仮面ライダーシノビ(ビルド) × 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ~夢が始まり、虹が咲く場所~ 作:ラビラビfom
長めです。
あれから、俺は部室の扉前まで来ていた。
「………」
正直、中に入るのが怖い。
恐らく俺は今、酷い顔をしているだろう
それを皆に悟られないようにしないと
無理やりにでも笑わなきゃな…
そして、俺はドアノブに手をかけ、部室へと入る。
「いや~皆すまん。ちょ~っと眠くて遅れたわ。」
「「「……………………」」」
「え、無視? 無視は酷くない?」
「直…大?」
どこか俺に呆気を取られたような様子の皆。
「うん? どしたその、煮詰まった卵みたいな顔して」
「いや……別に。てか何その例え…意味わかんないよ。」
戸惑いながらも、そう述べる侑。
「そうかぁ?」
「まあ先輩の例えは、意味分からない時がありますからねぇ…」
「おいおい。ひでぇなかすみ…」
とりあえず椅子にでもと思い、俺は近くの椅子に腰をかける。すると、その近くにはせつ菜が
「直大さん!おはようございます!!」
「え、あ…おはよう。もう…体は大丈夫なのか?」
「はい!!勿論です!!」
「そっか……」
そんな会話をしている中、かすみがバッという効果音さながら、立ち上がると、
「さて全員揃ったことで今後、これからどうするか話し合いましょう!」
「スクールアイドルフェスティバルは必ず開催する!これに対して、異議のある人はいませんよねぇ?」
その投げかけに「ないよ~」だとか 「モチのロン!」などなどそれぞれ反応を示している。
すると、せつ菜が皆に聞こえないようなボリュームで俺に話かけてくる。
「あの…直大さん…」
「ん?」
「その…気にしないでくださいね。昨日のこと…私がしたくてやったことです。直大さんは悪くないですから。」
「………」
気にするな、なんて無理だ…俺のせいなのに…
こうやって、せつ菜にまでに気を遣われる始末
ああ…ほんと…情けない…
とりあえずここは、せつ菜を気を負わせないためにも、笑顔で応えなきゃな。
そんな風に思っていると、かすみが長い棒みたいので俺たちを指さす。
「はい!そこの2人!何コソコソ話しているんですかぁ!!」
「あ、すみません。」
「全く、大事な大事な討論会議中だというのに。」
「………」
「討論なの?」
「さぁ…?」
かすみの発言に疑問を持つ、侑と歩夢。そんな中、会議は進む。
「…このまま何もしないままなんて嫌なんですよ…」
「だとしても私たちに出来ることなんて限られてるわ。だから今はこのままスクールアイドルフェスティバルが開催されるのを信じるしかないのよ。さっきも言ったけど、まだ噂の範疇なんだから。」
「それは…そうかもですけど…」
「でも、なんでそんな噂が立ってしまったのでしょう…」
ポツリとせつ菜が呟くと桜坂がその疑問に答える。
「やっぱり…シノビさんのことだと思います…」
「うん…やっぱそうだよね~」
「……」
俺が引き起こしたことによってこんなことになってしまった。
俺が皆を恐怖に陥れた、学校を破壊した。そのせいで。
だから、スクールアイドルフェスティバルが中止になるかもしれないという、噂も立つぐらいに、今学園の空気は、不安に彩られている。
宮下が皆へ確認するように口を開く。
「ねぇ…皆あの紙見た?」
あの紙 というのは、恐らく今朝の新聞部の件のことを指しているのだろう
「えぇ…見たわ。昨日のせつ菜のこと、シノビのことについて、色々書かれてたわね。」
「まさか…写真撮られてたなんて、彼方ちゃん気づかなかったよ……」
すると、天王寺がパソコンの画面を皆に見えるようにすると、
