心を塞いだ少女と心が焼け墜ちた少年 作:まふゆに狂い始めた少年
だから。
ずっと一緒にいてくれる?
(今回のサブタイトルは意図的ですので間違いではないです。)
さっき経験した眩しさを再び体験して瞼を開けると、セカイに行く前にみた豪華な装飾や高級そうな家具がでかでかと主張しているのが見える。
どうやらあの場所から無事に瑞希の家に戻ってこれたらしい。(本人曰く別荘だそうだが)
「無事に戻って来れた……」
「そうだね~。で、初めてのセカイはどうだった?」
感慨に浸っていると横から瑞希が話しかけてきた。
「そうだな、正直滅茶苦茶驚いた。初音ミクが実在するなんて知らなかったし、なによりあの場所は
「ッ!?」
俺がそう言った時、僅かに瑞希の瞳が揺らいだようにも感じたけど多分気のせいだろう。
「……初めてなのにそこに気付けるとはやるねぇナツ」
「……幾ら初めての経験で気が動転してても
──正直、あの場所はこの世の歪みを全部混ぜた様な異質さが肌に感じるレベルのナニカが確かに存在した。
一体何が起きればあんな風に変わるんだろうか?
あの時、確かミクが言っていた事といえば……
『セカイは誰かの願いが元になって出来ている』
「おーい、そろそろ帰らないといけないんじゃないの?」
そう、彼女は誰かの願いによって創られていると言っていた事を思い出していると俺の右横から瑞希がプクーと見つめてくる。
「ん、どうした瑞希?」
「やっとこっち見た! そろそろ帰らないとなんでしょ?」
あ、そうだった。
「ああ、そうだった。ありがとう瑞希」
「それは大丈夫だよ~(なんというか天然って程ではないけど抜けてるなぁ……)、それとナツは今日の夜って空いてる?」
今日の夜か。
多分夜の十時までは
「今日の夜は深夜なら義親の目をごまかせば空いてるが……」
「よし来た! それじゃ時間になったらニーゴのナイトコードに招待するね~」
「了解した、それじゃまた夜に」
「うん、またねー」
俺は瑞希に手を振られながら瑞希邸(別荘)を後にした。
「……それにしても、まふゆから聞いてはいたけどナツって何者なんだろう。あのセカイの異質さに直ぐに気付けるなんてね……少し調べてみようかな」
「はっ、はッ……」
ちょっとだけ急ぎ足で家まで駆けて行く。
すれ違う人達が皆制服なことから今は学生の帰宅ラッシュなのだろうと、走りながらスマホを取り出す。
門限は五時、現在の時刻は午後四時三十分、そしてここから家までは大体二十分。
これから推察される答えは……
「もうちっとだけ飛ばさないと余裕が無いなぁ!」
トモに力を入れて風を切る様にかっ飛ばした俺は一応我が家である朝比奈家に走った。
「た、ただいま……」
息切れ切れだけど何とか門限までに帰宅できたぜやっほいといった感じで玄関を開ける。
いつも通り手洗いうがいしてリビングに行くと、まふゆのお母様は台所で晩御飯の準備をしてるらしい。
どうやら遠目からちらっと見たところ今日の晩御飯はカレーらしいので今日はちょっと元気になれそうだ。
扉を開けた音に気が付いたのか、まふゆのお母様が料理の手を止め振り向く。
「あら、お帰りなさい夏人くん。今日は珍しく遅かったけど……なにかあったりした?」
──またか。
いつもこの人は少しでも帰宅がいつもより遅めだと過剰に理由を聞いてくる。
「今日は学校に居残って友達と勉強してたら結構遅くなってしまっただけなのでお気になさらず」
俺はそう言いつつソファの傍に一旦荷物を置きつつ返す。
「そう……ならいいけど、
そしてよく枕詞のように言ってくるこの一言。
「もう今年で16歳になるんですから、その辺はきっちりわきまえてますので大丈夫ですよ」
ケラケラと笑いながら夏人が誤魔化すとまふゆのお母様は一瞬反応に遅れたような感じはしたが、それもそうねと言ってまふゆのお母様は笑った。
まぁ目は笑っているようにはとても見えないが。
まるで子供を都合のいい
全くもって反吐が出る。
まぁそんなことは置いといてだ。
「今日はカレーですか?」
「ええ、今日はカレーの気分なのよ~」
「なるほど……(そこは気分なのか……)」
そんな感じでたわいのない話をしばらくして、俺は自室に荷物を持って行った。
