仮面ライダーシノビ(ビルド) × 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 ~夢が始まり、虹が咲く場所~   作:ラビラビfom

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大変お待たせしました!





18─5話 ~星のニンジャは何故ここ(・・)にいるのか?~

 

 

「私は────

 

 

彼女が何かを言いかけたその時、誰かの声が被さった。

 

「困るんだよ……そういうことされるとさぁ……」

 

「誰だあんた?」

─声の主は自分たちの前へと姿を現す。ただ素性を隠すためか、帽子を深く被っていた。そのため、相手の顔は伺えない。だが、体型から男だというのは人目で分かった。

 

「前に名乗ったんだけどな」

 

「は?」

 

前に名乗った? どういうことだ。

前に会ったことがあるのか?全く思い出せない。

そういや、スカイの言ってた人って、もしかして今目の前に居るやつだったりするのか?

 

 

 

「折角のネオスマッシュの初陣戦を、こんなつまらない幕引きで終わるなんて言語道断、だから──」

男はおもむろに、紫色の短剣を取り出す。それには、銀色のバブルが付いており、スチームブレードと類似していた。

 

「…悪意ってのは1度、湧き出したら止まることはない」

「おいまて!辞めろ!」

 

─何かを察した直大は、声を上げる。だが、男は銀色のバブルを180度、回した。

 

『マリススチーム!』

 

─直大の静止は彼には響かず無惨にも黒き煙が彼女の周りを囲う。

 

 

「これで、また悪意が増幅した」

─それを最後に、男は煙を巻いて消えた。

 

 

 

「壊す……」

 

 

また、あの時の彼女へと戻ってしまった。いやさっき以上の自分自身の悪意に心も身体も呑まれてしまったんだ。

 

 

「壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す」

 

狂気の沙汰かと思うぐらいに彼女の周りには赤と黒の不気味なオーラが現る。

いつ動き出してもおかしくは無い。

 

「……………」

 

 

どうする、ここまでの悪意。これ以上の戦闘は、周りを危険に晒すだけだ。

ここは1発、必殺を決めて彼女を救い出すしか───

 

 

─直大は、ゆっくりとバイクボトルからニンジャゼリーへと交換。ドライバーのレンチへ手を添える。レンチを押し込もうとしたその時───

「ダメです!!!」

 

 

聞き覚えのある声が直大の行動を止めた。

 

「せ─菜々ちゃん!?」

 

侑が声を漏らす。そう行動を遮ったのは生徒会長中川菜々の声だった。走ってきたのか、息を切らして。

 

「菜々ちゃん、ダメってどういうこと?」

「今までのやり方で倒したらダメなんです!」

 

 

今までのやり方

まさか……

戦っている中で何となく、やな予感がしていた。違和感というか、なんというか。

 

おそらく───

 

「……消滅してしまいます…」

 

 

「消滅………」

 

「そんな……」

「じゃあどうしたら……」

 

 

─侑や歩夢たちは消滅という言葉に酷く驚く。

 

 

 

やっぱりそうだったか……

 

 

多分、あれと一緒だ。

 

 

三羽ガラスの3人がハザードトリガーを使用することで強化されたハザードスマッシュ。

そして、高濃度のネビュガスを素体となる人へ注入し、2体のクローンスマッシュと融合することで生まれるロストスマッシュ。

どちらも、戦闘からの敗北=死を意味する。

どこから情報得たのかは分からないが、中川が言うには、ネオスマッシュも同じ。

 

 

「…………」

 

どうすりゃいい

 

この状態のスマッシュから彼女を救うには、ガスを中和するしかない。

 

それが出来るのはこの世界でたった1人……戦兎だ。

ジーニアスの力であれば、ガスを中和できる。

最もネビュラガスの中和が出来るからといって、それがネオネビュガスとやらに適用されるかどうかは正直分からない。

 

あ、そうだ!……もしかしたら…

 

この力なら……

いや、確実の保証なんてない。

 