「ニジガクの提示版でシノビさん、かなり叩かれてる…」
ネット掲示板といった所でニジガクの生徒なら、匿名で色々呟いたりできる所。主に学校行事の予定を貼ったり、ボランティアをそこで募集したりと、色々活用されている。
うわマジか
もう二度とニジガクに来ないで欲しいわ
結局こいつもヒーローじゃなかったんだな
正義のヒーローだって言ってた自分が恥ずかしくなる
偽善者
その面二度と見せるな
忍者モドキ
などなど
「みんな少し勝手っていうかさ…確かにシノビは悪いことした…と思うよ。でも、何か理由があったと思うんだ。あの時のシノビ苦しそうに頭抱えてたし。」
それは違うぞ宮下。俺が自分を慢心したばかりにこんなことが起こった。前の世界で使いこなしたから、今回もって思って、結局失敗した。
「うん。シノビさんの意志とはちがう気がしたよ!」
エマ先輩…
確かに使った後の俺に意志はなかった。でも、使う前の俺は意志があった。どうなってしまうか分かってたくせに使った。使わない選択だって出来たはずなのに。
「それにさ。今まで、シノビにはいっ~ぱい助けてもらった。その事実は無くならないと思う。だから、アタシはシノビを信じたい。」
結局…それは過去の遺産だ…今してしまったことの帳消しにならない。
「愛ちゃん……」
「そうですよ!!今まで沢っ山助けてもらったんですから。私もシノビさんを信じます!!」
せつ菜…なんでだよ…どうしてそんなこと言えんだよ。俺はお前を殺そうとしたんだぞ…
「大体、この記事~仮面ライダーを悪い方に書き過ぎですよぉ! これじゃ仮面ライダーが悪者ですよ~~って誘導してるみたいですぅ!」
「でも、事実しか書いてない…」
「それは…そうだけど…もお!しず子は、どっちの味方なの!?信じるの!信じないのぉ!!」
「そんなのシノビさんに決まってるじゃん。私だって信じるよ!」
「彼方ちゃ~んも~」
「もちろんわたしも!」
「私だって信じる!ねっ侑ちゃん!」
「うん!」
「私が怪物になっちゃって、諦めそうになった時にシノビさんは諦めないでって。私は1人じゃないみんながいるって。そう勇気をもらった。」
「そんなことあったんだ…」
「うん。だから、信じる。シノビさんは心優しい人だから。」
「全く…あなたたちはお人好しね…フフッ…でもそうね。私も信じるわ。」
「カリン……ホッシーは?」
まだ俺の意志を聞いていない宮下はそう問う。
「え……あぁ…まあ」
俺の返答にかすみは
「なぁーんか。生返事ですけど。もしかしてまだ眠いんですか?」
「そんなことないって…」
「ならいいですけど。さてと想いは固まったことですし、仮面ライダーの汚名返上をしましょう!!」
なんだよそれ…
同じタイミングで疑問に思った侑は呟く。
「汚名返上って言っても何すればいいのかな?」
「そうですねぇ…………あっ、全校生徒に仮面ライダーは悪い人じゃないって言い周るってのはどうですか!?」
「全校生徒って……何人居ると思ってるの。かすみちゃん?」
「………えぇと……」
2年の普通科だけでも、ざっと9クラスぐらいある。
普通科だけでこのクラス数だ。全校生徒とともなると、かなりの数。そもそも、俺も何人いるのか把握していない。
「1000人ぐらいですかね?」
「もっと居るんじゃない?」
大体、1クラス40人前後だ。それだと全学年の普通科だけで埋まってしまう。おそらくもう少しいる気がする。
「全校生徒2439人ですよ。」
「結構居ますね…」
「というか、何でそんなすぐに全校生徒の数言えるんですか!?」
「せつ菜ちゃん。全校生徒の名前と何科か覚えてるんだもんね。」
「生徒会長足るもの当然ですからね!!」
