、ガトランティスの歩兵にコスモミニガン(仮)の銃撃を浴びせる。

 当然向こうも同じ兵器を持っているので、空間騎兵隊の兵士たちは塹壕に隠れながら応戦する。

 基地の対空砲も角度を水平方向に変えて、戦車に向けて発砲する。

 擲弾兵のロケット砲もニードルスレイブを吹き飛ばす。

 しかし、ニードルスレイブは下から攻撃するか、あるいは重砲や対空砲のような口径の大きい武器で攻撃しなければビクともしない。

 歩兵の一人がアサルトライフルで果敢に挑むが、敢えなくニードルスレイブの餌食になってしまった。

「おい、こっちだこっち!」

 対してこの歩兵はニードルスレイブに石を投げて注意を引きつけた。

 ニードルスレイブは歩兵を追ってくるが、その下には落とし穴が。

「貰った!」

 歩兵は落とし穴にわざと潜んで、ニードルスレイブの弱点を突いた。

 だが、その歩兵が落とし穴から顔を出そうとしたら、ガトランティス兵に袋叩きにされてしまった。

 ロケット砲を構える兵士は戦車に狙いを定めたが、そこにニードルスレイブが突進してきた。擲弾兵はニードルスレイブに殺されてしまったが、装填されたロケット弾は時限信管であり、結果的にその擲弾兵はニードルスレイブを巻き添えにした。

 丘の向こうから現れた戦車に不意をつかれた歩兵たちは戦車から機銃掃射を浴びて戦死した。

 その戦車を重砲が照準に捉えて発砲。歩兵たちの命を奪った戦車はその場で粉砕された。

 それでも、兵士や装備の数はガトランティスが上だった。

 斎藤たちは一日半の間、プラネタリーシールドを活用して籠城していたが、敵の数をそこまで減らせたわけではなかった。

 ガトランティス軍はニードルスレイブを盾にして歩兵、戦車の集団を構成。

 今度こそ空間騎兵隊にトドメを刺すつもりだった。

 しかし、最後の最後に幸運の女神は空間騎兵隊に微笑んだ。

 基地に迫りつつあったガトランティスの地上軍に対し、空中からミサイル攻撃と銃撃を浴びせる航空隊が出現した。

「おぉ、コスモタイガーだ!」

「味方だ!」

 勝負あった。

 制空権はもはや地球軍が確保した。

 宇宙空間ではガトランティス軍の艦の残骸が漂い、その中をヤマト率いる地球艦隊が進む。

 ヤマトからはコスモハウンド、サツマなどの他の艦からはコスモシーガルがアルファ・ケンタウリ11号星に降りて行った。

 


 

 同刻。

 場所は変わるが、アンドロメダ銀河から天の川銀河へとひた走る白色彗星。その彗星都市の王宮の某所。

 ズォーダーのプライベートルームに、情報局長のガイレーンはお茶を持ってやってきた。

「失礼します。大帝陛下」

 そう一声かけて部屋に入ると、ズォーダーはソファーに座り、文献が納められたデータパッドを熟読している様子だったが、すぐにガイレーンに気付いた。

「ガイレーンか……」

 そのガイレーンがお茶を手に持ってきたので、少し休憩することにした。

「陛下、何を読んでおられたのですか?」

「これか? 貴様の手のものが送って寄越してくれた地球の歴史に関する書物だ」

「私の手のもの?」

「とぼけるでないわ。あのバカ息子がある日突然ペットとして連れてきた姉妹の片割れを地球人に紛れ込ませて潜入させておるだろうに」

「そうでしたな」

「名をなんと言ったか……リーデルだったか?」

「そちらは現在リセルの侍女としての役目を与えておる妹のほうでございます」

「では姉のルゼリーといったか?」

「その通りでございますが……」

 ガイレーンが何かを尋ねに来た様子であると察して、今言及したルゼリーという女奴隷兼スパイと何か話に関係があるとすぐにズォーダーは気付く。

「……もしや、あの件を聞きにきたか?」

「左様でございます。地球に派遣した特務隊員のルゼリーからのメッセージは如何致しましょう?」

 あの件。ズォーダーはそう言及しただけだが、腕を組んで溜め息を吐き、足をテーブルの上に投げ出……そうとしたが、

「……あぁ、すまんな」

 日頃から「大帝としての自覚を持ってください」とガイレーンに口酸っぱく言われているので、慌ててテーブルに一瞬乗っけた両足を、床に付けた。足を床に下ろしてからズォーダーはまた溜め息を吐き、天を仰ぐかのように天井に顔を向けた。