何もかも未知数過ぎるんだ。

 

判断を間違えば、彼女は……死ぬ…

 

 

「あ″あ″あ″ぁああ″″″!!!」

 

─直大は思考し、立ち止まっていたが、彼女はそれを待ってはくれなかった。

人とは思えない言葉を叫び、悪意を剥き出しながら、加速。直大へ攻撃を仕掛ける。

 

 

「っ……!」

 

─勿論、対処なんて出来るはずもなく、ただただ、彼女からの拳や蹴りを入れられ、段々押されていく。

 

 

(くそ、俺は何も出来ないのか…)

 

 

─次第にネオスマッシュは、グッと足を踏み込み、強い蹴りで直大を吹き飛ばす。畳み掛けるようにタイヤ型のエネルギー弾を彼に向かって、無数に発射。見事全てのエネルギー弾が直大に命中する。よって、ゴロゴロと身体が転がりながら地面に手をついてしまう。

 

 

「ぐはっ…………」

 

俺は結局……

彼女を救うことも…みんなを守ることも…

出来ない…

 

 

─直大は、何も出来ない無力感に拳を握りしめることしか出来なかった。

その頃、彼女たちスクールアイドル同好会は──

 

「このままじゃ……」

「でも、私たちじゃ何も出来ないわよ」

彼が無理なら、自分たちはもっと無理だ。

何か突破口でも見つかればいいのだが。

 

 

─直大の無力感が伝染するように彼女たちもまた、何も出来ない無力感に苛まれる。

 

「これは何事ですか!?」

 

騒ぎを聞きつけたのか、栞子もまた、この場へと駆けつけた。

 

「それが、ランジュにもさっぱりなのよ、ただあれが仮面ライダーって言って、彼が──「とわっととっ!」

 

状況が読めない栞子へランジュが話そうとする。がポロッとシノビの正体をバラシそうになるランジュへかすみが慌てて止めに入る。そして、耳打ちで

 

 

「何バラそうとしているんですか!さっき見たことは誰にも話しちゃダメです!特にセンパイの正体は!!」

「そ、そうなのね…」

そんな耳打ちしている2人の隣で栞子は──

 

「あれが………仮面…ライダー……」

 

──ただ、1点を見つめて口を漏らす栞子であった。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

 

─再びバイクのマフラーを装備した直大は彼女のスピードに食らいつき、攻撃を対処している。だが、直大からは特に反撃はしていないようだ。いや躊躇しているともいえる。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!″コ″ワ″レ″ロ″!!

 

─突破口が見つからず迷いながらも戦う、だが、次第にその迷いから、彼女のスピードについていけなくなり、再び強き足蹴りで地面に転がる。

 

 

「……………」

 

 

─彼女を救うビジョンすらも見えなくなった直大は拳を地面へと叩きつける。

 

その時だ。

 

 

「諦めちゃダメです!」

 

─中川菜々の真っ直ぐな言葉だった。

 

「………!」

 

─菜々の言葉に直大はハッとする。

 

 

「そうだよな…まだ諦める時じゃない」

 

さっき彼女に言ったじゃないか。

諦めなければきっと叶うって。

 

そう言った張本人が諦めてどうする、絶対に助けると信じて前に進むしかない。

一か八か、この力で

 

 

 

彼女を助けるために忍者は立ち上がる─────

 

 

「壊す…壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す」

「君の悪意は…俺が受け止める。そして、浄化する!」

 

そう言ってグッとドライバーのレンチを長く下ろす。

 

 

スクラップヒーリング!

