『バースト・カース』   作:ゅゅ

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ガン・ラック

「ええ~っ!? 紗雪ちゃんの誕生日って8月15日なの!?!? めっちゃ不謹慎じゃん!!!」

 

 その瞬間、クラスメイト全員の視線が私のほうへと向けられた。

 驚愕に目を見開く者、全身の悪寒に小さな呻き声を上げる者、眉根を顰め嫌悪の念を露にする者、あまりの絶望に発狂する者……ありとあらゆる混乱が、クラス中を駆け巡った。

 

「そうだよ。だから私は戦争の化身として、この世の全てを滅ぼすことに決めたの」

 

 全身から生やしたAK-47が火を噴き、敵の眉間に赤い彼岸花を咲かせる。

 腰の鞘から軍刀を抜き取り、目の前の女学生にその切っ先を向けた。

 

「お前の誕生日は何だ?」

「あー、えっと……」

 

 私の誕生日を聞いてきた彼女は、困ったような顔で私のことを見据え、不気味に笑った。

 

「私の誕生日は6月19日。つまり……父の日だね」

 

 それを聞いて私は小首を傾げる。

 私はつい先ほど他のクラスメイトを巻き添えに、コイツに無数の銃弾を浴びせてやったはずなのに、この名も知らぬ女学生は傷一つ負うこともなく、不気味な笑みを浮かべながら私の前に悠然と立ちはだかっている。

 

「なぜ父の日の能力者が銃弾で倒れない?」

「むしろ倒れるほうがおかしいと思いませんか?」

 

 彼女は机の中から取り出したシスターベールを被ると、ポケットからロザリオを取り出し、それを胸元に翳した。刹那、彼女の瞳は異様なまでに神々しい黄金色の光を湛えた。

 

「我が主よ、我が父なる神よ……。私をあらゆる災厄から、あらゆる害悪からお守りください……。私はこの世界の主たるあなたに、人類の父なるあなたに、常に心のそこから感謝の想いを抱いております……」

「なるほど……父というフレーズから神を連想し、奇跡の力を得たわけか」

 

 私は敵の首筋に軍刀を翳したまま問う。

 

「お前……名は何だ?」

「安部マリア……」

「親の顔を見てみたいもんだな」

 

 私は軍刀を鞘に収め、それから振り返り、教室の扉のほうへと歩いて行く。

 足元に転がる雑魚共の死骸を踏みしめ、扉の前で振り返る。

 

「二限目は移動教室だ。そこで提案がある。私と手を組むつもりはないか? お前は殺すには惜しい力を持っている。私の「戦争」とお前の「奇跡」があれば、この狂った学園を脱出することももしかしたら可能かもしれない……」

「ええ、いいでしょう……。あなたの行く先が主の慈愛に満たされますように……」

 

 私はシスターと共に扉の前に立ち尽くした。

 チャイムが鳴るまで、この扉は開かない。

 

 シスターは静かに瞼を閉じ、その時をただ黙して待つ。

 私は黒板の上部に配置されたスピーカーを眺める。

 

 やがて、チャイムが鳴った。

 

 生徒は休み時間以外は絶対に廊下に出ることは出来ない。これは「校則」であると同時に「拘束」でもある。もし何らかの能力を行使して「校則」を破れば、私たちはこの学園における「生徒」としてのあらゆる権利を剥奪され、「退学」となる。

 

 つまり、この学園の外に無防備のまま、全ての能力を剥奪された状態で放り出されるというわけだ。

 入学当初はこの学校の狂ったシステムに異議を唱え、抗議し、自主退学した生徒たちも多数いた。しかし奴らはもうこの世にはいない。「退学」した生徒は確実に死亡する。

 

「廊下にはゾンビの群れがいる。お前の奇跡はゾンビに通用しそうだ」

「ゾンビ映画で活躍するのは銃だと相場が決まっていますが……」

「出番を作ってやると言っているんだ。それとも私に全て任せるか?」

「いえ、いいでしょう。私としても未練を残したままの魂をそのまま放置しておくわけにはいきません」

 

 私たちは扉を開き、地獄めいた廊下に繰り出していく。

 ゾンビの群れが襲いかかる中、怒れる銃弾と神の裁きが廊下に赤い閃光を迸らせた。

 

「さあ、終戦させようか! この狂った学園を!!」

「父なる神よ! この罪深い学園に最後の審判を!!」

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