「はぁ〜……全くあの小娘め。任務に忠実なのは良きことだが、面倒なものを伝えてきよったわ。よりにもよってテレサからのメッセージか」

 ここ数日。ガイレーンとズォーダーと、この内容を伝えてきた工作員本人、恐らくガトランティスではこの三人しか知り得ない重要機密に二人は頭を悩ませてきて、ついつい溜め息が漏れてしまった。

「デスラーはテレサが人智を超えた存在であると警告していたが、ガイレーン、其方はどう見る?」

「そうですな……まず結論から述べますが、デスラーの見立ては間違っておりません」

「何と? 他人の戯言など鵜呑みにしないと公言する其方にしては珍しいではないか」

「そう認めざるを得ない資料がこの銀河の至る所から見つかりましたからな。特にアゼルメニアから」

「あぁ、あの星か……」

「えぇ。あの星です」

 二人は溜め息を再び漏らしながら数日前のことを思い返した。

 

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 それは、テレザート攻略に関する作戦会議を行なっていた時のことだ。

「テレザートのことは仕方ない、攻略を諦めるとしよう。それでガイレーン、アゼルメニアのことも調べてきたな?」

「ははっ、こちらです」

 そうしてガイレーンがモニターに映し出したのは、一見すると太陽の周りを回ってる惑星。

「む?一見すると普通の惑星に見えますが……?」

「見た目はそうですが、大きさと中身が全くの別物です。これをご覧ください」

 そうしてガイレーンの補佐を務めている白髪の女性がラーゼラーのいるコンソールを操作すると、その惑星のスケール比較のためにあるものをモニター画面上に投影した。

「これは、我らが帝都ゴレムを擁する白色彗星でございますが、この星と同スケールにすると……」

 その指示に従って白髪の女性がコンソールを操作すると、白色彗星がみるみる小さくなっていく。

 それを見ていたラーゼラーは驚きのあまり目が飛び出しそうな顔になっていく。

 ガトランティス帝国の帝都ゴレムは円形で傘を上下ひっくり返したような形をしている。底面には一見すると月のような岩肌とクレーターの目立つ半球があり、この面を進行方向、即ち彗星都市帝国が目指している新天地である天の川銀河系に向けている。この状態で彼らの母なる大銀河系を出発して早50年、銀河間の何もない宇宙空間を直走ってきたのだ。

 都市の直径は300km、都市の底面から外縁部に至る部分には白色ガス帯発生装置が連なっており、これが都市の防護膜として機能している。準ワープ〜亜高速で都市が移動し続けるので防護膜であるガス帯が尾を引くため遠目から見れば白色彗星に見えるというわけだ。

 なお、この防護膜の厚みはおおよそ1500〜2000km。防護膜と都市そのものの大きさを足せば白色彗星の直径は平均的に約2000kmにもなるのだが、それが画面上でみるみる小さくなっていく。

 そしてこれから議題のメインになる惑星と同スケールになった時、白色彗星の大きさはアゼルメニアに比べて6分の1ほどになってしまっていた。

 驚いた表情のまま固まってるラーゼラーに代わり、ゲーニッツは、

「噂には聞いていたが、やはり巨大ですな……」

「え……!?」

「惑星アゼルメニア。この天の川銀河系外縁部で知らぬ者はいないと噂される巨大惑星国家であり、直径はおよそ12100km、総人口は270兆人以上と推測されております」

「270兆人!?そんな馬鹿な」

 そのような人口を抱えて栄えている惑星など、ラーゼラーは聞いたことがなかった。

「惑星の地表には緑豊かで湖畔も所々にある、その規格外の大きさを除けば一見したところ普通の惑星ですが、こちらをご覧ください」

 ガイレーンがアゼルメニアの画像の次に出してきたのは、何らかの構造図。

「これは……この惑星の内部ですか? ……私の目が正しければ、惑星のコアと外殻の間に何もない空間が広がっているように見えますが……?」

 ラーゼラーは我が目を疑う。それを余所にガイレーンが説明を続けた。

「目を疑うのも当然です。これは伝説の惑星ロジラと瓜二つなのですから」

「ロジラ……あの、惑星の中に太陽が存在したという伝説の!?」

「あの、申し訳ありません。ロジラというのは?」

 ラーゼラーは感嘆の声を漏らすが、デスラーはイマイチその理由が飲み込めなかったため、大帝が説明した。

「我が母なる大銀河系に存在したとされる伝説の星だ。遥か昔。伝説によれば我がガトランティスの偉大なる母の息子たちがある恒星の周りを巨大な構造物で覆い尽くして作り上げたとされている。その構造物の内側では理論上、恒星からのあらゆるエネルギーを余すことなく得ることができ、その無尽蔵なエネルギーを元手にかつて我々の先祖は大銀河系を征服し、その名を「ガトランティス銀河」と改めたほどだった。名は建造者の一人であり、その惑星の統治者の一族となったロジラという女傑から冠された」