 

その音声と共に、キラキラとしたエネルギーが直大の周りに生成される。

 

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

─ネオスマッシュは叫びながら、直大の元へ加速、右ストレートを打ち込もうとする。

だが─彼は受け止めた、彼女の悪意も悲しみ全部全部全部。

 

ヒーリングの力は、誰かを直す力。君の悪意を浄化する力。

 

この力は自身の体力を大幅に消費する。そのため、使用後は必ず倒れてしまう。今回はそうならないようにこの力を一定まで調節してみせる。そして、キラキラと光る力の結晶を拳の1点に集中させた。

 

 

「はああああああ!!!」

 

声を上げた勢いのままに、ネオスマッシュへ拳を叩き込む。すると、拳を放った彼女の周りにキラキラとした裂け目が現れた。その裂け目から彼女の姿が見えた。

直大はそんな彼女へ向かって手を伸ばす。

救いの手をどこまでも届くようにただ真っ直ぐに。

 

(届け……届け!!)

 

やがて、彼女の手を掴んだ直大はネオスマッシュから彼女を引っ張り救いあげる。その勢いで赤き閃光は吹き飛ばされた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ…救えた」

 

救えたことに安堵する直大、彼女を抱き抱え、優しく地面へと下ろす。

 

「いや、まだか…」

 

─何かを悟るように抜け殻となったネオブーンスマッシュの方へ振り向く。

おそらく、抜け殻を倒さないと、彼女の体内にあるボトルを抜くことが出来ず、意識も戻らないだろう。

だから────

 

「さてと…最後の仕事、片付けますか」

 

そう言って、直大はドライバーのレンチを下ろす。

 

スクラップストライク!!

 

その音声と共に、装備したバイクのマフラーから加速。溢れ出る熱と肩にある手裏剣が高速回転によって放出される水が入り乱れ、まさに熱湯だ。

 

「はぁぁ……はああああっ!」

 

─加速した勢いのままにマフラーの熱と水を纏った拳から放つ必殺パンチを抜け殻となってしまった赤き閃光へとおみまいした。

それにより、爆散。ネオスマッシュは完全に消え去った。

 

「ふぅ~」

 

無事討伐完了っと。ん?

 

 

─抜け殻のネオスマッシュが倒されたことで、自動的に彼女の足からロストボトルが抜け、地に落ちた。

 

今度こそ、彼女を救えた…

 

「ん」

 

お、目覚めたみたいだ。

 

 

 

 

 

 

─目覚めた彼女はゆっくりと身体を起こす。そこへ───

 

「大丈夫?」

「……あ、うん…なんとも」

「そっか、ならよかった」

 

見たところ、怪我はないようだった。

さて、早いとこ退散するとしますか

 

「あの」

「ん?」

 

「その、私頑張ってみる、これから。絶対に夢を叶えるって信じて。正直どうなるかは分からないけど」

 

「それなら俺も君に負けないように頑張るよ。自分の理想を叶えるために」

 

「理想って?」

「誰もがLove&Peaceを胸に笑顔が絶えない世界。それが俺の理想さ」

 

それを聞いた彼女は小さく笑う。

「…ほんと…綺麗事……でも、あんたなら叶えられる気がする」

「ああ」

 

 

──茶髪ポニーテールの少女は凛と髪を揺らし微笑む。その笑顔は、湧き上がっていた悪意が完全に浄化されたことの証だった。

 

~~~~~

 

「う~む…」

 

にしてもこのボトルやっぱロストボトルだ。しかも旧世界では見たことないやつ。また新種のやつか……

 

─直大は彼女の身体から抜け、地に落ちたボトルを手に取り、しゃがみこみながら唸っていた。変身された状態でしゃがみ唸っているところから、中々にシュールではある。

 

 

 

こりゃ戦兎に相談案件だな。

ん?

 

 

 

─その時だった。予測の出来ない方向から赤紫色の尻尾が飛び込んできた。それにより、ボトルを手放してしまう。

 

「っ………!」

 

「やあ」

 

 

そう。スカイ─仮面ライダーポイズンヒールがこの場に現る。なにやらボトルを取り返しに来たようで、手放したボトルをすぐさま拾った。

 

「ほんと、手癖の悪いやつだな」

「僕も大変なんだよ。このボトルを回収するように言われてるからさ…」

 

そう言って変身を解除するスカイ。素顔が明らかになり、ニヤついた表情が鼻についた。

 

 

「まさかネオスマッシュと人を分離させ、彼女を救うとは。さすがは君だ、でも僕は信じてたよ、必ず君なら助けるってね」

 

「………」

妙に腹立つ。いちばん肝心なことを伝えなかった癖に。でも、もしかしたら、中川はこいつから情報を得たのかも…

 

 

「さて今日はこれでお暇させてもらうよ」

─そう言って、トランススチームガンを取り出した。

 

~~

その頃──

 

 

「……!……え…」

「どうしたのよ、栞子?」

 

スカイが変身を解いた瞬間、栞子は動揺したように驚き、小さく声を漏らす。それに気づいたランジュは話しかけるが─

 

「あ……いえ……」

 

すぐにいつもの調子に戻る栞子だった。

 

 

(気のせい…ですよね)

 

 

