仮面ライダーシノビ(ビルド) × 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ~夢が始まり、虹が咲く場所~ 作:ラビラビfom
鐘嵐珠の突然のライブはその場にいた人たちを震え上げさせた。余りの衝撃にライブ終わりは一瞬静寂が包まれるぐらいには。
そして、彼女の予告通り、ランジュの歌声は観客の心に刻まれた。ちなみに、その後同好会のPVは無事に上映された。
そんな興奮が冷めやらなぬ中、せつ菜と直大を除く、スクールアイドル同好会面々は、東棟3階の窓ガラスの近くでランジュを連れ、集まっていた。
「凄い!スゴすぎるよ!!ランジュちゃん!!」
目をキラキラ輝かせながら、開口一番に口にする侑。
出会って間もないはずだが、相変わらずの侑の距離の詰め方にランジュは少し戸惑う、がすぐにいつもの調子で。
「当然よ、なんたってこのランジュだもの」
「なんという自信……」
かすみが唸るぐらい、彼女のパフォーマンスは凄かった。溢れんばかりの自信があることに、さっきのライブから誰もが納得した。
すると、このタイミングで栞子はランジュへ近づく。
「ランジュ、講堂以外で歌うのは禁止です」
しかも、お小言を添えて。
「そうなの?でも盛り上がったでしょ?」
「理由はどうあれ、虹ヶ咲の生徒になった以上、反省文を提出してもらいます」
「ええぇえっ!?」
なんでそうなるんだと、嫌そうに反応したランジュ。
一応ランジュとは幼なじみなはずだが、栞子もまた譲る気持ちはない。なんという、鉄仮面っぷり、いや堅物?
「1週間以内に、ちゃんと提出してくださいね」
「うええぇ••••••」
さっきの堂々とした立ち振る舞いは何処にやら、ただただ腰を丸くするランジュである。
その後、伝え終わった栞子はこの場を去って行った。
彼女が去って、少し経ったその時。
きゃあああああああ
このタイミングで人々の悲鳴が彼女たちの背後から耳に入った。
その悲鳴は、ステージから推しが出てきた時に出て来た際の嬉しい悲鳴ではない、命を落とすかもしれないという、確かな恐怖から現れた証の悲鳴だった。
「何よ、今の!?」
今まで、悲鳴が聞こえるほどの環境ではなかったランジュはその声に酷く驚く。
「もしかして…」
「スマッシュ…」
対して、ランジュ以外の彼女たちは驚きながらも顔を見合わせ、冷静に呟く。こういう状況にまだ完全には慣れないみんなだが、少しずつ耐性が出来ているのもまた事実だ。
悲鳴の聞こえた方は、東棟3階の中間を位置する所からのようだ。3階自体人通りは少なく、悲鳴を上げた人たちも極小数に限られていた。
「ちょっと見てくる!」
侑はそう言って、悲鳴が聞こえた方へと駆け出していく。
「あ、待って!侑ちゃん!」
駆け出していった侑を追いかけるように歩夢たちもまた、現場へと足を駆ける。
「え、ちょっと…もうなんなのよ…」
そして、ランジュも
※※※
「やっぱりスマッシュだ」
現場へ駆けつけた一同は、さっきの悲鳴を生み出した元凶─スマッシュを視認した。
名は、ネオブーンスマッシュ。
姿はF1カーのような赤と白のアーマーに両手足に特徴的なタイヤが付いており、背中には、エンジンを吹かした、マフラーが計八本付いていた。見るからに早そうである。