「それにしても、流石にその人数に言い回るのは大変ですねぇ…あ、なら! 新聞部の人に仮面ライダーは正義のヒーローだという記事を出してもらうってのはどうですか!?」
「その場合、今回のことを踏まえて、説得することになるわね。」
「そんなの簡単ですよ!新聞部の人に仮面ライダーが悪い人じゃないことをアピールすればいいんですもん!」
「そんな上手くいくかな~~~」
「でも、アイデアとしてはアリかも。記事で信用を落としたなら、その記事で信用を取り戻せばいい。愛だけにっ!」
そんな宮下に朝香先輩は呟くと桜坂が付け足す。
「そう簡単にいくとも思えないけど」
「まあ…一度失った信用は簡単には取り戻せないですから…」
すると、侑や歩夢が
「でも…何もしないままなんて嫌だ。それにきっと分かってくれるよ新聞部の人達も学園の皆も」
「うん。シノビさんには、何度も助けられたもん。その恩返しがしたい。」
そんなこと…しなくていい…
「よーし。そうと決まれば、新聞部に直談判ですっ!!異議ないですね??」
「彼方ちゃんは~異議な~し。」
やめてくれ…
「りなちゃんボード [OK!]」
皆がそんなことする必要なんてない……
皆、それぞれ反応すると、意見が合致したのか、今にでも行動しそうな勢いで同好会の雰囲気は先程よりも良くなる。
だが俺はそのいい雰囲気を壊すように、皆へ呟く。
「悪いが、俺は反対だ…
どうして皆がそんなことする必要があるんだよ…」
「それは、何度もシノビさんに助けられた。だから」
「だから、恩返しがしたいか…なら、尚更そんなことする必要ないな。」
突然こんなこと言い出した俺に皆、何も言えず、困惑している。
「「「「………………」」」」
「皆にはスクールアイドルフェスティバルがあるはずだ。そんなことに時間を割く暇なんてない。」
俺のことを構う必要なんてない。皆が気にすることじゃないんだ。
「そんなこと、じゃないよ…ホッシー… アタシはシノビのこと皆に誤解されたままなんて嫌なの。」
「誤解じゃない…事実だろ。あいつは 学園を破壊して、せつ菜を殺そうとした。それのどこが誤解なんだよ…」
「でもっ!かすみん達を何度も何度も助けてくれたんですよ!」
「ああ。昨日になる前はそうかもな。でも、もう違う。あいつは助けるどころか傷つけたんだよ。一歩間違えば、人殺し…」
「「「「「……………」」」」」
「俺は…シノビを絶対に許さない…」
それは自分自身の罪を戒めるように。
「直大……」
「…思えばあいつも敵と同じ力を使ってる。同じ穴のムジナだよ………」
「もうあいつは正義のヒーローでもなんでもない…そもそもあいつがヒーローだったかどうかも分からない……だからあんな奴庇う必要なんて────
その時、俺の声に被さるように誰かの手の平と俺の頬がぶつかる、痛々しい音が部室中に響き渡る。
一瞬何が起こったのか 分からなかったが、頬の方から痛みが来ると、ようやく何が起こったか理解する。
「せつ菜……」
俺はせつ菜の方へ向くと、その表情は怒っているようでどこか悲しんでいるような、そんな顔をしていた。
「もう辞めてください…聞きたくないです…」
「…………」
「シノビさんは私を救ってくれたんです。」
「違う…あいつは誰かを救ったきになってるだけ。そんな、自分に酔って、自己満足してる奴なんだよ!!誰も救えちゃいないのに……」
「違わないです!どんなことがあっても彼は、私の…”私のヒーロー”なんですっ!!」
「なのに、どうして…どうして……あなたが否定するんですかっ!!!」
「…………ッ…」
「あいつの何が分かんだよ……何が……何も知らないくせに分かったようなこと言うなよ!!」