~~~

 

「僕以外の誰かにやられるなんて結末は勘弁だ。よろしく頼むよ、正義のヒーロー仮面ライダークン」

 

─それを最後にスカイは煙を巻いて、この場から消えた。

 

相変わらずの妙に寒気のする口調だ。でも三船さんがいることで配慮したのか、いつもとは違う呼び方だけど。いや配慮はないな。あいつに限って。

さて、今度こそドロンだ。

 

 

※※※※※※

 

──怪物騒動もひと段落した、スクールアイドル同好会一同とランジュ。ちなみに栞子と菜々はその場を後にした。なんでも、実行委員の仕事がまだ残っているらしい。

 

そして、数分の時が進み、その場へ合流した直大。

また無茶して。と目で分かるぐらいにプンプンな歩夢。妙に視線が痛い。しかも侑には肘で腹を小突かれる始末だ。暴力反対!!今どきそういう系ヒロインは流行らないっすよ!!

 

 

─そんな必死の訴えも彼女の呟きにより、どこかへ消え去った。

 

「まさか、日本がこんな物騒なんて思わなかったわ」

 

─ランジュの発言に直大が手と手を合わせて、頼み込む。

 

「色々あって、多分情報整理出来てないと思う。ただこのことはくれぐれも内密に頼む」

 

頼むから、言いふらさないでください。文春のお世話になんてなりたくねぇですわ!

 

 

「無問題ラ。安心しなさい。ランジュは口が堅いわ」

「さっき喋りそうになってましたけどね」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「かすみさん、話の腰は折らない!」

メッ!とかすみを叱るしずく。かすみは少し不服そうだが。

 

「そういや、あそこでライブしたってマジ?」

 

「おおマジよ!」

 

─めちゃくちゃドヤの雰囲気で堂々とした、面持ちで返すランジュ。

 

 

 

マジなんだ……

 

なんでも、その場に居た人達を魅了させたんだと、まるで、女王のような雰囲気で。

俺も見たかったなぁ…

 

「ほんと凄かったんだよ!!」

 

前のめりになりながら、興奮するように話す侑。

 

「あぁもう分かったから、近づいてくるんじゃないって」

「あ、ごめん」

 

ったく、侑はほんと、トキメキを見つけるとすーぐこれだ。少しは距離感というものを覚えて欲しいものだよ。

 

 

 

「ねぇ、アタシも出れるんでしょ?」

 

 

「へ?」

 

「スクールアイドルフェスティバルよ」

 

 

スクフェスのことかい。

主語がなかったから、なんのことかと思ったぜ。

 

 

その問いかけに距離感バグってる代表の愛が笑顔で返す。

 

「あったり前じゃん!!」

「一緒にやろうよ!」

「歓迎するよ!同好会へようこそ!」

 

侑や歩夢は歓迎の言葉を紡ぐ。だが──

 

「入部は辞めるわ」

 

「え?」

 

いやいやいや、今の流れは絶対入部するんじゃないん?

