仮面ライダーシノビ(ビルド) × 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ~夢が始まり、虹が咲く場所~ 作:ラビラビfom
初投稿です 。
前日談0-1話
よろしくお願いします。
0-1話 ~プロローグ~
「これで最後だ! エボルトォォォォッ!」
幾度となく立ちはだかり、数え切れないほどの命を奪ってきた地球外生命体―エボルト。
その怪物を打ち倒すため、桐生戦兎と万丈龍我は、最後の力を振り絞って立ち向かっていた。
「この俺が滅びるだとぉ!?」
エボルトの身体から、黒いエネルギーが吹き荒れる。大地が震え、空が軋み、周囲の景色さえも歪んでいく。
「そんなことがあってたまるかぁぁぁぁぁっ! 人間どもがぁぁぁぁぁーーーっ!!」
だが、その叫びも、二人の決意を揺るがすことはなかった。
すべてを懸けた一撃が、エボルトの巨体を貫く。
爆発的なエネルギーが辺り一帯を包み込み、長きにわたる戦いに、ついに決着がついた。
こうしてエボルトは倒され、戦兎によって新たな世界が創られた。
スカイウォールの存在しない世界。
日本が分断されることもない、平和な世界。
そこでは、旧世界の住民たちもまた、別の十年を生きてきた人々として存在していた。
失われたはずの平穏。
それは、戦兎がすべてを懸けて手に入れた、未来だった。
思えば、ここまで来るのに、過酷な日々だったと思う。
殺人の容疑をかけられた脱獄犯、万丈龍我。
そして、天才物理学者、桐生戦兎。
二人が出会った、あの日から始まった。
仮面ライダービルドの物語。
北都との戦争。
西都との戦争。
地球外生命体との戦い。
あの戦いで、無数の人々が命を落とした。
失われたものは、二度と戻らない。
本来なら、それが現実のはずだ。
その常識を壊し、創造したのが戦兎だ。
それが新世界。
スカイウォールは存在しない。
かつての戦争も、怪物も、仮面ライダーも存在しない。
誰もが平和に暮らせる、優しい世界。
その世界に、俺はいた。
何も知らず。
何も思い出せない。
ただ、取り戻された日常を生きていた。
――あの日までは。
新世界が創られてから、数か月が経った頃、地球に再び巨大な脅威が現れた。
エボルトの兄にして、地球外生命体キルバス。
彼は弟を狩るためだけに、宇宙の彼方からこの星へとやって来た。
「さあ……エボルトを狩るかァァァァァッ!!」
赤黒い殺意をまとい、キルバスは高らかに叫んだ。
その圧倒的な力を前に、地球は再び滅亡の危機にさらされる。
だが、かつての敵であるエボルトが蘇り、万丈龍我と共闘するという、誰も予想しなかった事態が起きていた。
本来ならば、決して交わるはずのない二人が、地球を守るために並び立つ。
「愛と平和を胸に生きている俺は……負ける気がしねぇ!」
万丈が拳を握り締める。
「ダブルサイド!」
その場に力強い音声が響き渡った。
「Ready go!!」
二人の力が重なり合い、漆黒と紅蓮のエネルギーが渦を巻く。
『マッスルギャラクシーフィニッシュッ!』
クローズエボルとなった万丈が、キルバスへ向かって跳躍した。
全身にみなぎる力を、必殺の一撃へと変える。
「まだ分からないか?」
迫りくるキルバスを見据え、エボルトは語る。
「人間だから、お前を倒せたんだよ」
渾身のライダーキックが、キルバスの身体を正面から打ち抜いた。
「チャオ!」
次の瞬間、凄まじい爆発が巻き起こる。
キルバスは断末魔を上げる暇もなく、閃光の中へと消えていった。
こうして、キルバスは倒された。
戦いが終わった後、エボルトは失われた力を取り戻すため、地球を去ることを決めた。
「しばしの別れだ」
「二度と戻ってくるんじゃねぇ!」
万丈の怒鳴り声を背に、エボルトは怪人態のまま宇宙へと飛び去っていく。
この事件により、旧世界でネビュラガスを浴びた者だけが失われていた記憶を取り戻したのだ。
氷室幻徳。
猿渡一海。
滝川紗羽。
石動美空。
仮面ライダーとして、又は共に戦ったものたち。
そして――俺、星奈直大もまた、その一人だった。
◇
「っ……!」
突然、頭の奥で何かが弾ける。
これまで一度も思い出したことのない光景が、濁流のように脳裏へ押し寄せてくる。
数え切れないほどの戦いと、失われていった命。
「この記憶は……!?」
荒い息が漏れる。