違う…こんなことせつ菜に言いたい訳じゃないのに、止まらない。一度湧き上がった激情は止まれなかった。
「……………確かに彼の全てを知ってるわけじゃないです。むしろ分からないことの方が多い。でも、これだけは言えます。彼は誰かの為に戦える、寄り添える。心優しい、正義の…”私のヒーロー” これだけは絶対に変わらないです」
「違う…そんな奴じゃない…そんな完璧じゃないんだよ……」
「何も違わないです。だから…あなたには否定して欲しくなかった…あなただけには………」
せつ菜は、眼に涙を麗せながら、悲しそうに言う。
「……………」
そんな、せつ菜を見て、俺は何も言い返せず、俯くしかなかった。
そして、せつ菜は込み上がる涙を拭いながら、この部室を出て行ってしまった。
「…………」
「せつ菜ちゃん!!」
そう言いながら、出て行ってしまったせつ菜を追いかける侑。
「…………」
俺は追いかけるなんてことはしないで さっきと変わらず俯くだけ。
(ほんと最悪だな俺は…せつ菜を悲しませるなんて。ほんと…)
すると、歩夢が俺に近づく。
「直くん…もしかして直くんは───「…悪い。ちょっと…頭冷やして来るわ……」
俺は何か言おうとする、歩夢を遮り、そう告げると この部室からそそくさ逃げるように出て行った。
きっと一刻も早くこの場から出て行きたかったんだと思う。苛まれる罪悪感。それとここにいたら、俺はもっと酷いことを皆に言ってしまうと思ったから。
『あいつはもう正義のヒーローでもなんでもない。』
『”私のヒーロー”なんですっ!…どうして……どうして…あなたが否定するんですかっ!!!』
『何も知らないくせに分かったようなこと言うなよ!!』
私は、先輩とせつ菜さんの言い合いに何も口を出すことも出来ず、ただ見ていることしか出来なかった…
やがて、せつ菜さんも先輩も部室から出て行ってしまった。
侑先輩は、そんなせつ菜さんを追いかけた。
残された私たちの空気は重い。皆、さっきの先輩とせつ菜さんとの言い合いに呆気を取られたように。
思えば昨日も先輩の様子はおかしかった。そして、今日先輩が部室へ入って来た時も、どこか違和感がした。何か取り繕うような。きっと皆も何か感じていたと思う。
重苦しい空気の中、愛さんが呟く。
「ホッシー…の怒ってるところ…初めて見た…」
「うん...」
「直大先輩…どうしてあんなに仮面ライダーのこと…」
「何か…知ってるのかもしれないわね…彼…秘密が多いから…それに…」
「果林ちゃん?」
何か言いかけて辞める果林さん
「いや、なんでもないわ。」
「………………」
今日の先輩、まるで自分を責めてるように感じた。
昨日もそうだった。
『俺はまだ本当の自分ってやつをさらけ出せてないんだ…』
前に先輩はそう言っていた。
本当の自分………もしかして先輩は…
直接…聞かなくちゃ…それに今行かないともう先輩と二度と会えないような気がした。
私は鞄から昨日先輩の落とした物を手に持って、部室を飛び出す。
「………………」
ほんと時間が経つにつれて自分が嫌になる。
せつ菜に皆に酷いことを言って傷つけた。
あんなせつ菜の悲しんでる顔初めて見た…そんな顔させたくなかった。悲しませたくなかった。ただ笑顔でいて欲しかった。
それを壊したのは俺だ…
きっとあいつにとって、俺がヒーローだったんだろう…俺にとってのヒーロー、戦兎たちのように。
でもそんなこと言われる資格なんて俺にはない…
自己嫌悪に苛まれていたその時、ある声が
「先輩っ!!」
俺を先輩と呼ぶのは、かすみか桜坂だけだ。おそらくこの声は、桜坂だろう。こんな俺をまだ先輩と呼んでくれるんだな…でも…
俺は桜坂に応対せず、ただ足を運ぶのみ。