 

 

「あなた達とは、考え方が違うみたいだから」

 

「えっ? どういう事?」

 

侑や歩夢、みんなはその理由にキョトンと怪訝そうにランジュの考えに耳を傾ける。

 

「アタシは誰よりも、みんなを夢中にさせるスクールアイドルになりたい。アイドルがファンに夢を与えるのは、素晴らしい事よ。でも」

 

「与えるだけでいい」

 

その言葉はどこか冷たく、ゾッと寒気がした。同時に絶対的な信念が込められているようにも感じた。

 

「誰かに支えられなきゃ、パフォーマンスもできないアイドルなんて、情けないわ」

 

「「「「「「「……っ!?」」」」」」」

 

「ちょっとぉぉ!!」

かすみが噛み付く。が、ランジュも引く様子なんてものはない。

 

「スクールアイドルフェスティバルには、鐘 嵐珠個人として申し込んでおく。この同好会では、アタシの夢は叶いそうもない。だから、一人でやってみせる」

 

なんて信念の強さだろうか。

 

「ねぇ、もう一度聞くわ。侑、あなたはどうして同好会にいるの?」

 

「え……?」

 

突然の問いかけに侑は困惑の色を隠せない。他のみんなも同じく。

 

 

「アタシはスクールアイドルにトキメキを感じて、やりたいと思ったから、ここまで来た。でもあなたの夢はスクールアイドルじゃないのよね? だったら同好会を離れて、その夢を真剣に追い求めるべきよ」

 

彼女の言葉は純粋な興味から湧いた疑問でもあるのだろう。

 

ただただ辛辣に言ってるように見えるが、その言葉の本質には、特段、侑を責めている訳ではなく、そのふち節に彼女を心配しているように感じとれた。実際のところはどうなのかは知らんけど。

 

 

 

 

「…………」

 

侑は、僅かに顔を曇らせる。だが考えが纏まったのか、すぐに笑顔を浮かべた。

 

「確かに、ランジュちゃんは凄いよ。ライブでも言葉でも、あんなに堂々と自分を表現できて。でも、やりたい事をやりたいって気持ちだったら、私だって負けてないつもり!」

 

さすがは侑と言ったところだろうか。こういう問いかけにも臆することなく、言い返すんだから、侑には頭が上がらない。

 

「今はまだ、全然だけどね。私だって私のやり方で••••••この同好会で、夢を叶えたいって思ってる!」

 

「そう」

侑の答えにほんのり笑みを浮かべたランジュ、すると、目線を彼女の隣の人物へ向ける。

 

 

「ならあなたはどうなの?」

 

──そう投げかけた、彼女の目線には彼の2つの姿が重なる。星奈直大として、仮面ライダーとしての彼の姿が。

 

 

 

 

「……」

まさか俺に流れ弾が飛んでくるとは…

 

「あなたはなんのためにここにいるの?」

 

再びの問いかけ。

 

「あなたがこの学園のヒーローということは分かった、でも─この同好会に居る理由はないんじゃないかしら? あなたには特に夢ないらしいし、だから疑問なのよ、あなたがどうしてここにいるのかを」

 

彼女が言い終わった頃には無意識の内に、固唾を飲んでいた。

 

「そうだな」

 

ここに至るまでに何度も自分の中で問いかけていたことだ。俺はなんのためにこの同好会にいるのか。この同好会での存在意義はあるのかと。

その度に俺は答えらしい、答えは中々見つけられてはいない。

 

スカイは俺の事を中途半端と言った。マネージャーとしても、仮面ライダーとしても中途半端。

 

「その通り、俺には侑みたいに叶えたい夢はない」

 

俺に同好会での存在意義はなんなのかと聞かれても上手くは答えられない。

 

曲が作れる!なんて言っても、それは俺だけのアイデンティティじゃない。侑が居る。今は無理でも、いずれあいつは1人で曲を作れるようになるだろう。それぐらい、侑は可能性の塊なんだ。

 

