赤ワカメは平和が恋しい   作:ロシアよ永遠に

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第六話『霧中』

「明日からの普段着だ」

 

実技試験を終えて翌日。端末で情報を集めていたアクセルに、千冬から服が渡される。今まで渡されていたシンプルな服とは違う、まさに制服と言うに相応しい黒と赤のラインがアクセントに入った白いものだ。

キョトンとするアクセルを察してか否か、続けて千冬が話を続ける。

 

「加えてこれが生徒手帳だ」

 

手渡される少し分厚い手帳。

生徒手帳

その言葉にアクセルは疑問符を浮かべる。

 

「は?生徒……?」

 

「そうだ。明日からお前はこのIS学園の一年生として通ってもらう」

 

「いや、ここって高校なんだろ?明らかに成人してる俺が通うのはおかしくねぇか?」

 

「いや、第二の男性のIS適合者が現れた地点で、高校課程を終えていようが成人だろうが通ってもらうよう調整していた」

 

「それでいいのか日本」

 

「言っただろう?ここにお前を居させるのは監視と保護の意味もあると。それともなにか?生徒でなければ教師として席を置くか?」

 

「セイトデオネガイシマス」

 

「素直でよろしい。あとは……そうだな、制服はある程度の改造は許可されているが……」

 

「マジ!?」

 

「節度を守れよ?」

 

「大丈夫だって!伊達に成人してる訳じゃねぇんだな、これが」

 

「……やれやれ、警告はしたからな」

 

「そんな警戒しなさんなって。最初に着ていた服の装飾をあれこれつけるだけなら問題ねぇだろ?」

 

最初に来ていた服、と言われて千冬はふと思い浮かべる。確かに皮のベルトやプロテクターなどが取り付けられていたそれは、漂流?の影響で生地がボロボロになっていた。布地は擦り切れたり破れたり、かなりの損傷具合だったので、無事な所は再利用したい、もしくは記憶を失う前からの愛着のような物があるのかもしれない。

 

「まぁ、あれくらいの外装をつける程度なら風紀的にも問題はあるまい。後は……ふむ、そうだな。これも今伝えておくか。明日の朝には入学式となるが、今年はお前に加えてもう一人、男性操縦者が入学することとなっている。同じ男同士仲良くするように」

 

「……いきなりだな。って俺以外にも男の操縦者居たのか?」

 

「うむ。現役の高校生だからな。年上として、色々と面倒を見てくれると助かる」

 

「そりゃ俺としても周り全員がオンナノコの中に放り込まれるよりも気が楽だな」

 

いくら男として女子に囲まれたい願望があれども、男一人だけと言うのは流石に居心地が悪い。一人同志が居るだけでもはるかに気が楽だろう。

 

「ただし」

 

「ん?」

 

「要らん事を吹き込んだり、巻き込んだりしたら……わかるな?」

 

「ハイ」

 

「よろしい」

 

とんでもない圧を発する千冬に、アクセルの言葉は蚊の鳴くかのような小さなものになってしまう。

これがプレッシャー、というやつだろうか。

とにもかくにも、アクセルの返事に得心した千冬は、参考書を熟読して入学式まで復習しておくよう釘を差して退室する。

残されたアクセル

支配する静寂

プレッシャーから解放されたことで肩の力が抜け、クソデカため息を一つ。

 

「はぁ〜〜〜、チビるかと思ったぜ、これは」

 

余程一人目の男性操縦者に気を払っているのだろうか?あの圧は異常である。

 

「ま、何にせよ……記憶の中じゃ学校生活はねぇわけだけど……」

 

自分の名前

ソウルゲイン

ベーオウルフ

そんな言葉くらいしか記憶にない中で、はてさてマトモな学園生活を送れるのか?もう一人の男についても気になるし、わからないことだらけの現状だが。

 

「ま、なるようにならぁね」

 

どこかそんな状況ですらワクワクしてしまうアクセルは、人知れず口元を釣り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園 第一アリーナ

春休み真っ只中にも関わらず、こうして学園に足を運び模擬戦を繰り広げるのは二人の少女だ。

片や肩辺りまでの外ハネした水色の髪をし、真紅の目が特徴の少女。その身に纏うは髪と同じく水色を基調とした妖精を思わせるISだ。

対するは緑掛かった黒髪と黒い瞳。その身に纏うISは漆黒で、どこか刺々しさを感じるものだ。

 

「ふぅ、今日はこれぐらいにしておきましょうか」

 

「そうですね、あまり煮詰めすぎるのも良くないですし」

 

頃合いを見て着地した二人はISを解除してダウンに入る。ISもスポーツと同じで体を動かす以上、準備運動たるアップと共に整理運動たるダウンも必要となってくる。

 

「しかし、流石ですね。ロシア代表、加えて生徒会長として恥じぬ実力でした」

 

「いやいや〜、褒めても何も出ないよ?そっちこそ、日本代表として仏恥義理なんだし、謙遜しない!」

 

そう、それぞれ国家代表としての立場を持つ二人。

互いに次のISの世界大会たるモンドグロッソにおいては敵になるが、こうして学園に居るときは、切磋琢磨し合うライバルであり友人として時折模擬戦を繰り広げていた。

 

「所で、例の二人目の男性操縦者の話、楯無さんは聞きました?」

 

「そりゃ生徒会長だもの。耳に入ってるわ。一人でもイレギュラーなのに二人目まで現れるなんて思いもしなかったけど」

 

一人目の男性操縦者が現れたことは全世界で大々的に報じられたため、知らない人は居ないに等しい。だが二人目と言うのはIS学園で秘匿に近い形で情報隠蔽されている。IS委員会には話は通してあるものの、マスコミやメディアには報道させず、ひっそりとしたものとなっている。

 

「いや〜、今年は何だかおもしろ……じゃないや、退屈しない学園生活になりそうね」

 

楯無と呼ばれた少女が広げた扇子。そこには『嵐を呼ぶモーレツ』と書かれており、今年から男子が混じるIS学園を楽しみにしている様子が見て取れる。

そういえばこの人はトラブルすらも楽しむ正確だったとため息が出る。

 

「でもま、真面目な話だけど、男性と言う新しい風が入るってことは、余計な物も舞い込んでくる可能性があるからね。それだけは気に掛けておかないと」

 

先程のおちゃらけた雰囲気とは一変、楯無は目を細めると、口元を隠して次に開かれた扇子には『常在戦場』。

 

「何かしらちょっかいを掛けてくる輩が居ないとも限らない。だから守る力がある私達が目を光らせないとね」

 

「ええ、そうですね。平穏な学園生活の為にも」

 

「頼りにしてるわよ?(ナギサ) 桜花(オウカ)ちゃん?」

 

「こちらこそ、頼りにしてます。更識楯無会長」

 

新たな風を纏い入れるIS学園入学式。

その風の行く先は、未だ誰も知るものは居なかった。

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