「それじゃ、今日もちゃっちゃと終わらせよう」
いつも通りの
机の横に鞄を掛けて、数学の用意と今日の宿題をほとんど飾りっ気がない机の上に引っ張り出す。
宿題と予習をするためにノートを広げた。
小一時間後……
宿題を十分程度で片付け、明日の授業の数学の予習をしている。
「えーと……これはこの計算式を当て嵌めて、んでこの解をここに代入すれば……よし、ビンゴだ」
……俺の生みの親はさぞ頭が良かったんだろう、会うことは少なくとも今世では絶対できないのが少し残念だけど。
まぁいっか、今は目先の事に集中しよう。
後は明日の用意をすれば今日はもう寝る準備完了だ。
「もう終わってしまった……骨がないというか何というか……」
俺がそう言ったタイミングでコンコンと扉をノックする音が。
「夏人くんごはんよー!」
どうやら声の主はまふゆのお母様のようだ。
ふと時計の方に視線を向けるともうすぐ19時になろうかというところだった。
「あ、はい今行きます!」
トテトテと二階の階段を降りるとリビングにまふゆのお母様とお父様、そしてまふゆもいた。
「それじゃあ夏人くんも降りてきたことだし、ご飯にしましょうか」
「ああ、頂きます」
「いただきます♪」
「頂きます」
上から順にまふゆのお母様、父親、まふゆ、そして俺である。
食器に盛られたカレーライスをスプーンで掬い、そして口にほおる。
美味い、美味すぎる。
こういうところは一流の料理人並みの腕前なのがなぁ、
才能の塊という面ではまふゆは母親に似たんだろう、とぼんやりとモグモグしながら時々まふゆをちらっと見つつ思う。
とにかくこの美味すぎるカレーライスをガツガツと食べた。
「ご馳走様でしたッ!!!」
結局お代わりを二回して食い切りました。
俺が食べ終わる頃には既にまふゆのお父様は自分の部屋に戻っていた、早すぎんだろ……
「ご馳走様、美味しかったよお母さん♪」
まふゆが席を立ちながら
まぁ? 可愛いのは変りねぇから俺個人としては悪くはないなと思う。
「お粗末様でした~、夏人くんがいっぱい食べてくれて
「……っ、大変美味しかったのでつい手が止まりませんでした」
「あらあら、お世辞が上手なのね~」
「夏人ってあんなに沢山食べるなんて知らなかったな、なんだか可愛かったよ♪」
だまらっしゃい、その顔の良さで笑うんじゃねえ恥ずかしい。
本心なのかその場の誤魔化しなのか分からんから困る。
俺は後ろでニヤニヤしている母娘達から逃げる様に自分に部屋に逃げ込んだ。
「……ナツ」
リビングの扉を閉める直前にまふゆに呼ばれたような気もするが気のせいだと思っておこう。
「あの顔の良さで揶揄われるのは心臓に悪いんだよ……」
部屋の扉を閉めて一息つく。
さて、25時まで何をしようか。まぁ22時までには風呂に入らないとだが。
コンコン。
優しめのノック音、多分まふゆだな。
「夏人、ちょっといい?」
「ん……入ってもいいぞ」
その返事を聞き切る前にガチャリとドアが開けられると同時にさっき笑顔で揶揄ったまふゆが
なんだ、これは。
俺の
「ねぇ……今日誰かと会った?」
思い返せば、これは昼休みの時に瑞希が言ってた事と符合する。
「まぁ……会ってないかと聞かれたら会ってるが……、なんか問題があるのか?」
俺が疑問を抱いているニュアンスで答えるとズンズンと俺に近づいてくる、無言で。
「待て、何故無言で近づいてくる。なんかまずいこt」
「問題ではない、けど知ってる人の匂いがした。それと」
「貴方、瑞希に何か言われた? 」
それを聞いた瞬間、ぞわっと背筋が凍った。
知ってる筈の声なのだが。
どこか底冷えしているようにも見えた。
「さぁ……確かに瑞希ってやつに目は付けられたが……って待てや。なんで瑞希って知ってんだ」
「昨日瑞希が話しに行くって言ってたから」
あんのポンがぁ……
やるなら見つからんようにやるとか思わなかったのか……?
「……そういうことだから、25時になったら私の部屋に来て」
「お、おう……分かった」
何がなんだか分からんがとりあえず約束の時間になったらまふゆの部屋に行く約束を取り付けられた。
頭使って飯食った後のお風呂は気持ちいいぜぇ!! ーFooooooooo!!