「なるほど……我々の文化でいう「ガデリスの天球」と同じものですね」

「ガデリスの天球?」

「ガミラスの天体学者「ドレン・ガデリス」という人物が提唱した理論です。太陽の周りを巨大な建造物で覆い、太陽のエネルギーを余すことなく利用する。それによって天球の内部の者たちは恒星からほぼ無尽蔵のエネルギーを得ることができるというものです」

 デスラーはラーゼラーにそう説明した。

「陛下。発言の許可を願います」

「許そう、ゲーニッツ」

 ゲーニッツがついに本題を切り出した。

「アゼルメニアがいかに巨大かはご理解いただけたと思います。それだけでなく、この星は銀河外縁部における最大の交易拠点であり、戦略的な要所であると愚行いたします。それ故に、このアゼルメニアは陥落させるべきでしょう」

 そうして戦略ディスプレイをラーゼラーに表示させるゲーニッツ。

「アゼルメニアがいかに巨大な交易惑星であろうと、外部からの交易品なしには生活が成り立たない。なれば、アゼルメニアを包囲し、交易品の流入をストップさせ、じわじわと兵糧攻めにし、地表を砲撃して燃えカスにしてやれば良いのです」

 ゲーニッツが立てた戦略では、ガトランティス艦隊50万隻を召集。それらでアゼルメニア宙域の外縁部から徐々に包囲しながら進軍し、途中で交易船を破壊しつつ、アゼルメニアを包囲するというもの。

 途中でアゼルメニア艦隊も出てくるのだが、少なくともシミュレーション上はガトランティス艦隊に簡単に撃滅されていた。

「1ヶ月ほどあれば、アゼルメニアを献上できるかと」

「……ハハハッ」

「貴様、何がおかしい!?」

 不意に失笑を漏らしたデスラーにゲーニッツは食ってかかったが、

「いや、申し訳ない。総参謀長の作戦があまりに絵空事でしたので、つい」

「何だと!?」

「ゲーニッツ抑えよ。デスラー、何故絵空事だと思うのだ?」

 そう大帝に問われたデスラーは頷いた後、ゲーニッツに向き直り、こう言った。

「アゼルメニアもガデリスの天球や、あなた方の言うロジラという星と同じように無尽蔵のエネルギーを中心核たる恒星から得ていて、彼らは繁栄を謳歌している。そんな彼らを屈服させ、絶望に叩き落とすのも面白そうではあります」

 そうしてサディスティックにも見える笑みを一瞬浮かべるデスラーだったが、途端に真顔になってこう言った。

「……しかし、悪いことは言わない。やめた方がいい」

「何ぃ!?臆病風にでも吹かれたのかデスラー!?」

「ゲーニッツ抑えろ。大帝陛下の御前であるぞ!」

 デスラーの忠告に、ゲーニッツは薄緑色の肌に青筋を浮かべた。さらに口走った言葉にはガイレーンも思わずゲーニッツを注意したが、デスラーは苦笑を浮かべてこう言った。

「……いやいや、総参謀長に臆病者と謗られるのは致し方ないでしょう」

 デスラーは溜め息を吐いてから深く息を吸い込んで、ある事実を述べた。

「実を言えば、アゼルメニアはテレザート共々、我らガミラスが攻略を試みて失敗した星です。それも、テレザート攻略に失敗したのと同じぐらいの損害を被りましてね。ガイレーン局長、このアゼルメニアを中心とした星図はありますかな?」

「えぇ」

「ではそれをここにお願いしたい」

 デスラーは頼み込むかのようにガイレーンにそう言う。ガイレーンが大帝に目配せをすると、大帝は頷いた。

「……わかりました」

 そして一旦、ゲーニッツが用意した戦略シミュレーションの映像を脇に置いて、アゼルメニアが存在する星系を中心とした空間星図をモニター上に表示した。

「倍率を5万光年に」

 デスラーにそう言われて白髪の女性は怪訝な顔をしながらも、ガイレーンが頷いたため、言われた通りにする。

 すると、アゼルメニアの周囲直径5万光年の大まかな星図が出てきた。

 先ほどの議題に上がり侵攻を断念したテレザートはアゼルメニアから小マゼラン雲方向へ約1万光年の位置にある。その一方、アゼルメニアから大マゼラン雲方向に1万7000光年離れたところに記された星系には「ザルツ星系」と記されていた。