「車?」
「タイヤ人間?」
「なんだか、スポーツカー?に似てますね」
エマや愛、かすみがスマッシュの姿を見て、そう呟く。怪物を前にして中々に冷静過ぎないだろうか。
「なによ、あれ!?」
このタイミングでランジュが現場に着くと、驚きを隠せず、叫ぶ。うむ、これが普通の反応だ。
「あれはスマッシュって言ってね。ここ最近お台場に現れる怪物よ」
果林が冷静沈着に解説する。
「か、怪物…」
さすがにそれだけでは意味が分からなかったのか、ランジュは頭を抱える。
その時だ、スマッシュがこちらへ目線を移してきた。
「あ~飛んで火に入る夏の虫ってのはこのことかも、自分からこっちに来るなんて」
スマッシュから人間の女性の声がこの場に出現した。
「しゃ、喋りましたよこの人!?」
「人ではないんじゃ…」
「そんなことはいいんですよ!歩夢先輩!」
「でも、なんで…」
本来、スマッシュとなる人間の人格は無くなり、本能のままに暴れる、それがスマッシュのはずだが…
「喋ったらなんだって言うの?…あ~しんどい」
スマッシュはダルそうに頭をかく。そして彼女たちへ問いかける。
「その制服、あんたたちもニジガクの生徒ね」
「そうだったらなんだって言うんですか!」
「かすみさん会話しちゃダメ!」
反射的に答えたかすみの口を抑えるしずく。そしてエマが───
「ここは、直大くんに知らせて逃げよう!」
「そうね」
「ランジュも逃げるよ!」
「え、えぇ…」
愛がランジュの手を取り、今にでもこの場から逃げようとする。
だが───
「自分から来といて、逃げられるわけないでしょ…」
スマッシュの能力か、高速で移動し、彼女たちの逃げる道の目の前に現れた。
「いつの間に…」
「ヤバめ…」
彼方の言う通り、結構ヤベーイ状況だ。
「すぐ楽にしてあげるから」
そう言って、スマッシュは足を踏み込む。
その時だ。彼女たちの背後から何か走ってくる音が聞こえる。そして───
「させる訳… ないだろ!!」
驚異的な飛躍力で彼女たちを飛び越え、そのままスマッシュに向かって、不意打ち飛び蹴りキックをかました。
その飛び蹴りにより、一歩下がるスマッシュ。そして、蹴りをかました人物はその場に着地。
「直大!(直くん!)」
そう、星奈直大だ。相変わらずの遅れての登場っぷりは今だ健在。
「みんな、怪我はない?」
「わたしたちは大丈夫」
「ならよかった」
「直くん実はスマッシュが」
「ああ、分かってる、どうやら新種のネオスマッシュなんだと」
「「「「「「ネオスマッシュ???」」」」」」
直大以外の彼女たちが?マーク一斉に浮かべる。すると、さっきのキック攻撃からネオスマッシュは立ち上がる。
「わたしを蹴飛ばしたのあんた?」
「そうだと言ったら?」
「壊す、この学園ごと、最初の犠牲者はあんたからよ」
「悪いがそんなことはさせない、みんなは下がってて」
皆頷き、この場から離れると、物陰に隠れながらも様子を伺う。
「そんなことさせないとか、かっこつけてたけど、ただの人間じゃわたしは止められない」
「それはどうかな」
そう言って、直大は青いバックル─スクラッシュドライバーを取りだし、腰に巻く。
スクラッシュドライバー!