どうして今になって、こんな記憶が――。
俺は混乱したまま、教室の窓へ視線を向けた。
窓の外には、見慣れた街並みが広がっている。
だが、そこにあるはずのものがなかった。
「……ない」
声が震える。
「スカイウォールが……ない」
俺の知っている世界では、窓の外を見れば必ず目に入った巨大な壁。
日本を三つに分断し、人々の生活を、心を、そして運命を隔てていた壁。
それが、どこにも存在していない。
ということは――。
「ここは……戦兎が言っていた新世界、なのか……?」
しかし、それだけではなかった。
俺の中には、これまで過ごしてきたこの世界の記憶も同時に存在していた。
この学校での日々。
友人たちとの会話。
何気ない毎日。
どれも確かに俺の記憶だ。
それなのに、その記憶とは別に、もう一つの人生までが突然、俺の中へ戻ってきた。
二つの世界の記憶が、頭の中で絡み合っている。
あまりにも唐突な出来事に、俺はただ立ち尽くすことしかできなかった。
「おーい! なにぼーっとしてんの、直大?」
その時、背後から聞き覚えのある声がした。
「早くしないと、授業始まっちゃうよ!」
ふと振り返る。
そこに立っていたのは、幼なじみの高咲侑だった。
「侑……」
その姿を見た瞬間、胸の奥が大きく揺さぶられた。
気がつけば、俺は無意識のうちに侑の前まで歩み寄っていた。
そして、彼女の肩に手を置く。
「侑は覚えていないのか?」
「えっ?」
「スカイウォールがあったこと。日本が三つの国に分かれて、戦争が起きたこととかさ!」
自分でも、声が上ずっているのが分かった。
侑は驚いたように目を瞬かせると、俺を落ち着かせるように、ゆっくりと言葉を返した。
「ちょっと落ち着いてよ、直大」
そこで初めて、俺は彼女との距離が異様に近いことに気づいた。
慌てて手を離し、一歩後ろへ下がる。
「……悪い」
冷静さを失っていた。
「えっと……その、スカイウォール? 日本が三つに分かれたって……直大、本当に大丈夫?」
侑は困惑したように首を傾げた。
その目には、俺を心配する色が浮かんでいる。
覚えていないのか。
まさか、記憶を取り戻したのは俺だけなのか?
それなら、どうして俺だけが――。
「ほんとに大丈夫? 頭とか打った?」
「……いや、打ってない。多分」
「多分って……」
侑の表情が、さらに不安そうになる。
これ以上話せば、ただの危ない奴だと思われる。
俺は無理やり笑みを作った。
「今のは忘れてくれ。なんでもないから。ほら、早く行こうぜ。授業に遅れる前にさ」
そう言って、俺は教室の扉へ手を伸ばした。
「もう! 直大がぼーっとしてたんだからね!」
「すまん……」
釈然としない様子の侑を連れ、俺たちは教室へ向かって歩き始めた。
※※※
教室へ戻ると、こちらへ駆け寄ってくる少女の姿が見えた。
ピンク色の髪。柔らかな表情。
そして、聞き慣れた声。
「あっ! 侑ちゃんも直くんも遅いよ!」
俺たちの幼なじみ、上原歩夢だった。
その姿を目にした瞬間、俺の足が止まった。
「……」
歩夢……なのか?
生きているのか……?
旧世界の記憶に浮かんだ彼女は、俺の知る歩夢とは違っていた。
けれど、今、目の前にいる歩夢は、確かに笑っている。
何事もなかったかのように。
当たり前の日常の中で。
胸の奥から、熱いものが込み上げてきた。
よかった。
本当に、よかった……。
「ごめん、ごめん。直大がぼーっとしててさぁ」
侑が歩夢に説明する。
だが、俺はまたしても上の空だった。
「って、またぼーっとしてるし。おーい?」
「直くん?」
歩夢が心配そうに俺の顔を覗き込む。
その視線に気づき、俺は慌てて涙を堪えた。
ここで泣くわけにはいかない。
「あっ……いや、なんでもない。ちょっと寝不足気味でな」
「まったく、しっかりしてよね」
歩夢は呆れたように言いながらも、どこか安心したように微笑んだ。
その笑顔を見ていると、さっきまで胸を締めつけていた不安が、ほんの少しだけ和らいだ。
その時、教室の前の扉が開いた。
「おーい! 高咲、星奈。早く席に着くように」
入ってきた教師が、俺たちへ声をかける。
「はーい」
侑はいつもの調子で返事をすると、自分の席へ向かった。
俺もその後に続き、椅子へ腰を下ろす。
教室には、いつもと変わらない授業前の空気が流れている。
誰も、世界が一度滅びかけたことなど知らない。