「待ってくださいっ!先輩!」
そう言って、俺の腕を掴む桜坂。
「離してくれ、桜坂…」
「なら、私の方を向いてください!」
「……………」
「たとえ向いてくれなくても、無理やり話します。先輩が
「………何言いたいのか分からない…」
「…まだ、誤魔化すんですね。では、これを見てください。」
そう言って桜坂は何かを俺に見せる。
「それは……………何で桜坂が…」
桜坂が持っていたのはハザードトリガーだった
「昨日、先輩が落としたのを拾ったんですよ」
「そっか…」
昨日となると、俺が保険室に向かったあの時か…
「これ、確か昨日シノビさんが持っていた物です。それをどうして、先輩が持ってるのか分かりませんでした。」
「………」
「前々から先輩が
桜坂が言うよりも先に俺は否定する。
その先の言葉を言わせない為に
「なら…どうして、自分を責めるように言ってたんですか!」
「…………」
俺自身が引き起こしたことだから…
「俺は自分が許せないんだよ……せつ菜を、みんなを守れなかった…何も出来なかった…そんな自分が…」
「先輩…」
「俺は……弱い人間なんだよ……一人じゃ何も出来ないくせに…見栄を張って自分は出来ると思い込む…それで結局失敗する…」
旧世界でもそうだった…
一人で勝てる訳でもないのにエボルトと戦った結果、歩夢を失った。
そして、今回も制御出来ると思い込んで、結局失敗した。
みんなを傷つけた。
「……」
桜坂はきっと気づいてしまったんだろう…
だからといって、巻き込ませない。もうこれ以上絶対に。
「兎に角…もうシノビに関わろうとするな……危険だから……皆にも…伝えといてくれ…」
俺は桜坂からハザードトリガーが受け取りこの場から逃げるように歩きだした。
「……………先輩っ!」
桜坂はそれでも俺を呼ぶでも、俺はもう振り返ったり、立ち止まることはしなかった。
「………」
家に帰ろうとも思えず、ただ宛もなく、お台場の町を歩いていた。
そんな時、自分のスマホから、あるメッセージが届く。それは戦兎からで、俺に渡したいものがあるらしい。今からnasitaへ来れるか?とのこと。何でも今、戦兎はnasitaで一息しているのだと。
宛もなく、歩いていた俺は当然ながら了承し、その場所まで足を運ばせた。
やがて、nasitaの入口前まで来た。
ここは、あんまり変わってないな。
かつての戦いでの拠点であり、ここへ来るのも大分久しぶりだ。
そして、扉に手をかけると、その中へ入る。 入ったと同時に、女の人の 「いらっしゃいませ!」の声が耳に入る。
その女の人は美空さんだった。
すると、俺に気づいたのか
「って直大くんじゃん!」
「あぁ。どうも…」
「凄い久しぶりじゃない?」
「ですね。」
ふと、 辺りを見回すと、まあまあの数のお客さんが座っている。
すると、ある男性の声が聞こえる。
「おっ、来たか。直大こっちこっち」
そう言って俺をこちらへ来るように言う戦兎。
俺は、カウンター席に向かい、戦兎の隣の席に座ると、カウンターで店番をしている男性が戦兎に尋ねる。
「知り合い?戦兎くん。見たところ高校生かな。歳離れてそうだけど。」
戦兎くんと呼ぶのはこの店のマスターであり、石動惣一。かつて、地球外生命体エボルトに体を乗っ取られ、利用された。
恐らく、歩夢たち同様、前の世界の記憶はないと思う。
なら何故こんなに戦兎に対して親しそうなのか。おそらく、名前を覚えられるぐらいにここに通っている常連なのだろう。それに加えて、娘の美空さんとも親しいのだから。
「まあ戦友と言ったところか?」
「まあ。」
「え、戦友? もしかして、戦兎くんも君もよく喧嘩してるなぁ…程々にしときな…」
「は、はあ…」