 デスラーはようやく説明を始めた。

「……私の先代たちは今から50年以上前、ザルツ星を隷属させました。これにより我々ガミラスは天の川銀河系への橋頭堡を得たのですが、ザルツ人を完全に屈服させるためにはテレザートの征服が必要であり、かつその延長上に存在するアゼルメニアの存在が脅威になる。先代たちはそう判断したのです」

「あの、お聞きしますが、ザルツとテレザートには何の関係が?」

「……ラーゼラーは知らんのか。そのザルツという星では、確か「ザルツ・テレザート教」とかいうテレザート教の真似事をした国教があったそうだ」

「総参謀長、説明ありがとう。つまり、テレザートはザルツ人の心の拠り所であり、アゼルメニアはガミラスの歴史が始まる以前から交易で栄えていた巨大惑星国家であり、その軍事力を無視して素通りは出来なかったというわけだ」

「テレザートでの顛末は聞いたが、アゼルメニアの場合はどうなった?」

「結論だけ申しますならば……陛下、攻略を失敗しました。これをご覧ください」

 そうしてデスラーが見せた映像には、桃色と紫色で再塗装されたらしき多数のガトランティス艦が映った。

 旗艦らしき船といえば、飛行甲板を廃して大量の砲塔が搭載された元ナスカ級中型空母らしき艦だった。

「下品な色合いですな……一体誰の艦隊だ?」

「アゼルメニアの艦隊です」

 デスラーがそう解説した直後、映像の中のガトランティス艦が薄紫色の光球のようなものを多数放ってきた。

 映像の視点が動いている、どうやらこの映像を記録している艦が回避行動に入ったためのようだった。その際に不意に他のガミラス艦隊が映り込むのだが、その内の数隻に先ほどの薄紫の光球がぶつかると、船体に稲妻のようなものが走り、それが艦全体を駆け巡ると、動力を失ったらしく艦内の灯りが全て消えて漂流し始めた。

 それから間も無くしてこの映像を記録していた艦にも紫の光球が衝突。途端に艦橋のあちこちで計器盤がスパークを起こして破裂しながら、照明を失って真っ暗になった。間も無く映像もブロックノイズが多発し、途絶えた。

「……どういうことだ?」

 これだけでは納得いかない。そう言いたげなゲーニッツだったが、代わりに大帝がデスラーに答えを催促した。

「今の光の球の正体は?」

「イオン加速粒子砲と呼ばれる兵器から放たれたものです。これを直撃された艦はゲシュ=タム機関が動力停止に陥り、艦内全域が停電に追い込まれて無力化されてしまいました」

「……それはわかったが、何故あんなところにガトランティスの船がいたのだと聞きたいのだ!」

 ゲーニッツが「納得いかない」と言わんばかりの表情をした理由はそこにあった。

 するとガイレーンが説明した。

「我がガトランティスが天の川銀河系を下調べしていたのは其方も知っておるだろう? しかし、斥候として出発した者たちが帰らなかった事例など山ほどあった。この艦もその内の一つだ。今から80年ほど前に偵察艦隊の一団がアゼルメニア付近で消息を絶っていたのだ」

「それがあのような下品な色に塗り直されて……!? 大帝陛下、アゼルメニアへの進撃許可を願います!」

「まぁ待て。ガイレーンが持ってきた情報はそれだけではないのだろう?」

「まさしく」

 続いてガイレーンはアゼルメニア宙域について説明した。

「アゼルメニア宙域は天然の要害だらけです。まずここ10万年で超新星と化した恒星の残骸が星雲としてアゼルメニア星系のほぼ全体を覆っていて、多種多様な星間物質が溢れています。またワープ妨害フィールドも星系外縁部に隙間なく配置されており、これによって惑星アゼルメニアへの直接ワープは事実上不可能。さらにアゼルメニアはこれら星間物質の特性を利用して兵器類もまともに使えなくするディストーションフィールドを形成しています」