そして、ゼリーのキャップを正面に合わせて、慣れた手つきでスロットへセット。
ドライバーから発された待機音と同時に左腕を右の胸の方まで持っていき、何かを掴むように左の拳をギュッと握る。やり場の無い右手はドライバーのレンチへと添える。
そして────
「変身!!」
その掛け声と共にドライバーのレンチを下ろす。
現れた装置─ケミカライドビルダーとビーカーに満たされた
そして、直大は握った左の拳のままに進行方向、左へとビーカーを壊すように振り下ろす。
収縮したヴァリアブルゼリーが弾け飛び体へ青紫色のスーツを形成する。そして、頭部と胸部にネイビーカラーのゼリー状の装甲を身に纏う。
星奈直大は、青紫色の忍者──仮面ライダーシノビアクアへと変身完了した。
「へぇ~あんたが聞いてた仮面ライダーとか言うやつだったんだ」
「なにやら、俺も有名になってきたみたいで……さて、ショウ・タイムに行きますか!」
左手にツインブレイカーを装備した直大は水を泳ぐような滑らかさで走り出す。
そして、一気に間合いへと詰め込み、左腕を振り下ろす。
「はっ!!」
─だが、その一撃は当たらず空振った。
「!……早い…」
─そう、ネオブーンスマッシュは一瞬で地面を蹴って避けたのだ。
「遅いね……そんな攻撃じゃ私に触れることすら出来ない」
─彼女は背中にある8本のマフラーにエンジンを吹かせ、一気に加速、直大の目の前に現れ、高速で連続足蹴り。
その攻撃は正に音速の如し。
「……っ」
なんつう速さだ……反撃なんて以ての外、防御するだけで精一杯…
─やがて、最後の一撃に直大の腹部目掛けて、膝蹴りを噛ます。
「ぐっ……」
─その一撃により、吹き飛ばされた。なんとか受け身を取ったことで、急所とまではいかなかったのだが。
ネオって言うぐらいのことはあるらしい。
さてどうしたものかな……
「聞いてたわりには、そこまでって感じ」
「あらら、幻滅させたか?」
「幻滅も何も……そもそも興味もないんだけどね」
そう言って、手からタイヤのようなエネルギー弾を生成、からの放出。直大はそれをを防ぐため、ニンコマソードガンを手に持つ。そして、タイヤのエネルギー弾が目の前に来た瞬間、銀色に光る刃でタイヤを斬る。
「はっ!」
斬られたことで、ネオブーンスマッシュはエネルギー弾を複数生成、一気にグミ撃ち。
「そう言う時は─」
超オレンジカラーのタイヨウボトルをスロットへセット。
『タイヨウ!』
ボルテックスラッシュ!!
』
直大へ向かう無数のタイヤが太陽の光の熱を帯びた必殺斬りによって一気に焼き払う。
全てを防がれたことで、彼女は不機嫌そうに軽く舌を打つ。
「やっぱりこれより、剣の方が使いやすいかも」
「調子に乗るな!」
いや乗ってないんだけど。今のは感想だって、感想!
怒りを顕に、足を踏み込んで再びマフラーを吹かせると、ネオブーンスマッシュは加速する。
そんな彼女に直大もまた戦闘体制を整え、迎え打つ。
───赤き閃光と青紫色の水の忍者はまた激しくぶつかり合う。
そんな2人の戦いを後ろで見ている、スクールアイドル同好会一同と鐘嵐珠。つい数日前に日本へ、降り立ったばかりの彼女には今の光景はどう写っているのだろうか。
「なんなのよ…あれ…」
人の悲鳴が聞こえた所へ迷いなく進む彼女たちについて行った先にはF1カーのような化け物が自分たちに襲いかかる。予測した痛みに目を背けたが、その痛みは永遠に来なかった。
『みんな、怪我はない?』
確か、歩夢と侑の幼なじみの星奈直大。
彼に助けられたようだ。
少しの会話の後、『みんなは下がってて』の言葉に言われるがままに後退していく。どこかの物陰に隠れ、彼の様子を伺った。
すると、彼は水に包まれ、変わった。仮面を被った、何かに。
あまり詳しくはないが、日本で放送されている、ヒーローモノのような。
──未知の怪物に、謎の仮面の戦士、情報量が多すぎる故か、ランジュはまた頭を抱える。そんなランジュへ侑が説明した。
「あれは、仮面ライダーシノビ、この学園の─私たちのヒーロー」
「ヒーロー……」
確かに、化け物と戦う彼は間違いなくヒーローなのかもしれない。