どこか勘違いしている様子のマスター。
「あ、そうだご注文聞いてなかった。どうする?」
「あーえぇと…」
「俺と一緒ので」
「え、あちょっ…」
戦兎が飲んでいるのはコーヒー。そうあのコーヒーだ。
「安心しろ。前の世界とは全然味が違う」
ほんとかよ、と思いながらもコーヒーを待っていると。
「はい。おまたせ、nasita特製ブレンドコーヒー。」
「どうも。」
コーヒーを受け取り、いざ、飲む。
「うまい……」
「だろ。豆から作ってるらしいぞ。なっマスター」
「お、聞いちゃう? いかにしてこのコーヒーを作っているか。それはそれは茶色~い。新鮮な豆を────「もうお父さん!その話何回目だし!」
「何言ってんのまだ408回目だって!」
「多すぎだしっ! ごめんねぇ~ お父さん裏に連れてくから。あとはごゆっくり~」
「あはは…」
なんか、和むな。それにしてもマスターって本来あんな感じだったのか…
「少しは、表情柔らかくなったな。」
「え?」
「入ってきた時、どこか険しい顔してた。まるで自分を責めているようにな。」
「……」
やっぱり気づかれてたか。そんな顔をしているのか、どうか。自分では分からない。桜坂に続き戦兎までに言われるということは、かなり酷い顔しているんだろうな。
「何かあったのか?」
「まあ……」
俺はハザードトリガーを机に置いた。
すると、戦兎は驚き、何があったのか察する。
「スカイがある設計図を元に作ったのを俺に渡したんだ。」
「なるほどな。」
「………結局…俺は何も守れなかった…何一つとして…」
「それどころか…壊したんだ…」
「壊した…」
「学園を壊しかけた。いや一部は壊れてる。俺が奪った、裏切ったんだよ……皆からの信頼も平和も全部…全部…」
「直大…」
結局あの頃から俺は何一つとして、変われてない…何も学ばない、進歩しない…どこまでも…愚かだよ俺は……
「俺はさ…戦兎のような、正義のヒーローになりたかった…誰かの明日を皆を守れるそんなヒーローに…」
「別に俺だって全て守れるわけじゃない…救えなかった命も多勢あった…自分を見失ったこともある。」
「ああ。知ってる…それでもなりたかった…」
間近で見てきた。だからこそ…
「俺がさ、人を殺めずいられたのは直大のおかげだ…」
「別に…俺じゃなくても誰かが…」
きっと止めてた。俺なんか居なくたって…
「どうだろうな。あの時あの場に居た。他の誰よりも…直大にしか止められなかったのかもしれない。って思う。分かんないけどさ…」
「そんなことない…」
「それでも感謝してるんだ。…俺がこの力を正しいことに使ってこれたのは。直大や万丈、美空達かけがえのない仲間のおかげだから…」
「仲間……」
「直大にもいるだろ。俺らとは別の仲間が…」
「ああ。でも……」
俺にも仲間と呼べる同好会の皆が居る。いや…居た…
その仲間を俺が裏切った…傷つけた…
もう皆の近くにいる資格なんてない。
「直大はさ…俺になりたいのか?」
「ああ。なりたいよ!」
なりたかったよ………
「いいや無理だ。お前じゃ俺にはなれない。」
「……っ…」
「勿論、俺も直大にはなれない。皆一人一人違う”個”を持ってる。全く同じになんて誰もなれやしない。」
「……………」
「そんな”個”が集まって不可能だったことも可能に出来る。俺が…いや皆で倒したエボルトみたいにさ。仲間が居ればきっと何でも出来るんだ。だから頼るんだよ仲間を。直大だって頼っていい。つらいこと悲しいこと何でも一人で背負い込まなくていいんだよ…」
頼る…俺が皆に…
無理だ…俺は皆を傷つけた、裏切ったんだぞ。そんな俺がつらいから、皆を頼る。そんなの許されるわけない。許されるわけがないんだよ。一度過ちを犯した奴は一生その十字架を一人で背負うしかしないんだ。