 そこまでガイレーンが説明すると、デスラーが付け足す。

「……トドメにアゼルメニア宙域を定期巡回している練度の高い警邏艦隊と、彼らが使用するイオン加速粒子砲によって侵略艦隊はあっという間に無力化されるのがオチだ」

 それを聞いてゲーニッツは激昂する。

「つまり、敵は直撃すればほぼ確実に艦を行動不能にさせる兵器を主力として装備していることになる! 尚更アゼルメニアを無視できないではないか!」

 そうしてゲーニッツは慌ててモニター上にカラクルム級の立体映像を投影した。

「大帝陛下!我々には80年前にはなかった船と兵器があります。カラクルム級はまさに我々の切り札!カラクルム級のニュートロニウム装甲ならそんなイオン加速粒子砲など恐れるには値しないはすです!」

 デスラーが持ってきた映像のような状態に陥るのは御免被りたいところだが、ゲーニッツの反論も無視できないし、彼の指摘した通り80年前にはカラクルム級が存在しなかったし、ニュートロニウムを装甲として纏ったような艦船もいなかった。

「ガイレーン、アゼルメニアの内情について他に情報は?」

「アゼルメニアは、多民族国家であり、介在する宗教も様々。当然、ガトラザート教や女神ザーベリア様を信仰しない異教徒ばかりであります」

「ガイレーン! 其方の言う通りであれば、大帝陛下! この惑星が異教徒の坩堝であることは明らかな以上、ズォーダー二世の宣言に従うべきでしょう!」

 ゲーニッツはさらに強硬にアゼルメニア侵攻を進言する。しかしガイレーンも反論する。

「宣言に従うかどうかは現大帝陛下の判断に委ねられる。必ずしも前大帝の宣言を行使する決まりはない!それに、ゲーニッツよ。イオン加速粒子砲の現物は手元にあるのか?」

 それを問われればゲーニッツも押し黙るしかなかった。

「そ、それは……」

「ニュートロニウム装甲にイオン砲が通用しないと何故わかる? そんな一か八かの賭けにガトランティスの貴重な主力戦艦を使い潰すわけにはいかぬだろう?……尤もそれを決めるのも大帝陛下のご決断でありますが。それに、我々の調べでは、アゼルメニアは自分たちの利権を害されない限り我々には歯向かっては来ない筈だ」

「な、何故、それを断言できるのだ!?」

「情報局長の仰る通り。彼らは地球やザルツがガミラスに攻撃された時でさえガミラスに刃向かっては来なかった。だから、仮に攻略するにしても、地球との「聖戦」を終えた後でも遅くない。そうは思いませんか大帝陛下?」

 デスラーがそこまで述べると大帝はラーゼラーに問う。

「……ラーゼラー。どう思う?」

「デスラー総統が言ったことをほぼそのまま鵜呑みにするわけではありませんが……」

 ラーゼラーの分析がアゼルメニア侵攻作戦の是非を分けると言っても過言ではなかった。全員の注目がラーゼラーに集まると、彼は少々緊張した面持ちながら事実を述べる。

「天然の要害に守られている270兆の人口を抱える惑星を相手にするには、ガトランティス艦隊の総力を結集して当たらなければ不可能かと思われます。各戦線から艦隊をほぼ全部かき集めて漸く占領できるかといった具合でしょう」

「ラーゼラー。其方、今占領と言ったな? 何故その選択肢を出した?」

「アゼルメニアがロジラと同じであれば、恒星の莫大なエネルギーを利用する手は無いかと思いました。これほど科学文明が進んでいるのであれば占領した方が得られるものが多いですし、地球などこの星に比べれば石器時代に等しい科学水準でしょう。しかし、そのメリットを得るためのデメリット、もっと直接的に言うなれば、この惑星を手に入れるだけでガトランティス軍の損耗具合が目も当てられないものになるのは容易に試算できます」

「執政官の試算はやや楽観的ですが、実際にはさらに深刻な損害と膨大な時間が掛かると現時点で推定できます」

 再びガイレーンはアゼルメニアを投影するが、今度は惑星単体ではない。アゼルメニアを周回する4つの大きい月も共に映り込む。

「アゼルメニア自体は確かに水資源と鉱山資源に乏しい星です。しかし、そのアゼルメニアには4つの月がある。その内、一つは表面の95%を水に覆われた星。一つは常闇ながらも希少金属が豊富な星です。アゼルメニアがいかに巨大で、270兆人以上の全人口を賄うために必要な資源がいかに莫大であろうとも、仮に包囲殲滅で資源を干上がらせるとしても、これらを使い潰すまでには最低でも何十年も掛かるはずです」