誰も、戦争も、怪物も、仮面ライダーも覚えていない。
俺だけが、そのすべてを知っている。
けれど今は、考えないことにした。
なぜ自分が記憶を取り戻したのか。
なぜ新世界の記憶と旧世界の記憶が、同時に存在しているのか。
その答えを探すのは、後でいい。
(……今は、考えないようにしよう)
俺は机の上に視線を落とし、静かに息を吐いた。
少なくとも今は、この平和な日常を壊したくなかった。
それが、たとえ仮初めのものだったとしても。
◇
五十分間の授業が終わり、放課後を告げるチャイムが鳴った。
教室中に張り詰めていた空気が一気にほどけ、生徒たちが帰り支度を始める。そんな中、侑は机に突っ伏したまま、大きく伸びをした。
「やっと授業終わった~!」
心の底から解放されたような声だった。
「ねえ、これからどこか行かない?」
侑が顔を上げ、歩夢へと尋ねる。
「えっ? でも、今日はちゃんと復習もしないとだめだよ!」
「分かってるって。でも、今日はどこか行こうよ! ね、お願い!」
侑は両手を合わせ、懇願するように歩夢を見つめた。
その表情に、歩夢はしばらく困ったように眉を下げていたが、やがて小さく息を吐いた。
「もう……分かったよ。今日だけだからね?」
「歩夢、ありがとう!」
ぱっと花が咲いたように、侑の顔が明るくなる。
そのまま侑は、勢いよく椅子から立ち上がった。
「さあ、買い物にでも行こー!」
そして、こちらへ振り返る。
「直大も行くでしょ?」
「あっ……でも、直くん寝不足だから、あんまり無理させちゃだめだよ」
歩夢が心配そうに口を挟んだ。
「あー、そっかぁ……」
侑の表情が、少しだけ曇る。
そこまで気遣われると、こちらのほうが申し訳なくなってくるな。
「いや、気分転換に行くよ」
「本当に大丈夫?」
歩夢はなおも不安そうだった。
「ああ、大丈夫、大丈夫!」
俺はできるだけ明るく答えた。
実際、体調が悪いわけではない。
頭の中に蘇った記憶のせいで、精神的に混乱しているだけだ。
「じゃあ、行こっか!」
侑が笑顔で声を上げる。
俺たちはそれぞれ帰り支度を整え、鞄を手に取ると、学園を後にした。
※※※
ダイバーシティの服屋。
店内には、色とりどりの服が並べられていた。
侑は目を輝かせながら店内を歩き回り、やがて一着の服の前で足を止める。
「あっ、この服可愛いんじゃない!」
侑が手に取ったのは、フリルやリボンがあしらわれた、かなり可愛らしいデザインの服だった。
「侑ちゃんに似合うんじゃない?」
歩夢が微笑みながら言う。
「えー、私にはこんな可愛い服、似合わないよ」
侑は首をぶんぶんと横に振った。
「そんなことないと思うけどなぁ。ね、直くん?」
歩夢に話を振られ、俺は侑の姿を眺める。
「ああ。侑に似合うんじゃないか?」
というより、侑は何を着ても似合う気がする。
もちろん、歩夢もそうだ。
「そんなことないって! さあ、次行くよ!」
侑は照れ隠しのように言いながら、先に歩き出した。
「もう、照れちゃって……」
「侑は、昔から自己評価が低いからなぁ……」
あれだけ明るく振る舞っているのに、自分のことになると途端に自信をなくす。
確か、前の世界でもそうだったな。
その記憶を思い出し、胸の奥がかすかに痛んだ。
※※※
それからしばらくして、俺たちは買い物を終え、店の外へ出た。
侑はすっかり満足した様子で、軽やかな足取りで歩いている。
「今日もいい買い物した~♪」
その周囲には、彼女の気分を表すような音符でも浮かんでいそうだった。
「侑ちゃん、いっぱい買ってたもんね」
「見事に荷物が多くて大変だけどな」
俺の両手には、侑が買った荷物がいくつもぶら下がっている。
持つと言った覚えはない。
だが、気がつけば俺が持たされていた。
……重い。
「あ~、重いな~。重いな~」
わざとらしく呟くと、侑が苦笑する。
「さあ、帰ろっか!」
「うん」
「はいよ」
俺たちはそのままバスに乗り、しばらく揺られた。
窓の外を流れていく街並みを眺めながら、俺は何度も考えそうになった。
ここは、新世界だ。
スカイウォールのない世界。
戦争もなく、怪物もいない世界。
そう思うたびに、胸の奥に蘇った記憶との違いを突きつけられる。
やがて、家の近くのバス停に到着した。
俺たちはバスを降り、見慣れた道を歩いて″高咲家″へ向かう。
玄関前まで来ると、歩夢が足を止めた。
「じゃあ、侑ちゃん、直くん。また明日ね!」