それにしても、化け物が現れた時もそうだが、如何せん彼女たちは落ち着きすぎではないだろうか。もしや、日本ではこれが日常茶飯事なのか。
そんな疑問を抱えながらこめかみ抑えるランジュへ果林は─
「急なことで混乱してるでしょ…無理もないわ」
「そう……ね。でも貴方たちは落ち着いているのはどうして?」
ランジュの疑問はごもっともだった。あんな怪物を見て、ここまで落ち着いている女子高生なんて、普通ありえない。
侑は少し頭を掻き、ヘラヘラと口を緩ませ、答える。
「あはは……そっかランジュちゃんには落ち着いてるように見えてるんだ」
「まあ、あれだけ経験してれば、慣れたくなくても慣れちゃいますよねぇ…」
かすみが続けてそう言う。彼女たちがスマッシュと接触したのは指で数えられる程度だが、それでも最近では少しずつ慣れている自分がいることに彼女たちは驚きながらも、受け入れていた。
「怖くないの?」
その疑問に最初はエマが答えた。
「ううん。慣れたって言っても、怖いものは怖いから」
「それでも、先輩が居るから、私たちは恐怖に負けないんです」
「むん。りなちゃんボード[負けない!]」
「安心してスクールアイドル活動が出来ているのも直大くんのおかげなんだよね~~~」
「直くんや侑ちゃんやファンのみんなに支えられて、だからきっと私たちは歌える」
支えられるアイドル………
「そう……」
それが、貴方たち、スクールアイドル同好会の在り方なのね。そして、これが彼の同好会での立ち位置。やっと侑の言っていた彼はヒーローということの意味が分かった。
そんな会話をしている間にも、直大は戦っている。
再び加速した、ネオブーンスマッシュは止まることを知らない。
高速で足蹴りを放たれ、直大は防戦一方。
なんなら、余りの早さに所々ガード仕切れていないところもあるぐらい。彼女の蹴りは早かった。ランジュたちはこの速さを目で追うことすら出来ない。
不安になった、ランジュは呟く。
「ねぇ、大丈夫なの?」
「分からないけど……でもホッシーは負けない」
分からないのに負けないと言い放つ愛。矛盾しているとも言える。
根拠なんてないもの。それでも信じてる。
彼女たちの心には彼との信頼──キズナが強く刻まれている。
だから信じている彼が─仮面ライダーシノビが勝つことを。
※※※※
「はぁああ!」
彼女の速度に直大は刀を振るい戦う。だが、中々当たらない。なんなら、彼女の足蹴りによって、持っていた刀を手放してしまった。
(どうする……)
直大は考える。戦いながらも。
「あ……あれなら!」
「何よそ見してんのよ!」
何か思いついた直大に向かって、彼女は蹴りを入れた。だが、直大はそのまま腕で防ぐように受け身を取った。
「イッテェ……」
全く、どんな速さしてんだよ。でもこの力ならワンチャンある。
──ダメージを受けた腕をパタパタしながら、直大は赤色のボトルを取り出し、ドライバーのスロットへセット、レンチを下ろす。
ディスチャージボトル! 潰れなーい!
ディスチャージクラッシュ!
その音声ともに、ヴァリアブルゼリーを放出、バイクのマフラー模したパーツが生成され、ブーストの如く、直大の両腕と両足、計4本のマフラーが装備された。
「お!やっぱこうなるよな!」
「ダッサイの付けちゃって、それで私に勝てると思わないで!」
ダサイって……あんたも似たようなの背中に付いてんじゃん…
ネオブーンスマッシュは再び加速、直大の目の前に現れ、蹴りを入れようとする。その時だ。対抗するように直大はマフラーにエンジンを蒸かし、加速。彼女の足蹴りをギリギリのラインで避ける。
「だぁあああ!!」
そして、マフラーから蒸かした熱を攻撃する力に変え、彼女に向かって、カウンターパンチが炸裂。
「…っ!」
「まだまだ!」
それだけでは飽き足らず、足から放出する熱の原動力で思いっきり回し蹴りを放つ。まさに炎舞。命中した彼女は地面を抉るように後退していった。
「……っ……なになんなの…」
さっきまでとは、明らかに彼の速度が上がっており、困惑の色を隠せない。