でも、やっばり
「やっぱり戦兎はすげーな………これで完全に分かったよ…俺は戦兎のようになれないその通りだってことが…」
「直大…」
「今日はありがとう。おかげで今すべきことが分かった…」
俺は取り繕うように笑顔で感謝した。そして、立ち上がり、戦兎に背を向け、歩きだす。
「待て!直大!」
俺はもう後ろは振り返らない。
「直大…」
直大がnasitaを出て数十分、俺は一人考え込むようにコーヒーを飲んでいた。
きっと直大は分かってない。あいつは何かやろうとしてる一人で。
俺は直大に投げる言葉を間違えたのか…
分からない…
でも、あれは本心だ。直大にはもっと誰かを頼って欲しい。背負い込まないで欲しいんだ。
あいつがここまで思い悩むのは、きっと俺のせいでもある。あの時もっと早く行けば歩夢ちゃんを救えたかもしれないのに。救えなかった。
俺が考え込んでいると、裏から出てきた美空が話しかけてくる。
「あれ? 直大くん帰っちゃったの?…」
「ああ。」
「やっぱり何かあったんだ…」
「美空も気づいてたのか…」
「気づくよ。前の世界でずっと、皆を見てきたんだから…」
「…そうだな…」
「私たちに出来ることってないのかな…」
「さぁな…でも、あいつの心を救えるのは、もしかしたら俺たちじゃなくてきっと…」
あの子たちなんだろうな…
「でもさ、きっと大丈夫だよね…直大くん…」
「ああ。信じるしかない。直大を…」
あいつ…ほんとは強いんだ。自分では気づいてないのかもしれないけど。
どこまでも強い。普通、あんなことがあったら、二度と戦うなんて出来ない。それでもあいつはたとえどんなことがあっても何度も何度も立ち上がった。
だから俺は俺で今出来ることをする。
あれから、空が暗くなってからやっと家へ帰宅した。
「あ、直大帰ってきた…」
玄関が開いた音が聞こえたのか、慌てるようにこちらへ来る侑。
「ごめんな…さっきはどうかしてたよ」
「別にいいよ。こうして帰ってきたんだから…」
優しいな…侑は
「あれ?今日は」
「うん。お母さんもお父さんも帰って来ないみたい」
「そっか…さてシャワーでも浴びて寝るとするわ」
「うん。おやすみ直大」
「ああ。お休み」
数時間後
俺は此処を出る。
どうすれば、みんなが危険に遭わないようにするにはどうしたらいいか考えた。 それは、俺がみんなから離れればいいんだ。
思えば、俺が居たところには、必ずと言っていいほどにスカイやスマッシュが現れる。俺が引き寄せてるんだ。
俺が居るから皆は危険な目に遭う。俺が居るから狙われる。
だから、俺は皆の元へ居なくなった方がいいんだ。
きっと俺が居なくても、皆なら大丈夫。曲を作ることだって、侑が居る。俺の存在意義はもう無い。
俺は、置き手紙を残した。侑の両親へ今までの感謝を綴って。
そして、侑や歩夢には謝罪を
こんな不甲斐ない俺でごめん。でも2人なら俺が居なくても大丈夫だということを。
同好会の皆にも一言謝罪を入れた。
皆なら必ずスクールアイドルフェスティバルを成功に納めることが出来ることを。
信じてる。願ってる。
どこまでも身勝手な俺を許して欲しいなんて思わない。むしろ憎んでいい。途中で投げ出した奴の事なんて。忘れていい。
俺は玄関へ足を運び、靴を履く。そして、この家へ今まで思いを込めて一礼した。
俺は一礼すると、玄関の扉に手をかけて、この家を出た。
俺が終わらせる。スカイとの決着を。
俺が全て招いたことだ。自分で尻拭いをするんだ。
必ず………
続く……………
はい14話中編でした。
次回もよろしくお願いします。
追記 諸事情により、後編へと変えさせていただきました。