心を塞いだ少女と心が焼け墜ちた少年   作:まふゆに狂い始めた少年

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救われたのなら救わなきゃいけない。
消えるはずの命を救ってもらってしまったのならこの使い道など一つしかないだろう。
そうでなければ、この命の価値はないに等しい。


登校、そして目撃

『──君のお姉ちゃん(まふゆちゃん)をよく理解したらきっと会えるよ

 その言葉を言ってミクとか言うあの人影は最初からいなかったかのように消えた。

 

 ──あのセリフはいったいどういう意味なのだろうか。

 今じゃあもう殆ど覚えちゃいないが、小学校の時からまふゆとはよく()()()()遊んでいた()()()けどそれが何か関係するのか? 

 まぁいいか、あの言い回し的にそのうちわかる時が来るだろうし。

 昨日見たいつもの夢と謎の人物との会話で疲れた俺はそのまますぐに眠りについた。

 それからウトウト寝ていると、何やら布団をゆさゆさと揺らされている感じがする。

「ん……おはよう、()()()

「うん、おはよう夏人(なつと)。もうすぐ7時だよ?」

 そう言いながら少しだけ()()()()()()で俺を起こしに来た少女、朝比奈まふゆはこの家の主(実際はまふゆのご両親だけど)である。

 本歳17歳、だったはず。

 

「もうそんな時間か……今起きるよ」

「うん、……先に学校行ってるね?」

「ん。わかった」

 

 まふゆはそう言って俺の部屋を閉じた。

 ……起こしてもらったし準備しよう。

 眠たい瞼を擦りながらようやく慣れてきた神山高校の制服に袖を通す。

「……やっぱり、気が重いなぁ」

 でも、これが今の俺やるべきことなんだしがんばろう。

そうだな、オレ(相棒)

 

「あら、おはよう夏人くん。よく眠れたかしら?」

 

 部屋から階段を降りるとまふゆのお母さんが呼びかけてきた。

 俺は15歳の三月、つい先月にある事情で家も家族も消えてしまった時、ほぼ死にかけだったところをまふゆのお父さんに助けられて以来、御厚意でこうして居候させてもらっている。

 ただ、()()()()()()()()()()()()だけど大丈夫だろう、多分。

 

 ──助けられたのなら、それ以上に恩を返さないといけないのだから。

「はい、それなりにはちゃんと眠れましたよ」

「それはよかったわ~」

 うふふ、とまふゆのお母さんが笑う。

「夏人くんはうちでの暮らしにはそろそろ慣れた?」

「そうですね、そろそろ二ヶ月位も経ったのでだいぶ慣れてきました」

 当たり障りのない会話をベラベラとしつつ、お母さまが作ってもらった朝ごはんの食パンとハムエッグを頬張ると旨味が口の中に広がり幸福感を運び込む。

 つまり、美味いってことだ。

 しばしのモグモグタイムを堪能していると、まふゆのお母さんが()()()()()()()ふと聞いて来た。

「ところで夏人くんは学校生活と上手くいってるのかしら?」

「まぁ……上々、ですかね」

 ここ最近、特に高校入学してからというもの、しつこいぐらいに『友達とはうまくいっているか』『勉強は問題ないか』と聞いてくる。

 特に問題は何もないので上々と答えはしたが……恐らくこの人の実の娘であるまふゆにはもっとしつこく聞いているかもな……

 さっきのまふゆといい、なんか俺がまだ覚えてる頃のまふゆとさっき俺を起こしてきた時のまふゆとは何かが違う。

 あまりそういうのを気にしなくとも大丈夫な問題とはいえ、この奥につっかえる感じのとっかかりが気になる。

 ……今の生活に余裕が出て来たら少し探ってみるか。

 

「それじゃ、そろそろ学校に行ってきます」

「はぁい、いってらっしゃい」

 

 ガチャりと家のドアを開けて学校へ向かった。

 

 

 トコトコと歩くこと二十分、五月特有のちょうどいいくらいの暖かい風に吹かれながら歩く。

 

 人の波に揉まれつつ、昨日の怪現象の事を考えながらぼんやりと歩いていると見覚えのある濃紺と暗めな水色のツートンカラーの少年を見つけると、向こうも同時に気づいたようで呼びながら近寄ってくる。

「おはよう、ナツ」

「ん、おはよー……ふぁぁ」

 すこしウトウトしながら生返事をすると俺と同じクラスのツートンカラーの少年、青柳冬弥は少し心配そうな表情を浮かべた。

「……昨日は寝れなかったのか?」

 ──まぁ、よく寝れはしなかったな。

「まぁ変な夢を見ちゃってな……」

 嘘は言ってないからいいだろう。

 それからは特にたわいのない会話をしていると、目的地である都立神山高校に着いた。

 相変わらずでけぇな、ここ。(個人の感想)

 

 下駄箱で靴を履き替えていると、何やら廊下の方が騒がしい。

 どうでもいいけど見てみようか……

「さっきから向こうの廊下あたりが騒がしいけどなんかあったのか?」

「わからない、ただ、一度見に行く価値はありそうだ」

 

 その騒がしい人だかりを覗くと、その喧騒は廊下の先で生徒と話しているある一人の()()に関することのようだ。

 

「あ、久しぶり瑞希! 珍しいね~」

「おっひさー! いやー担任にさぼってんだからちゃんと補講受けなさいって言われっちゃってさ~」

「あーね! がんばってね瑞希」

「……うん!」

 そう言って女子生徒にはにかんでいる瑞希という少女の目が一瞬こちらを見た気がした。

 いや、そんなはずはないな。

 でも。

 無性に何故かそうだとは言い切れない自分がいた。

「……どうしたナツ?」

「いや……気のせいだよ」

「だといいが……」

 冬弥は少し引っかかるような反応だったのを他所に俺は今日の教科をカバンから机に流し込んだ。

 

「へぇ……あれが()の……」

 少女は得物を見つけたように笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続いたねぇ……朝比奈ァ!が可愛すぎるのと奏の覚悟のガンギマリ具合に戦慄したりよりどっぷりニーゴに沼りましたねぇ……
次回ものんびり待ってもらえると嬉しいです。
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