「これが、ライダーシステムの力だ。誰かを守りたいと強く思う力の結晶ってやつかな」
ライダーシステムは戦えば戦うほどにハザードレベルを上げ、強くなる。そして、彼女も──
「誰かを守る……ばっかみたい…あんたみたいな偽善者がいるから、この世界は濁ってんのよ!!」
そう言い放つと同時に、ネオスマッシュは立ち上がる。そして、8本のマフラーに熱を帯びた風を吹かせ、加速。
「あんたみたいな偽善者を倒して、この学園を壊すのっ!!!」
また速くなった。いやハザードレベルが上がったのかもしれない。
成長するスマッシュ。
だが───
「俺だって負けるわけにはいかない!」
負けじと直大も加速。なんとか、彼女のスピードに食らいつき、2人は拳と拳を混じり合わせて戦う。
「はあああああ!!!」
「ああああああ!!!」
ぶつかりあった拳は弾け飛び、直大と彼女の間に距離が出来る。お互い激しいぶつかり合いだったためか、息を切らしその場に立ち尽くす。
「はぁはぁ……」
「はぁ…はぁ…なんでこんなやつ倒すのにこんな………」
ここで直大は変身を解除する。
「なんのつもり!」
そう言って、彼女も足からボトルを取り出し、人へ戻る。激高しながら。
「もう辞めよう、これ以上戦っても意味は無い」
「ふざけないで!あんたを倒して、この学園を潰す!私を選ばなかったこの学園を!!」
スカイは、言っていた。
ネオネビュラガスを投与されると、心で思っていた黒い感情─悪意が膨れ上がり暴走する。言わばパンドラボックスの光を浴びた状態と同等。むしろそれ以上なのかもしれない。
拳を交えているだけで、伝わってくるんだ。彼女の溢れる悪意が、1度作動したら止まらない。いや止まれないんだ。
「何が君をそうさせるんだ……」
さっきスカイに言おうと、喉から出かけた言葉を彼女へ問いかける。
「あんたには分からないよ。選ばれなかったもの気持ちなんてね…」
「選ばれなかったもの……」
「この学園に入った時、あんたはやりたいことがあった?」
「特になかったな」
ただ近いからって理由だけで決めた、それ以上でもそれ以下でもない。
「…….やっぱりね、世の中はやっぱり理不尽……叶えたい夢に向かっての1歩すらも歩かせてくれない……」
─約1年前、彼女はこの虹ヶ咲学園、音楽科を受験した。叶えたい夢のため、大好きな音楽を高校でもやりたくて。だがその願いは叶わなかった。
虹ヶ咲学園の合否の結果、不合格。
彼女は、別の高校へと進むが、その学校には音楽にまつわる科や部活なんてものはなかった。
彼女の夢ははからずもどこかへ消えてしまったのだ。
「あんたみたいに、叶えたい夢もない空っぽなやつは入れて、明確にやりたいことがある私は入れない。理不尽な世界」
夢……か…
ニジガクに入って、最初は特にやりたいこともなかった。だけど、せつ菜との出会いから曲を作るやりがいを見つけた。
みんなの曲を作ることが今の俺のやりたいことなんだって。
でも、将来どうなりたいのか、どうありたいのか、明確な夢はまだみつけられていない。
何も…ない空っぽ…なのかもな…
「空っぽじゃない……」
後ろから何か聞こえた気がした。
「は?」
「直大は空っぽなんかじゃない!!」
「侑……」
─侑の激高した声だった。堂々と前に出て、ただ真っ直ぐに彼女へ目線を向けてそう言い放つ。
「うん…何も知らないあなたが直くんを侮辱しないで!」
「歩夢……」
─侑に引き続き、歩夢も1歩前に立つ。それに釣られるように他のみんなも前に出る。静かな怒りがこの場を包んだ。
「はぁ……誰かから必要とされるあんたはいいわよねぇ………ほんと理不尽……だから壊す。私を選ばなかった理不尽な学園を、この世界を!」
その宣言と共に、ボトルを取り出し、シャカシャカと振って、キャップにあるマークを正面へ回す。
「おい、やめろ!もうボトルは使うな!」
「うるさい!」
─直大の言葉を真っ向から一蹴した彼女は
「……」
もうこれ以上ボトルを使わせたくなかった。ロストボトルを人体に取り込ませての使用に何かやな予感がしてならないから。
だが、それは叶わなかった。仕方ない、何がなんでも止めてみせる。