対して俺に伸び代があるのかは正直微妙ではある、可能性なんて無いに等しいのかも。

 

ライダーとしてなんて、まだまだ半人前。俺がこの学園のヒーロー?いやないないない。

 

それに、正直俺が同好会にいるだけで、みんなが危険な目に合うことの連続だろう。

だから、1度俺はみんなから離れようとした。

でもみんなは、それでもいいと、例え危険な目にあってもいい。もっと頼って欲しいって。1人じゃないからと。

 

そう言われて思い出したんだ、俺はかけがえのない仲間がいたからこれまでも、そしてこれからも戦えるのだと。

 

俺の理想は、愛と平和を胸に笑顔が絶えない世界。

 

 

「でも、叶えたい理想はある」

「それが、さっきの言ってたやつ?」

「ああ、その理想を叶えるためには、きっと…みんなが必要なんだ」

 

みんなの歌声が、パフォーマンスが、スクールアイドルが。

 

「この居場所、スクールアイドル同好会っていう居場所が」

 

みんなの笑顔を守りたい。みんな笑顔でいて欲しい。そう思うからこそ、ライダーとして戦っている。

曲作りをしている動機もこれと一緒だ。

 

俺は好きなんだよ、誰かの笑顔が。自分が作った曲で誰かを喜ばせたくて。誰かを楽しませたくて。

 

 

俺が曲を作るためにはこの居場所がかけがえのないもので、必要で大切で、大好きだから。

 

「だから……俺は……………えぇと……

 

あれ?……う~ん…」

結局何が言いたいのか分かんなくなっちまったよ。

……う~む……

 

 

─謎に言葉に詰まる直大。そんな彼へツインテールを小さく揺らしながら少女がフォローを入れた。

 

「まぁ、要するに直大も私と一緒ってことでしょ?」

 

 

 

一緒………か…

 

 

 

 

 

確かにそうかもしれない。

「そうだな、どうして俺がここにいるのか」

 

──そう言って、直大は再び彼女の方へ目線を向ける。

 

 

 

何となく答えが出た。こんな単純だったんだ。いやほんとは心のどっかでは、分かってたのかもしれない。

 

「それは───俺もこの同好会でやりたいことがあるんだ。叶えたい理想がな。ここでなら、きっと叶えられるって思うから。

他の何処でもない、ここじゃないとダメなんだよ。だから────俺はここにいるんだ」

 

 

きっとそれは俺や侑だけじゃない。他のみんなもそうなんだ。

 

あの時、彼方先輩に言われた、やりたいからやる。それだけでいいと。難しく考える必要はない。

やりたいと思った時からもう始まっているんだから。

 

 

「それは私たちも一緒だよ!」

「みんな、自分がやりたいことをやるためにここにいる」

 

 

 

俺の答え、そして歩夢や璃奈の言葉にランジュはただ不敵に笑みを浮かべた。その後、堂々とした佇まいで言い放つ。

 

「そう。今はそれで納得しとくわ」

 

 

一応納得はしたようで、俺たちへ背を向け、何歩か進む。そしてグルリとこちらへ振り返る。そして──

 

「アタシはアタシの正しさをスクールアイドルフェスティバルまでに証明して見せるわ。スクールアイドルフェスティバルで一番注目を集めるのは、このアタシよ」

 

宣戦布告だ。どこまでも、堂々と、強くこの世界が─いやこの地球が彼女を中心に回っている。そんな気さえした。

 

そんな宣戦布告にみんなは、熱く燃えたぎるように返す。

 

「望むところだよ~」

「愛さんの楽しみが、また増えた!」

 

 

「そこでお互いのパフォーマンスをぶつけ合いましょ」

 

それを最後に、「バイバイ」と別れを告げ、彼女は再び背を向け、去っていった。嵐のような革命の風はようやく、収束した。

 

 

「もぉ!なんなんですかあの人っ!?」

 

かすみが地団駄を踏み、怒りを露わにする。

 