「「……」」

 その言葉の前ではゲーニッツもラーゼラーも黙る他なかった。

 デスラーが付け足す。

「おまけにアゼルメニアには手出しさえしなければ向こうから仕掛けてくることはない。屈服させるだけで数十年掛かる上に、宙域封鎖などしたらアゼルメニアをただ怒らせるだけだ。あなたたちの艦隊は瞬く間に全て鹵獲されてアゼルメニアの艦隊に組み込まれる上に、操艦していたクルーたちも全員捕虜になる。そんなことよりは、アゼルメニアは無視してザルツと地球攻略に集中すべきだと思いますが?」

 ぐうの音も出ない正論に、反論したくても出来なくなったゲーニッツ。そこでズォーダーが重い口を開けて結論を述べた。

「……そこまで言われてしまうと、わしはこう言わざるを得ん。アゼルメニア侵攻は行なわない」

「しかし、大帝陛下……」

「あくまでも棚上げだ。デスラーの言う通り地球やザルツ星を攻め滅ぼした後でアゼルメニアをじっくり料理してやればいい」

 そうしてズォーダーは玉座から立ち上がった。

「軍議はこれまでとする」

 そう宣言し、ズォーダーは玉座の間を後にした。

 アゼルメニア侵攻を強硬に推し進めようとしたゲーニッツは苦虫を噛み潰したような顔をし、デスラーとガイレーンを睨んだ。

 

▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△▲△

 

 それを思い出したゲーニッツは酒瓶を手に荒れ狂っていた。

「クソッ、あのガミラスの青虫め……!」

「総参謀長、どうか落ち着いて……」

「これが落ち着いていられるか!」

 バルゼーは荒れ狂うゲーニッツを宥めようとしたが、ゲーニッツは逆に手に持っていたグラスを床に叩きつけた。

 そのままソファーに深く腰掛け、さらにテーブルに拳を叩きつけて割ってしまった。

「えぇいクソ!ガイレーンめ!情報を出し渋りおってからに……!」

(数日前のことをまだ引き摺ってらっしゃるのかこの人は……そのガイレーン情報庁長官に情報を請求しなかったのはゲーニッツ閣下の自業自得でしょうに……)

 とても口に出せないが、バルゼーは内心呆れていた。

(アゼルメニアのことは情報局から大まかな話を俺も聞いていた。超巨大交易惑星。天の川銀河の外縁部に位置しながらも、ワープ航行が可能になっている星間文明のほぼ全てでその名を知らぬ者はいないと言われている。そして、少なくともアゼルメニアには80万年の歴史があり、俄には信じられない話だが、その長い歴史の中でアゼルメニアは武力に屈したことが一度としてないというのだ。ゲーニッツ総参謀長のお考えも理解できなくはない。連中のイオン加速粒子砲は脅威になりかねないからな。だが……)

 バルゼーは取り急ぎゴーランド・ゴストーキアにテレザート星系への進軍を停止させ、外縁部で待機するように伝えてから急いで会議に戻ったが、既に終わっていた。

 会議が行なわれた玉座の間から不機嫌な様子のゲーニッツが出てきて、慌てて追いかけようとしたら、ガイレーン情報局長からデータパッドを渡された。

 その中にはアゼルメニアの詳細な情報が記されていた。

(あのデータが正しいならば、アゼルメニア攻略に集中しようとすれば、我がガトランティスの主力艦隊を投入したとて何年も掛かることは必至。しかもアゼルメニア軍は超新星の残骸による星間物質を天然の要害として用い、ワープ妨害フィールドも使用。それに加えてアゼルメニアは敵艦の無力化と拿捕、及び再運用にまで長けている。要は、我々が攻め入って無力化された艦がほぼそのまま連中の手に渡ってしまうということ。それに……)

 再びデータパッドの中身のことを思い出すバルゼー。

 外見は普通の惑星だったが、アゼルメニアの肝は内部の居住空間。工業と商業が発展した複数の都市と中点に浮かぶ太陽、それを活かした高度な発電技術……。

(技術力は、下手をすれば我々と同程度か、悔しいがそれ以上かもしれない。その上、人口は270兆人を抱える。拿捕した艦など担い手は山ほど出てくるというわけか……ここにばかり構っていたら、我々の「聖戦」における敵である地球人との戦いが鈍化しかねない)

「えぇいクソッ!」

 バルゼーが思考していたら、ゲーニッツはバッと立ち上がりながらそんな言葉を吐いた。

「それもこれもあの忠臣面をしたデスラーが悪いのだ! あやつがあのようなところででしゃばらなければ……」

「……そうだデスラーですよ。あやつが余計なことを言わなければ、カラクルム級の真の力を大帝陛下にお見せできたでしょうに」

「あぁ!まさにそうだ、その通りだ!!あの負け犬め、大帝陛下にあらぬ事を吹き込みおってからに!ラーゼラーもラーゼラーだ!あの文官頭はカラクルム級の真の力を知らないと見える!」

 とはいえ、ゲーニッツはこの銀河の知識について無知だった。情報自体はバルゼーがゲーニッツには内緒でガイレーンから得ていたものだったが、ゲーニッツの機嫌を損ねるような情報はバルゼーとて口にしなかった。言えばよかっただろうか?

