赤ワカメは平和が恋しい   作:ロシアよ永遠に

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今回、場面切り替え多いです


第四話『お勉強』

「食事だ。食え。」

 

「なんか扱いが囚人ぽいんだな、これが。」

 

翌朝

目が覚め、思えば昨晩は何も食べなかったことを思い出して空腹感に打ちひしがれていると、渡りに船と言わんばかりに千冬が朝食を持ってきてくれた。

言い方は少しアレだが、これも彼女なりのユーモアなのだろうか。

シンプルにBLTサンドイッチにスープといったメニューだ。

 

「うめぇな、これは。」

 

「ここは世界最高峰の学園だからな。それ相応の料理人を古今東西雇っている。」

 

「いいねぇ、まさにセレブってやつか。」

 

成人男性の食欲を侮るなかれ、空腹も相俟った美味で、あっという間に平らげたアクセルは一息入れる。

 

「さて、昨日の今日だが、お前の処遇が決まったのでな。伝えるぞ。」

 

「うへぇ…。」

 

「そう嫌そうな顔をするな。別に悪い話じゃない。」

 

どんっ!と言う物々しい音とともにテーブルに置かれたもの。それは広辞苑か何かを思わせる本と、何かの参考書のようなもの。

 

(……どっから出したんだよ!?さっき両手には何も持ってなかったよな!?)

 

「今からお前にはこの本の内容を全て頭に叩き込んでもらう。期限は一週間だ。」

 

「は…?」

 

「聞こえなかったのか?一週間でこの本の内容を覚えろと言ってるんだ。」

 

明らかに分厚いそれを、一週間で覚えるなど、明らかに無理難題だ。これのどこが悪い話じゃないのか?明らかに悪い話だ。

 

「どうせこの部屋からしばらく出られんのだ。ならば勉強でもして、少しでも記憶を戻す努力をしておけ。」

 

「………。」

 

「わかったか?YESかハイかで答えろ。」

 

「…ハイ。」

 

「よろしい。食事や着替えは持ってきてやる。せいぜい励め。」

 

言うだけ言って、早々と出ていった千冬。残されたのは分厚い紙の束。

先ずは薄っぺらい冊子のようなものから片付けようと手に取る。

 

『記憶喪失でもわかる!ISのアレコレ!』

 

そんな題名の本だった。

 

「ハァ……ま、保護される身だ。何もせずにおんぶにだっこは嫌だからな。いっちょやってるぜ。」

 

これも自身が平穏に暮らすための一助だ。

恐らくはハイスクール等以降の勉強だろう。備え付けの机に資料を広げると、どこから取り出したのかわからないがハチマキを締め、ノルマをこなすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後

 

約束の日だ。

やるだけやった。

何度も資料を読み直し、重要なところや難しいところは付箋を貼り、その様相はさながら受験生のそれだ。余程根を詰めたのか、目の下には若干のクマがあり、額には千冬に注文しておいた冷えピタを貼っている。

 

「さて…約束の日だ。今から一週間の成果を見せてもらおうか。…余程気合を入れたようだな?」

 

「ま、何もしないでいるよりはってね。それよりも始めようぜ。覚えた内容が飛び出ないうちによ。」

 

「いい覚悟だ。ならばどれ程の知識を詰め込んだのか、見ものだな。」

 

配られるは、一枚の答案用紙と、問題用紙数枚。まるで中間テストか期末テストのようだ。だが、千冬の言葉を聞くに、効果測定に近いものなのだろう。

 

「では……始めっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後 IS学園職員室

 

「先輩、お疲れさまです。」

 

丁度アクセルの答案を採点し終えたとき、おっとりとした声が千冬に掛かる。その正体は山田真耶。千冬の後輩であり、そのバストは豊満であった。

 

「あぁ、山田君。お疲れ様だな。部屋わけの仕事、頼んで申し訳なかった。」

 

「いえ。ちょうど手が空いてましたので。……それが例の男の人の?」

 

「あぁ。一般常識や科目はすっぱ抜いて、IS関連のみテストしてみた。」

 

「凄いですね。合格ライン超えてますよ!これで一週間の詰め込みなんですか?」

 

「あぁ。詰め込みによる付け焼き刃かも知れんが、結果としては合格だ。」

 

IS学園は世界最高峰の高等学校であるため、そこに入るまでの試験はとても狭いものだ。なにせ国際学校なので、全世界からISのノウハウを学ぼうと試験を受けるのだ。その中で限られた人数に絞り込むとなれば、世界トップクラスの頭脳である証ともなる。その合格ラインに一週間の勉強で見事掛かったアクセルの学力、そして学習力は眼を見張るものだった。

 

「今年は大変な年になりそうですね。何せ『二人目』ですし。」

 

「全くだ…。最初に『アイツ』がISを動かしたことで2回目は少し慣れたよ。」

 

「見たところ…彼、明らかにティーンエージャー…には見えません、よね。それでも学生として通ってもらうんですか?」

 

「仕方なかろう。適正ある男ともなれば、いくつであってもここに入ってもらわなければ、様々な連中に狙われかねん。」

 

ニ枚の男性入学者の写真を見ながら、千冬は大きくため息をつく。

今年は厄年かもしれない。

 

「山田君、第8アリーナは最短でいつ空く?」

 

「えっと……そうですね。明日のお昼過ぎから夕方迄空いてます。なにか用事でもあるんですかる」

 

「なに、学力の次は実技試験と思ってな。」

 

「え?」

 

「少しやつの力を確かめたい。」

 

ここまでくれば、彼の実力を『自分自身で確かめたい』。

そんな欲望が出てくるのは、教師としてか、はたまた元世界チャンピオンとしてか?

それはさて置いても、少しばかりここ最近の多忙によるストレス発散に付き合ってもらおう。

千冬の中でちょっとばかり黒い感情が芽生えた。

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