と言う訳で、あの後ちょっと休んでから速攻で風呂でスッキリした後、記憶がない俺に残っている数少ない習慣の瞑想をして約束の時間になりました。
戸籍上は家族とはいえ、女子の部屋に入るのは凄く緊張するなとプルプルしながらもまふゆのお母様に感づかれないように扉をノックする。
「……入るぞ」
「……鍵は開いてる」
俺はガチャリとまふゆの部屋に入った。
俺の部屋とは違ってかわいらしい家具などが色々置いてあり、部屋らしい部屋である。
まぁ俺が欲が薄いからこれ買ってとも言わないからなのは言わない約束。(そもそも居候させてもらってる身でそんなもんねだれないが。)
「……待ってた」
まふゆはさっきと同じく無表情で俺に言った。
さっきの一件と言い違和感のオンパレードもいいとこだ。
「さいですか、それで俺をここに呼んでどうするんだ」
「多分、瑞希が一度やってるとは思うけどこの曲で
ああ、今日行ったセカイの事か。
「分かった」
「けど。その前に……ねぇ、
何時もは使わない呼び名でまふゆは問いかける。
「瑞希が多分言ってるだろうけど、今の私は味も感情も良く分からないの」
「っ、そうらしいな」
何が原因かは今なら十中八九判るが、ホント何してくれてんだまふゆのお母さんは。
「それでね、ナツにお願いしたいことがあるの」
まふゆはおもむろに俺の傍に近づき、手を繋いで俺の紅い髪越しから眼をじっと見つめながら語る。
「私を、助けて。
彼女の目から声なき苦しみがありありと伝わってくる。
――だから、今度こそ。
「どれだけ時間がかかってでも、お前を助け出す。必ずだ」
それを聞いたまふゆはどこか満足そうというか嬉しそうな雰囲気だった、女の子の気持ちは良く分からん。
「それじゃ、行くよ」
「ちょっ…」
有無を言わさず俺は再びあの真っ白い光に覆われた。
「はっ、はぁ……二度目でもまだ慣れないな……」
という訳でやって来たこのセカイ。
フラッシュバン喰らったような眩しさから急に異世界に飛ばされんのはどうにかならんかったのだろうか?
「ナツは何時もこの時間にはもう寝てるから仕方ない」
横からド正論をぶっこんでくるまふゆに何も反論ができない、ちくせう。
「まぁこの時間は一応寝てるのは事実だな」
基本悪夢見てるから厳密には寝れてないから、
と駄弁っていると見覚えのあるピンク髪と白よりの銀髪の少女が話し合っているのが見えた。
「あー!やっと来た!」
遅いぞーとやや不貞腐れた?感じに訴える瑞希。
「今度なんか奢るから許せ」
そういうことならと言わんばかりの表情で瑞希は納得したポーズを取った、絶対高いやつ奢らせてやると思ってそうな表情で。
……あんま高いのじゃなきゃいいな…
「んで、夕方ぶりですね、Kさん」
放課後に来た時に話したKさんにぺこりとお辞儀する。
「ど、どうも……」
何故かどこかよそよそしい感じで挨拶するKさんの視線の先を見ると、俺の後ろにまふゆが立ってた。
凄みのある笑顔で。
ありゃ誰が見てもびっくりするって。
「うわぁ……、がっつり威嚇してるじゃん。で、アンタが噂のまふゆの幼馴染?私は東雲絵名。えななんでいいわよ」
と何気ない感じで初めて見る人、東雲さんが話しかけてくる。
「俺は夏人だ、気軽にナツと呼んでくれ、えななんさん」
……握手をとも思ったが、後ろからのプレッシャーもとい圧がシャレにならんので置くことにした。
「……絵名?」
ほらな?
「だぁー!その圧を掛ける話し方で寄るんじゃない!アンタの幼馴染を取って食おうなんと思ってないからそんなに怖い顔しないの!」
「分かってるなら、いい」
スンッ、とあふれ出てた圧が霧散した。
関和休題。
「それで?ナツをニーゴ加入させるのは別にどっちでもいいわ、やるんだったら何かしら手伝ってもらうことになるけど、まふゆ達は異論はない?」
絵名が奏達(まふゆからこっそり教えてもらった)に聞くと全員特に反論は無かった。
「んでナツ。アンタには聞いておかないといけないことがあるわ、この先どんなことがあっても
そんなもの。
とっくに決まってる――!
「当たり前だ、やってやるさ存分に」
「……合格よ、こき使ってあげるから覚悟なさい!」
「お手柔らかにお願いします……」
とまぁそんな感じでメンバーに自己紹介を終えた。
それからは瑞希達のそれぞれの役割などを聞いたりして今日はお開きになった。
お待たせいたしました、えななんとまふゆサンにエンカウントしました。
補足ですが、何故まふゆが原作よりよくしゃべっているのかと言うと幼少期にナツがあることをしたためであります。
因みに今回作家人生で最も文字数が多い回となっております。
お楽しみくださいませ!