「それを大帝陛下に示しておけば……」

 思わずそんな言葉がバルゼーは口から漏れてしまった。「しまった」と思って慌てて自分の口を塞ぐ動作をするが、ゲーニッツはこちらを見ていない、それどころか、バルゼーにとって少し予想と違った言葉が出る。それは自分への八つ当たりかと思いきや、デスラーへの恨み節であった。

「……クソッ。悔しいがあの青虫にわしは先を越されてしまったということか……!」

 そんな時だった。部屋のチャイムが鳴った。

 バルゼーがドアを開けに行くと、

「こ、これは……ミルヴァール様!」

「!?」

 バルゼーの言葉に慌てて振り返ると、そこにいたのはズォーダー五世の三男、ミルヴァール・ズォーダーだった。

「ゲーニッツ、荒れておるな」

「み、ミルヴァール様!これはお見苦しいところを……」

「よい。それにしても聞いたぞ。アゼルメニア侵攻作戦は中止だとな」

「ご存知でしたか……」

「其方の怒りもようわかるわ。デスラーが出しゃばったことで台無しになったのだろう?」

「お恥ずかしいことですが……」

「其方のせいではない。悪いのは父上だ。父上は長兄のマトシュヴァクを喪ってからすっかり弱腰になってしまわれた。私も兄と共に前線に出たいというのに」

「ミルヴァール様、滅多なことを口になさらないでくださいませ。今のが大帝の耳に入られたら……」

「しかし、其方らも不満を洩らしておったではないか?」

「ですが……」

「総参謀長殿。其方がガトランティスに忠義を尽くそうとして、アゼルメニアの侵攻作戦を練り上げていたのは知っている。しかし、其方の作戦には決め手に欠けている」

「ではどうしろと?」

「バルゼー提督。其方の部下の艦隊にはカラクルム級が配備されたな?」

「は、はぁ。そうですが、それが何か?」

「数は?1000隻か?」

「いえ、1984隻です」

「それだけいればあれが出来よう。まだ試しておらんのだろう?」

「アレ、ですか? しかし、まだ実地では……」

「少なくとも標的ならあるではないか」

 そう言ってから、ミルヴァールは口元を釣り上げて笑みを浮かべた。

「アゼルメニアだ」と。

 その恐怖すら感じる迫力にバルゼーとゲーニッツは共に高揚した。

 

 一方、あの軍略会議をズォーダーとガイレーンも思い出しつつ、

「……全く。メーゼライテオにも困ったものだ」

 とズォーダーは溜め息を吐く。

「まぁまぁ、良いではありませぬか。あのデスラーという男の言う通りになりましたからな」

「……確かに良い拾い物をしたな。地球人は諦めが悪い、か……そうでなくては面白く無い」

「それで本音は?」

「……ホッとした。こんなことは公には言えぬがな。地球がああも簡単に滅んでしまっては八百万の神を永遠に知ることが出来なくなるところだった」

「ふむ……日本、でしたかな? 神がそこら辺に転がっている石ころにも宿っている、妙な考え方をする地域だったか、人種だったか」

「確かそうだったな」

 ズォーダーとガイレーンは古くからの友人のようにお茶を飲み交わす。

「……あれからまだ二年か」

「そんなに長い期間断酒など。昔のあなた様を知っていたら考えられませんなぁ」

「あの頃は互いに若かった。無謀なことをして死のうと何度か考えたこともあったな」

「……ゲーニッツにこの事は?」

「言っておらん。余が断酒しておることには気付いておろう。しかし、あの時のゲーニッツの奴め。不貞腐れておったな」

「えぇ。まだ機嫌が治らぬ様子で」

「……やれやれ、あやつは昔からあぁだったな……だが、そんなことは些細なことだ。テレサは、このまま我々が争えば宇宙の終末を迎える、という大いなる予言をしていたな……」