「でも、本当に凄いパフォーマンスだったじゃない」

「きっと、日本に来る前にたくさん練習を積んで来たんだよ」

「今まで以上に、頑張らないといけませんね!」

 

果林先輩たちが、ここまで言うほどだ。かなりのパフォーマンスだったのだろう。ランジュのライブの話を聞く度に見れなかったことがクソほどに悔やまれる。ほんとにクソくらえ!はぁ…

 

ん?なんか近くに団子髪の影が

「侑ちゃん、直くん」

 

歩夢だった、いつのまにか、俺と侑の前に来ていた。全然気づかなかったよ。え、なに歩夢もニンジャのいろはがあるん?

 

「夢は違っても、私はいつだって力になるからね?」

 

 

「かすみんだって、いーっぱい応援しますよ!」

 

「私達も同じ気持ちよ」

 

ずるいというか、なんというか、全く…

ほんと、俺は仲間に恵まれすぎてるよな。

さて、こういう時は…

 

 

「だってさ」

「いや、だからなんでそんな他人事みたいに言ってるのさ」

「そうか?そんなことないだろ」

 

いやいやいや─と呆れたように頭を抱える侑。

 

「照れ隠しみたいなものですよね。先輩のそれは」

 

は?この後輩は何を言っているんだ

照れ隠し?なんのことやら??あはは、あはは……

 

「ホッシーは素直じゃないなぁ…」

 

やれやれと手の動作をしながら呟く愛。

 

「おい、コラ。そんなこと言われたら、ほんとに俺が照れ隠ししてるみたいな雰囲気なっちゃうから辞めなさい!」

 

か、勘違いしないでよね。別に照れてなんかいないんだからね!

うん。我ながらキモイ。

やっぱ、俺にツンデレ要素は蛇足だわ

 

「でも事実」

 

璃奈さんボソリと言わないでください。

なんかみんなもニヤニヤしてるし。

 

ああもうこういう時は───「逃げる!」

 

 

こんなのもうドロンだよドロン!!!

 

 

 

~~

 

 

 

「直大さん!廊下は走らないでください!」

 

逃げてる途中で中川の声が聞こえたけど、ま、気のせいだ。気のせい。

 

 

※※※※

 

直大が逃げた後の彼女たちは──

 

「あ、逃げた」

「相変わらずね。ほんと」

「でも、そこが~~?」

 

彼方の発言に果林はキッと睨み。

 

「おだまり!」

「かんじぇんじでぇぇ~!」

口を抑えた。

そんなじゃれ合いを見てエマは微笑みながら、高らかに口を動かす。

 

「よし、直大くんを追いかけよう!」

「なんか前もこんなことありませんでしたか?」

 

かすみはデジャブみを感じた。

そうして、彼女たち同好会は彼を追いかける。追いかけ道中に居た生徒会長を捕まえて一緒に。その表情はどこまで広がる空のように晴れやかな笑顔で。

まさしく青春というやつだろう。

 

 

そんなこんなで虹ヶ咲学園 オープンキャンパスでの長い1日が幕を閉じた。

なんだか、数ヶ月以上経過した気分である。

 