「うん、また明日!」
「ああ」
歩夢に手を振って別れを告げ、俺と侑は家の扉を開けた。
玄関の音を聞きつけたのか、侑のお母さんがすぐに出迎えてくれる。
「あら、侑に直大くん。おかえりなさい」
「ただいま!」
「ただいま帰りました」
俺が頭を下げると、侑の母親は少し困ったように笑った。
「もう、そんなに堅くしなくていいのよ」
「いえ、そんなことは……」
俺は軽く微笑んで答える。
それでも、すぐに言葉遣いを変えることはできなかった。
ここで暮らすようになって、もう二年になる。
それなのに、俺は今でも高咲家の人たちに敬語を使っていた。
~~~
洗面所で手を洗い、うがいをしていると、侑がこちらへやって来た。
何か言いたそうな顔をしている。
やがて我慢できなくなったのか、侑は口を開いた。
「もう、ここに来て二年も経つのに、いつまで敬語なの?」
「いや……こっちは住まわせてもらってる身だし、そういうわけにはいかないだろ」
「ふーん」
侑は、まったく納得していないという顔をした。
俺が高咲家で暮らすようになったのには、理由がある。
二年前。
中学二年の年末頃、俺は家族を事故で失った。
祖父母はいなかった。
頼れる親戚もいなかった。
だから、いずれはどこかの児童養護施設へ行くことになるのだろうと、当時の俺は考えていた。
そんな俺を見かねたのか、侑が自分の両親に掛け合ってくれた。
そして、俺は高咲家に住まわせてもらうことになった。
侑の両親は、ほとんど迷うことなく受け入れてくれたらしい。
俺の両親と仲が良かったからなのか。
それとも、別の理由があったのか。
その本当のところは、今でもよく分からない。
ただ、ここで暮らさせてもらっている以上、俺にできることはしなければならないと思っていた。
※※※
その夜。
自室の窓から、静かな夜空を眺めていた。
今日一日を振り返る。
記憶を取り戻したこと。
侑と歩夢が、平和に生きていること。
それを自分の目で確認できたこと。
前の世界では、二人も、俺も、あまりにも多くのものを背負わされていた。
だからこそ、今こうして何事もなく笑っている二人の姿を見られたことが、心の底から嬉しかった。
「よかった……」
小さく呟く。
この世界が平和だということは、戦兎たちは無事にエボルトに勝利したということなのだろう。
ならば、あの戦いは終わった。
少なくとも、そうであってほしい。
けれど、疑問は残っている。
なぜ、俺だけが旧世界の記憶を取り戻したのか。
記憶が戻った条件。
俺と、侑や歩夢たちとの違い。
「うーん……」
腕を組み、考え込む。
そして、ふと一つの可能性に思い至った。
「あっ……!」
旧世界で、俺はネビュラガスを浴びていた。
そして、その影響によって仮面ライダーになった。
一方、侑や歩夢たちはネビュラガスを浴びていない。
「……だから、かもしれない」
そう考えれば、少なくとも筋は通る。
確かなことは分からない。
それでも今は、この平和な世界が続いてくれることを願うしかなかった。
俺は窓辺に立ったまま、夜空を見上げる。
「このまま、ずっと平和でいてくれよ……」
祈るような気持ちで、そう呟いた。
※ ※ ※
同じ日の夜。
どこか暗い部屋の中で、一人の男が目を覚ました。
明かりのない室内に、男の荒い呼吸だけが響いている。
「これは……」
頭の奥に、忌まわしい記憶が蘇っていた。
思い出したくもなかった過去。
自分が犯した罪。
自分を縛りつけていた、あまりにも醜悪な記憶。
それらが、容赦なく脳裏を駆け巡っていく。
「いやな記憶だ……」
男は額に手を当て、苦しそうに目を伏せた。
しばらくして、乾いた笑みを浮かべる。
「ほんと……最悪だねぇ……」
その声は、暗い部屋の中へ溶けていった。
男は深いため息を吐く。
まだ、何も始まっていない。
世界を揺るがす歯車は、いまだ止まったままだ。
けれど、二つの世界の記憶を取り戻した者たちがいる。
そして、この日を境に、二人の物語が始まろうとしていた。
静かに。
誰にも気づかれないまま。
続く………
初めての投稿なので誤字脱字 があって読みにくかもしれません
誤字などがあったら指摘してもらえると助かります。
書き方も時々変わると思います。
最後にでてきたのは 今作のメインビィランです
まだ本編の前日談 があと数話ぐらいあります
よろしくお願いします。