 ズォーダーはすっくと立ち上がり、何かを考えながら部屋の中で徘徊を始めた。

「テレサか……厄介な存在であることは其方も相違ないな?」

「まさしく」

「うぅむ……父上もなんてことをしてくれたものだな……今からもう80年も前になるのか、エンジェンティアでの発掘は」

「その通りでございます」

「あの時父上がすぐにテレサの存在を明かして周知させておったらどうなっていたか……」

「帝国が大混乱に陥っていたかもしれませぬ」

「また1000年前の大銀河の乱みたいな有様は御免だな……」

 そこでズォーダーは徘徊を止め、天を仰ぐ。

「陛下?」

「我がガトランティスの女神が実は二人いたなど、今の民たちにそれを明かしたらやはり混乱は必至か……」

「まさしく」

「ふむ……埋もれたか消されたか……定かではないが、テレサは我々の祖先ガトラザートと深く関わりがあることは発掘記録から既に判明していたな」

「しかし、1000万年前(・・・・・・・)の記録ばかりでは当てになりませぬ。引き続きアゼルメニアに潜入中のスパイにライブラリーの情報を集めさせます」

「……ゲーニッツには黙っておこう。奴ならそれを聞いて余計にアゼルメニア攻略に傾倒しかねんからな」

「せめてオーキ様が居られればゲーニッツもまだ抑えられたやもしれませぬ」

「オーキ……あの男は政争程度で亡くなるべき者ではなかった。その繰り返しなど、少なくともわしが帝位におる間はもう懲り懲りだ。かといって、我らが聖域を侵されたが故の「聖戦」。……少なくともこの戦いを我々はそう呼んでいる、呼んでしまっている。そして、定着してしまった。これを一旦終わらせねばテレサのメッセージになど誰も耳を傾けようとせぬだろう」

「しかし、地球人を絶滅させるのは惜しいかと。ガミラスに至ってはデスラーが味方にいる内に隷属させねば……力とは振るうだけではただの愚かな乱暴者。力を示してこそ敵も民も大帝の名の下に平伏するのであります」

「乱暴者、か……わしの場合は「愚か者」と後世では謗られるかもしれんな」

「何を馬鹿なことを……」

「そうなるやもしれん。わしが目指しているのはこれまでのガトランティスとは全く異なる勝ち方。即ち、地球と地球人をなるべく無傷で隷属させようというのだからな」

「その通りでございます」

「これで将来両種族に反乱を起こされたらその時こそわしは「愚か者」と謗られるだろうよ」

「それは……」

 ズォーダーはガイレーンが持ち寄った茶を啜ってから溜め息を吐いた。

「……あのメッセージの映像を其方も見たであろう? テレサは次元を超えた存在だ。そのテレサがわざわざ地球人とヤマトを指名してテレザートに呼び寄せているのも気になる。実に癪だが、流れに身を任せる他なかろう」

「それが大帝陛下のご意志であれば、私は従うまでであります。しかし……」

「わかってる。こんなのは尊大ながらちっぽけな一人の男の戯言に過ぎん。忘れてくれ」

「御意……」

「引き続き地球とアゼルメニアに潜入しているスパイからの情報に目を光らせるのだ」

「はっ、お任せくだされ」

 そうしてガイレーンは足早に部屋を去った。

 その背中を見送り、ドアが閉まるとズォーダーはこう呟いた。

「……テレサよ。わしがやってることは果たして全て無駄なのであろうか……?」

 天井を見つめながらズォーダーは天に語り掛ける。その答えは期待しない。どうせ返っては来ないのだろうから、と。

 

 ところで、彼らはまだ知らない。

 アルファ・ケンタウリ11の戦いで、メーゼライテオことメーザーが乗っていた機体が惑星の地表に墜落したことを。

 それは地球軍の基地から山を挟んだ北側。

 ガミラスが放棄した基地は地上に露出していた部分こそは破壊されていたが、その地下には南の基地から避難してきた非戦闘員や負傷者、彼らを守るために共に移動した第3大隊と第4大隊の兵士約600名が息を凝らしていたが、彼らからそう遠くない場所に、メーザーは自機を不時着させていた。

 彼は意識を失っていた……。




ご覧のようにここのズォーダーの性格は2202とも旧作とも大きく違っています。
また、ガイレーンも2202から設定を流用しつつ、外観は劇場版「さらば宇宙戦艦ヤマト」版のゲーニッツをさらに老けさせたようなイメージ。

一方で「ゴーガン」というファーストネームを与えてみたゲーニッツのほうはというと、旧作ヤマト2の口髭を蓄えたハゲ親父の方をイメージしてくださいませ。

なお、アゼルメニアという星はこれから登場する予定です(ネタバレ)

一話のストーリーとして長さはどうですか?

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  • 長すぎぃ……
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