 

~~~~~~~~~~

 

♬ 夢が僕らの太陽さ

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

その日の夜、高咲家自室にて、直大は真夜中の暗い空を見上げながら今日あったことを振り返っていた。

 

 

「はぁ……」

 

今日はなんだか、色々巻き起こり過ぎな1日だった。

新たな条件のスマッシュが生まれるわ~

スカイが言うには今日俺の前に現れた謎の男が暗躍してたらしいしで、

これからめんどくさくなりそう…

 

あぁ…憂鬱。

 

ただでさえ、今やることなすことだらけだってのにな。

 

 

教習所に、教習所に教習所だろ。あと教習所。

にしても。

 

『アタシはアタシの正しさをスクールアイドルフェスティバルまでに証明して見せるわ』

 

正しさを証明するために……か。なんだろう。ほんのり違和感があったんだよな。上手く言葉には出来ないんだけど。

 

 

まあとりあえずは、今やるべきことを全力でやる!しかない。

 

「また、黄昏てる」

 

自室にある少女の声がこだました。なんだなんだと後ろを振り返る。そこには、いつものツインテールを解いたラフな格好をした侑だった。

 

「ノックをしなさい。ノックを」

 

英語で書くと、knock!!

 

「何度もしたのに。気づかなかったのはそっちなんだけど」

文句を言うもんなら小突く。と、言いたげに悪態をつけながら部屋へ足を踏み入れる。だから暴力反対だって!!

そのまま、ベッドへと腰を下ろす侑。この人何しに来たん?

 

「ねぇ」

 

「ん」

 

「大丈夫?」

 

「藪から棒すぎて、こっちが大丈夫かって言いたい」

「あ、そういうのいいから」

 

ヒェッ………何今の。最近の女子高生コワいんだけど!!!

 

「大体何が大丈夫?なんだよ」

「だって今日、新手の敵?が出てきてたから」

 

あぁ……そのことか。まあ確かに、侑たち目線だと、驚きかもな。なんたって、今まで通りに倒したら。人が死ぬなんて知らされたんだから。死とは無縁な生活をちょっと前までは送っていたのだから尚更。

 

 

「ネオスマッシュな。別に侑が心配することじゃないさ」

 

「でもs────「でもも、へったくれもない。今の侑にはそんなことよりも、目を向けることがいっぱいあるだろ?」

 

「それは…そうだけど」

音楽科への転科。それによる、補習。普段の勉強。ピアノや作曲のこと。第2回スクールアイドルフェスティバルに向けての取り組みにやることは盛りだくさん。

スマッシュやスカイ。新たな刺客にかまけている場合じゃない。

 

とまあ、色々大変な時期の侑に何心配かけさせてんのよ俺ぇ!!!

ほんと、まだまだだ。ちょっとやそっとのことで心配をかけないような自分にならないと。いつかほんとにみんなを危険に晒すことになる。

 

「俺は大丈夫。なんかやばくなったら、みんなを頼るしな」

「ほんとかなぁ……」

ありゃ……信用があまりないらしいです。

 

「まあいいや」

納得はしてくれたらしい。多分。

 

「それこそ、侑も頼れよ。なんか息詰まったらさ」

「うん。頼りにしてる」

ほんと、これから先どうなるか、きっと誰にも分からない。

 

でも──

 

 

「あ、そうだ。ご飯出来たって。呼びに来たんだった」

そう、今日は珍しく侑の両親も居るのだ。だから今日は俺たちは特に何もしてない。

 

って!!

 

「そういうことは早く言おうな」

 

腹を減ってはなんとやら。というかお腹空きすぎてるもうなにもできん。

 

「ほら行くぞ」

「はいはい」

 

─これまでの思いを胸に、直大たちは足を動かす。

 

 

この時の俺はまだ知らない。

一学期以上の脅威が俺たちの日常を阻むことを。知る由もない。未来は神のみぞ知るとも言う。

途方もない人の悪意が俺らにどう影響し、どう転ぶのか。俺たちの行き着く未来はどうなっているのだろうか。

 

悪とは、正義とは何か。

分からないことだらけだけど。転んでもいい。泣いたっていいんだ。きっとその先に俺たちの未来があるから。

俺の夢も同じだ。太陽のように輝いたその先に夢が見つかるんだと。

 

 

続く………

 





更新遅れてしまいすみません。
自分が更新してない間にハーメルンで色々あったみたいで、
これを機に別媒体にも上げるか、保存しておこうかな?


あ、7thライブ当たってました。今から楽しみですが、映画やライブまでなんやかんやであっという間に過ぎていきそうで今から怖いです。


ということで、テレビアニメ第2期1話の内容はこれにて完結で、次回からは2期第2話の内容に入っていきます。

ではまた次回

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