「変身!」
再び、青紫色の忍者へと変わり、さっきと同じようにバイクのマフラーのようなものを両手足に装備。一気に彼女の間合いに近づく。
「はっ!」
「壊すっ!!!」
お互いの身体へとダメージを与える。速度は互角。いや、ちょっぴり彼女の方が速い。その差を埋めるために直大が必死に追いつこうと食らいつく。
2人がぶつかり合うたびに、その場にヒバナを散らしていった。
「壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊すっ!」
「させない!!はあああっ!!」
さっきのように拳がぶつかり合うと思ったその時──
直大はフェイントをかけ、拳を引っ込める。フェイントをかけられたことで、一瞬動揺する彼女だが、そのまま拳が直大へ命中する。
「…!」
だが実際は違った。彼女のパンチ攻撃は直大の身体を貫通した。
そう液状化だ。
「はあああ!!」
液状化のまま彼女の背後へ移動した直大は蒸かしたマフラーの熱の勢いのまま、回し蹴り。それにより、彼女は地面へ転がるように吹き飛ばされた。
「っ…」
すぐ立ち上がろうとするが、今の一撃が急所へ入ったようで、中々立ち上がれらない。
そんな彼女へ直大は────
「君は諦めたんだ」
「…なに…」
「自分の夢をやりたいことを。もう叶えられないって自分に暗示をかけるように蓋をした」
「そうするしかなかった……だから私は諦めたのよ……じゃあどうすれば良かったっていうの!!!」
「何が正解か、正直俺も分からない。でも1つだけ分かることがある。それは諦めないことだ」
「諦めない…」
「まあ…でも、多分何においても諦めないって難しいことなんだと思う。俺も何度も諦めそうになったことがある」
旧世界で、何度諦めそうになったか。正直指で数えられるかも怪しい。諦めるのは簡単で、何においても諦めないって気持ちを持つことは難しいんだ。
「それでも、俺は信じてるんだ。諦めなければきっと夢は叶うって…まあ君の言う通り俺には夢はない。空っぽだ。でも叶えたい理想はある、いつか絶対理想を叶えるって信じて前に進む」
それが俺だ。
「だから、君も諦めないで欲しい。叶えたい夢をやりたいこと全部、絶対に叶えられるって信じるんだ、そうすればきっと夢は叶う」
俺の言ってることは、綺麗事でしかないのは分かってる。それでも信じたいんだ。現実は厳しくて、上手くいかないことの連続で、心が何度折れそうになるか。
でも俺は抗いたい。どんな夢も逆境も、受け入れて、全部……全部!
「夢は叶う………」
夢なんて、上手くいかないことの方がほとんどだ。
現に夢の最初の1歩すら、つまづいてしまった。このやるせない気持ちが溢れて、辛くて苦しくて、蓋して、夢から逃げた。
諦めなければ、夢は叶う、そんなの綺麗事だ。
でもなんでだろう、信じてみたいと思った。自分が夢を叶えるところを。こんな綺麗事の塊みたいな言葉に心を動かされるなんて心外にも程がある。
今だから思う、たとえ、虹ヶ咲じゃなくても、音楽に関する学校じゃなくても。音楽はやろうと思えば出来たんだと。私が諦めたからその道が消えた。
遠回りになるかもしれない。でも日々の努力がきっと夢に繋がる。そんな気がする。
「私は────
彼女が何かを言いかけたその時、誰かの声が被さる。
「困るんだよ……そういうことされるとさぁ……」
──悪意のハンドルはまだ、握られたままだった。
続く……
更新が遅れてしまいすみません。
続きは今週中に更新予定です。(予定)
ちなみに18話は次回で終わりです
今回出てきたネオスマッシュのモチーフはブ〇ブ〇ジ〇ーと赤い刑事です。赤い刑事って言われても色々ありますが、ひとっ走り付き合う方の刑事です。
虹ヶ咲の7thライブの開催が決定しましたね!
両日当たるといいなぁ…
今から楽しみです。
話は変わりますが、中国から推しの刀を輸入しました。
姉ちゃんの仇を摂るやつです。
いつかは、この作品で meets タイクーン編と称して、忍者ライダー揃い踏み!をやりたいなぁって。まだ願望ですが。
それではまた次回。